ブロイラーの大型化による出荷日齢の早期化に伴って,鶏肉肉色の淡泊化と肉色のバラツキが大きな問題となっている。カロチノイドの一種であるアスタキサンチン(Ax)を高濃度に含む赤色酵母を給与して肉色の改善を図るとともに,赤色酵母の添加濃度と給与期間の影響,並びにレシチンとα-トコフェロールの添加効果について検討した。試験1では,飼料中Ax濃度で10, 20, 30ppm含むように赤色酵母を添加した飼料をそれぞれ,出荷前5週間,3週間および1週間給与し,増体成績,正肉生産量,肉色(L
*値,a
*値,b
*値)を測定した。試験2ではAx 20ppmを含む赤色酵母添加飼料区に加えて,さらにレシチン(5g/kg)+α-トコフェロール(0.1g/kg)を添加する試験区を設け,出荷前3週間給与した。
いずれの試験でも,赤色酵母の給与期間,給与レベルおよびレシチン+α-トコフェロール添加による増体成績,正肉歩留まり,正肉重量そして正肉の明度(L
*値)の変化は認められなかった。モモ肉の赤色度(a
*値)は赤色酵母給与で上昇の傾向を示したが,統計的有意差は見られなかった。一方,ムネ肉とササミのa
*値は赤色酵母の給与により有意に上昇し,その上昇程度はAx 20ppm添加飼料の3週間給与区で大きく,反対にAx 30ppm添加飼料の1週間給与区で小さい傾向にあった。a
*値上昇の順序は試験期間におけるAxの総摂取量にほぼ比例しており,赤色酵母の肉色強化効果はAxの総摂取量に依存するものと考えられた。正肉の黄色度(b
*値)は赤色酵母給与でわずかに上昇する傾向が見られた。正肉の肉色(a
*値およびb
*値)に対するレシチン+α-トコフェロール添加効果は認められなかった。
以上のことから,赤色酵母の給与はブロイラーの肉色,特に赤色度の改善に有効であり,その改善効果は赤色酵母中アスタキサンチンの総摂取量に依存すると考えられた。
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