大腸菌と黄色ブドウ球菌で人工的に汚染させた卵殼をホルムアルデヒド燻蒸1), 消毒液の散布又は浸漬2)により消毒した効果については既に報告した。今回の実験は慣用的な鶏舎で飼育されている種鶏の生産した種卵とFAPP鶏舎で飼育しているSPF鶏の種卵を用いて, ホルムアルデヒド燃蒸と消毒液への浸漬が孵化に及ぼす影響について検討したものである。
ホルムアルデヒド燻蒸の影響: 燻蒸室1m
3当たり40m
lのホルマリンと20gの過マンガン酸カリを反応させてガスを発生させた。0.5, 1.0, 2.0, 3.0時間燻蒸した種卵のふ化成績は対照とした無処理の種卵のふ化成績と差がなかった。
種卵浸漬の影響: 100倍に稀釈し40°Cに保った消毒液に種卵を4, 6, 8分間浸漬した。用いた消毒液はフェノール誘導体, 逆性石鹸, ヨードを主成分とする3種類のものであった。4分間浸漬した種卵のふ化成績は無処理の場合と差は認められなかったが, 6, 8分間浸漬するとふ化18~22日齢で死亡するものが多くなりふ化率が低下した。また, ふ化した雛はいわゆる〓締りは悪く活力に乏しく外観上健康な雛とは認められないものが多かった。特に種卵浸漬直後に卵殼に付着している消毒液を洗い流さずにふ化すると成績は一層低下した。
この一連の研究結果から次のことが結論される。
1) ホルムアルデヒド燃蒸による消毒には燃蒸室1m
3当たり40m
lホルマリンを用いてガスを発生させ, 1時間燻蒸する。
2) 本実験に用いた消毒液に浸漬する場合は100倍液を40°Cに保ち4分間浸漬する。浸漬後卵殼に付着した消毒液を洗い流すことが望ましい。
3) いずれの消毒法でも汚れた卵を完全に消毒することは不可能であるから, 汚卵を種卵として使用してはならない。市販の雛を生産する場合には軽度に汚れた卵は集卵後直ちに水洗し付着している菌を流失させた後に消毒して使用する。SPF雛の生産に際しては軽度の汚卵であっても種卵供用は不適当である。
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