一般のブロイラー飼育場において,盛夏(8月)と晩秋(11月)に死亡した2週齢までのそれぞれ158羽,222羽のヒナについて,尿酸塩沈着症の発生状況を調査した。
1. 尿酸塩沈着症がみられたヒナは,いずれも5日齢以下で,晩秋には死亡ヒナの9%に当たる20羽もあったのに,盛夏にはわずか1.3%の2羽にすぎなかった。晩秋のヒナの日齢別発生率は,2日齢に28%,3日齢に20%,4日齢に18%,5日齢に15%と日齢がすすむにつれ低下した。
2. 尿酸塩沈着ヒナのすべての尿管に,重度の尿酸塩の沈着が認められ,尿管は充満した白色泥状の尿酸塩のため排泄不能の状態を呈していた。また,脚部の関節,趾蹠及び筋肉表面にも重度の尿酸塩の沈着がみられ,尿酸塩沈着ヒナの70%に当たる14羽の脚部に結節が認められ,結節付着部である関節,趾蹠は腫大していた。
3. 尿酸塩沈着ヒナのほとんどの肝臓,心嚢膜,腹膜,腸間膜には,尿酸塩が付着していたが,重度のものはあまり見られず,大部分は組織面に粉をまき散らしたような状態で組織に密着していた。
4. 腎臓は尿酸塩沈着ヒナすべてで腫大,褪色しており,組織はもろかったが,尿酸塩の沈着はあまり認められなかった。
5. 尿酸塩沈着ヒナの肝臓と腎臓の尿酸濃度は,他の死亡ヒナと比較して前者は7-18倍,後者は約2倍であったが(P<0.01),肝のキサンチン濃度は両ヒナの間に有意差が認められなかった。
6. 脚部の関節,趾蹠,筋肉表面の白色結晶は,Murexid反応陽性を示すことから,尿酸塩であることが確認された。
7. 尿酸塩沈着ヒナには,他の死亡ヒナと比べ著しい成長の遅滞がみられた。以上の結果から,晩秋期のブロイラーは2-5日齢に尿酸塩沈着症を高頻度で発症していることが明らかになった。
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