日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
24 巻, 1 号
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  • 上野 孝志, 小宮山 鐵朗
    1987 年 24 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    高温(43°C, 38°C)ならびに低温(-10°C)暴露時の生存時間又は死亡率を指標としてニワトリにおける温度耐性の遺伝的変異を明らかにした。先ず,白色レグホーン種4系統(R, B, Dw, dw)のヒナを用いて43°Cおよび-10°Cでの生存時間の系統間差を調べた。その結果,矮性系(dw)を除いた3系統において,43°Cでは体重の軽い系統が重い系統より長く生存したが,-10°Cでは全く逆の傾向が認められた。矮性系(dw)の体重は,近交系(B)とほぼ同じであったが両者の生存時間は両環境温度下とも有意(P≦0.01)に異なった。すなわち,矮性系は43°Cでは近交系の平均生存時間より約110分長く,また,-10°Cでは反対に約20分短かかった。このことは,温度耐性には体重差以外に,熱生産や熱放散などの生理的要因が関与していることを示唆するものである。
    次に,白色レグホーン種2系統(S, G)を用いて温度耐性の遺伝パラメータ推定を行なった。両系統を込みにした体重と生存時間との遺伝相関は,-0.548 (43°C),0.307 (-10°C)であった。暴露した温度に関わりなく,母親成分より推定した生存時間の遺伝率(0.475~0.596)は,父親成分より求めた遺伝率(0.035~0.285)より高く,温度耐性に母性効果や非加算効果の関与が示唆された。また,全きょうだい成分より推定した生存時間の遺伝率は,両成分を込みにした場合0.317 (43°C), 0.349(-10°C)であった。
    更に,産卵鶏(WL-G)を用いて高温暴露下(38°C,24時間)における死亡率の遺伝率推定を行った。その結果,h2S, h2D, h2S+Dそれぞれの成分による推定値は,0.276, 0.398, 0.337であった。
  • 唐澤 豊
    1987 年 24 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,5%あるいは20%蛋白質飼料を摂取したニワトリに注入したアンモニア-Nとグルタミンアミド-Nの尿窒素化合物への取り込みと,この取り込みがアンモニアあるいはグルタミンの注入による尿窒素化合物の変化にどの程度貢献するかを比較するために行った。
    尿の尿酸,アンモニアあるいは総窒素へのアンモニア-Nとグルタミンアミド-Nの取り込みの間には有意差はなかった。しかし20%蛋白質飼料を摂取したニワトリでは,アンモニア-Nの方がグルタミンアミド-Nより多く尿酸へ取り込まれる傾向があった。アンモニア,尿酸以外の尿窒素化合物へのグルタミンアミド-Nの取り込みは,アンモニア-Nの取り込みの6倍以上であった(5%蛋白質飼料給与時にP<0.05)。内因性尿酸とアンモニアは,5%蛋白質飼料を給与したニワトリではアンモニア注入とグルタミン注入で有意差が認められなかったが,内因性の他の窒素化合物と総窒素はグルタミン注入ではアンモニア注入のそれぞれ6倍と2.5倍の取込みであった(P<0.05)。20%蛋白質飼料を給与したニワトリでは,内因性の尿酸,アンモニア,他の窒素化合物および総窒素は,グルタミン注入時にアンモニア注入時のそれぞれ2倍,2倍,4倍および2倍の取り込みであった。グルタミンあるいはアンモニア注入時の尿尿酸,アンモニア,他の窒素化合物および総窒素の排泄量は,注入グルタミンアミド-Nおよびアンモニア-N由来のこれら尿窒素化合物の変化よりむしろ内因性N由来のこれら尿窒素化合物の変化を反映していた。
  • 田名部 尚子, 小川 宣子, 林 恭三
    1987 年 24 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    成雄ウズラにエストラジオール-17β-ベンゾエートを1羽当たり1mgずつ4日間連続投与した。血液は投与直前および投与終了24時間後に採取し,血漿を得た。また産卵中および休産中の雌ウズラからも血漿を採取した。この各個体の血漿の蛋白質の泳動像の変化を水平式ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(pH9.0)により調べた。泳動後,CBB-Rで染色し,デンシトメトリーにより蛋白質の濃度を比較した。
    エストラジオール投与によって成雄ウズラ血漿蛋白質の泳動像が,産卵中の雌ウズラ型に変化した。すなわち成雄ウズラの投与前には,プレトランスフェリン(Ptf)の比率が36%であったが,投与後16%と半減した。逆にトランスフェリン(Tf)は,投与前は13%であったが,エストラジオール投与によって28%と約2倍に増加した。最も遅く移動するポストトランスフェリン-2(Potf-2)の泳動帯の染色も投与後増加した。アルブミン(Alb)は,本実験のエストラジオール処理後は,処理前の2/3に減少した。
    エストラジオール投与処理によって,成雄ウズラ血漿に,産卵中の雌血漿に特有の多型をもつエストロゲン依存蛋白質であるプレアルブミン-3(Pa-3)の泳動帯が出現した。この泳動帯より蛋白質(Pa-3)を抽出し,アミノ酸組成を調べた。その結果,Pa-3は,セリンが6.9%であまり多くなく,最も多いのはグルタミン酸で12.5%,つぎに多いのがアスパラギン酸(11.5%)である蛋白質であった。従ってこの蛋白質はホスビチンではないと思われる。
  • I. 夏季における床面熱流について
    鎌田 寿彦, 星田 真一, 森田 琢磨
    1987 年 24 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    断熱性の良い2つの無窓ケージ産卵鶏舎につき舎内気温•床面温度•風速などを測定し,夏季に於ける床面熱流の様相と舎内熱環境に占めるその役割とを考察した。
    1. 先ず,両鶏舎の総合平均熱貫流率がそれぞれ0.23kcal/m2•°C•時と0.81であることを算出し,これらの鶏舎が断熱性の良い鶏舎であることを示した。
    2. 両鶏舎の床面温度が周期的定常変動をしていると見なし得ることを証明し,これに基ずいて床面熱流量の変動,並びに,平均値を理論的に算出し表3の如き値をえた。
    3. 夏季における相当外気温の例を用いて,両鶏舎,並びに,熱貫流率が2kcal/m2•°C•時の鶏舎につき,舎30 日本家禽学会誌24巻1号(1987)内への流入熱量を求め,それと床面からの流出熱量との比率を算出したところ,断熱性の良い鶏舎からの順で,5.82倍•2.49倍•0.76倍となった。
    4. ついで,換気による流出を含めた全流出熱量をこれらの鶏舎につき求め,それに対する床面からの流出熱量の割合を算出したところ,上記と同じ順に49.2%•51.8%•31.4%となった。
    これらの数値につき検討し,断熱性の優れた無窓鶏舎に於いては,夏季に於ける床面熱流が舎内の熱環境に重要な意義を持っているものと結論した。
  • 永江 豊明, 信国 喜八郎, 西山 久吉
    1987 年 24 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本実験では,幼若時に甲状腺の除去と自家移植を行ない性成熟後に移植甲状腺を除去する方法を用いて,性成熟後の甲状腺ホルモンの欠如が雄鶏の生殖器重量および精液性状に及ぼす影響について検討した。
    甲状腺の除去および胸部前端部皮下への自家移植は10~11日齢時に行ない,7ヵ月齢時に自家移植鶏の一部について移植甲状腺を除去した。
    甲状腺を自家移植された鶏では,ほぼ正常な成長が維持され,肝臓の肥大および腹腔内脂肪の蓄積のいずれも生じなかった。一方,自家移植甲状腺の除去によって甲状腺を完全に除去された鶏は肝臓および腹腔内脂肪が著しく増加した。これに対して,甲状腺除去が不完全で,約20mgの甲状腺が残存していた鶏では,腹腔内脂肪量の増加のみが観察された。したがって,甲状腺の除去が完全であった鶏では厳しい甲状腺ホルモン欠如が,不完全であった鶏ではゆるやかな欠如が生じていたものと推定された。
    生殖器重量および精液性状に対する甲状腺ホルモン欠如の影響については,甲状腺ホルモンの欠如が厳しいときには精巣の重量は著しく減少し,精巣上体および脈管豊実体の重量も減少した。さらに精液量および精子濃度にも減少が認められた。一方,ホルモン欠如の状態がゆるやかな場合には前述の生殖器重量は減少せず,また精液量および精子濃度も減少しなかった。これらの結果より,甲状腺ホルモンの欠如が厳しければ,欠如の影響は精巣をはじめとして,精巣上体および脈管豊多体にも及び,ひいては精子濃度および精液量に反映されるものと推定された。
  • 村松 達夫, 加藤 俊康, 奥村 純市, 田先 威和夫
    1987 年 24 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    孵卵12日目の鶏胚について,蛋白質合成をin vivoで測定するに際し,3種類の計算法を用いてその精粗を比較した。これら3種類の方法は次のごとくして蛋白質合成率(%/day)を求めるものである。1)遊離および蛋白質中のフェニルアラニンプールについてその同位体濃度を経時的に測定し,その変化に関する連立微分方程式を解く,2)遊離フェニルアラニンプール中の同位体濃度の各測定時間における全ての測定値を用いて面積計算をする,3)面積計算に際し,特定の2測定時間における測定値のみを用いる。
    計算の結果によると,これら3種の方法でほぼ同様な合成率の値が示されたので,2測定時間の測定値を用いて面積計算をする簡便法が実用的であると考えられた。
  • 坂井田 節, 塩谷 栗夫, 田中 稔治
    1987 年 24 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    木酢液を主成分とする製剤が鶏の産卵成績や卵質におよぼす影響について検討した。本製剤は,広葉樹の樹皮や木片を乾留して得られる液体を精製したものに,コンフリーやセルラーゼ系酵素を添加し,この液体を4倍量の軟質炭素末に吸着させたものである。
    この製剤を1.5~2.0%飼料添加して産卵鶏に投与したところ,実験-1では産卵率が対照区より2.9%上回り,実験-2においては4.1~4.4%上回り,統計的にも1%水準で有意差を生じた。
    飼料要求率については,実験-1において対照区より0.06下回り,実験-2においては0.17~0.18下回り,統計的にも1%水準で有意な改善傾向が見られた。
    卵殼強度については,対照区2.84,投与区3.09となり,投与区が1%水準で有意に高い値を示した。
    卵白高,卵黄高,ハウユニットについては,当日卵では区間に差を生じなかったが,貯卵期間が長くなるのに伴って投与区のほうが高い値で推移する傾向を示した。このため区間および区×貯卵期間の相互作用項は1%水準で有意であった。
    これらの実験結果から本製剤の投与は,産卵成績や卵質について改善効果のあることが示唆された。
  • 杉山 道雄
    1987 年 24 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    台湾養鶏業を発展段階別に位置づければ11)典型的農家養鶏段階であり,近年の鶏卵生産の成長率は高いばかりでなく,家禽産業として多様性に高んでいる。したがって1人当たり消費量もアヒル卵も含め,220個水準である。
    生産は南部に集中し,畑作畜産の一環として営まれている。
    鶏卵生産費水準は低く,これは雛,飼料費に基づくが飼料費については別途考察するが,雛費については労賃水準,飼料費,種鶏費の安さに依存している。
    生産面での合理化に比べれば物流の合理化が遅れ,減耗率が高く,今後の課題であろう。
  • カーギル台湾社の事例分析
    杉山 道雄
    1987 年 24 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    台湾における自給飼料は減少傾向にあり,飼料用穀物の輸入が増大している。そうしたなかで1975年,カータイ社が設立され,近代的経営方法が導入された。それは「競争は企業を改善する」という哲学の下に分散経営方式やマトリックシステムであり,徹底した低コスト追求である。そのため薄利多売方式とし,加工費ばかりでなく販売費を節約し,減耗率を0.1%以下とするなど徹底した工程管理である。
    そのため,全体の飼料販売は10%のシェアであるが採卵用には45%を占め,回転率のよい分野の製造を高めている。
    台湾の飼料工場は少数化,大規模化の過程を歩み,養鶏家の自家配合割合も過去5年間に26%から9%へと減少している。
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