日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
25 巻, 5 号
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  • 斉藤 昇, 島田 清司
    1988 年 25 巻 5 号 p. 261-267
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジン(PG)投与がニワトリの早期放卵を誘起し,インドメサシン(PG合成阻害剤)投与が放卵を遅延させることは知られている。そして,放卵時に血中PG濃度が増加し,このPGは第1位排卵前卵胞(F1)と第1位排卵後卵胞(R1)において産生されると報告されている。これらの知見から,PGがニワトリの放卵機構に関与していると一般に考えられている。
    ウズラにおいても,PG投与が早期放卵を誘起し,インドメサシン投与が放卵遅延を起こすことが報告されている。しかしながら,ウズラにおいて放卵にともなう血中および卵胞中のPG濃度の変化については報告されていない。従って,本研究において,ウズラの放卵周期中の血中および組織中のPG濃度をラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した。
    16週齢のウズラを個別ケージに入れ,飼料と水は自由摂取,照明が14時間/日のもとで飼育した。放卵時刻を毎日記録し,連産が5卵以上で規則正しい産卵バターンを示すウズラを実験に用いた。血液試料はヘパリン処理したシリンジにより心臓から採取し,組織試料はF1から第3位(F3)までの排卵前卵胞とR1および子宮組織を採取した。試料の採取は,連産の第2放卵前16と8時間および放卵直後におこなった。血中と組織中のPGFとPGE濃度をRIAにより測定した。
    血中のPGFとPGE濃度は,ともに放卵周期の放卵時に有意に増加した。卵胞膜中のDNA含量は,排卵前卵胞において卵胞の成長にともない徐々に増加し,R1ではF1とほぼ同じレベルであった。卵胞膜中のPGF濃度は,排卵前卵胞では有意な変化が見られなかったが,R1において放卵時に有意に増加した。PGE濃度は,連続する時間経過においては有意の変動として認められなかったが,放卵時にF1で最も高い濃度を示した。子宮組織におけるPGFとPGE濃度は,放卵周期中に有意な変化が見られなかった。
    以上の結果に基づき,放卵時にみられた血中PG濃度の増加は放卵機構にPGが関与している可能性を示すものと考えられた。そして,放卵に関するPGの産生部位としてはF1とR1が考えられた。
  • 寺田 隆登, 橋本 秀之, 前田 照夫, 渡辺 守之, 堤 義雄
    1988 年 25 巻 5 号 p. 268-277
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    グリセリン,ジメチルサルフォキサイド(DMSO)およびメチルフォルムァマイドで凍結保存した鶏精子の融解後における運動性と細胞体積の関係を求めると共に凍結保護剤の凍結防止機構を明らかにする目的で凍結保護剤の濃度と細胞体積との関係についても検討した。精液1倍量に対して各凍結保護剤を種々の濃度に含む5.7%ブドウ糖溶液を3倍量添加して希釈した。希釈精液を錠剤法で凍結処理し,融解精子の運動性と細胞体積を測定した。細胞体積はコールターチャナライザーとスーパーミクロコンピューターを装備したコールターカウンター(Model 2b)で測定した。
    1) 新鮮および凍結前における精子の細胞体積の分布パターンは鋭い対称性の分布を示し,新鮮精子の最頻値は5.2μm3であった。
    2) 融解精子の細胞体積と運動性の間には,いずれの凍結保護剤を用いた時にも有意に高い負の相関が認められた。3) 凍結保護剤を含まない希釈液で凍結処理した精子の体積は凍結前に比べて著しく減少した。
    4) グリセリンの濃度が7%まではその濃度が高くなるに従って,融解精子の細胞体積は直線的に減少したが,運動性は逆に高くなった。しかし,グリセリン濃度を7%以上に増加させた時には融解精子の体積が増加し,運動性は減少した。
    5) DMSOとメチルフォルムアマイドを凍結保護剤として用いた時にはグリセリンの場合と類似した関係が各保護剤の濃度と融解精子の体積および運動性との間に認められた。
    6) 以上のことから一定濃度までの凍結保護剤は凍結過程において細胞内水分量の減少を促進させ,細胞内結晶を抑制することにより凍結障害から精子を保護するものと推論した。
  • 都築 政起, 若杉 昇
    1988 年 25 巻 5 号 p. 278-287
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ニホンウズラET (ear-tuft)系統は,hyomandibular furrow (HF)の閉鎖異常,および,この異常に起因する耳房と耳口異常が特徴である。これらの異常は,常染色体性の劣性遣伝子hfdによって支配されている。ET系統は既にhfd/hfdの遣伝子型に固定しているが,外観的に正常な個体も出現する。前報で,孵卵5日胚におけるHFの閉鎖異常の出現頻度は91%,孵卵15日胚における耳口異常の出現頻度は42%であることを報告し,孵卵5日胚に生じた異常の約半数が,後の胚発生の過程で修復されると推測した。本研究は,HFの閉鎖異常に対する修復が存在することを確認したものである。ET系統の孵卵4~15日胚において耳口形成過程を観察し,HFの閉鎖異常およびpeduncleの出現頻度を調査した。HFの閉鎖異常は,孵卵7日以降,耳口異常と呼ぶべき形態を,また,peduncleは,孵卵11日以降,耳房と呼ぶべき形態を示した。孵卵4日胚では異常は認められなかった。孵卵5日胚におけるHFの閉鎖異常出現頻度は91%であったのに対し,6日胚では44%と減少し,ほぼ同様の頻度が孵卵15日まで持続した。孵卵5-6日の間に胚の集中的な死亡はみられなかったので,孵卵6日までにHFの不完全閉鎖の出現頻度が約半分に減少した理由として次の2つが考えられた。1つは,孵卵5日胚に生じたHFの閉鎖「異常」の約半数が修復されたとする考えであり,他の1つは,約半数の胚において閉鎖「遅延」が回復したとする考えである。
    ET系統では,HF周辺に発生の起源を持つ頭部骨格に異常が出現することが既に知られている。孵卵5日におけるHFの不完全閉鎖の約半数が閉鎖遅延であり,孵卵6日に至って正常に閉鎖したとすれば,頭部骨格異常の出現頻度は45%程度(91%×1/2)になると考えられる。ところが,孵卵15日胚における頭部骨格異常の出現頻度は87%であり,孵卵5日におけるHFの不完全閉鎖の出現頻度と良く一致している。この事実は,孵卵5日胚にみられたHFの不完全閉鎖が,閉鎖「遅延」ではなくて「異常」であることを強く示唆している。孵卵5日胚のHF周辺に生じた異常は,表層の耳口レベルでは修復されやすく,内部の骨格レベルでは修復されにくいと考えられる。孵卵5日胚182例中,HFの閉鎖異常が軽度のもの93例(51%),重度のもの73例(40%)であったのに対し,6日胚178例中では,軽度のもの20例(11%),重度のもの58例(33%)であり,主に軽度の異常が修復されると考えられた。
    3種類の交配,(1)外観的に正常な個体同士,(2)正常な個体と異常を有する個体,および(3)異常を有する個体同士の交配,から得られた胚におけるHFの閉鎖異常の出現頻度は,5日胚では,88, 92,および95%であったのに対し,6日胚では,16, 62, 49%であり,正常個体同士の交配に由来する胚において高率にHFの閉鎖異常の修復が起こっていると考えられ,遣伝的背景の影響が示唆された。
    孵卵5日胚におけるpeduncleの出現頻度は42%であり,ほぼ一定の頻度が孵卵15日まで連続的に観察された。出現頻度が一定であったことに加え,peduncleの位置および体全体に対する相対的な大きさには,5日胚と6日胚の間で差が見られなかったことから,peduncleは,一度形成されると修復されることはほとんどないと考えられた。
  • 氷上 雄三, 安則 稔加, 丹山 哲志, 長谷川 信
    1988 年 25 巻 5 号 p. 288-295
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    鶏にメチオニン不足飼料(大豆タンパクなど)を給与すると,一般にその体重は減少する。ところが全体の10%程度のヒナは,メチオニンを補足した飼料による成長と同程度の増体を示した。それで2週齢にメチオニン不足飼料による高体重のヒナ(MDB区),平均付近のヒナ(MD区),及びDL-メチオニンを添加した飼料によるヒナ(M区)を選び,2-4週齢の間の増体,飼料摂取量,血漿遊離アミノ酸濃度,肝トランスアミナーゼ活性を調べた。その結果,MDB区のヒナは,引き続きM区と同程度の増体を示し,飼料摂取量が増加していることから,この高い増体は飼料摂取量と関連があることが推測された。又血漿のメチオニン,シスチン濃度は高くなっていないことから,これらのヒナの高い増体は,メチオニンの体内合成,腸内細菌による合成,あるいは含硫アミノ酸の分解•排泄速度を遅延させるなどによっているのではないと推測された。その他の血漿アミノ酸の動態や,肝トランスアミナーゼ活性の変動についても検討した。
  • 斉藤 昇, 島田 清司
    1988 年 25 巻 5 号 p. 296-304
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ニワトリの連産中の放卵時(CsOP)に血中のプロスタグランジン(PG)濃度が増加し,PGの投与は早期放卵を誘起することから,PGが放卵機構に関与すると考えられている。しかし,連産の第1排卵(C1OV)の際には放卵が起きていないにもかかわらず,CsOPと同様に子宮運動が増加し血中PG濃度も増加する。そして,連産の最終放卵(CtOP)では排卵を伴わないが,排卵を誘起することにより放卵も誘起される。これらの結果は,排卵に関連した何らかの過程が放卵の機構に関与していることを示している。
    CsOP時での末梢血中PG濃度の増加は,主に排卵前第1卵胞(F1)と排卵後第1卵胞(R1)の卵胞膜層におけるPG産生に由来すると報告されている。本研究は,排卵と放卵を伴うCsOP,放卵のみのCtOPおよび排卵のみのC1OVの場合の卵胞のPG濃度を測定し,これらを比較検討した。
    試料は,連産中の放卵直後(CsOP),連産の最終放卵直後(CtOP)および連産の第1排卵直前の子宮運動の最高時(C1OV)に採取した。血液試料は翼下静脈,子宮および排卵前卵胞から採取した。組織試料として,排卵前卵胞と排卵後卵胞の卵胞膜層と顆粒膜層および子宮組織を採取した。血液試料と組織試料中のPGFとPGE濃度は,ラジオイムノアッセイにより測定した。
    末梢および子宮血中PGF濃度では,CsOP, CtOPおよびC1OVの三者の間に有意な差が見られなかった。しかし,F1における血中PGF濃度はCsOP, C1OV, CtOPの順番で高く,それぞれの間で有意差が認められた。卵胞膜層のPGF濃度は,CsOPとC1OVでは卵胞成長に伴い増加し,F1が最も高い値を示した。CsOPでは,R1においてもF1とほぼ同様の高い値が見出された。一方,CtOP時のF1のPGF濃度はCsOPとC1OVのF1卵胞よりも有意に低い値であった。しかしCtOPの場合,R1のPGF濃度はF1に比べ有意に増加し,CsOPでのR1とほぼ同じであった。R1の顆粒膜層においても,CsOPとCtOPの場合のPGF濃度はC1OV時のR1より有意に高い値であった。卵胞膜層のPGE濃度は,いずれの場合においてもF1と排卵前第2卵胞(F2)が他の卵胞に比べ高い値を示した。子宮筋層と子宮内膜のPGF濃度は,いずれの場合でも差がみられなかった。
    以上の結果から,排卵に関連した過程がF1におけるPG合成に関与していると考えられた。しかし,CtOPの場合には排卵を伴わないため,F1に替わってR1が放卵の調節に働いている可能性が考えられた。
  • 吉田 實, 勝屋 茂實, 末吉 益雄, 水野 隆夫
    1988 年 25 巻 5 号 p. 305-311
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    カルシウム(Ca) 0.2%,全リン(P) 0.4%の基礎飼料に,炭酸カルシウムとリン酸を加えて飼料中のCaとP含量を調整した7種類の試験飼料を,3週齢のブロイラー雌雛に4週間給与した。
    発育成績は,Ca1.2%, P0.9%の試験飼料(1.2-0.9飼料と略す)の給与区が最もよく,CaとPのバランスが崩れた飼料の給与区の発育は劣る傾向であった。骨についても.1.2-0.9飼料の給与区で重く,長く,太く,強く,最もよい成績であった。バランスが崩れた飼料の給与区の成績はこれに劣る傾向であった。Caが過剰の条件では骨端軟骨の肥大帯が肥厚し,P過剰の条件で骨端軟骨の増殖帯が肥厚した。組織標本作成のため骨を鋸で引いたときの感触では,飼料のP含量とは無関係に,Ca不足では軟らかく感じられた。
    これらの成績は同じ組成の試験飼料を給与した雄雛の成績(引用文献1)と同じ傾向であったが,飼料中のCaとPに対する反応は,雌雛の場合著しく微弱であった。1.2-0.9飼料の有効P含量は0.5%と推定され,この条件,すなわち,Ca1.2%と有効P0.5%の組合せが,3~7週齢のブロイラーの成長ならびに骨の形成の点で,ほぼ最適な組合せといえる。
  • 小島 洋一, 伊東 正博, 国松 豊, 茨木 久美子
    1988 年 25 巻 5 号 p. 312-318
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    24時間明暗周期(14L:10D)で飼育されていたハイセックス鶏90羽を,そのままの14L:10D区,28時間周期の14L:14D区および21時間周期の14L:7D区に移行して産卵性を比較した。放卵時刻は,14L:10D区で明期前半に集中したが,14L:14D区では暗期に,14L:7D区は明期後半から暗期にかけて集中した。また明暗周期切り替え後の放卵時刻の同調は,14L:14D区,14L:7D区とも1週間以内に完了した。放卵パターンは14L:10D区が約41時間の休産間隔の後,24-25時間間隔で連産したのに対し,14L:14D区では休産は殆ど無く約28時間間隔で連産した。また,14L:7D区では約35時間の休産間隔の後24-25時間間隔で連産した。hen-day産卵率は,14L:10D区に対し14L:14D区,14L:7D区とも有意に低くなった。卵重,卵黄重,卵白重および卵殻重は14L:14D区,14L:7D区ともに14L:10D区より有意に重くなった。
  • 飼料組成と出荷日齢が収益性に及ぼす影響
    中村 研, 徳満 茂, 徳永 紘英
    1988 年 25 巻 5 号 p. 319-329
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    育成時期の特性に対応した適切な飼料組成や出荷体系を確立するため,出荷週齢3水準(5, 7, 9週齢),CP 3水準(16, 19, 22%),ME 3水準(2900, 3100, 3300kcal/kg)を設定して,3.3m2当たり出荷重量を100kgとした初夏期(5~7月)と盛夏期(7~9月),130kgとした秋期(9~11月),冬期(12~2月),春期(3~5月)に2分割して検討し,次の結果を得た。
    環境調査ではアンモニアガス,炭酸ガス濃度ともに有害なレベルに到達しなかった。
    飼料組成ではCP含量を高くすることにより,増体量,飼料要求率および脂肪割合が改善されたが,粗収益は低下した。また,ME含量を高くすると,増体量,飼料要求率,粗収益および中抜き歩留りが改善されたが,肝臓重量割合は低下した。育成率や肝臓の色調には飼料組成との関係が認められなかった。
    3.3m2当たり粗収益を最大とする飼料組成は,1~9週齢においてCPで初夏期,盛夏期は17.3%,秋期,冬期,春期は16.0%,MEで全育成時期3300kcal/kg,出荷週齢は初夏期7.6週齢,盛夏期8.0週齢,その他の育成期8.1週齢が最適であった。
  • 近藤 康博, 谷口 吉弘, 迫江 康彦, 阿部 浅樹
    1988 年 25 巻 5 号 p. 330-336
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    24時間または48時間の絶食がヒナの免疫機能に及ぼす作用について液性•細胞性免疫機能の両面から追究した。24時間の絶食を施したヒナでは免疫後の抗体価は低値を示したのに対して48時間絶食ヒナでは免疫後6日目以降の抗体価は逆に高い値を示し,絶食はヒナの抗体産生能力を低下させると同時に,それが長期化すると血中の抗体の分解が遅れることが示唆された。脾臓中の抗体産生細胞数の割合には変化は認あられなかったが,個々の細胞による抗体産生量は減少した。このことが絶食によって起こる抗体価低下の一つの原因であると考えられる。PHAに対する末梢Tリンパ球の反応性はin vivoおよびin vitroの両方で低下した。従って,絶食は末梢のリンパ球数の減少と末梢Tリンパ球活性の低下によって細胞性免疫機能を低下させると考えられる。末梢血Tリンパ球の割合には変化は認められなかったことから,絶食は細胞性•液性の両免疫機能にほぼ同程度の影響を与えることが示唆される。従って,絶食の免疫系に対する作用は,Tリンパ球系の細胞に対してより強く作用するとされる副腎皮質ホルモンの血中レベルの上昇のみによっては説明されず,今後,絶食の免疫系への作用の特異性を求めるべきであると考えられる。
  • 大石 武士, 吉田 勝久, 森口 信一, 犬塚 澄雄
    1988 年 25 巻 5 号 p. 337-342
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    低セレン飼料を給与した場合に発生する産卵率の低下の要因を知るため,若雌鶏および産卵鶏に低セレン飼料を給与し,血漿中の黄体形成ホルモン,卵胞刺激ホルモンおよびエストラジオール濃度がいかなる影響を受けるかを検討した。
    白色レグホーン種の169日齢の若雌鶏13羽と530日齢の産卵鶏12羽を用い,飼料中のセレン濃度が0.06mg/kgの低セレン飼料と,低セレン飼料にDL-セレノメチオニンとしてのセレンを飼料中のセレン濃度が0.24mg/kgになるように添加した対照飼料を一定期間給与した。その間,血漿中の黄体形成ホルモン,卵胞刺激ホルモン,エストラジオール,セレン濃度,グルタチオンパーオキシダーゼ活性などを定期的に測定した。
    結果の概要は次のとおりであった。
    血漿中の黄体形成ホルモン濃度は若雌鶏で低セレン飼料給与によって有意に低下したが,産卵鶏では減少する傾向を示したに止まった。血漿中のエストラジオール濃度は若雌鶏においても産卵鶏においても減少したが,対照飼料を給与した場合の濃度との差は有意とはいえなかった。また,卵胞刺激ホルモン濃度はほとんど影響を受けなかった。低セレン飼料給与によって,若雌鶏,産卵鶏ともその血漿セレン濃度,血漿グルタチオンパーオキシダーゼ活性は減少し,それとともに産卵率も有意に低下した。
    これらの結果から,低セレン飼料の給与は若雌鶏,産卵鶏の血漿中のセレン濃度,血漿グルタチオンパーオキシダーゼ活性を低下させ,これが下垂体前葉での黄体形成ホルモンの放出を抑制するか,あるいは視床下部での性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌に作用することによって黄体形成ホルモンの放出を抑制する可能性が示唆される。このような黄体形成ホルモンの放出の抑制とエストラジオール濃度の低下が関連し,卵巣での排卵に影響を与え,それが産卵率の低下の要因の一つをなすものと推測された。
  • 朱 果, 王 莉莉, 尹 燕博, 古田 賢治
    1988 年 25 巻 5 号 p. 343-347
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    中華人民共和国では,農業現代化政策に沿った生産量の増加と経費の節約を目的として,約15年前から飼育羽数が10万羽ないし30万羽に達する大規模養鶏場が設立されてきた。しかし,適切な防疫対策が実施されていないため,疾病の発生がしばしばみられ大きな被害を受けている。血清検査のための抗原も市販されているが,検査を実施している養鶏場は少ない。血清検査の重要性について認識の乏しい技術者が多く,中国製の抗原の品質を信用していない担当者もいる。
    中日両国製の抗原を用いて,山東省の大規模養鶏場の鶏とSPF鶏の血清について検査を実施し,両国製の抗原の品質を比較したところ,両抗原による検査成績はよく一致し,中国製抗原は日本製抗原と同様な品質であった。
    次に,中国製抗原を用いて大規模養鶏場の鶏の血清検査を実施したところ,介卵感染の危険のある病原体を含めて,各種の病原体に対する抗体が検出され,中国の養鶏産業の現代化のためには艀卵場,養鶏場における適切な疾病予防対策の実施が急務であるとの示唆が得られた。
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