高温(43°C, 38°C)ならびに低温(-10°C)暴露時の生存時間又は死亡率を指標としてニワトリにおける温度耐性の遺伝的変異を明らかにした。先ず,白色レグホーン種4系統(R, B, Dw, dw)のヒナを用いて43°Cおよび-10°Cでの生存時間の系統間差を調べた。その結果,矮性系(dw)を除いた3系統において,43°Cでは体重の軽い系統が重い系統より長く生存したが,-10°Cでは全く逆の傾向が認められた。矮性系(dw)の体重は,近交系(B)とほぼ同じであったが両者の生存時間は両環境温度下とも有意(P≦0.01)に異なった。すなわち,矮性系は43°Cでは近交系の平均生存時間より約110分長く,また,-10°Cでは反対に約20分短かかった。このことは,温度耐性には体重差以外に,熱生産や熱放散などの生理的要因が関与していることを示唆するものである。
次に,白色レグホーン種2系統(S, G)を用いて温度耐性の遺伝パラメータ推定を行なった。両系統を込みにした体重と生存時間との遺伝相関は,-0.548 (43°C),0.307 (-10°C)であった。暴露した温度に関わりなく,母親成分より推定した生存時間の遺伝率(0.475~0.596)は,父親成分より求めた遺伝率(0.035~0.285)より高く,温度耐性に母性効果や非加算効果の関与が示唆された。また,全きょうだい成分より推定した生存時間の遺伝率は,両成分を込みにした場合0.317 (43°C), 0.349(-10°C)であった。
更に,産卵鶏(WL-G)を用いて高温暴露下(38°C,24時間)における死亡率の遺伝率推定を行った。その結果,h
2S, h
2D, h
2S+Dそれぞれの成分による推定値は,0.276, 0.398, 0.337であった。
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