ニワトリの卵管運動に関する研究報告は多くなされているが他の鳥類について,とくに
in vivo条件下での研究は,ほとんど報告されていない.著者らは,ニワトリの卵管各部位に超小型記録電極を装着し無線テレメーターを使用して卵管筋電図を記録した結果,排卵や卵管での卵輸送そして放卵にともなって卵管運動が特徴ある変化を示すことを報告した.今回は,ウズラとシチメンチョウの卵管,とくに子宮(卵殼腺)運動を連産に関連させて数日間記録し,排卵と放卵にともなう子宮運動パターンをニワトリの場合と比較検討し,放卵調節について考察した.
トリは各々個別ケージに入れ,飼料摂取と飲水は自由,照明スケジュールは14時間明,10時間暗とした条件下で飼育した。放卵時刻は水銀スイッチ•デジタル時計を利用して毎日正確に記録した。各トリをハロタン•亜酸化窒素•酸素混合ガス吸入により麻酔して子宮後部に双極記録電極を装着し,リード線を皮下にはわせ背上からリード線をとり出し,無線テレメーターに接続した.手術後,比較的規則正しい3~6卵のクラッチが観察されるようになってから子宮筋電図の連続記録を行った.
ニワトリ,ウズラおよびシチメンチョウの子宮平滑筋から明確な,それぞれ筋電図学的に共通する棘波(スパイク)状の活動電位が記録された.放卵に近づくとより多数の放電が同時的に起こり活動電位波形が複合化してバーストとしてみられたり,スパイクの振幅が増大する傾向がみられたが,子宮運動の指標としては,30μV以上の振幅を有するスパイクの10分当りの数(頻度)をもって表わした.
ニワトリとウズラでは,排卵された卵が放卵されるまでの一周期において三つの相からなる運動パターンが得られた.すなわち,(1)ほぼ静止状態の低い運動相,(2)比較的高い運動相,(3)一過性の最大運動相で,それぞれ排卵された卵が上部卵管(ろ斗部,膨大部,峡部)に存在する時期(約5時間),卵が子宮に存在する時期(約20時間)そして放卵の時期に一致して観察された.シチメンチョウでは,(1)の相が極めて短時間で(2)の相が延長してこの第2の相の運動はニワトリやウズラの場合より低いものであった.クラッチ間では,どのトリでも卵管内に卵が存在しないにもかかわらず,クラッチ第一卵の排卵前期に子宮運動が増加し,とくに排卵前30分から1時間の時点で顕著な一過性のピークが観察された.このピークは,各鳥種に特有の排卵時間帯に現われ,ニワトリのみならずウズラとシチメンチョウにおいても本来排卵に関係する調節機構が放卵調節にも一役を担っていると考えられた.しかし,クラッチの最終放卵では排卵が同時期に起こらないのでこの可能性は適用されないであろう.
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