日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
31 巻, 4 号
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  • 河南 保幸, 一口 毅, 前田 勝
    1994 年 31 巻 4 号 p. 247-253
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    17β-エストラジオールがニワトリ胚子の骨組織形成に及ぼす影響を究明するため,孵卵開始10日目より隔日に卵殻内の気室にホルモン投与を行い,20日目に採取した脛骨の骨幹中央部における組織変化について形態計測学的に検索した。その結果,骨組織の横断面積はホルモンの投与によって増加し,骨の太さの成長促進が認あられた。また骨質が骨組織に対して占める割合についての計測値は骨組織の横断面積の場合とほぼ同様の増加を示したが,そのような脛骨では,骨小柱の幅が拡大して骨質の充実が観察された。さらに骨膜の骨芽細胞の数と面積はホルモンの投与量とともに明らかに増加したが,特に細胞数において増加の割合が大きかった。しかし,破骨細胞の核数と面積についてみた場合,それらの計測値にはほとんど変化が認あられず,骨吸収に対するホルモン投与の影響はきわめて少ないことが察知された。これらの結果からみると,17β-エストラジオールはニワトリ胚子の骨組織に作用して,骨芽細胞を増数肥大させ,骨形成を促進するものと考えられる。
  • 近藤 康博, 岡 宏昭, 阿部 浅樹, 田辺 昭
    1994 年 31 巻 4 号 p. 254-261
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ニワトリ末梢血リンパ球と脾臓リンパ球の培養上清中のインターロイキン2 (IL2)活性を測定した。さらに,末梢血リンパ球培養上清における透析性のリンパ球括性化抑制因子の存在についても調べた。ニワトリのリンパ球培養上清中のIL2活性のピークはこれまでに研究されている哺乳動物に比べてかなり早い培養時間に観察された。この結果はニワトリのリンパ球は哺乳動物のリンパ球に比べてより速くIL2を産生,分泌すること,あるいはニワトリのIL2はより失活しやすいことを示唆している。フィトヘマグルチニンで刺激されたニワトリ末梢血リンパ球(PBL)培養上清を透析するとコンカナバリンA (ConA)前処理PBL (IL2レセプター陽性)の活性化が促進されること,および同上清の透析外液によって逆にConA前処理細胞の活性化が抑制されることからIL2の作用に関連する透析性(低分子量)の抑制因子の存在が証明された。従って,ニワトリのPBL培養上清にはT細胞活性化因子(IL2)と抑制因子が混在していると考えられる。培養上清中に放出される抑制因子は培養時間の経過に伴うIL2活性低下の一つの原因と考えられる。
  • 仁木 隆博, 信国 喜八郎
    1994 年 31 巻 4 号 p. 262-269
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本実験では,甲状腺ホルモン欠如による鶏の成長抑制の原因を明らかにするため,甲状腺ホルモンが筋肉,骨,内臓および脂肪の重量に及ぼす影響について検討した。
    白色レグホーン鶏雄雛(ハイセックス)を用い,実験区として偽手術区,T4投与区,甲状腺自家移植(自家移植)区および甲状腺除去(甲除)区を設定した。甲状腺は10~11日齢時に摘出し,直ちに胸部前端部皮下に自家移植した。甲状腺自家移植鶏は一部を除いて27~28日齢時に移植甲状腺を除去し,その半数に1日体重100gあたり1.0~1.5±gのL-サイロキシンを腹腔内に投与した。各区の雛について45日齢から70日齢まで飼料摂取量および体重を測定した。その後,71日齢から74日齢までにすべての鶏は放血屠殺して,鶏1羽あたりの筋肉,骨,内臓および脂肪の全重量を測定した。
    飼料摂取量,増体量について甲除区は他の3区に比べ著しく小さい値であった。また筋肉,骨および内臓の重量についてもこの区は他の区より明らかに小さかった。自家移植区に対する甲除区の筋肉および骨の重量減少率は,骨に比べ筋肉の方が2%程度大きな値を示したにすぎなかったが,実際の重量の減少は筋肉が約135gであったのに対し,骨は約36gと大きな差があった。一方,脂肪の重量は甲除区が他の3区より明らかに大きな値であり,重量増加率は,200%以上であったが,実際の重量は約39gの増加にすぎなかった。
    以上の結果から,甲状腺ホルモンが欠如すると,筋肉,骨および内臓の重量増加は抑制され,このことが成長の遅れをもたらすこと,中でも筋肉の重量増加の抑制が成長の遅れのもっとも大きな要因になることが示された。
  • 周 占祥, 一色 秦
    1994 年 31 巻 4 号 p. 270-275
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    アヒルに対する腸管各部位へのフィステルの装着法を考案した上に,回腸中央部,回腸遠位端および直腸遠位端にそれぞれフィステルを装着した北京アヒルを用い,配合飼料,トウモロコシ,裸麦,マイロおよび玄米の消化率と消化管内通過時間について測定した。
    粗蛋白質,粗脂肪および可溶無窒素物の消化率はいずれの飼料も腸管部位間に大差はみられず,直腸遠位端(100として)に対する消化率の比率は全飼料の平均として回腸中央部までに97%以上,回腸遠位端までに98%以上に達した。粗繊維の消化率は玄米以外の飼料で遠位側になるにしたがって明らかに増加し,全飼料の平均として直腸遠位端に対する消化率の比率は回腸中央部と回腸遠位端までにそれぞれ30%と82%になった。飼料の消化管内通過時間は玄米では著しく長かったが,他の飼料では差がなく,回腸中央部まで約2時間であり,回腸中央部から回腸遠位端まで,回腸遠位端から直腸遠位端まではそれぞれ約30分と20分かかった。
    以上の結果から,粗蛋白質,粗脂肪および可溶無窒素物の消化吸収は回腸中央部まででほとんど完了し,回腸以降の腸管は粗繊維の消化に主な役割を果たすことが示唆された。
  • 佐野 晶子, 後藤 直樹, 木村 正雄
    1994 年 31 巻 4 号 p. 276-286
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    コマーシャル•ウズラ集団間の遺伝的分化の程度の評価およびコマーシャルと研究用集団との間のそれらの比較のために,合計34座位により支配を受ける25の酵素と蛋白質を分析した。今回の調査は,日本のコマーシャル•ウズラ6集団とフランスのコマーシャル1集団を分析した。さらにこれまでに報告されているカナダのコマーシャル1集団と研究用4集団(木村ら,1990: CHENGら,1992),日本のコマーシャル1集団(木村ら,1990)そして野生ウズラ3集団(木村•藤井,1989)のデータも計算に含めた。
    多型座位の割合(Ppoly)および平均ヘテロ接合体率(H)について,コマーシャル•ウズラ9集団の平均値と標準偏差はそれぞれ0.302±0.055と0.101±0.010と評価された。これらの値は研究用ウズラ4集団のそれらの値よりも約1.25倍大きかった。
    遺伝的分化の程度(FST)は,コマーシャル集団間で0.055,研究用集団間で0.155と計算され,コマーシャル集団間にはほとんど分化を認めることはできなかった。
    遺伝距離と主成分分析の結果から,ウズラ16集団は次のような4つのクラスターに分類された。すなわち,(1)野生ウズラ3集団,(2)日本のコマーシャル7集団とカナダの研究用1集団,(3)カナダの研究用2集団そして(4)体重大選抜された3集団であった。
  • 三好 俊三, 光本 孝次
    1994 年 31 巻 4 号 p. 287-299
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    鶏卵を食品加工原材料あるいは食卵として考える場合,その目的に適した卵を多く生産する鶏種の造成が望まれる。一方,鶏卵構成に関する統計的推定値は過去,多く報告され,品種間はもとより系統および鶏種間にも差異が認められる。このことは用途に応じた構成の卵を生産する鶏種を選定することができることを示唆するものである。
    本研究では市販鶏種(以下,系種と略す)における卵質および卵構成の差異を検討した。また,過去の調査結果と比較し,系種としての特徴を推察した。
    北海道内で市販されている13系種について,孵化後7ヶ月以上の鶏より,ランダムに約50卵を生産者から直接購入した。24の卵形質の測定は,産卵後3日以内に行った。白色卵系種(8系種)と褐色卵系種(5系種)に分類し,平均卵重の大きい順に,WA~WHおよびBI~BM系種とした。
    測定および算出した卵形質の平均値間には,いずれも有意差(P<0.05)が認められた。平均卵重は白色卵系種で59.8gから65.6g,褐色卵系種で62.3gから70.2gが推定された。各系種の日齢は異なったが,系種間の卵重の差異に関連するものではなかった。
    平均卵白重および平均卵殻重は平均卵重と同様な順位にあったが,平均卵黄重は白色卵系種において,平均卵重の中位の系種が大きい平均値を示した。
    卵黄•卵重比は褐色卵系種で平均卵重の小さい系種が大きく,白色卵系種では平均卵重の中位の系種が大きい平均値を示した。WG系種は卵黄•卵重比が最も低く推定されたが,卵白•卵重比は卵重が小さいにもかかわらず,比較的高い比率を示した。
    卵白高およびハウユニットは,相対的に卵白量(卵白•卵重比)の高い系種が大きい平均値を示した。卵殻厚および卵殻強度には卵殻色のちがいによる明確な差異が認められなかった。
    系種内での卵形質間の単純相関係数には系種間による大きな相異が認められなかった。逐次バリマックス法によって,計算された合成変量に対し,分析に用いた変量が大別して5~6つの小グループに別れる構造を示した。卵形質間の関連性において,系種によって若干の相違が認められた。
    過去の調査結果と比較した場合,全般的に卵重および卵白重の増加が顕著であったが,WE系種では卵黄重が減少し,ハウユニットの著しい増加が認められた。また,WF系種における卵形係数の増加など,系種によって卵質あるいは卵構成に関する改良の方向が異なることが推察された。
  • ゴンザレス シルビアM.T., 川島 光夫, 上吉 道治, 桑山 岳人, 田中 克英, 一戸 健司
    1994 年 31 巻 4 号 p. 300-304
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    岐阜地鶏の抱卵鶏,産卵鶏及び雄鶏の下垂体前葉前部腺体並びに後部腺体の細胞膜画分について放射性ヨード標識ニワトリ血管作用性腸ペプチド(VIP)に対する特異的結合量を測定した結果,蛋白質1mg当たりの特異的結合量は抱卵鶏においては前部腺体の方が後部腺体よりも多かったが,産卵鶏や雄鶏では両腺体間に差異は認あられなかった。前部腺体における特異的結合量は抱卵鶏が最も多く,次いで産卵鶏であり,雄鶏は最少であった。抱卵鶏の前部腺体の特異的結合量が産卵鶏や雄鶏よりも多いことは,下垂体前葉におけるVIPのレセプターを介するプロラクチン分泌促進作用にもとずく抱卵行動と関係しているものであろう。
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