種鶏の繁殖能力におよぼす炭化水素酵母の影響を検討するため, 農林省畜産試験場と6県の研究機関の協同研究として累代飼養試験を行なった。5世代にわたり継続して, 対照飼料もしくは国内の4社でn-パラフィンに培養した酵母4種類のいずれかを15%含む酵母飼料を与えて飼育した, 4代と5代の合計1,290羽の成績, それらの種卵計6,550コによるふ化試験成績および6代目のヒナ740羽に普通の育すう用飼料を与えた成績を要約するとつぎのようであった。
1) 酵母飼料を与えた4代のヒナの発育と5代のヒナの飼料摂取量とが, 対照区より劣る傾向であった。同一育すう飼料を与えた6代目のヒナの発育が正常であったことから, 酵母飼料給与区のヒナの発育が遅れる原因は, 主として酵母飼料の栄養素のアンバランスによるもので, 酵母自身の影響とはいえないと考えられる。
2) 産卵期間中の成績は, 産卵率, 飼料摂取量, 飼料要求率, 卵重および生存率について, 対照区と酵母区との間に差は認められなかった。4代鶏の酵母区の36週齢体重は, 対照区より少し軽いが, 5代鶏では体重に差が認められなかった。
3) 4, 5代鶏の酵母区の受精率および4代鶏の酵母区の受精卵ふ化率は対照区より高く, 5代鶏のふ化率は逆に低かったが, この差は統計的に有意とはいえなかった。
4) 5代鶏では, 体重と飼料要求率において, 同一場で同一飼料を与えた2反復区間の成績の変動が, 対照区, 酵母区とも異常に大きかった。また, 5代鶏の受精率が両群とも異常に低い例が, 6場中の2場で認められた。この知見は, 閉鎖系で近親交配を続けたための悪影響があらわれたことを示すと考えられるが, 6代目のヒナが正常に発育していることから, 5代鶏でも, 正常なヒナを生産する能力はもつものと考えられる。
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