前回の報告(三好•光本,1994)において市販採卵用鶏種(以下,系種と略す)の卵質および卵構成の差異を明らかにした。本報では卵黄の脂質,特に,コレステロール含量と脂肪酸組成における差異を調査した。前報で調査した白色卵8系種(WA~WH)および褐色卵5系種(BI~BM)それぞれよりランダムに10卵の卵黄を用いた。卵黄の全脂質の抽出および脂肪酸とコレステロールの分析はNAKANOとFISCHER(1977)の方法に従い,ガスクロマトグラフィーで分析した。
その結果を要約すれば次の通りである。
卵黄の全脂質含有率と量およびコレステロール含有率には卵殻色の違いにより有意差が認められた。各系種の卵黄全脂質含有率および量,コレステロール含有率および量,さらに構成脂肪酸含有率の平均値には有意差が認められた。脂質含有率は28.5~35.4%(湿重量当たり)であったが,卵黄の総脂質量は卵黄の大きさに依存する傾向にあった。
卵黄のコレステロール含有率は13.0~16.8mg/gと推定されたが,卵黄中の総コレステロール含量は卵黄の大きさに依存せず,212~318mgと推定された。特に,相対的に卵黄の大きいWB系種が低い含有量を示し,中位の卵黄重であったWF系種で高い含有量が推定された。
卵黄脂質の脂肪酸組成は各系種で類似し,C18:1が約44%, C16:0が約25%, C18:2が約13%,ついで,C16:1とC18:0がそれぞれ5~7%を占める構成であった。系種間に認められた各脂肪酸の含有率の有意差は2~3系種での異なる推定値によるものであった。飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の比は1.8~2.4であったが,主にC16:0とC18:1の含有率に左右されるものであった。
抄録全体を表示