理学療法の臨床と研究
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29 巻
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
総説
  • 對東 俊介
    原稿種別: 総説
    2020 年 29 巻 p. 3-10
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    集中治療室(Intensive Care Unit: ICU)入室中に重症患者に共通して生じる問題として、痛み、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害がある。また、ICU退室後も継続する問題としてはPost-Intensive Care Syndrome(集中治療後症候群)がある。ICUの理学療法の目的は、日常生活動作を維持・改善し、生活の質を改善することである。日本において早期とは48時間以内に開始される場合を意味し、主に移動機能の改善を目指した理学療法介入が行われている。重症患者に早期から理学療法を行っても死亡率は改善しないが、日常生活動作は改善する。生活の質改善のための介入については一定の見解が得られていないが、少量頻回の介入が効果的かもしれない。
  • 藤田 直人
    原稿種別: 総説
    2020 年 29 巻 p. 11-15
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    肥満の脂肪組織では、脂肪細胞の肥大に加えてその増殖が生じ、血管密度の低下によって血流量が減少する。この虚血によって肥満の脂肪組織では低酸素が出現し、マクロファージの極性変化を通じて慢性炎症が生じる。本稿では、肥満に伴う脂肪組織における慢性炎症、及び続発する全身のインスリン抵抗性について概説する。また、肥満症の脂肪組織における低酸素や慢性炎症をターゲットとした理学療法の治療手段として、高気圧処置に関する知見を紹介する。
  • 松浦 晃宏, 苅田 哲也, 森 大志
    原稿種別: 総説
    2020 年 29 巻 p. 17-21
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    大脳皮質運動野は外部の状況変化に対して柔軟かつ可塑的である。脳卒中後の運動皮質または運動皮質を起源とする運動下行路においても、回復の過程に応じて時々刻々と活動を変化させている。運動機能回復に影響する活動変化としては、発症早期の損傷側皮質脊髄路の興奮性とその後の皮質内、皮質間ネットワークの活性、非損傷側皮質脊髄路の過活動性、皮質-網様体脊髄路の活動性などが挙げられる。これらは損傷の重症度に応じて、適切な時期に、適切な活動性へと調整され再編されていくことが、より良い運動回復の為に必要である。
  • 井川 英明
    原稿種別: 総説
    2020 年 29 巻 p. 23-28
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    感染対策に関する基本的な知識や技術は患者に安全な理学療法を提供し、実施する側も自己を守るうえで、近年その重要性が注目されている。大切なのは個人だけでなく、すべての医療従事者が遵守することである。必要な対策を講じても、臨床場面では種々の感染症に遭遇することがある。感染症かどうかの判断は、患者の背景、病歴や身体所見、各種検査データ、バイタルサインなどから行い、離床を進めるうえで情報収集しどのように判断を下すかは、理学療法士の腕の見せどころである。臨床判断力を磨くうえで、感染症に罹患した際、私たちの体でどのような反応が起こっているか、免疫防御反応や炎症が果たす役割を理解し、検査データやバイタルの正常値だけにとらわれず、増加、減少傾向も踏まえ、臨床の中で意味するものを把握し、目の前の患者が「今」どのような症状なのか、患者の全身状態から感染徴候を見逃さないようにすることが重要である。
原著
  • 鈴木 雄太, 浦辺 幸夫, 金田 和輝, 前田 慶明, 笹代 純平, 白川 泰山
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 29-35
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    目的:ジュニア競泳選手の障がい既往および身体的特徴を把握し、障がい予防対策の一助とすること。 方法:広島県内のスイミングクラブで選手コースに所属する中学および高校競泳選手132名(男子73名、女子59名)を対象とした。障がい既往調査として、過去1年以内に競泳競技に関連した疼痛の有無を聴取した。身体機能として、全10項目の全身の柔軟性および関節弛緩性を測定した。各項目を男女別および学年別で比較した。 結果:障がい既往率は、男子で55%、女子で59%であり、男女ともに肩関節の障がいが最も多かった。柔軟性は概ね女子で優れていた。高学年になるにしたがい、筋の柔軟性は低下したが、関節弛緩性は向上した。 結論:ジュニア選手の半数以上が競技に関連した障がい既往があることがわかった。今後、障がい発生と柔軟性との関連を検討し、障がいに関連するリスクファクターを解明していく。
  • 中島 勇樹, 井東 あゆみ, 河江 敏広, 岩城 大介, 木村 浩彰, 岡村 仁
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 37-41
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    「目的」がん患者の外来でのリハビリテーションニーズ、およびリハビリテーション関連の要因が生活の質に与える影響を明らかにすることとした。 「方法」入院中のがん患者44名に対し、入院中のリハビリテーションによる運動機能に対する変化や外来でのリハビリテーションの必要性に関するアンケート、および質問紙によるQOL評価を実施した。 「結果」80%の対象者で入院中の体力低下を自覚し、退院後もリハビリテーションの継続が必要であると感じていた。また、QOLと入院中のリハビリテーション実施による運動機能の維持、改善の自覚との間に関連を認めた。 「結論」がん患者は退院時に運動機能の低下、リハビリテーション継続の必要性を感じており、筋力、体力の維持改善、歩行などの基本動作の練習や工夫についてニーズがあることが示された。また、入院中の運動機能の維持、改善の自覚はQOLと関連しており、外来でも重要な要因となることが示唆された。
  • 橋本 彩歌, 梅原 拓也, 桑原 大輔
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 43-49
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    「目的」我々は、先行研究にて大腿骨近位部骨折患者の術後3週の歩行能力から術後1年のADLを予測できる可能性を報告した。一方、術後3週の歩行可否の予測因子は明らかではない。そこで、大腿骨近位部骨折患者の術後3週の歩行可否により術後1週と2週の身体機能や歩行能力の違いを比較することとした。 「方法」対象は、2013年6月から2017年3月までの大腿骨近位部骨折術後患者とし、群分けは、術後3週の歩行可否とした。その後、身体機能と歩行能力を比較し、効果量を算出した。 「結果」歩行可能群は45名、歩行不可能群は11名であった。効果量が中以上のものは、糖尿病の有無、CRP値、受傷前歩行能力、Evans分類、安静時疼痛VAS(術後1週)、動作時疼痛VAS(術後1-2週)、CS-30(術後2週)、BI歩行(術後1-2週)であった。 「結論」術後3週に歩行可能な者は、不可能な者と比べて疼痛が低く、歩行能力が高かった。術後早期より疼痛管理をしながら、活動を向上させることで術後3週の歩行が可能となり、間接的に術後1年のADL低下を予防できるかもしれない。
  • 伊藤 創, 川上 照彦, 葉 清規, 室伏 祐介
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 51-55
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    【目的】 本研究目的は、肩関節疾患患者に対してアテネ不眠尺度(以下、AIS)を用いて睡眠状況の評価を行い、睡眠障害に関連する因子を明らかにすることである。 【方法】 対象は、肩関節疾患患者87名とした。評価内容は、AIS、Visual Analog Scale(以下、VAS)、肩関節可動域、夜間痛の有無および発生頻度とした。不眠症の診断はAISの合計点6点以上とし、従属変数を睡眠障害の有無、独立変数を基本情報、VAS、肩関節可動域、夜間痛の有無および発生頻度とし、睡眠障害に関連する因子について解析した。 【結果】 睡眠障害は、対象者87例中52例であった。睡眠障害に関連する因子として、夜間痛が抽出された。 【結論】 肩関節疾患患者の睡眠障害が夜間痛に関連した。夜間痛の改善は、肩関節機能改善だけでなく、睡眠障害の改善にも関連する可能性がある。
  • 葉 清規, 対馬 栄輝, 村瀬 正昭, 伊藤 創, 宮崎 寛史, 藤村 裕介
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 57-64
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    【目的】 本研究の目的は、頸部関節可動域(以下、CROM)測定における測定器具の違いによる検者内・検者間信頼性を調査することである。 【方法】 健常成人および頸椎変性疾患患者各10名を対象とした。CROM測定について、検者4名で、被験者の頸部の屈曲、伸展、側屈、回旋の最終可動域を3回測定した。測定器具は、東大式角度計とプラスチックゴニオメーターを使用した。検者内信頼性および検者間信頼性を、級内相関係数(以下、ICC)で分析した。 【結果】 健常成人の検者内・検者間信頼性は2種類の測定器具ともに、すべての方向で、ICC(1、1)、ICC(2、1)は、ほぼ0.81以上の高値であった。東大式角度計はプラスチックゴニオメーターと比較して、ICC(1、1)の95%信頼区間の下限値は高値であり、測定の標準誤差は低値であった。頸椎変性疾患患者の検者内信頼性も同様の結果であった。 【結論】 健常成人および頸椎変性疾患患者を対象としたCROM測定において、2種類の測定器具ともに高い信頼性が得られた。ただし、角度計の特性が測定精度に影響する可能性がある。
  • 川畑 祐貴, 梅原 拓也, 倉吉 学
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 65-70
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
  • 岡田 泰河, 浦辺 幸夫, 鈴木 雄太, 吉田 康兵, 白川 泰山
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 71-75
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
  • 坂本 麻美, 浦辺 幸夫, 大岡 恒雄, 鈴木 雄太, 白川 泰山
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 77-81
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
  • 田城 翼, 浦辺 幸夫, 鈴木 雄太, 酒井 章吾, 小宮 諒, 笹代 純平, 前田 慶明
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 p. 83-87
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    目的:足関節捻挫を受傷した選手は、医療機関で受療せずに競技復帰する場合が多く、「たかが捻挫」と足関節捻挫を軽視している可能性がある。本研究では選手が足関節捻挫受傷後の治療の重要性をどのように捉えているかを調査した。 方法:大学男子サッカー選手235名を対象として、インターネットによるアンケート調査を実施した。 結果:90名(38%)の有効回答のうち、70名(78%)が足関節捻挫を経験していた。受傷後、医療機関を受診した者は37名(53%)で、そのうち28名(76%)は継続的に通院し、治療を受けていた。医療機関を受診しなかった、または通院を中止した理由は、「治療しなくても治ると思ったから」という回答がそれぞれ最多であった。 結論:治療しなくても治ると思っていた選手は、足関節捻挫受傷後の治療の重要性を認識できていない可能性がある。このような選手に対して、足関節捻挫の治療の啓蒙が不可欠である。
症例報告
  • 中野 徹
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 29 巻 p. 89-92
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    症例: 80歳代後半女性、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(Diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)の診断を受け、入院中にR-CHOP療法を実施した。第1~3クールまで行いながら、有害事象による廃用症候群に対しての理学療法を開始した。ベッドサイドでの運動療法から進め、屋外歩行可能なレベルとなり、退院前訪問指導を経て、自宅退院となった。再入院後、R-CHOP療法の第4・5クール実施し、理学療法により、体力維持と自主トレーニング指導を行った。再々入院後、R-CHOP療法の第6クールを実施して、化学療法の適応の限界とされたため、開始から236病日を経て、介護保険のサービスを利用しながら、自宅退院となった。 結論: DLBCL患者へのR-CHOP療法を行うと入院期間が長期化する可能性が高い。理学療法は、早期からの廃用症候群の予防と血液検査所見に合わせた対応を行うことが重要である。これにより、80歳後半の高齢者であっても、在宅生活の復帰が期待できる。
  • 葛西 美波, 大杉 元気, 島田 大資, 宍戸 健一郎, 大内田 友規, 森内 康之
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 29 巻 p. 93-96
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー
    認知症のBPSDは環境因子の影響が大きいことが知られている。病院ではBPSDを認める認知症患者の対応が確立されていないことも多く、ケアの困難感が数多くの研究で報告されている。また、この困難感ゆえに介護者のストレスを誘発し不適切なケアへとつながることでBPSDを増幅させるという悪循環が起きる場合があるとされている。一方でBPSDに対して行動分析学の有効性が示されている。今回、BPSDの一種である徘徊を繰り返す患者に対して本人の性格・病前の習慣を踏まえた上で上記の悪循環を断ち切るものとして行動分析に着目し、個別性を重視したアプローチを実施した。その結果、スタッフからの徘徊に対する忠告が減ると同時に本人のストレスも軽減し、患者の徘徊頻度の減少を認めた。中でも、早期の安静度の変更と身体拘束の解除を行うことで、患者およびスタッフのストレス軽減に繋がったと考えられた。
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