【目的】看護・介護・リハビリテーション(以下,リハ)職における腰痛の有無とワーカホリズム(働き方)とリカバリー経験(就業時間以外の過ごし方)の関連を明らかにすることで,職場における新たな腰痛予防に資する知見を得ることを目的とした。【方法】80 名の看護・介護・リハ職を対象に基本情報,勤務状況,腰痛状況,ワーカホリズム,リカバリー経験に関する質問を聴取し,腰痛の有無で調査項目の比較を行った。【結果】非腰痛群と比較して,腰痛群ではワーカホリズムの総得点および下位項目である働き過ぎの得点が有意に高く,リカバリー経験の下位項目である心理的距離の得点が有意に低かった。【結論】看護・介護・リハ職における腰痛の有無とワーカホリズムおよびリカバリー経験の関連が示された。今後はこれらの要因を含めた腰痛予防の検討を行う必要性が示された。
【目的】歩行能力と転倒関連自己効力感の両者の評価が転倒予測精度の向上に寄与するかを検証した。 【方法】地域在住自立高齢者280 名に,快適・最速条件の歩行速度,短縮版Falls Efficacy Scale-International (Short FES-I)をベースラインで評価した。また,歩行速度の結果から歩行予備力を算出した。さらに,併存疾患数,服薬数,IADL,過去の転倒歴も調査した。ベースライン調査から1 年後に追跡調査を行い,転倒の有無を調査した。転倒と各因子の関連性は決定木分析にて分析した。【結果】転倒には,過去の転倒歴,疾患数,年齢に加え,歩行予備力とShort FES-I の両者が有意に関連した。これらの因子による転倒発生の識別精度は,感度62.5%,特異度92.0%だった。【結論】歩行能力と転倒関連自己効力感の両者の評価が正確な転倒リスクの評価に繋がる可能性がある。
【目的】サルコペニアの定義方法によりSARC-F の成績が異なる可能性がある。本研究は4 つの定義方法によるサルコペニアに対するSARC-F の性能を比較した。【方法】デイケア施設を利用する虚弱高齢者を対象に,SARC-F を含むアンケート,身体機能,体組成を測定した。サルコペニアは代表的な4 つの専門家グループの基準で定義した。各サルコペニアに対するSARC-F の性能は受信者動作特性曲線(ROC) 解析と感度特異度で比較した。【結果】各サルコペニアの有病率は,各定義方法により15.0%~51.0% であった。曲線下面積は0.717~0.792 で,感度は47.1%~70.0 % ,特異度は72.6%~81.6% であった。【結論】SARC-F はサルコペニア定義方法によりその性能が異なるものの,デイケアや通所リハビリテーション利用者などの身体機能が低い集団においては,安定して高い性能を発揮する。
【目的】地域在住高齢者における座位バランス低下と立位バランス低下や転倒要因との関連を検討する.【方法】歩行可能な高齢者50 名を対象に,立位・座位での静止時の圧中心点(COP)の総軌跡長,前後左右へのCOP 最大移動距離を測定した.他に,最大歩行速度,長座位体前屈,筋力を測定した.転倒群と非転倒群に分けて比較し,測定項目間の関連は相関係数を用い,因子分析を行った.【結果】転倒群では非転倒群より有意に身体機能が低下していた.COP 最大移動距離は,後方を除いた同一方向の座位と立位において相関が認められ,前後より側方でより高い相関を示した.因子分析では,立位・座位バランス低下は筋力低下とは独立した因子であった.【結語】 座位バランスは立位バランスと関連があるが,筋力とは独立していた.座位バランス低下は転倒要因とは直接的に関連しているとはいえないが,姿勢や立位バランス機能と関連することが示唆された.
【目的】新型コロナウイルス感染症対策による中学校休校後の学校再開時に予測される問題を予防するとともに,休校中の生徒の生活を把握すること。【方法】中学校教員より学校再開へ向けた不安を聴取し,情報収集・資料作成しE-mail や郵送にて情報提供を実施した。また,休校中の生活状況についてアンケートを作成・提案し,学校再開後に教員が実施した。【結果】提供した情報を参考に,教員が生徒とともに朝夕のホームルームにてストレッチ等の運動を実施した。アンケートでは休校中に運動を実施したと回答した生徒は約半数で,主に縄跳びや筋力トレーニングを実施していた。しかし,体育科教員による体育授業時の様子観察では筋力や柔軟性など運動器の問題だけでなく,過集中や視野の狭窄などの変化,腹痛や吐き気を訴える生徒もみられていた。
【目的】看護・介護職員を対象に職種の特性や腰痛の多面性を考慮した腰痛対策プログラムの有用性について参加状況およびアンケート調査をもとに検討した。【方法】参加状況はプログラム開催期間中に施設に所属していた看護・介護職員を分母,参加した看護・介護職員を分子として研修テーマ毎に参加割合を算出した。アンケート調査は,本プログラム前後に実施した調査の両方に回答した89 人のアンケート調査の項目のうち,腰痛の重症度(0 痛み無し~10 想像できる最大の痛み)をプログラム前後で比較した。【結果】プログラムの参加割合は平均64.2 ± 5.7%であった。プログラム前後で腰痛の重症度は,全職員を対象にした解析では有意な差は認められなかったが,プログラム開始時に腰痛を認めた職員ではプログラム前後で有意に改善を示した(p=0.039)。【結論】介護施設における看護・介護職員への腰痛対策の有用性が示唆された。
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