復興農学会誌
Online ISSN : 2758-1160
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巻頭言
原著論文
  • 原田 直樹, 本島 彩香, 野中 昌法
    2024 年4 巻2 号 p. 2-
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/08/24
    ジャーナル フリー

    2011 年に発生した東京電力福島第一原発事故以降,同一圃場内での土壌放射性 Cs 濃度の水平分 布についての報告はほとんどない。我々は 2012 年にダイズ(Glycine max)とアズキ(Vigna angularis)の 栽培試験を福島県内の阿武隈中山間地で実施した。その際,現地畑圃場内に 27 区画(各 2.5×3 m)設けて それぞれの土壌137Cs 濃度を深度別に測定したので,本報ではそれらの値のばらつきを中心に報告する。本 圃場の土壌理化学性には標高の高低に沿って若干の違いが見られた。0~10 cm 層の土壌 137Cs 濃度は平均 0.97 kBq kg−1-乾土で,ばらつきを変動係数(CV 値)で表すと 17.5%となった。10~20 cm 層の平均値は 0.38 kBq kg−1-乾土と上層よりも有意に小さかったが、CV 値=51.7%とばらつきはより大きかった。土壌 137Cs 濃度と土壌 pH(H2O)や陽イオン交換容量,交換性カリ含量(Ex-K)との間に相関関係はなかった。現 地圃場では 2012 年 6 月の試験開始までに計 2 回(推定)のロータリー耕を行っているが,今回の結果は福 島第一原発事故直後に土壌表層に沈着した放射性Cs が水平方向や深さ方向へ均一に再分配されるには不十 分だったことを示している。

  • 溝口 勝, 板倉 康裕
    2024 年4 巻2 号 p. 8-
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/08/24
    ジャーナル フリー

    福島県飯舘村深谷地区にある「あいの沢オートキャンプ場」は村外からの利用者も多い人気スポットである。しかし,周囲が山林に囲まれているために携帯電話の電波が入らず,利用客からWi-Fi を使えるようにしてほしいとの要望が絶えない。本論文では,市販のWi-Fi 中継器を適切に設定配置する方法により「宿泊体験館きこり」のWi-Fi をキャンプ場とイベント広場に拡張する実験について紹介する。そして,中山間地の多い日本の農業農村地域における通信インフラ整備について考察する。

現場からの報告
  • 加藤 信行
    2024 年4 巻2 号 p. 14-
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/08/24
    ジャーナル フリー

    栃木県立大田原高等学校が取り組んだ飯舘村実地研修や他校との連携,そして復興農学会研究会への参加を通じて得られた成果を報告する。2019 年度より開始された飯舘村実地研修(福島県相馬郡飯舘村)では,放射線教育を目的とした研修が復興教育への取り組みに拡大し,生徒たちは現地での学びと交流を通じて震災の現状や復興活動に深く関わることができた。研修後は,学校内外で成果を発表し,復興支援の啓発活動も行われいる。2022 年度からの他校との連携では,福島県立安積高等学校,福島県立白河高等学校の高校生との交流が行われ,復興に関する発表やディスカッションが行われた。また,復興農学会研究会では,生徒が研究発表や質疑応答の経験を積み重ねた。生徒たちは専門家の前での発表や質疑応答を通じて,科学的リテラシーを向上させ,自らの研究や活動について深く議論する機会を得ることができた。今後は,正しい知識の獲得だけでなく,情報発信の方法や他校との連携を強化していくことが重要である。異なる背景を持つ高校生同士の交流を通じて,次世代の復興を担う人材を育成し,地域の復興支援に貢献していくことを目指したい。

  • 怒和 桃子
    2024 年4 巻2 号 p. 20-
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/08/24
    ジャーナル フリー

    要旨:2023 年度復興農学会に参加し,報告発表を行う過程においては,震災や復興の在り方を考えていくための言葉を自身がもつための手段として, 震災当時からのニュース記事の分析,インタビューを行い「言葉の内在化」を試みた。しかし,情報に自ら近づく「言葉の内在化」を行うには,読む,聞くという体験に加え,実際に現地へ訪れる必要性があると考えた。そこで,学会に付随して開催されたエクスカーションに参加し,今回の学会参加を通した福島での自身の経験を深めることを考えた。 本報告では, エクスカーションとして飯舘村や南相馬市,双葉町,浪江町などを訪れ,考えたことを報告する。

  • 増田 悠希
    原稿種別: その他
    2024 年4 巻2 号 p. 24-
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/08/24
    ジャーナル フリー

    2024 年7 月6 日から7 日にかけて実施された福島県飯舘村でのフィールドワークでは,東京電力廃炉資料館や中間貯蔵施設,地域コミュニティ施設の見学や地域住民との交流を通じて,震災後の福島の現状を学んだ。山口から福島までの長旅の末に訪れたこの地では,事故の衝撃と復興の“今”を目の当たりにした。初日は富岡市の廃炉資料館で事故の詳細と復興の取り組みを学び, 大熊町の中間貯蔵施設で除染土壌の処理状況を見学した。2 日目には,新規就農者の経験とスマート農業の取り組みを聞き,ブドウ畑での農作業を体験した。これらの活動を通じ,福島の再生への努力と現地の方々の思いを実感した。また,福島という地名に対する被災のイメージの功罪についても感じることとなり,復興後の福島を正しく理解することの重要性を認識した。本フィールドワークは,福島の現状を学ぶ貴重な機会であり,未来への我々世代の責任を自覚する契機となった。

書評
第3回復興農学研究会
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