日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
27 巻, 6 号
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  • 都築 政起, 若杉 昇
    1990 年 27 巻 6 号 p. 393-397
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ニホンウズラの喉房(throat tuft, TT)形質は耳口異常および頭部骨格の異常を併発する。これらの異常はいずれも発生初期に生じたhyomandibular furrow (HF)領域の異常に起因し,この発生異常は常染色体性の単一劣性遺伝子hfdTtによって支配されていることが明らかにされた(TSUDZUKI and WAKASUGI, 1989)。しかし,TT系統と正常対照系統間の交配実験において,HF領域の異常出現頻度はF2世代で9%,戻し交配世代で15%であり,期待される異常の出現頻度よりもはるかに小さいものであった.その後,TT系統の孵卵15日胚における頭部骨格異常の出現頻度は88%とHF領域の異常頻度53%に比べ非常に高いことが判明した(TSUDZUKI and WAKASUGI, 1990)。従って,本研究では,孵卵15日胚における頭部骨格異常を指標として遺伝分析を行った。
    TT系統と正常対照系統との間で交配を行い,F1, F2,および戻し交配世代の孵卵15日胚の骨をアリザリンレッドSで染色した後,異常の出現頻度を調査した。これらの交配はすべて,以前にHF異常を指標として行った遺伝分析の際の交配と同じものである。下顎骨,舌骨装置,方形頬骨,基底傍蝶形骨,および側頭骨鱗部の5部位における骨異常のうち少なくとも1種類の異常を有する個体を異常と判断した。TT系統と正常対照系統とのF1世代において異常は発見されなかった。F2および戻し交配世代においてはそれぞれ23%および42%の頻度で異常が発見された。この結果は,骨格異常を指標とした場合,hfdTt遺伝子の浸透度は遺伝的背景に影響されることなく88%程度で一定であることを示している。
    以上の結果を総合すると,hfdTt遺伝子の浸透度は,骨格(中胚葉由来)異常においては88%と高く,遺伝的背景の影響を受けることが少なかったが,HF領域の異常(上皮の異常として観察される)においては30-55%と低く,遺伝的背景の影響を受けやすい事実から,発生初期において中胚葉由来の組織がhfdTt遺伝子の働きにより最初に障害を受け,この障害が上皮性組織に二次的に障害を誘発すると考えられる。
  • 大原 睦生, 小関 忠雄, 田村 千秋, 高橋 武, 草刈 直仁
    1990 年 27 巻 6 号 p. 398-402
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    Hiroshima希釈液を用いてペレット法で凍結保存した精液を実際の育種へ応用することを想定して2つの実験を行った。実験1として個体別に凍結保存した精液の受精率,並びに実験2として,同一雌鶏に毎週繰り返し人工授精を行った時の受精率について検討した。
    個体別に凍結し,融解した精液からグリセリンを除去した後,原精子濃度に再希釈し,その精液を用いて精液注入量0.05mlを1回人工授精した時,71.8%の受精率が得られた。
    0.05mlの凍結•融解精液を週1回,4週間人工授精した時の平均受精率は70.6%であり,人工授精を4回繰り返した4週目でも75.0%の受精率が得られた。
    これらの結果から,凍結精液による個体別の交配並びに1母鶏からの長期間連続した受精卵の生産が可能であることが示され,凍結精液を育種の分野で使用することが可能であると考えられた。
  • 大原 睦生, 小関 忠雄, 田村 千秋, 高橋 武, 草刈 直仁
    1990 年 27 巻 6 号 p. 403-408
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    Hiroshima希釈液(H-D)を用いた鶏凍結精液を効率的に利用するため,注入精液量の低減並びに融解し,遠心分離した後の希釈(再々希釈)倍率を上げることによる注入精子数の低減が受精率に及ぼす影響について検討した。
    1) 融解精液の精子濃度を原精液の濃度にし,注入量を0.025ml, 0.05ml, 0.1ml及び0.2mlとした時の1週目の受精率はそれぞれ60.9%, 90.4%, 96.9%及び94.6%であった。
    2) 再々希釈倍率を1倍,2倍,4倍及び8倍とし,注入量を0.2mlとした場合の,受精率(1週目)はそれぞれ94.6%, 80.0%, 82.7%及び39.7%であった。
    3) 再々希釈倍率1倍注入量0.025ml,再々希釈倍率2倍注入量0.05ml,再々希釈倍率4倍注入量0.1ml及び再々希釈倍率8倍注入量0.2mlとし,それぞれ注入精子数を1億/羽となるようにした場合の,1週目の受精率はそれぞれ60.9%, 67.1%, 31.3%及び39.7%であった。
    以上の結果を基に,凍結融解精液1mlで生産できる受精卵を推定し,最も効率的な利用方法を試算すると,90%以上の高い受精率を得たい時は採取時精子濃度で注入量を0.05ml以上とし,単位精液量当たりより多くの受精卵を確保したい時には再々希釈2倍として0.05ml注入する方法が適当であると考えられた。
  • 樋浦 善敬
    1990 年 27 巻 6 号 p. 409-418
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本実験は,鶏の卵胞成長に対する卵胞刺激ホルモンの係わりを検索するために,脂溶性色素を連日投与し,2つの実験を実施した。実験1は,産卵鶏に日量20,80または200IUの妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)を7日(200IUの場合は6日)間連続皮下注射し,産卵状態,放出卵の卵黄重量,黄色卵胞数,放出卵および卵胞卵の卵黄内色素輪の本数と形成状態などを調べた。実験2は,産卵鶏に日量200IUのPMSGを連続皮下注射して排卵が阻止した大型卵胞卵の卵黄内色素輪の形成状態と卵黄球の構造を無処理の産卵鶏の排卵卵および予想排卵前1, 3, 5時間の最大卵胞卵のものと比較した。
    放出卵の卵黄重量と卵黄内色素輪数にはPMSG投与の影響はみられず,また卵巣内の各卵胞卵の急速成長も排卵時の大きさに至るまでの過程には大きな変化が観察されなかった。PMSG投与量の増加に伴い黄色卵胞数が多くなり,卵巣重量が増加した。PMSGの投与で産卵が停止した鶏の卵巣内には正常排卵時(PMSG投与前)の卵よりも大きな卵胞が存在していたが,産卵持続鶏の卵巣にはそのような卵胞は観察されなかった。卵巣内に複数の大型卵胞が存在する場合には,それらの中で大きい方の卵胞に1~2日間の色素取り込みを欠く例が多く観察された。これらの卵胞は形態学的には卵胞卵の周辺に原始卵黄球の集塊が存在し,またほとんどの卵胞の卵胞膜に退行変性初期の組織像が観察された。これと類似の卵黄球は正常産卵鶏の排卵数時間前の最大卵胞卵にも観察された。
    以上の結果から,多量のPMSG投与によって,卵巣内の各卵胞卵の成長は排卵時まで正常な様相を呈するものの,排卵遅延(阻止)している大型卵胞では極めて緩慢となることが明らかとなった。またこれらの卵における原始卵黄球の集塊の出現はPMSGの直接的な影響でなく,卵自体の卵黄形成能の低下によるものと考えられた。
  • 土黒 定信, 安藤 幹男, 山崎 昌良
    1990 年 27 巻 6 号 p. 419-425
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ブロイラー雛の前期(0-3週齢)および後期(3-6週齢)の有効リジン要求量について検討した。前期においてはトウモロコシと大豆粕を主体とする低蛋白質•低リジンの基礎飼料,後期においてはトウモロコシ,大豆粕とコーングルテンミールを主体とする低リジンの基礎飼料を用い,これらの飼料に塩酸L-リジンを段階的に添加したものを,給与して成長試験を行った。雛は雄,雌別飼いとし,ケージにおいて飼育した。試験飼料のリジン有効率を雄成鶏を用いて測定し,添加リジンの有効率を算出した。
    その結果,1g増体に必要な有効リジン量はブロイラー前期14.85mg,ブロイラー後期17.04mgであると推定され,雄と雌の間に有意差は認められなかった。有効リジンの飼料中の要求量は前期(ME3.00kcal/g)0.95%,後期(ME3.10kcal/g)0.80%と推定された。
  • 小川 宣子, 田名部 尚子
    1990 年 27 巻 6 号 p. 426-430
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    産卵後4時間以内に採取した卵を直ちに殻付きのまま内部温度が85°Cに達するまで加熱した卵白ゲルの表面構造を走査電子顕微鏡で調べ,殻付きのまま25°Cで2日,3日,7日間貯蔵した卵のものと比較した。新鮮卵白の加熱ゲルは,長さが約1.5μm,幅0.5μmで先端が細くやや尖ったほぼ一定の形状で紡錘状の蛋白質の凝集単位からなっており,この凝集単位が細い先端部のみで6~10個結合した三次元の網目構造を形成していた。この結合体の先端部の結合状態が新鮮卵白ゲルでは脆く,弾力性があることを示していると思われる。一方,貯蔵2日目の卵の加熱卵白ゲルは,蛋白質の凝集単位の先端が新鮮卵に比べて丸く米粒状になっており,この凝集単位が新鮮卵に比べて大きかった。貯蔵がさらに進むにつれて凝集単位の結合体はくずれ,一定の形の結合体は表面だけに存在するようになった。又,内部温度が90°Cに達するまで加熱した場合の表面構造は,凝集単位の先端が四角になり,内部はうろこ状に見える結合体が相互に重層していた。
  • 1990 年 27 巻 6 号 p. 431-456
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
  • 1990 年 27 巻 6 号 p. 461-465
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
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