人口学研究
Online ISSN : 2424-2489
Print ISSN : 0386-8311
9 巻
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表紙・目次
会長講演
論文
  • 小川 直宏, メイソソ アンドリュー
    原稿種別: 本文
    1986 年 9 巻 p. 5-15
    発行日: 1986/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    バッツ=ワード・モデルが構築された背景には,従来まで出生力と景気循環との間でプラスの関係が存在するものと考えられてきたが,アメリカ経済が好調にもかかわらず,1964年以降に起った『ベビー・バスト』の現象をこの一般法則では説明することができなくなったことがある。バッツ=ワード・モデルでは,夫婦のタイプを妻が雇用されているグループとそうでないグループに区分けし,それぞれのグループについて異なった経済的フレーム・ワークを設定している。すなわち,妻が雇用されているグループでは,夫の所得に加えて,妻の賃金が考えられ,妻の賃金には所得効果と代替効果があるとし,妻が雇用されていないグループでは,夫の所得効用のみが考えられている。もし,経済が好調の場合には,夫の所得効果も作用するが,妻の代替効果が妻の所得効果と夫の所得効果を上回るほど強く作用し,その結果,出生力が低下する,というメカニズムを想定している。このため,妻の賃金に加え,結婚している女子における雇用者の割合の変動も出生力決定の重要な因子となる。バッツとワードは,1948-1974年におけるアメリカ合衆国の時系列データを駆使して,妻の賃金がマイナスのパラメーターを持ち,女子の賃金上昇が出生低下を引き起こしていることを実証した。このモデルが発表された後に,先進工業国のデータを使用して,このモデルの適用性をテストする実証研究が数多く行なわれてきたが,近年,このモデルにおけるいくつかの重大な問題点が指摘されるに至った。特に,夫の所得,妻の賃金の測定単位に何を使用するかにより,推計されるパラメーターのサインが変化することを考えると,ある意味において,これまで行なわれてきたこのモデルに関する全ての実証研究を再吟味する必要が出てきたのである。本稿では,日本の1963-1984年における時系列データを中心として,バッツ=ワード・モデルの再吟味と,このモデルの欠陥を補強するための代替モデルを提示し,さらに,それぞれの代替モデルの日本への適用性を実証的に分析した。実証分析結果は極めて良好であり,推計されたパラメーターは理論と一致したのみならず,過去20年間における日本の出生変動を相当に高い精度で追跡していることが示された。
  • 西川 由比子
    原稿種別: 本文
    1986 年 9 巻 p. 17-29
    発行日: 1986/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    文化的多様性にみちたインドにおいて,出生力を規定する要因は,社会,経済的要因に加えて,文化的要因が複雑にからみあっている。後者の文化的要因は,指標として数量化することが困難であり,出生力の要因分析を行う場合,その第一段階として,比較的に均質な地域を対象とすることが,有効であると考えられる。今回の分析において,比較的に均質なドラヴィダ系親族体系をもつ南インド4州を選択したのは,この理由によるものである。分析方法は,最初に,人口,労働力,農業,教育,医療,宗教に関する33の変数を用い,因子分析による南インドの地域特性の類型化を試みた。因子分析により抽出された因子は,労働力特性を示す第一因子,社会発展度を示す第二因子,世帯構成に関する第三因子,農業特性に関する第四因子,都市性を示す第五因子である。以上の因子構造を要約すると,南インドは,産業構造として労働集約的農業が主体であり,教育水準,医療水準ともに低く,社会発展度は低いと考えられる。次の試みは,因子分析によって要約された南インドの地域的特性を示す因子を代表する変数を利用し,これらを出生力の指標一婦人・子供比率(0-4歳人口/15-49歳女子人口)-を従属変数として,重回帰させることによって,出生力の地域格差を説明することである。各因子から抽出された変数は,第一因子から年少労働力,第二因子から,女子識字率と医師一人当たり入口,第三因子からは未婚者比率,第四因子からは耕作面積当たり人口密度,第五因子からは第一次産業従事者比率と都市人口比率の以上の7変数を選び回帰推定を行った。推計結果によれば,これらの要因は,出生力の地域格差の48.4%を説明している。このモデルでは高出生力の主要因が,南インドの労働集約的農業形態にあり,そこに投入される年少労働力の必要性が高出生力の要因であることを推論させる。投入された変数のうち統計的に有意である年少労働力,耕作面積当たり人口密度にさらに,女子識字率を加え,3変数について婦人・子供比率との州別の回帰推定を行った。推計結果は,タミル・ナドウ,ケーララ州においては,統計的に有意な結果を得られなかった。しかしアーンドラ・プラデーシュ州においては,年少労働力が高出生力の主な要因と推計される一方,カルナータカ州において,教育水準の高さが出生力低下に有意な効果を示していることは注目に値する。
  • 重松 峻夫, 久永 富士朗, 南条 善治
    原稿種別: 本文
    1986 年 9 巻 p. 31-47
    発行日: 1986/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    Nanjo・Kobayashiにより最近作成発表された1891〜1982年のperiodおよびcohort生命表と,1947〜1982年の人口動態統計を用いて,全死因,悪性新生物,脳血管疾患,心疾患についてcohort死亡率を計算し,その動向を解析した。Cohort死亡率のage patternをみると,全死因では男女とも,心疾患では女に明らかな低下のcohurt現象-各cohortの死亡率曲線が互いに重なることなく,明らかに分離して順次低下してゆく-がみられた。その他部分的ではあるがcohort現象がみられたのは,悪性新生物の女の40歳以上,心疾患の男60歳以下,脳血管疾患の男40歳以上で1957年以後であり,逆に,悪性新生物では20歳以下で不規則ではあるが上昇のcohort現象がみられた。年令階級別のcohort死亡率は,戦後かなり変動したが,近年次第に安定してきている。同じ年令階級で5歳若いcohortの死亡率との比は,近年わが国の死亡率が年々低下しているので1.0以下であるのが普通である。事実,全死因ではすべてのcohort,すべての年令階級で比は1.0以下であり,近年どの年令も0。8〜0.9のレベルに集まり横ばい状態を示している。死因別には戦後の死亡率の変動に伴って変化し,1.0を越えるものがかなりあったが近年は概ね1.0以下となった。ただ,心疾患では近年中年層で1.0を越えるものが時にみられる。同一cohortの5歳上の年令の死亡率との比は,年令の増加に伴う死亡率の変化を示すもので,1.0以上となるのが普通である。戦後当初は著しい死亡率の低下を反映して,全死因では40歳代までは1.0を割っていたが,その後次第に増大し,近年は30歳以上では1.0以上であるが,20歳代では未だ1.0以下で,5歳上の死亡率の方が低い。悪性新生物,脳血管疾患,心疾患では近年すべて1.0以上となっている。年令階級別のcohort死亡率は近年年令による差は縮小し,次第に横ばい傾向となってきている。Cohort解析を行っても,cohort効果を年令および時代効果から完全に分離して観察することは不可能であるが,cohort現象はより明らかにみられ,またperiodデータによる解析とは異なった角度からの検討が可能であり,死因の動向解析には有用な資料を与えるもので,今後さらにデータを蓄積して解析を重ねる事が必要である。
  • 鬼頭 宏
    原稿種別: 本文
    1986 年 9 巻 p. 49-57
    発行日: 1986/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    近世日本の農村人口については宗門改帳の利用によってこれまでに多くのことが解明されてきたが,長期にわたって残存する宗門改帳が少いために,都市の歴史入口学的研究はおくれるいるのが実状である。そこで宗門改帳とは別種の史料の利用を開拓することが必要とされる。本稿では,町奉行所から布達された町触の記事を通じて迷子と行方不明に焦点をあて,近世都市における人口現象に接近することを試みた。調査結果はつぎのとおりである。迷子の年齢は2・3歳から8歳まで分布するが,半数が3・4歳に集中する。また迷子の発生件数は米価高騰期に多く,低落期に少い。このことから迷子にはひとり歩きできる年齢の捨子が多く含まれると推定できる。貧しい身成りの子供が多数あることも,この推測を裏付ける。行方不明者の数は15歳以下の年少者が最も多くほぼ3分の1を占める。61歳以上が5分の1を占めてこれに次ぐ。年齢構造を考慮すれば行方不明の発生率は61歳以上高齢者は平均の3倍以上で最も高く,15歳以下と46〜60歳がこれに次ぐ。年少者には奉公人が多数含まれ,ほぼ半数を占める。行方不明者全体の中で傍系親族の割合は低く,1割に満たない。これらの特徴は,都市化が進み,小規模の血縁家族と比較的多数の若年労働力をおく京都の世帯構造をよく反映している。行方不明者には肉体的,精神的に何らかの異常をもつ者が少くない。25歳以下では「生得愚」とされる者,26〜60歳では精神に障害があるとおもわれる者,そして56歳以上では「老耄」と記載された俳徊老人が目につく。迷子と行方不明に対する関心が18世紀になってから高まり,触留に記録されるようになったことは,前世紀からこの時代にかけて人口の成長から停滞への転換が生じたことと関係があると考えられる。人口の停滞はおもに出生力の低下,すなわち子供数の制限によって達成されたとみなされている。捨子は堕胎・間引と並び,確実な方法として採用されたのであろう。また同時に,出生率の低下は人口高齢化をもたらし,老人を取り巻く問題が目立つようになったのである。
  • 若林 敬子
    原稿種別: 本文
    1986 年 9 巻 p. 59-69
    発行日: 1986/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    中国の人口政策,第1の人口の量をめぐる政策は,晩婚,晩産,少生,稀(出産間隔をあけること)である。今世紀末人口を12億にとどめる目標を目指して,いわゆる"1人っ子政策"が進められ,計画外第2子の出産,多子(第3子以上)率の根絶が当面の課題となっている。1984年春以降,第2子出産の条件が"緩和・拡大"され,1985年9月の第7次5カ年計画および「2000年の中国と就業」研究小組では,2000年の人口を12.5億人前後という"修正"がなされている。第2は,優生をめぐる問題であり,いとこ同士の結婚・ハンセン氏病患者の結婚を禁止している(80年婚姻法)。第3は,農業余剰労働力が今世紀末までは2.5億人以上にもおよぶとされ,"離農不離郷"(離農はしたが離村せず)の新しいタイプの労働者を誕生させつつある。第4は,人口高齢化と年金改革等の問題である。年金・賃金・福祉をトータルに把握し,全国的なあるべき社会保障制度の検討が初められだした。以上のように,本小稿は,中国の最近の人口政策を量,質,移動・分布,高齢化の視点から検討し,かつ各省市の計画出産条例の内容を紹介する。
研究ノート
  • 宮崎 禮次郎
    原稿種別: 本文
    1986 年 9 巻 p. 71-75
    発行日: 1986/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    人口自然動態逆転は,1955年からの経済の急速な成長に伴ない,若年労働力が農山村から都会に流出したこと,農山村における出生力の低下に大きく影響を受けている。それは1968年以後に,農山村の人口の年令構造を混乱し,出生率を低下せしめた。かくして逆転は,広島・岡山・島根・山口各県の中国山地の町村,高知・徳島・愛媛の四国山地の町村,鹿児島・大分など九州山地町村を核心地域として現れ,時の経過するにつれて深化し,また1970年以後には紀伊半島・中部・関東から東北・北海道に拡大傾向を示している。近年は東京・大阪・京都など巨大都市の都心区部の人口減少著しい地域でもみられるにいたった。逆転の深化した地域ほど,若者をして都市への流出を選択せしめる要因をより多く有する地域である。森林面積率大,可住地面積率,耕地面積率共に小さく,一戸当りの栽地面積が狭少,かつ低所得地域で,居住環境に恵まれていない。人口動態の逆転した地域=若者の流出した地域は,結果として,人口減少・人口の高令化,第2,第3次産業が相対的低下し,財政力指数の極めて低い地域である。
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