日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
29 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 山本 直幸, 富田 武
    1992 年 29 巻 4 号 p. 213-220
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,ニワトリにおいてガンマー線を照射したドナー系統の精子を用いて,レシピエント系統ヘドナー系統がもつ卵殻色遺伝子の導入を試みた。まず,ドナー系統であるロードアイランドレッド種Y8系(RIR-Y8)の精子にコバルト60を線源とするガンマー線770Gyを照射し,レシピエント系統のホワイトレグホーン種G系(WL-G)の雌に人工授精した。次いで24時間後,WL-Gの非照射正常精子を人工授精した。
    その結果,77羽のWL-G雌より合計956個の卵が得られ,その内の714個が孵化(孵化率75%,雄378羽,雌336羽)した。孵化した雛を遺伝子導入系第1世代(WL-r1)とした。産卵を開始したWL-r1雌312羽の内で12羽(3.8%)が着色卵を産卵した。WL-r1の産卵性能はWL-Gとの比較においても差はなかった。この第1世代以降は選択交配を行い次世代を作出した結果,着色卵を産卵した個体はWL-r2で8/297(2.7%),WL-r3で8/74(10.8%),WL-r4で19/62(30.6%)であった。卵殻色の測定には測色色差計を用い,L値(明るさ),a値(赤色),b値(黄色)の3成分を測定した。WL-r4における卵殻色の平均値は他の世代に比較して,より着色程度が高いものであった。WL-G系統においてはこれまで着色卵の産卵は確認されていなく,また,WL-r1ではホワイトレグホーン種とロードアイランドレッド種とのF1で見られるような羽毛形質は確認されなかった。これらのことから,WL-r系での卵殻色形質はRIR-Y8の照射精子由来である可能性を示唆するものであると考えられる。
    本研究で用いた遺伝導入技術は,目的とする遺伝子のみの導入が困難であるために,形質の発現をもとに選択交配をおこなっていく必要がある。しかしながら,ニワトリの高い繁殖性を利用することで,比較的短期間で特定の質的遺伝子の導入を目的とした育種改良が行える可能性を持つものである。今後,ドナー照射精子由来DNAの確認などが望まれる。
  • 堀河 博, 増村 忠宏, 平野 進, 渡辺 恵美子, 石橋 晃
    1992 年 29 巻 4 号 p. 221-227
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ジゼロシンとヒスタミンは胃酸分泌を促進する。もし,これらが適度に胃酸分泌を促進するならば,食餌カルシウムは溶解性が増加し,十二指腸や小腸上部において吸収が増加することにより,雛の大腿骨の石灰化が促進されることが推測される。この可能性を証明するため,3つの試験を行った。
    ビタミンD3の効果を少なくし,ジゼロシンに対して感受性の高い雛を用いる目的で,前もってビタミンD3欠乏の飼料で給与した雛を用いた。
    試験1ではジゼロシンの効果を確認するため雛にビタミンD3を50μg/kg含む飼料と含まない飼料にジゼロシンを2ppm添加し10日間飼育試験を行った。雛の大腿骨中カルシウムと灰分量はビタミンD3を含む飼料にジゼロシンを添加した場合のみ有意に増加した。
    試験2ではヒスタミン200ppmとジゼロシン2ppmの効果について比較を行った。雛はビタミンD3を含まない飼料を19日間給与し,その後7日間試験飼料を給与した。ジゼロシンを含む飼料を給与した場合,対照区と比べ大腿骨のカルシウム量は増加した。しかし,ヒスタミンを含む飼料ではこの効果は認められなかった。
    試験3ではヒスタミンに効果がないことを確認するため,雛にヒスタミン2000ppmを含む飼料を14日間給与した。雛の大腿骨中のカルシウムと灰分量は減少した。
    これらの試験より,ビタミンD3存在下でジゼロシンを給与すると,雛の大腿骨中のカルシウムと灰分量を有意に増加させるが,ヒスタミンにはこの効果がないことが明らかとなった。
  • 秋葉 征夫, 高橋 洋子, 高橋 和昭, 堀口 雅昭
    1992 年 29 巻 4 号 p. 228-233
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ブロイラーの肝臓脂肪蓄積に対するトリプトファン給与の影響について検討するために,ブロイラー雄ヒナを供試し,19日齢のヒナを2日間絶食の後3日間再給餌する試験と,10日齢のヒナに合成エストロジェン(Dienestrol diacetate)を飼料に0.1%混合して12日間給与する試験の2試験を行った。低トリプトファン飼料(0.12%)を基礎飼料として,L-トリプトファンを添加して飼料中トリプトファン含量を0.12%から0.48%に設定した飼料をそれぞれ給与した。絶食-再給餌試験において,L-トリプトファンを成長のための要求量(約0.24%)以上に添加する(0.48%)と肝臓重量は有意に減少し,肝臓脂肪含量は減少する傾向を示した。また,エストロジェン投与ヒナにおいても,0.48%トリプトファン飼料の肝臓重量と肝臓脂肪含量は0.24%トリプトファン飼料に比べて有意に低かった。一方,0.12%トリプトファン飼料の給与もエストロジェン投与ヒナの肝臓脂肪を低下させることが示された。以上の結果から,トリプトファンは,その要求量以上に添加してブロイラーに給与すると,実験的に増加させた肝臓脂肪蓄積を抑制することが示唆された。
  • ジョハリ セノ, 前田 芳實, 新小田 修一, 岡本 新, 橋口 勉
    1992 年 29 巻 4 号 p. 234-241
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は日本在来鶏の一種である薩摩鶏集団について,筋肉組織中のカルシウム依存性中性プロテアーゼ(CANP)活性値の遺伝的パラメータの推定を試みた。材料には14羽の雄と40羽の雌との交配から得られた110羽の雄鶏を用いた。カルシュウム依存性中性プロテアーゼ活性値の測定には,基質としてアルカリ変性させたカゼイン溶液を用いた。遺伝的パラメータは両親の分散•共分散成分より推定した。
    筋肉中のCANP活性値は父家系間で変異が見られ,父親分散成分から評価したCANP活性値の遺伝率はunit/g muscleで0.62±0.03,およびunit/mg extractable proteinで0.51±0.03と推定された。体重とCANP活性値との相関を見ると表型相関で-0.16~-0.17,また遺伝相関で-0.47~-0.70と評価された。これらの結果から,薩摩鶏集団には筋肉中のCANP活性値に遺伝変異が存在し,体重とは負の遺伝相関を示すことが判明した。
  • 神 勝紀, イバルドラーザ エルサイレハイ, 一色 泰
    1992 年 29 巻 4 号 p. 242-246
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    白色レグホーンの雄を用いて,飼料摂取量の0.1及び0.2%に相当する量の酢酸産生菌を1日2回に分けて飼料給与後に経口投与し,この菌が飼料の利用性に及ぼす影響を調査した。
    1. 飼料の消化率は菌を0.1%給与しても殆ど低下しなかったが,0.2%給与すると有機物と粗脂肪の消化率が有意に低下した。
    2. 飼料摂取量は菌の給与によって増加し,その程度は0.1%給与時の方が大きかった。一方,水分摂取量の増加は0.1%給与時においてだけ観察された。
    3. 窒素摂取量は飼料摂取量の変動に伴って並行的に推移した。しかしながら,窒素蓄積率は0.1%区では増加したが,0.2%区では対照区よりも低くなった。
    4. 飼料の消化管内通過時間は菌給与量の増加につれて短縮された。
    以上の結果から,酢酸産生菌を0.1%給与すると消化率は殆ど低下せず飼料摂取量と窒素蓄積率が増加することが明らかになった。
  • 堀 悦郎, 楠原 征治
    1992 年 29 巻 4 号 p. 247-253
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    成長期の雛にHEBPを投与し,脛骨近位端の軟X線学的および組織学的観察を行い,HEBPが骨端軟骨の石灰化に及ぼす影響を検討した。
    1日当たり20mg/kgのHEBPを10日間連続投与することによって,脛骨近位端は低石灰化像を示した。骨端軟骨成長板は厚く,とくに軟骨細胞肥大層が増加しており,石灰化領域は観察されなかった。一方,HEBP投与後の脛骨近位端を経時的に観察したところ,3日目から6日目にかけて石灰化像が広範に出現した。骨端軟骨成長板は薄く,軟骨細胞肥大層には石灰化領域が認められた。
    以上の事から,成長期の雛における骨端軟骨の石灰化はHEBP投与により抑制され,投与終了後はすみやかに石灰化することが示された。
  • 楠原 征治, 堀 悦郎, 渡部 英一, 斉藤 安弘
    1992 年 29 巻 4 号 p. 254-261
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    発育過程のブロイラーにカゼインホスホペプチド(Casein phosphopeptide: CPP)を添加した飼料を与え,CPPが脛骨近位端における骨端軟骨成長板の石灰化に及ぼす影響を検討した。CPP添加区においては,2週齢から骨端軟骨成長板の軟骨細胞肥大層の石灰化が顕著で,層の厚さは狭まっていた。一方,カゼイン添加物および対照区では,2週齢から軟骨細胞肥大層は石灰化の乱れが生じ,石灰化は不十分で層の厚さは拡大していた。これらのことから,成長期のブロイラーに対するCPPの給与は骨端軟骨の石灰化を促進し,骨の発育に有用であることが示唆された。
  • 星野 貞夫, 島田 和紀, 小林 泰男, 脇田 正彰
    1992 年 29 巻 4 号 p. 262-265
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    An anticoccidial ionophore, Salinomycin (SL) was blended with diets containing 16% or 19% crude protein (CP) and given to White Leghorn cockerels for 6 weeks from 2 days after hatching. At the recommended level (50 ppm), dietary SL had no depressing effect on body weight gains in cockerels receiving the diets with different CP content. However, a high dose of SL (100 ppm) depressed feed intakes and body weight gains in cockerels, irrespective of the diets supplied. Dietary SL tended to lower serum amino acid (AA) concentrations in cockerels fed the 19% CP diet, though this tendency was not evident with the 16% CP diet. The lowered serum AA levels seemed to be due to the decreased feed intake in SL fed cockerels.
  • 佐野 晶子, 木村 正雄, 祖父江 尚子
    1992 年 29 巻 4 号 p. 266-270
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    食用バトとドバトの蛋白質多型現象について比較した。14の酵素を支配する20座位について分析したが,いずれの座位においても新しい突然変異型の遺伝子は発見されなかった。調べた3集団における多型座位の割合(平均0.216)と平均ヘテロ接合体率(平均0.072)は集団間で殆ど変わらず,またこれまでにドバトについて報告されているそれら(木村ら,1985)とも大きな差は認められなかった。WRIGHT(1965)の近交係数(Fis)を計算したが,食用バトでは負の,またドバトでは正の値(平均約3%)が得られた。食用バトとドバトの間の分化の程度をROGERS(1972)の遺伝距離で求めたところ,0.1545の値が得られた。この値はウズラの場合(木村と藤井,1989)とほぼ同じで,ニワトリのそれ(岡田,1988)の約半分か1/3であった。
  • 1992 年 29 巻 4 号 p. 271-273
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
feedback
Top