本実験では,外科的に甲状腺を除去した雄鶏(白色レグホーン系コマーシャル:ハイセックス)を用いて,前肢,体幹および後肢の3部位における主な個々の筋肉の重量に及ぼす甲状腺ホルモンの影響について検討した。実験区として偽手術,T
4投与(甲状腺除去後,レサイロキシン投与),甲状腺自家移植(自家移植)および甲状腺除去(甲除)の4区を設定した。甲状腺は10~11日齢時に摘出し,直ちに前胸部皮下に自家移植した。移植甲状腺は一部の鶏を除いて27~28日齢時に除去した。除去した鶏の半数には毎日1回正常分泌率相当量(1.0~1.5μg/100g bwt)のL-T
4を腹腔内に投与した。各区の鶏は71日齢から74日齢までの間に放血屠殺し,前肢部,体幹部および後肢部の筋肉ならびに各部位の主な個々の筋肉17種の重量を測定した。
前肢部,体幹部および後肢部の筋肉の実重量は偽手術区,T
4投与区および自家移植の間で差はなかったが,甲除区はこれら3区よりも著しく小さかった。各部位の主な個々の筋肉の実重量についても甲除区が他の3区より明らかに小さな値を示した。一方,個々の筋肉の相対重量(当該部位の筋肉100gに対する割合)については,前肢部における深胸筋,後肢部における大腿四頭筋以外は実験区間で差は認められなかった。これに対して,これら2種の筋肉では甲除区は他の3区に対し著しく小さな相対重量を示した。また,自家移植区に対する甲除区の筋肉重量の減少率においても,深胸筋および大腿四頭筋は他の個々の筋肉より大きな減少率を示した。
以上の結果から,鶏において甲状腺ホルモンが欠如すると個々の筋肉の重量の増加は著しく抑制され,このことが各部位の筋肉重量の増加抑制をもたらすことおよび個々の筋肉の中では深胸筋と大腿四頭筋が他の筋肉よりさらに強い欠如の影響を受けることが明らかとなった。
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