卵用鶏の育成期におけるカルシウム過剰給与の影響を究明するために, 二つの実験を行なった。実験1においては, 有効リン水準が0.4% (標準) と0.6%の2水準, カルシウム水準がそれぞれ0.75, 1.75, 2.75および3.75%の組合わせによる8種類の飼料を, 4~20週齢の中•大雛期に給与した。実験2においては, 有効リン水準がすべて標準で, カルシウム水準がそれぞれ0.75, 2.25, 2.75, 3.25, 3.75および4.25%の6種類の飼料を, 10~20週齢の大雛期に給与した。20週齢以後はいずれの実験においても, すべて標準の成鶏用飼料を給与した。
成績を要約すると, 次のようになる。
(1) リン水準が標準量でカルシウム水準が産卵鶏用飼料と同一か, またはそれ以上の飼料を4または10週齢より給与すると, 成長はいずれも明らかに低下し, 飼料効率も低下したが, 飼料のリン水準を高めると, 以上のような悪影響は全く認められなかった。
(2) 初産日齢, 産卵率, 卵重, 産卵に対する飼料効率は, いずれの実験においても, 育成期に給与した飼料のカルシウム水準により, 明らかな差異が認められなかった。
(3) 4週齢より, リン水準が標準量で, カルシウム水準が3.75%の飼料を給与した鶏では, 22~24週齢において, 未産のまま腎臓障害により死亡するものが明らかに認められた。また, カルシウム水準が2.75%においても, 死亡鶏の一部に若干腎臓肥大が認められた。しかし, 高リン飼料を給与した鶏, および実験2においては, 腎臓障害に起因するとみられる死亡は認められなかった。
以上の結果より, 中•大雛期より, カルシウム水準が成鶏用飼料と同一かまたはそれ以上の飼料を給与することは好しくなく, 特に中雛期より給与すると, 腎臓障害の原因となるので, その給与はさけるべきである。どうしても給与する場合には, 飼料のリン水準を標準量の1.5倍程度に高めると, カルシウム過剰の悪影響をほとんど防止することができる。
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