1. 第1報と同じヒナの精巣, 甲状腺, 脳下垂体前葉についての観察結果を報告した。また確かめのために試験IIIとして, ピリメサミン, コクシジウム予防剤, 抗生物質を除いた飼料に0.5%と1.0%の割にTPAを混合, 3日齢から20日間および24日間処理して, 無添加区や試験: I, IIと結果を比較した。
2. 精巣については, 試験I (0, 0.5, 1.0, 2.0%TPA) では精巣と鶏冠の重量の低下があった。
試験II (0, 0.3, 0.4, 0.5%) の組織学的観察の結果, 間細胞の腫大, 水腫変性, 崩壊が認められ, 精細管には上皮の剥離と無秩序な増殖を示す部分が増加し, そこでは合胞体性の巨細胞や少数ながら精娘細胞性の巨細胞の出現を見た。剥離した細胞はやがて変性したが, 処理後半期にはこれらの変化は回復し始め, 60日目にはいずれの区も無処理区と大差がなくなった。異常の程度と回復の早さはほぼ用量と平行していた。造精現象にも用量に応じた遅れが認められたが, 60日目には差がなくなった。試験IIIでも全く同じ変化が認められ, 1.0%区では間細胞の水腫変性が著しかった。
3. 甲状腺に関しては, 試験IIでは小胞上皮高の有意な低下, 直径の大きな小胞の増加, アポクリン分泌像の減退を認めた。一時, 萎縮, 核濃縮, え死に陥る細胞が増加したが, やがて回復した。試験IIIの1.0%区では, 核濃縮を伴うコロイドの滞留による細胞の空胞化と破壊が認められた。
4. 脳下垂体前葉のδ細胞は, 試験Iにおいては0.5%区の場合萎縮や核濃縮, ガラス様液胞の出現などがやや多い程度であったが, 1.0%および2.0%の両区では非常に多くの細胞に強度の萎縮, 核濃縮, 液胞化などが認められ, また強く酸フクシンに染まる滴状物の著しい出現があった。試験IIでは用量にほぼ対応したδ細胞の肥大増殖の遅れがあった。
5. 脳下垂体前葉のα細胞は, TPA処理により大きさと数を増す傾向があり, かなりの個体に著しく巨大化して酸好性顆粒を失う細胞が現われた。試験Iの1.0%および2.0%区では, 萎縮, 核濃縮, 顆粒の溶解や凝集を起こした細胞が著しく増加した。
6. 試験IIIにおける腎臓, 副腎, 肝臓の所見も第1報で報告したものとほとんど同様で, 腎臓には糸球体腎炎とネフローシスの所見, 特に1.0%区では一部の個体に広範囲な尿細管の萎縮を, 副腎には皮質組織の肥大を, 肝臓には変性肝細胞の増加を認め, TPAの影響を再確認した。
7. 以上の結果から, TPAには一時的な去勢作用と軽度ながら甲状腺機能抑制作用があるものと考えられ, 用量が適切であることを前提として, 田先ら
9)の認めた体重増加効果も合わせ考えると, ブロイラー用の飼料添加剤として開発可能であろう。
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