Pansy羽装は,基本的に,赤錆色,黒色,白色の3色で構成されており,各部位の特徴は次のようであった。頭頂部から後頸部にかけては黒色が優勢であり,雌の頬部は黒色混じりの麦藁色で,細い黒色の横縞が眼の前方および下方に,黒色の縦縞が耳口の下方に存在したのに対し,雄では,全体的に褐色あるいは濃い赤錆色であった。また,雌の臆部は僅かに赤錆色を帯びた白色であったのに対し,雄では濃い赤錆色を呈し,性差が顕著であった。前頸部および胸部は雄雌共に淡い赤錆色で,雌では野生型雌と同様に黒色の小さな斑点が多数存在した。腹部は白色で,背部は,赤錆色,黒色,および白色が混合していたが,主として赤錆色と黒色が入り混じった外観を呈し,雄の赤錆色は雌よりも濃かった。雄のなかには,黒色部が少なく赤錆色が優勢を占める個体も観察された。翼は,主翼羽および覆主翼羽で黒色が優勢であった他は,全体的に淡い赤錆色であった。嘴は黒っぽく,脚および爪の色は薄い桃色で,眼は止常であった。初毛は明るい黄色で,背部の黒縞は幅が狭く不明瞭であった。
Pansy羽装は外観上redhead羽装に似ているが,redhead雌は眼の上部に明瞭な黒縞を有するのに対し,pansyでは存在しないこと,および,redheadの雄は加齢に従い胸部が灰色に変化するのに対し,pansyではそのような変化はみられないこと等,相違がみられた。さらに,redheadの背部の羽毛は,基部から先端に向かって,灰色,白色,黒色の順に色素帯が配列しているのに対し,pansyでは,灰色,赤錆色と黒色の混成,黒色,赤錆色,白色の順であった。また,redheadの背部羽毛の羽軸は基部が暗色であり,先端に向かって白くなっているのに対し,pansyでは基部が白色で,先端に向かって暗色へと移行し,色素分布が全く逆であった。これらの相違点からpansyはredheadとは異なる突然変異であると考えられた。
Pansy同士の交配からはpansyのみが得られ,pansyと3つのコントロール系統(WE, WTYおよびWFM/Nga)との正逆両交配から得られたF1世代158個体は全て野生型羽装を示した。また,野生型とpansy羽装の分離比は,F
2世代では,740:234,戻し交配世代では,108:120,であった。以上のことからpansy羽装は常染色体性劣性遺伝子によって支配されていると考えられ,遺伝子記号
psが提唱された。
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