電子線照射に伴うそば粉の菌数変化や, 品質等について検討したところ, 以下の結果が得られた。
1.そば粉中の菌数を減菌するに, 電子線照射の方が, 極めて短時間で処理できることが判った。また, 電子線あるいはガンマ線を同吸収線量レベル照射したそば粉中の残菌数は, 電子線の方が僅かに多い傾向を示すものの, 両放射線処理における決定的な違いは認められなかった。
2.電子線あるいはガンマ線照射時における酸素の存在は, そば粉の菌数変化に殆ど影響を及ぼさないことが認められた。
3.電子線の照射量の増加に伴って, 過酸化物価 (POV) の上昇が起こったが, 脱酸素剤で酸素を除去した試験区では, POV値の上昇が抑制された。
また, 色調変化においても, 酸素を除去した試験区で色調の保持効果が高かった。
4.酸価 (AV) は, 照射量や酸素の有無等に殆ど影響されなかった。
5.吸収線量3kGyで, そば粉へ電子線を照射したものと, ガンマ線を照射したそば粉脂質のPOV及び, 色調の変化には, 際だった差異は認められなかった。
6.電子線照射に伴ってミキシング特性や, 生地物性の低下が認められたが, 酸素の存在による物性への影響は小さかった。
7.酸素を除去した状態で照射処理したそば粉は, 麺そば粉の放射線殺菌に関する研究 (第8報) にテクスチャーの低下を起こすものの, 色調や香りの変化が少なく, 比較的良好な状態であった。
ガンマ線と電子線照射そば粉による麺の官能評価では, そば粉の配合割合の違いが電子線照射の方に大きく起こり, 配合比30%の電子線照射による麺の評価は, 非照射そば粉を使用した麺と遜色なかった。
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