ニワトリ消化管内における床皮と卵白の消化の様相を知る手がかりを得るため,これらの可溶化と低分子化の過程を
in vitroで比較検討した。
実験1は卵白あるいは床皮を塩酸水溶液に懸濁して30分後に,(1)ペプシン(pep)を添加して12時間,(2) pep添加4時間後トリプシン(tryp)を添加し12時間,(3) pep添加4時間後trypを添加し,4時間後α-キモトリプシン(chyt)を添加して12時間,あるいは(4) pep添加4時間後にtryp, chyt,ニワトリ小腸液(intes)を順次4時間間隔で添加し6時間反応させた。
床皮はpep添加4時間で低分子化を伴わない可溶化が顕著に進み,tryp添加によって4時間後に分子量189-23,000の成分の増加を伴う低分子化とともに89%まで可溶化した。その後,低分子化はchyt添加4時間ではあまり進まなかったがintes添加6時間でさらに進んだ。一方,塩酸水溶液ですでに84%が可溶化した卵白の低分子化は,pep添加4時間で床皮同様進まなかったが,その後のtryp添加4時間では分子量189以下の成分の増加が進み,それに続くchytあるいはintes反応によってはあまり変化しなかった。ペプチド平均鎖長は(4)のchyt添加4時間後まで床皮が卵白より大きい値で推移したがintes添加6時間後は両タンパク質とも3.0になった。
実験2は卵白あるいは床皮を塩酸水溶液に懸濁30分後pepを添加し,その後パンクレアチン,intesを順次1時間間隔で添加し1時間反応させた。可溶化と低分子化は実験1とほぼ同様の結果が得られた。ただしペプチド平均鎖長はどの酵素反応後も卵白の方が床皮より大きい値であった。
本研究の結果は,ニワトリヒナの消化管における卵白と床皮のタンパク質の可溶化と低分子化の様相が異なっていることを示唆した。
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