日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
35 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 張 一国, 内藤 充, 桑名 貴, 水谷 誠, 櫻井 通陽
    1998 年 35 巻 6 号 p. 321-328
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    液体窒素中で保存されたニワトリの始原生殖細胞(PGC)を別のニワトリ胚に移植することによって,凍結保存されたPGC由来の産子が得られることがすでに報告されている。本研究においては,日本ウズラのPGCの凍結保存について検討した。はじめに,ウズラ胚血液から採取したPGCを液体窒素中に1から2週間保存した結果,融解後のPGCの生存率は平均で85%と高かった。ついで,野生型およびF1(AMRP×SBPN)ウズラの5日胚生殖巣原基からPGCを採取し,最長で5ヶ月間液体窒素保存した。融解後,これらのPGCを,それぞれ,F1(AMRP×SBPN)および野生型のウズラ胚に移植した。PGCを移植されたウズラ12羽をF1(AMRP×SBPN)ウズラと交配した結果,そのうちの2羽から,移植されたPGC由来の産子が得られた。これらのウズラにおける,移植されたPGC由来の産子の割合は2.4%,および,2.5%であった。以上の結果は液体窒素中で保存された生殖巣由来PGCが正常な配偶子に分化する能力を保持していたことを示すものであり,ウズラの遺伝資源がPGCの凍結保存によって保存できることを示すものである。
  • 今井 清, 園田 豊, 甲斐 藏
    1998 年 35 巻 6 号 p. 329-336
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本実験はニワトリ卵巣における小卵胞の急速成長相への転移と卵胞ステロイド,特にエストロジェンとの関係を検討するため,ステロイド産生阻害剤であるAminoglutethimide (AG)を産卵鶏に投与し,卵胞転移の様相と血中エストラヂオール(E2)濃度の推移を調べた。産卵鶏は全て,連産内卵(Cs)の放卵が9:00-10:30(明開始6:00)に行われた日に実験に用いた。体重kg当たり100mgのAGを放卵後2時間(実験1)または予想放卵前2時間(実験2)に投与した。その後の卵胞転移の有無とその時間を判定するために放卵後4, 8および12時間にSudan-redとSudan-blackを交互にニワトリに静注し,放卵後14時間で供試した。また,両実験群ともに,AGまたはvehicle投与時ならびに放卵後4, 8, 12および14時間の血漿E2濃度をEIA法により測定した。
    Cs放卵後2時間にAGまたはvehicleを投与したニワトリ(実験1)では,放卵後14時間の判定時でvehicle投与群の80%に卵胞転移が起こっていたのに対し,AG投与群の卵胞転移率は50%に減少した。AG投与後2時間で投与鶏の血中E2濃度は急激に低下したが,卵胞転移が阻害されたニワトリのE2濃度は放卵後14時間まで低値を持続し,一方転移が起こったものでは投与後6-10時間(放卵後8-12時間)にある程度の回復がみられ,放卵後12時間で両者のE2量に有意差が認められた。放卵前2時間にAGまたはvehicleを投与した場合(実験2),卵胞転移率は両群ともに83%を示し,AGによる卵胞転移の阻害は全く認められなかった。
    実験1と2の結果は,高頻度で卵胞転移が行われる直前の時間から転移時間にかけての期間にAGによるE2の産生阻害が発現すると卵胞転移が阻止される場合を生じ,一方AGによる効果がより早期に発現した場合には転移が阻害されないことを示している。本実験において得られた結果は,卵胞ステロイド,特にE2がニワトリ卵巣における小卵胞の急速成長相への転移に重要な役割を担っていることを示すものである。
  • Nitish SARKER, 西堀 正英, 山本 義雄
    1998 年 35 巻 6 号 p. 337-345
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    2組のBコンジェニック系統を用いて,NIP-BSAおよびBrucella abortus (BA)に対する液性免疫反応を調べた。本実験に用いたBコンジェニック系統には,CB系統(B12B12)および移植片対宿主反応能で高方向に選抜したHA系統(B11B11)を遺伝的バックグランドとして用いた。両系統を交配してF1世代を作出し,このF1世代にCB系統あるいはHA系統を9世代にわたり戻し交雑したCBH系統(B11B12)およびHCB系統(B11B12)を作出した。14週齢時に,NIP-BSAおよびBrucella abortus抗原を等量に混ぜ合わせ,この1mlを各系統40羽(雄:20羽,雌:20羽)に静脈接種した。一次および二次免疫の各々7および14日目に採血を行った。NIP-BSAに対する全抗体価は,CB系統が一次免疫7日目,二次免疫7日目および14日目において,他の3系統よりも有意に高い値となった。また抗BAに対する全抗体価も,CB系統が一次免疫7日目の3系統に比べて有意に高く,二次免疫14日目のHAおよびHCB系統よりも有意に高かった。BAに対するメルカプトエタノール抵抗性抗体価は,CB系統が一次免疫14日目のHAおよびHCB系統より有意に高く,さらに二次免疫の抗体価においても,14日目のHA系統を除いて,有意に高かった。ウシ血清アルブミン(BSA)に対する全抗体価は,HA系統において,他の3系統の一次および二次免疫7日目およびCBH系統における一次および二次免疫14日目の値よりも有意に高かった。一次および二次免疫7日および14日目のNIPに対する全抗体価および二次免疫14日後のBSAに対する全抗体価には,同じ遺伝子型(B11B12)を持つCBHとHCB系統との間で有意な差が認められた。本実験の結果から,ニワトリではMHC遺伝子と同時にMHC以外の遺伝子が,免疫応答の調節に大きな役割を担っていることが示唆された。
  • 家田 照子, 齋藤 昇, 島田 清司
    1998 年 35 巻 6 号 p. 346-355
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究はビタミンD依存性カルシウム結合蛋白質(CaBP-D28K)mRNAとビタミンDレセプター(VDR) mRNAの遺伝子発現に性ステロイドホルモンが与える影響を検討した。ステロイド合成阻害剤であるAminoglutethimide (AGT)を排卵後5時間の産卵鶏に投与することによって内因性のステロイド合成を阻害し,4時間後にCaBP-D28KとVDRのmRNAレベルをノーザンハイブリダイゼーション法で測定した。その結果,2種類のCaBP-D28KmRNA(2.0, 2.8kb)と1種類のVDRmRNA (2.6kb)が検出された。AGT投与によって4時間後に小腸と卵殻腺のCaBP-D28KmRNA, VDRmRNAレベルが有意に減少した。しかし,プロジェステロン(P4),安息香酸エストラジオール(EB)をAGTと同時に投与しても,卵殻腺のCaBP-D28KmRNA, VDRmRNAレベルを回復させることができなかった。小腸でも卵殻腺と同様,P4, EBによってCaBP-D28KmRNA, VDRmRNAレベルを回復させることができなかった。血漿カルシウム濃度はAGT投与によって,わずかに減少したが,有意な減少ではなかった。また,卵殻相対重量も,AGT投与によって,コントロールに比べ有意に減少したが,AGTとP4及びEB投与によって回復することはなかった。産卵鶏の卵殻形成時において,ステロイドインヒビターであるAGTを産卵鶏に投与することでCaBP-D28KとVDRのmRNAレベル及び,卵殻相対重量が有意に減少したことから,小腸及び卵殻腺におけるCaBP-D28K, VDR遺伝子発現及び卵殻腺カルシウム流動に性ステロイドホルモンが関係していると考えられた。しかし,P4もしくはEB単独では,CaBP-D28KとVDRの遺伝子発現に直接影響を与えるものではないと考えられた。
  • 木野 勝敏, 野田 賢治, 宮川 博充, 大塚 勝正, 小野 珠乙, 餅井 真, 江口 吾朗, 阿形 清和
    1998 年 35 巻 6 号 p. 356-366
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    鶏においてマイクロインジェクション法による遺伝子組み換えの効率を推定するため,受精卵の胚盤細胞質内に注入した遺伝子の発現やサザン法による染色体への導入様式を解析した。注入されたDNAは,早い時期に核内に移行し,mRNAへと転写されるが,染色体へ組み込まれることなく急速に消失することが認められた。注入3日後の胚では,38%の胚で注入したDNAの発現が観察され,また7日後の胚でも,PCR法により35%の胚で注入したDNAが検出されたが,その組み換え率はいずれも低いものであった。鶏の細胞で殆ど発現しないDNAを注入し,DNAの発現による影響を除いたところ,7日後の胚の生存率は27%から44%に改善されたが,サザン法により染色体あたり0.1コピー以上注入したDNAが検出された個体は,76個体中1個体のみであった(1.3%, 1/76)。またそのコピー数は染色体あたり0.2コピー程度で,この検出されたDNAが全て染色体に組み込まれたものだとしても,その組み込みは1細胞期ではなく数回の細胞分裂後に生じたと推察された。また1細胞期で染色体に組み込まれたと思われる個体は得られなかった。このことから,今回用いた鶏受精卵細胞質へのDNAの注入法は,そのDNAの一過的発現を見る上では有効であるが,遺伝子組み換え個体を作出する頻度は高くないと推測された。
  • 尾野 喜孝, 後藤 貴文, 那須 亮, 岩元 久雄, 高山 耕二, 中西 良孝, 萬田 正治
    1998 年 35 巻 6 号 p. 367-375
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    合鴨水田農法に適した家鴨類の選定のための基礎研究の一環として,国内種,IR種および中国種の胸筋と外側腸脛骨筋の発達と筋線維の特性について放飼区と舎飼区との間および品種間での比較検討を行った.放飼区は,4aの水田に,田植え1週間後に12日齢の雛を雌雄3羽ずつ72日間放飼した後,63日間配合飼料で舎飼いした.舎飼区は,面積1.9aの建物内で,それぞれの品種の雌雄3羽ずつを配合飼料で飼育した.屠殺は21週齢時に行った.得られた結果を以下に示す.
    1.体重および胸筋と外側腸脛骨筋重量は,いずれの品種も放飼区と舎飼区の間では差がなかったが,品種差を示し,体重は中国種で最も大きく,IR種がこれに続き,国内種が最小であった.胸筋の発達は国内種で最も優れ,外側腸脛骨筋はIR種で優れていた.
    2.胸筋と外側腸脛骨筋を構成する筋線維はすべて速筋線維であるII型に分類され,それらはさらに酸化的酵素活性の高いII A型と低いII B型に細分された.胸筋は約70%のII A型と30%のII B型で構成され,外側腸脛骨筋は約40%のII A型と60%のII B型で構成されていた.中国種の舎飼区は放飼区に比較し,外側腸脛骨筋の各型筋線維の構成割合において,II A型で多く,II B型で少なかった.品種間で比較した場合,胸筋では国内種でII A型が多く,II B型が少なかった.一方,外側腸脛骨筋ではIR種でII A型が多く,II B型が少なかった.
    3.筋線維直径は両筋肉ともII B型でII A型より大きかった.品種間では,胸筋のII B型が国内種とIR種で大きく,外側腸脛骨筋ではII A型およびII B型ともIR種と中国種で大きかった.
    4.これらの結果から,家鴨類にとって放飼と舎飼いの飼養形態の違いによる筋肉発達への影響は小さいことが示唆されるとともに,国内種は飛翔能力に,IR種は陸上での走歩行に,また中国種は産肉性ですぐれる特徴のあることが推察された.
  • 古瀬 充宏, 豊後 貴嗣, 下條 雅敬, 増田 泰久, 斎藤 昇, 長谷川 信, 菅原 邦生
    1998 年 35 巻 6 号 p. 376-380
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,哺乳類のグルカゴン様ペプチドー1(GLP-1)受容体の特異的阻害剤であるエキセンディン(9-39)が艀化直後のヒナの摂食量を変化させるかどうかを明らかにするために行った。側脳室に投与した0.5, 1および2μgのエキセンディン(9-39)は対照の生理的食塩水に比べて摂食量に影響を及ぼさなかった。ニワトリのGLP-1受容体の阻害剤として働くには,エキセンディン(9-39)のアミノ酸配列の修飾が必要と結論づけられた。
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