日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
34 巻, 4 号
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  • 河邊 弘太郎, 前田 芳實, 岡本 新, 橋口 勉
    1997 年 34 巻 4 号 p. 231-239
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,タンパク質分解酵素の一種であるcalpain(カルシウム依存性中性プロテアーゼ)が筋肉タンパク質代謝回転速度にどのような影響をおよぼしているかを明らかにすることを目的として,筋肉タンパク質代謝回転速度の測定をMaeda et al.(1990)の方法に従ってNτ-Methylhistidine法により行うとともに,calpainおよびcalpastatin活性値の測定をInomata et al.(1983)の方法により無作為交配集団の日本ウズラを用いて行った。
    その結果,3週齢時のそれぞれの相関係数は,筋肉タンパク質分解速度(Kd)とcalpain活性値では0.728,分解速度とcalpastatin活性値では-0.453であった。Kd(Y)に対するcalpain活性値(X1)およびcalpastatin活性値(X2)の重回帰式を作成したところY=5.892+14.033X1-88.128X2という結果が得られた。また,重回帰分析をおこなった結果より得られた偏回帰係数から,calpainおよびcalpastatin活性値が筋肉タンパク質分解速度に寄与する割合では,それぞれ0.605および0.453と評価され,またその決定係数は70.63%を示した。
    以上の結果からcalpain活性と筋肉タンパク質代謝回転速度の間には密接な関係が存在しており,またcalpastatin活性も筋肉タンパク質代謝回転速度にある程度の影響をおよぼしていることが推察された。
  • 中前 均, 岸 茂行, 藤崎 幸蔵, 大城 政一, 古田 賢治
    1997 年 34 巻 4 号 p. 240-247
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    養鶏場において常在寄生ワクモの寄生発生を観察した.次に常在寄生ワクモの卵を孵化して得た第一若ダニを鶏に人工的に接種し,寄生の発生について観察した.さらに,常在寄生ワクモの生活環を調べた.
    トリサシダニとワクモが寄生している鶏が飼育されている養鶏場のヶージ鶏舎に,寄生を受けていない鶏を収容すると,最初にトリサシダニの寄生がみられ,次にトリサシダニとワクモの共寄生状態となった.やがてトリサシダニの寄生はなくなり,ワクモの単独寄生の状態となった.これらのワクモは夜明けに鶏体から離脱することなく,昼夜を通じて鶏に寄生していた.
    既にトリサシダニが寄生している鶏に常在寄生性のワクモの第一若ダニを接種すると常在寄生が成立したが,ワクモの寄生がない鶏に接種しても同様に寄生が成立した.トリサシダニが寄生している鶏にワクモが寄生すると,1羽当たりの寄生ダニ数は1,000-10,000の範囲にあったが,トリサシダニの寄生がない鶏では100以下であった.鶏1羽に寄生するワクモ数が少ないため,常在寄生性ワクモの存在が見落とされていたと考えられる.
    常在寄生性ワクモの生活環は夜間に鶏から吸血し夜明けに鶏体から離脱する既知のワクモの生活環と同じであった.
  • 古瀬 充宏, Remedios T. MABAYO, 喜多 一美, 奥村 純市
    1997 年 34 巻 4 号 p. 248-254
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    中鎖脂肪は家禽飼料の有用な油脂源になることを我々はこれまでに示してきた。しかしながら中鎖脂肪を作製する費用は高価であり,その結果中鎖脂肪を実用的に使用することは困難であった。我々は半精製状態の中鎖脂肪(ヘルシップ)を得た。これの脂肪酸組成は,5%カプロン酸,50%カプリル酸,30%カプリン酸および15%ラウリン酸であり,2.5%のモノグリセリド,25%のジグリセリド,72%のトリグリセリドおよび0.05%のグリセリンで構成されている。ヒナの脂肪ならびにエネルギーの蓄積に対する効果を以下の2つの油脂源と比較した。トウモロコシ油は長鎖脂肪として,ココナードMT(85%カプリル酸,15%カプリン酸からなる100%トリグリセリド)を純粋な中鎖脂肪として用いた。増体重と飼料摂取量は長鎖脂肪に比してヘルシップとココナードMTで減少したが,ヘルシップとココナードMTの間に差は認められなかった。飼料の代謝エネルギー価はどの油脂源を用いてもほぼ同様であった。体脂肪ならびにエネルギーの蓄積は,長鎖脂肪に比して両中鎖脂肪で減少した。
    以上の結果より,ヘルシップはココナードMT同様にニワトリの有用な油脂源になることが示唆された。
  • 福間 義教, 石橋 晃
    1997 年 34 巻 4 号 p. 255-262
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    飼料の粗蛋白質(CP)レベルおよび再給餌方法の違いが強制換羽(強換)後の産卵成績および卵質に与える影響を66週齢の白レグ系産卵鶏1,060羽を用いて,60羽は強換せず対照区として調べた。
    強換は点灯管理と絶食で実施し,絶食は体重が30%減少するまで継続した。その後は250羽ずつの4区にわけ,ME 2.57kcal/g-CP 14.3%とME 2.85kcal/g-CP17.3%の飼料を自由摂取または7日間の制限給餌後自由摂取とした。換羽後飼料は産卵率が5%に達するまで給与し,その後はME 2.85 kcal/g-CP 17.3%の成鶏用飼料を給与した。
    累積斃死率は,再給餌を飽食させた方が少なかった。卵重は高蛋白質飼料を再給餌した方が重い傾向にあった。しかし,再給餌飼料や給餌方法の違いは,産卵率,日卵量,摂取量,卵質には影響を与えなかった。卵質は絶食開始後約12週間目に改善率が最大となり,その後漸減した。強換をしない区と比較すると,卵殻強度,ハウ•ユニット,卵殻厚および比重はそれぞれ最大で1.23kg/cm2, 10.7, 0.038mm, 0.006優れていた。
    以上の結果から換羽後飼料のCPは14.3%以下で.再給与は飽食の方が良いことが示唆された。
  • 初期世代における遺伝子構成
    前田 芳實, Francis MINVIELLE, 岡本 新
    1997 年 34 巻 4 号 p. 263-272
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,INRA(フランス国立農業研究所)で実施された日本ウズラの産卵能力に対する選抜実験において,蛋白質多型の変化を明らかにするために,初期世代の遺伝子構成を明らかにし,系統およびライン間の遺伝的類似性,INRA集団と日本の集団との関連性について検討を行った。変異の量(Ppoly値)はJouy系統で0.500-0.600およびTours系統で0.700と計算された。平均ヘテロ接合体率(H)はJouy系統で0.182-0.193およびTours系統で0.220-0.232を示した。系統間の遺伝的分化指数(GST)は0.019を示し,INRAにおける6ラインの分化の程度は小さいことが伺われた。Unweighted pair group methodによるデンドログラムでは2つのクラスターを形成し,1つのグループはライン1,ライン3およびラインCより構成され,他のグループはライン2,ライン4およびラインDより構成されていた。9遺伝子座の遺伝子頻度を用いて,INRA集団と日本の集団との遺伝的関連性を明らかにした。遺伝的距離はINRA集団内で0.001-0.009,日本集団内で0.029-0.089およびINRA集団と日本集団間では,0.081-0.184と評価された。12集団のうちフランスの6集団と日本の6集団はそれぞれ別のクラスターを構成した。また,12集団におけるGSTは0.191を示し,日本集団とフランス集団間では系統分化が進行していることが示唆された。
  • 三好 俊三, 井上 慶一, ルック キイウミン, 口田 圭吾, 光本 孝次
    1997 年 34 巻 4 号 p. 273-281
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    卵黄•卵白比に対して高低2方向への選抜によって造成された高低2系統の鶏群(高系統40羽,低系統39羽)を用い,クラッチ内での卵構成および卵殻質の変動を検討した。約270日齢において5:30から18:30まで30分毎に放卵時刻を90日間調査した。採卵は1羽より3つのクラッチを目標として毎日行った。放卵時刻からクラッチポジションの明確な卵の測定値のみを用い,クラッチの長さにより4グループに分けて分析した。
    放卵間隔の遅れ(LAG)はクラッチの最終卵で最も大きく,放卵間隔には系統間に差異が認められなかった。卵重のクラッチポジションの進行に伴う推移はクラッチの第1卵が有意に重く,徐々に減少する傾向を示した。低系統での減少が大きく(約3~4g),第1卵の約6%に相当した。高系統では約4%に当たる1.5~2.0gの減少であった。卵黄重はクラッチの第2卵が重く,その後減少したが,その減少量は両系統で近似し,1.0~1.5g程度であった。卵白重はクラッチの第3卵および第4卵まで顕著な減少を示し,その後,その減少は停滞する傾向にあった。卵白量の多い低系統での減少が大きく推定された。濃厚卵白重がクラッチポジションの進行に伴い減少傾向にあったのに対し,水様性卵白重はクラッチの後半に位置する卵で若干増加する傾向にあった。卵殻重,卵殻厚および卵殻強度は,クラッチの最終卵において顕著な増加を示した。
  • 太田 能之, 石橋 晃
    1997 年 34 巻 4 号 p. 282-291
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ブロイラーにおいて排泄タウリン量およびタウリン排泄量:含硫アミノ酸(SAA)摂取量比(TS比)を栄養状態の指標とするため,飼料中含硫アミノ酸水準,体重および飼料摂取量のタウリン排泄量に及ぼす影響を,8日齢のヒナを用いて調べた。
    試験1においてはヒナを単飼ケージにおいて3日間市販飼料を与え,SAA水準0.52,0.82もしくは1.12%飼料に切替えて6日間飼育したとき,タウリン排泄量はSAA不足および至適区では0.5μmol/日で一定であったが,SAA過剰区では飼料切替後2.8μmol/日に増加した。
    SAA水準0.81%飼料から1.12%飼料に切替後,タウリン排泄量は2日間低く,飼料摂取量の増加に伴い増加し始あ,その後も継続して増加したが,T/S比は2日目まで低く,3日目まで急激に増加し,その後一定となった。
    SAA過剰飼料を日齢が同じで体重が異なるヒナに自由摂取させたところ,体重が最も低い区でタウリン排泄量が他の区の1.4倍に増加する傾向が見られたが,有意ではなかった。飼料摂取量を自由摂取の2/3に制限したときは,タウリン排泄量は影響を受けなかったが,T/S比は増加した。
    飼料摂取量を自由摂取の1/3に制限したときは,増体量が減少し,T/S比は40倍に増加した。
    T/S比は飼料中SAAが不足および至適な区では一定であったが,過剰区では飼料中SAA水準を切り替えて3日目には増加し,10日間以上継続したことから,T/S比は至適な飼料中SAA水準およびSAA摂取量の有効な指標となる可能性が示された。
  • 崔 洋豪, 大野 菜奈子, D. Michael DENBOW, 奥村 純市, 古瀬 充宏
    1997 年 34 巻 4 号 p. 292-298
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素合成酵素の阻害により抑制される飼料摂取量が飼料アルギニン含量により影響を受けるかどうかを調べるために,1週齢のヒナに飼料アルギニン水準が,欠乏,弱欠乏,標準ならびに過剰の4飼料を3日間与えた。その後,一酸化窒素合成酵素の阻害剤であるNG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩(L-NAME)を腹腔投与し,同飼料を与えた。どの飼料においても2時間の飼料摂取量はL-NAMEにより減少したが,L-NAMEの相対的な効果は飼料アルギニン含量の低下に伴い増加した。
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