ブラジルでは, ヒナに浸出性素因が多発し, その予防のために飼料にセレン (以下Se) を添加している。これは, ブラジルに, Se欠乏土壌地帯があり, その作物にSeが少なく, その作物を与えたヒナにセレン欠乏がおきることを示唆している。そこで予備的に, ブラジルのトウモロコシ, 大豆粕, およびSe添加配合飼料のSe含量を測定したところ, それぞれ0.049, 0.059, および0.096ppmであって, 大豆粕中の含量が著しく低かった。
そこで, ブラジルの9ケ所で採取して加熱処理した土壌サンプル9点と, そこで収穫した黄色トウモロコシと大豆各々5点ずつのSeを測定した。大豆は粗脂肪含量を測定し, それから大豆粕中のSe含量を推定した。対照として, 本研究室で購入した黄色トウモロコシ, 大豆粕および魚粉のSe含量を測定して比較した。
土壌中のSeは, 1.034~0.264ppmで, これと, そこで収穫したトウモロコシもしくは大豆のSe含量との間に相関関係は認められなかった。しかし, Seの少ない5カ所の作物中のSeは少ない傾向であった
トウモロコシのSeは, 0.167~0.037ppmで, 対照の0.027ppmより多かった。
大豆のSeは, 0.247~0.034ppm, 大豆粕換算で0.294~0.041ppmであって, 地域によっては, 対照の0.218ppmより著しく低い。
土壌中のSe含量がほぼ同じ地域であっても, そこのトウモロコシや大豆のSe含量に大差のある例が指摘されている。
この結果から, ブラジルにSe欠乏地帯があることは明らかであって, 今後大がかりな調査をする必要があろう。この調査は, 現在ブラジルがアメリカにつぐ世界第2の大豆輸出国であることを考えれば, 単にブラジル農業に対してだけでなく, すべてのブラジル大豆輸入国にとって重要なものといえる。
抄録全体を表示