日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
37 巻, 6 号
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  • 吉村 幸則, 田村 嘉子, 錦織 美智子, 岡本 敏一
    2000 年 37 巻 6 号 p. 323-333
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    成長期のニホンウズラによる内分泌かく乱化学物質の摂取が繁殖機能に及ぼす影響を検討した。この実験ではジェチルスチルベステロール(DES)をモデル化学物質として用い,これを0mg/l(対照区),0.01mg/l (L区)およびlmg/l (H区)の濃度で飲水中に添加して初生時から53日齢まで自由飲水させた。これらのウズラにおいて,生殖腺の発達と組織像ならびに受精能力について検討した。性成熟日齢はオスにおいてDES投与区で対照区より遅れたが,メスにおいては処理による有意な影響は認められなかった。28日齢の精巣と卵巣重量はDES処理区で対照区より有意に小さかった。この時期の精巣は,組織構造と増殖細胞核抗原(PCNA)陽性細胞の分布の解析からも,DES処理区で対照区より発達が遅れていることが示された。さらに,卵巣では対照区やH区より,L区で間質細胞の分布が発達していることが認められた。一方,性成熟後の精巣と卵巣の組織像には,DES処理による影響は認められなかった。さらに,受精能力を検討した結果,雌雄ともにDES処理によるこれの低下は認められなかった。以上,DESを初生時から性成熟時まで摂取させると,性成熟後の生殖能力に障害をもたらさない場合でも,オスの性成熟が遅延すること,性成熟前の精巣と卵巣の発達が劣ること,ならびに未成熟期の卵巣において間質細胞の分布頻度が高いことが明らかとなり,これらはウズラを用いて内分泌かく乱作用を評価するための重要な項目となり得ることが示唆された。
  • 古田 洋樹, 藤原 昇
    2000 年 37 巻 6 号 p. 334-340
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    平行型電極と針状電極を用いたエレクトロポレーション法により鶏初期胚にマーカー遺伝子Green Fluores-cen Protein (GFP)の導入を試みた。外来遺伝了を放卵直後の胚盤葉に注入した。今回の実験では27ゲージの注射針をマイナス極とした。処理後3日問孵卵を行い,鶏胚でのGFP遺伝子の発現を観察した。生存率は針状電極で約65% (48/74),平行型電極で約53%(29/55)であり,両電極間に有意な差(P>0.05)は認められなかった。一方,GFP遺伝子の発現は針状電極で約48% (23/48),平行型電極で約7% (2/29)であり,両電極間に有意差(P<0.01)が認められた。GFP遺伝子は両電極ともモザイク的な発現であった。
    エレクトロポレーション法において,平行型電極より針状電極を用いた方が鶏初期胚への外来遺伝子導入はより効果的であると考えられる。
  • 松下 浩一, 小宮 山恒, 秋葉 征夫, 佐藤 幹, 高橋 和昭, 豊水 正昭, 恒川 博, 長尾 秀則
    2000 年 37 巻 6 号 p. 341-348
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ブロイラーの大型化による出荷日齢の早期化に伴って,鶏肉肉色の淡泊化と肉色のバラツキが大きな問題となっている。カロチノイドの一種であるアスタキサンチン(Ax)を高濃度に含む赤色酵母を給与して肉色の改善を図るとともに,赤色酵母の添加濃度と給与期間の影響,並びにレシチンとα-トコフェロールの添加効果について検討した。試験1では,飼料中Ax濃度で10, 20, 30ppm含むように赤色酵母を添加した飼料をそれぞれ,出荷前5週間,3週間および1週間給与し,増体成績,正肉生産量,肉色(L*値,a*値,b*値)を測定した。試験2ではAx 20ppmを含む赤色酵母添加飼料区に加えて,さらにレシチン(5g/kg)+α-トコフェロール(0.1g/kg)を添加する試験区を設け,出荷前3週間給与した。
    いずれの試験でも,赤色酵母の給与期間,給与レベルおよびレシチン+α-トコフェロール添加による増体成績,正肉歩留まり,正肉重量そして正肉の明度(L*値)の変化は認められなかった。モモ肉の赤色度(a*値)は赤色酵母給与で上昇の傾向を示したが,統計的有意差は見られなかった。一方,ムネ肉とササミのa*値は赤色酵母の給与により有意に上昇し,その上昇程度はAx 20ppm添加飼料の3週間給与区で大きく,反対にAx 30ppm添加飼料の1週間給与区で小さい傾向にあった。a*値上昇の順序は試験期間におけるAxの総摂取量にほぼ比例しており,赤色酵母の肉色強化効果はAxの総摂取量に依存するものと考えられた。正肉の黄色度(b*値)は赤色酵母給与でわずかに上昇する傾向が見られた。正肉の肉色(a*値およびb*値)に対するレシチン+α-トコフェロール添加効果は認められなかった。
    以上のことから,赤色酵母の給与はブロイラーの肉色,特に赤色度の改善に有効であり,その改善効果は赤色酵母中アスタキサンチンの総摂取量に依存すると考えられた。
  • 金子 国雄, 山崎 光一, 田川 裕治, 徳永 睦子, 飛佐 学, 古瀬 充宏
    2000 年 37 巻 6 号 p. 349-356
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    3週齢のブロイラー雄に日本茶浸出水を7週間与え,飼料摂取量,飲水量,体重を測定した。また試験終了時に血清中成分,屠体重,正肉量,内臓重に及ぼす影響について検討した。日本茶浸出水の調製は日本茶5gに95~100°Cに加温した水道水200mlを加えて5分間浸出後常温まで冷やしたものを日本茶浸出水100%区(T1),日本茶浸出水100%を水道水で1/2に稀釈した日本茶浸出水50%区(T2),日本茶浸出水100%を1/4としたものを日本茶浸出水25%区(T3)及び水道水の対照区(C)とした。
    体重はC区,T3区,T2区,T1区の順となり日本茶浸出水区はC区にたいして有意に劣り,日本茶浸出水の摂取がブロイラーの成長を抑制すること,そして日本茶浸出水濃度が濃いほどその影響が大きいことが認められた。飼料摂取量と飲水量は体重と同じ傾向を示し,日本茶浸出水の濃度が高くなるにしたがって減少する傾向があった。飼料要求率には一定の傾向はみられなかったが,胸肉•もも肉•ささみを合計した正肉三品歩留まり(屠体重に対する正肉三品の割合)においてはT1区とT2区はC区に対しては有意に減少した。
    腹腔内脂肪率はC区が最も高くT3区,T2区,T1区の順に減少した。ブロイラーの腹腔内脂肪と体重との間には正の相関関係(r=0.71)が確認され,日本茶浸出水を給与した区はC区よりも腹腔内脂肪の蓄積率が減少した。
    本実験の結果から,日本茶浸出水の給与はブロイラーの成長を抑制するが,それ以上に腹腔内脂肪の蓄積が抑制されることが認められた。
  • 周 長海, 大谷 滋, 田中 桂一
    2000 年 37 巻 6 号 p. 357-364
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は成長中の肉用アヒルにおける10週齢までの体重,体の各部位重量,体成分及び脂肪蓄積の推移について明らかにすることを目的として行った。肉用アヒルの成長は成長初期で速く,成長曲線の変曲点は雌で28日齢,雄で30日齢であった。肉用アヒルの出荷日齢は飼育効率の点から,現行の8から10週齢より6週齢まで早める方が飼育コストの面で有利であることが推察された。屠体重に対する皮•骨付き胸及び手羽の重量比は加齢に伴い増加するが,腿,ドラム•ステイック及び背の重量比には加齢による変化は認められなかった。屠体中の水分含量は加齢に伴い減少し,脂肪含量は増加した。蛋白質含量には加齢に伴う変化は認められなかった。加齢に伴い血清中トリグリセリド濃度は増加し,総コレステロール濃度は減少した。
  • 本田 和久, 上曽山 博, 加藤 宏尚, 古屋 徳彦, 石渡 広子, 元木 徹, 斉藤 昇, 長谷川 信
    2000 年 37 巻 6 号 p. 365-371
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    The present study was conducted to evaluate the comparative effect of soybean protein and casein on body fat deposition in chicks. Chicks were fed an 18% protein diet (soybean protein or casein), and the effects of dietary protein type on growth performance, the lipid contents of the plasma and liver, and the concentrations of plasma glucose and corticosterone were examined. There was no differences in final body weight, and the concentrations of plasma glucose and free fatty acids between the two dietary groups. Hepatic triacylglycerol content and plasma triacylglycerol level, however, were significantly lower in the soybean protein-fed than in the casein-fed chicks. The abdominal fat weight and the plasma corticosterone concentration were markedly lower in the soybean protein-fed chicks. The results suggest that soybean protein in the diet has the effect of lowering the body fat deposition as compared with casein.
  • 安東 竜一, 豊後 貴嗣, 古瀬 充宏
    2000 年 37 巻 6 号 p. 372-378
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    モチリンの投与がラットおよびマウスの摂食を刺激することが発見されている。しかしながら,我々の前回の研究では,哺乳類のモチリンの中枢投与はニワトリヒナの摂食を刺激しなかった。哺乳類において,エリスロマイシンは平滑筋のモチリンレセプターにアゴニストとして働き,胃腸の強収縮運動を引き起こす。しかし,摂食行動における効果はまだ調査されていない。本研究の目的は,非ペプチド性のモチリンのアゴニストであるエリスロマイシンの投与が,絶食後のニワトリヒナの摂食を刺激するかどうかについて調査することである。胃腸の強収縮運動は空腹期に起こるが,内因性の強収縮運動を押さえるため,絶食した後,薬物投与10分前に餌を給与した。エリスロマイシンが胃腸で働くことを考慮して,腹腔(4日齢:25, 50および100μg/100μl)および経口(3日齢:25, 50および100μg/100μl)の経路でエリスロマイシンを3時間絶食したヒナに投与したが,いずれも摂食量において有意な差は認められなかった。6時間絶食した4週齢のニワトリヒナにもエリスロマイシン2mg/150μlを経口投与したが,摂食量に有意差は認められなかった。上記の結果より,エリスロマイシンはニワトリヒナの摂食行動を調節しない可能性が示唆された。
  • 佐伯 真魚, 高須 茜美, 村上 斉, 山崎 信, 山本 英雄, 岡崎 富明, 阿部 亮
    2000 年 37 巻 6 号 p. 379-386
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    乳製品工場活性汚泥処理製品(バイオソリッド)のヒナによる成長試験を行った。活性汚泥処理残渣は脱水•濃縮後にコーンスターチと混合され,その混合物について3処理を行い,処理製品を試験に供試した。処理方法は1)エクストルーダ処理,2)ギ酸処理後にエクストルーダ処理,3)無処理,である。ヒナ成長試験にはこれら処理製品を14~21%(汚泥自体としては風乾物で6~7%)の割合で基礎飼料に配合した。対照区にはカゼインとコーンスターチを用いて蛋白質含量と総エネルギー含量を4つの飼料給与区で同一のレベルに揃えた。ヒナ成長試験は1試験区5群,1群に3羽を配置して14日間実施した。乾物摂取量と蓄積窒素量ではエクストルーダ処理区とギ酸エクストルーダ処理区が対照区と無処理区に比べて有意(p<0.05)に高い値を示した。しかし,増体量では試験区間に有意な差は観察されなかった。バイオソリッドのヒナ飼料風乾物の6~7%,蛋白質の9~10%の代替では対照区と差のない増体成績を示したところからバイオソリッドはカゼインと同様に蛋白質源として利用できる可能性が示唆された。
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