炭化水素酵母を与える累代飼養試験において, 初代鶏120羽の臓器25部位を採材して, 病理組織学的検査を行なった。各臓器に共通して見られた下記の変化は, 1~5およびTの記号で示した。
1: 好酸性穎粒球 (恐らく大部分は偽好酸球) が多い。
2: 小円形細胞 (リンパ球), リンパ組織, 囲管性細胞浸潤, またはグリア結節が多い。
3: 新鮮な小出血 (大部分は殺処分した時に現われたもの)。
4: 漿膜面 (特に膵や腸管の) における細胞浸潤 (上記の1, 2, その他を含む), 水腫, 線維素様物質の沈着など。
5: 腸腺の嚢胞形成。
T: 腫瘍。
また, 臓器ごとに特異な変化は, 臓器ごとにつぎの記号で示した。
心 *: 血管壁の細胞浸潤。
腎 ○: 尿円柱。
+: 嚢胞形成。
×: うつ血。
*: 蜂巣状の組織あり。
肝 ○: 硝子様物質の沈着, 小壊死巣または類壊死巣。
+: 類洞内皮の腫大。
×: 軽いうつ血。
*: 対照区の1例には, 結晶柱成分 (恐らく胆汁) を容れた嚢胞1コあり。酵母区の1例には, 壊死と出血あり。
肺 ○: 軽い肺炎。
+: うつ血。
*: 気嚢炎あり。
脾 ○: 細網細胞の活性化。
*: 赤色髄に少量の硝子滴。
腺胃 ○: 軽い分泌のうつ滞。
筋胃 ○: 軽いびらんまたは潰瘍。
十二指腸 ○: 回虫寄生。
小脂 ○: 回虫寄生。
*: 対照区と酵母区の各1例は多核巨細胞で囲まれた壊死巣。酵母区の2例は筋層が肥厚。
盲腸 ○: ネマトーダ (
Ascaridio か
Heterakis) の感染。
*: 1例は筋層が肥厚。1例は腸腺の嚢胞が壊死に発展。
卵巣 ○: 基質に硝子様物質の沈着。
*: 多核巨細胞で囲まれた壊死巣。
卵管 ○: 軽い分泌のうつ滞。
*: 分泌顆粒が極めて少。
甲状腺 ○: 甲状腺腫 (滬胞の大小不同, 小滬胞の多発, 滬胞上皮の肥厚, 増殖など)。
胸腺 *: 1例には小嚢胞がみられ, 他の1例にはうつ血がみられた。
副腎 ○: クローム親和細胞の細胞質が粗。
小脳 *: クモ膜下の血管内に異物。
坐骨神経 ○: 神経炎。
+: 周膜にリンパ組織。
全データを合併して, χ
2-テストもしくは直接確率計算法により統計的に検討した結果, 観察されたすべての変化について, 対照区と酵母区の出現率の間に有意な差は認められなかった。したがって, 酵母の給与により特異な変化が起るとはいえない。
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