本研究の目的は、コミュニティソーシャルワークにおける個別支援と地域支援の統合の可能性を探ることである。その為に、社会モデルを理論的視座として「地域共生社会」についての理論的検討を行った。加えて、長久手市社会福祉協議会におけるCSWの取組みから実践的検討を行った。長久手市社会福祉協議会では、CSWが個別支援と地域支援の両方の機能を担っている。また家族や地域住民等との相互作用で生じる「二次障害」によって社会的孤立となり、「制度の狭間」の課題を抱えるに至る蓋然性が高く、CSWは個別支援を、地区社協の設置・運営や見守りサポーターの養成、サロン活動の支援、地域福祉学習会の実施などの地域支援と意図的に連動させて、総合的に実践を展開している。
本研究では、次の事を明らかにした。「二次障害」がCSWの支援の焦点の重要な要素の一つであり、個別支援と地域支援の統合によって有効なアプローチにつながる。また、社会的孤立や社会的排除に陥れられている人々は、大多数の非障害者により無自覚的に、そもそも考慮もされず困難を生じさせられており、これら差別や抑圧は潜在化している。この無自覚的な社会意識に個々人が気付くことが「我が事」への第一歩であり、個別支援と地域支援を統合したCSWの支援展開に地域住民を巻き込むことによって、この気付きを促すことができる。このプロセスを経ることで「我が事」となり、「地域共生社会」の実現に向かうと考えられる。
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