理学療法の臨床と研究
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28 巻
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総説
  • 島田 昇
    2019 年 28 巻 p. 3-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術患者は増加傾向にあり、対象患者の年齢層が 70 ~ 80 代と高い。また用い られる人工膝関節の機種は年々改良が重ねられ、様々な種類が存在する。術後理学療法を担当 する我々は、術創部や全身状態の管理と各機種の特性を理解し、安全かつより効果的な理学療 法の実践が求められる。本稿では、人工膝関節置換術を施行された患者に対する理学療法を行 う上で必要な理学療法管理について概説する。
  • 馬屋原 康高, 関川 清一, 河江 敏広, 曽 智, 大塚 彰, 辻 敏夫
    2019 年 28 巻 p. 9-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    高齢者の肺炎の約 80%が誤嚥性肺炎であり、誤嚥性肺炎リスクを早期に発見し対応すること が急務である。嚥下機能と咳嗽能力の関連があることが報告されており、咳嗽能力を評価する ことは重要である。その評価指標の一つとして、咳嗽時の最大呼気流量(CPF)が用いられてい る。CPF値が270 L/min以下となった場合、呼吸器感染症を発症すると、急性呼吸不全に陥る 可能性があるとされ、160 L/min以下では、気管内挿管も考慮される値と報告されている。そ の他 242 L/min 未満が誤嚥性肺炎のカットオフ値として報告されている。臨床的には、そのカッ トオフ値を参考に低下した CPF を種々の咳嗽介助法を用いてカットオフ値以上に引き上げるこ とが重要となる。さらに筆者らは、咳嗽音を用いてより簡便な咳嗽力の評価方法を提案している。 誤嚥性肺炎を予防する第 1 歩としてより幅広く咳嗽力評価が用いられることを期待する。
  • 福尾 実人
    2019 年 28 巻 p. 15-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    わが国は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進んでいる。しかも、わが国の高齢化率 は年々増加していき、2065 年には4人に 1 人が 75 歳以上の後期高齢者になると推計されてい る。この後期高齢者の特徴の1つには心身の機能の減弱が原因となるフレイルが挙げられてい る。フレイルは、要支援・要介護に至る原因となる。また、フレイルは加齢により有病率が高 くなるため早期の対策および介護予防が重要となる。フレイルの中核要因はサルコペニアであ り、早期に筋力および筋量の低下を引き起こす。一般に加齢による筋委縮は、上肢筋よりも下 肢筋で著しいと報告されている。特に若年者は高齢者と比べて大腿部の筋量減少を認めている。 しかし、フレイル高齢者では下肢筋群以外にも上腕部および肩甲骨下部の筋量の低下が示され ている。そのため、フレイル高齢者では下肢以外にも上腕および肩甲骨下部の骨格筋量増加を 目的としたレジスタンス運動を行う必要がある。
原著
  • 原 真希, 岩見 憲司, 藤村 宜史, 和田 直人, 林崎 拓也, 豊田 章宏, 藤本 英作
    2019 年 28 巻 p. 21-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」人工膝関節全置換術(TKA)後患者の満足度に影響する身体活動量と膝関節伸展筋力の 関係性を明らかにすることを目的とした。 「方法」 TKA 後 1 年時の満足度を Knee Society Score(KSS)で評価し、活動量は高齢者のため の活動指標の1つである Physical Activity Scale for the Elderly(PASE)を用いた。また、 客観的評価として膝関節伸展筋力を筋力測定器で評価した。統計解析は、KSS 満足度に対する PASE と膝関節伸展筋力について Spearman の相関係数を求めた。 「結果」 KSS 満足度の下位項目のうち、起居時の膝機能と家事動作の 2 項目に対して、膝関節 伸展筋力と PASE 余暇活動に相関を認めた。 「結論」 TKA 後の膝関節機能の安定性と容易な家事動作の遂行は、患者にとって基本的な要求 の一部である。本研究では、膝関節伸展筋力と PASE 余暇活動が TKA 後の患者満足度と有意に相 関する重要な要因であることが示唆された。今後は縦断的に検討を行っていく必要がある。
  • 病棟別の腰痛予防対策の必要性
    佐々本 健治, 岸 浩昭, 井上 久代, 沖田 一彦
    2019 年 28 巻 p. 27-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」当法人の医療・介護施設に勤務する看護師、介護士、事務職を含む全職員の腰痛の実態 を明らかにし、腰痛予防対策を検討することである。 「方法」対象は当法人の医療・介護施設に勤務する全職員で有効回答を得られた 255 名とした。 調査項目は性別、年齢等の基礎項目と現在の腰痛の有無、最も腰痛を起こす職務内容、職務内 容で改善が必要と考える項目、腰痛予防対策への取組みとした。 「結果」現在腰痛が「ある」と答えた割合は 67%であった。職種別では介護士 89%、看護師 71%、事務職 62%で腰痛がみられた。最も腰痛を起こす職務内容は職種により異なっており、 職務内容で改善が必要と考える項目は急性期病棟・地域包括ケア病棟は「作業手順・動作方法」、 療養病棟は「設備・機器」をあげ、また全病棟で「作業する人数」の回答は多かった。 「結論」腰痛有訴者は先行研究より高く、職種・病棟により異なっていた。職種、病棟に応じた 対策の必要性が示唆された。
  • 岩城 大介, 河江 敏広, 廣田 智弘, 中島 勇樹, 筏 香織, 笹木 忍, 西村 志帆, 小林 正夫, 木村 浩彰
    2019 年 28 巻 p. 35-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」血友病患者のスポーツ活動が推奨されているが、本邦でのスポーツ参加状況と参加者の経年的な身体機能の変化は不明である。本研究では当院血友病包括外来受診中の血友病患児のスポーツ参加状況と身体機能の経年的変化を調査した。 「方法」2015 年 7 月から 2017 年 8 月の間に血友病包括外来を受診した患児 51 名を対象とした。スポーツの頻度、スポーツの内容、出血回数と箇所、身体機能として膝関節伸展筋力、握力をカルテから後方視的に調査した。 「結果」対象患児 16 名中 10 名で定期的なスポーツを行っていた。また、16 名中 4 名はコンタクトスポーツなどの出血リスクの高いスポーツを行っていた。 「結論」血友病患児の安全を確保するためには、適切な身体機能評価や運動指導、予防的補充療法など、医学的な管理を基盤とした知識の提供を行い、積極的なスポーツ参加を推奨する取り組みが重要と考える。
  • 廣田 智弘, 河江 敏広, 岩城 大介, 筆保 健一, 中島 勇樹, 高尾 恒嗣, 関川 清一, 馬屋原 康高, 木村 浩彰
    2019 年 28 巻 p. 41-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」本研究の目的は、空気圧免荷式トレッドミルを用いた心肺運動負荷試験が推定最大酸素摂取量(推定 VO2max)に与える影響を明らかにすることである。 「方法」健常成人男性 12 名(年齢 24.8 ± 3.2 歳、身長:174.0 ± 3.4cm、体重:63.2 ± 6.4kg、BMI:20.8 ± 1.7kg/m2)を対象とし、空気圧免荷式トレッドミルを使用した多段階運動負荷試験を行ない、呼気ガス分析装置を使用して酸素摂取量および心拍数を計測した。測定に際して トレッドミルの荷重率を100%、70%、50%および 30%に設定し、4 条件での運動負荷試験を実施した。得られた酸素摂取量と心拍数を用いて回帰式を算出し、年齢予測最大心拍数を代入し、推定 VO2max を算出した。 「結果」各荷重率における推定 VO2max に有意差を認めなかった。 「結論」空気圧免荷式トレッドミルにおける体重免荷は推定 VO2max に影響を及ぼさないことが明らかとなった。
  • 広島県呉市での調査
    村上 弘晃, 浦辺 幸夫, 鈴木 雄太, 尾上 仁志, 大岡 恒雄, 白川 泰山
    2019 年 28 巻 p. 47-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」大腿骨近位部骨折術後患者を、受傷前に平地に住んでいた者(平地群)と傾斜地に住んでいた者(傾斜群)に分け、自宅退院に影響する因子を検討した。 「方法」身体機能として、退院時の 10m 歩行時間、6 分間歩行距離、Motor FIM を測定した。認知機能として、退院時の HDS-R を調査した。各項目を平地群と傾斜群で比較した。 「結果」自宅退院率は平地群が 60%、傾斜群が 69%で、傾斜群で有意に高かった。介護状況は、独居者が平地群で 70%、傾斜群で 56%であり、平地群で有意に高かった。6 分間歩行距離は、平地群の自宅退院者より傾斜群の自宅退院者で有意に長かった。HDS-R と Motor FIM は両群で差がなかった。 「結論」自宅退院を目指す場合に認知機能と ADL 能力は居住地の影響を受けていないことが示された。傾斜地への自宅退院には高い歩行能力が求められ、介助者がいることで傾斜地への自宅退院が有利になる可能性が考えられた。
  • 川上 詩織, 太田 浩章, 沖 貞明, 積山 和加子, 小野 武也
    2019 年 28 巻 p. 51-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」自動運動による関節拘縮発生防止を、底背屈中間位固定のラット足関節を対象に検討すること。 「方法」Wistar 系雌ラット12 匹の一側後肢足関節を底背屈中間位でギプス固定した。7 日間の固定期間中に 1 日 2 度、固定除去後に 20 分のトレッドミル走行を行う固定運動群とギプスの巻き替えのみを行う固定群で検討した。実験初日と最終日に、足関節可動域を計測した。 「結果」初日の関節可動域は固定群 136.3 ± 2.7°、固定運動群 137.3 ± 4.6°であり、2 群間に有意差は認めなかった。最終日は、固定群 108.7 ± 10.4°、固定運動群 120.0 ± 10.3 であり、 ともに有意に関節可動域が減少していた。最終日では、固定運動群の関節可動域が有意に大きかった。 「結論」1 日 2 度の自動運動により関節拘縮発生の抑制は可能であったが、完全な防止までには 至らなかった。
  • 富田 瑛博, 中村 公則, 廣澤 隆行, 片山 暁
    2019 年 28 巻 p. 55-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」弁膜症術後、退院時に ADL が低下している患者の特徴を後方視的に調査し、その要因を明らかにする。 「方法」待機的弁膜症術後患者の中で、退院時に術前のBarthel Index(BI)に達した63例をADL維持群、達しなかった 10 例を ADL 低下群とした。各群の術前因子・手術因子・術後因子を調査し、ロジスティック回帰分析と ROC 曲線を使用して、術後 ADL 低下を予測する因子を抽出し、 カットオフ値を求めた。 「結果」抽出された因子は、年齢、術前 BI、10m 歩行時間、歩行開始日であり、10m 歩行時間の 判別能が最も高かった。カットオフ値は、年齢 78 歳、術前 BI95 点、10m 歩行時間 7.04 秒、歩行開始日 4 日であった。 「結論」弁膜症術後患者の退院時 ADL の低下を予測する因子は、年齢、術前 BI、10m 歩行時間、 歩行開始日であり、生理的予備能の低下やデコンディショニングの進行が関与していると考えられた。
  • 関川 清一, 馬屋原 康高, 相澤 郁也, 河江 敏広
    2019 年 28 巻 p. 61-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」非支持性上肢挙上運動での円背姿勢の影響を、換気諸量の観点から明らかにすることを目的とした。 「方法」健常成人 8 名を対象に肺機能測定および非支持性の上肢挙上運動を実施した。非支持性上肢挙上運動は、事前に非支持性上肢運動負荷試験を行い、最高酸素摂取量の 40%の運動強度を判定し、5 分間の上肢挙上運動とした。運動中は呼気ガス分析装置を使用し、経時的に換気諸量を測定した。肺機能および上肢運動は、プラスチック性円背装具装着下(以下、円背条件) と非装着下(以下、通常条件)の 2 通りで実施した。 「結果」円背条件では、低強度上肢挙上運動において呼吸数が高値を示し(円背条件:22.2 ± 4.1 回 /min、通常条件:18.6 ± 3.3 回 /min、p=0.03)、酸素換気当量が低下することを示した(円 背条件:37.9 ± 4.4、通常条件:33.6 ± 3.3、p=0.04)。 「結論」円背を有する対象者において、坐位時の上肢挙上を伴う低強度の活動時に、呼吸数に着目する必要があることが示唆された。
  • “大殿筋テスト”の信頼性の検討
    前田 慎太郎, 濱田 和明, 沖 真裕, 清水 啓太, 和泉 昌宏, 橋本 和典
    2019 年 28 巻 p. 67-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」野球選手における殿部柔軟性低下に対する定性的評価法として新たに考案した“大殿筋テスト”の信頼性を検討すること。 「方法」対象は健常男子高校野球選手 26 名 52 肢(16.8 歳)とした。大殿筋テストは床上座位にて非検査側股関節開排位とし、検査側股関節屈曲・内転位にて膝を両手で把持し、腰椎・仙骨を直立位に保持可能であれば陰性、保持不可であれば陽性と判定した。Cohen のκ係数により検者間・検者内信頼性を求めた。 「結果」検者間信頼性は高度の一致(κ =0.78)を認め、一致率は 82.7%であった。検者内信頼性はほぼ完全な一致(κ =0.87)を認め、一致率は 90.4%であった。また、併せて聴取した測 定実施時の主観的感覚は、「殿部の筋の伸張感」が 46 肢(88.5%)、「何も感じない」が 4 肢(7.7%)、「股関節前方の痛み(詰まり感)」が 2 肢(3.8%)であった。 「結論」大殿筋テストは検者間・検者内ともに高い信頼性を示した。
  • 石橋 直樹, 浦辺 幸夫, 鈴木 雄太, 尾上 仁志, 大岡 恒雄, 白川 泰山
    2019 年 28 巻 p. 73-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「目的」本研究の目的は、受傷前に島嶼部で自宅生活を送っていた、大腿骨近位部骨折患者が、自宅退院を目指す場合に必要な身体機能を明らかにすることである。 「方法」対象は、平成 27 年 1 月から平成 29 年 6 月の期間に当院の回復期リハビリテーション病棟に入院した島嶼部在住の患者 22 名とした。対象の 10m 歩行時間、6 分間歩行距離、患側片脚 立位時間、HDS-R、Motor FIM、介護者の有無などを調査し、それぞれを自宅退院者と施設退院者で比較した。 「結果」10m 歩行時間、6 分間歩行距離、患側片脚立位時間、HDS-R、介護者の有無では差がなかった。 Motor FIMは、自宅退院者62.6点、施設退院者44.6点と、自宅退院者で18.0点高かった。 「結論」大腿骨近位部骨折患者が術後に島嶼部へ自宅退院するには、歩行能力が保つだけでなく、自宅退院者では Motor FIM の得点が高く、自立した生活ができることが必要である。Motor FIM が低い者は介助者を要し、島嶼部での生活には不利であると考えられる。
症例報告
  • 中島 勇樹, 河江 敏広, 岩城 大介, 筆保 健一, 廣田 智弘, 三上 幸夫, 木村 浩彰
    2019 年 28 巻 p. 77-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー
    「症例」膵癌と診断され、化学放射線療法のため入院した 80 歳代女性の膵癌患者に対する理学療法介入を経験した。 症例は、入院時より加齢および膵癌由来の骨格筋量および身体機能低下のためサルコペニアの病態を呈しており、日常生活動作を維持するためにリハビリテーション科に紹介となって理学療法介入が開始された。理学療法の介入内容としては、上肢、下肢の筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習など 1 回 40 分を週 4 から 5 回、3 週間実施した。理学療法介入を開始し 3 週間後の身体機能の評価では、下肢筋力およびバランス能力、歩行速度の改善を認め、日常 生活動作は入院時と同様に維持出来ていた。 「結論」化学放射線療法中のサルコペニアを有した高齢膵癌患者に対する筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習といった理学療法介入は身体機能を改善し、ADL、QOL を維持できる可能性が推察された。
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