Journal of Reproduction and Development
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38 巻, 5 号
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  • 磯貝 保
    1992 年 38 巻 5 号 p. j1-j6
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種供胚牛の過排卵処理による胚生産成績に影響する要因を検討した.分析には84頭延455回の処理記録を用い,回収総数,回収胚数,正常胚数,受精率,正常率の5項目について,回収時における季節,年,季節と年の交互作用,分娩年齢,分娩後経過時間,分娩年齢と分娩後経過時間の交互作用および処理間隔を変動因とする分散分析を行い,さらに,処理回数毎の分娩後経過時間の影響を分析した.
    その結果,回収総数,回収胚数,正常胚数において季節が,回収総数,回収胚数,受精率,正常率において分娩年齢が,回収胚数,正常胚数,受精率,正常率において分娩後経過時間が有意な影響を示したのに対し,年,季節×年,分娩年齢×分娩後経過時間および処理間隔には明らかな影響は認められなかった.各効果の最小二乗平均値をみると,季節については春先にあたる4~5月の上昇と暑熱期にあたる8月を最大とする低下が示された.分娩年齢については採卵数,正常率ともピーク以降加齢に伴う成績低下がみられたが,そのピークにずれ(それぞれ3歳と5歳)がみられ,正常胚数には3~6歳の間に顕著な差が認められなかった.分娩後経過時間については,その影響が反復の効果とは別に単独で存在することが示唆され,分娩後1年目と2年目に差がみられなかったのに対し,3年目以降の胚生産成績は明らかに低下した.一方,処理間隔の長短による差は全くみられなかった.
  • 内海 恭三, 西田 美恵子, 木村 康二, 入谷 明
    1992 年 38 巻 5 号 p. j7-j13
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ガラス化液に使われる凍害保護物質の細胞毒性,ガラス化のし易さ,ガラス化状態の安定性を評価して,ガラス化液の特性とラット桑実胚のガラス化保存能との関係を調べた.Glycerol(GI)は5分間の室温処理では50%の濃度まで胚の生存性に影響を与えなかったが,50%濃度のpropandiol(Pd)やbutandiol(Bd)は1分の処置により致命的な影響を与えた.しかし,これら凍害保護物質の25%液に25%Glを加えた混合液では5分の処置でも胚の障害は見られなかった.室温で処理した胚のガラス化保存では,40%および50%のGlを含む液でガラス化保存した場合,76%および88%が生存していたが,PdおよびBdを用いた場合はいずれの濃度でも生存胚はみられなかった.しかし,25%のPdや25%Bdに25%Glを混合したガラス化液では,それぞれ75%と69%の胚が生存していた.さらに,細胞非透過性の5%percollあるいはpolyvinylpyroridoneを添加した場合,胚の生存性が改善された.ガラス化液の濃度とガラス化能との関係から,Pd>Bd>Glの順にガラス化し易いこと,ガラス化液の脱ガラス化温度から,Pd>Gl>Bdの順にガラス化の安定性が高いことが認められた.以上の成績から,胚のガラス化は簡易性およびガラス化状態の安定性などから,高濃度のPdやBdは毒性が高いので,それらを細胞毒性の少ないGlとの混合液が有効であることが示唆された.
  • 後藤 和文, 宅萬 義博, 松浦 忍, 中西 喜彦, 柳田 宏一, 片平 清美, 渡久地 政康, 野中 克治
    1992 年 38 巻 5 号 p. j15-j19
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシ体外受精由来胚盤胞期胚をI法では,1.36Mグリセリンを含む0.25Mトレハロース加20%血清添加リン酸緩衝液(mPBS)で,II法では,1.6M1,2-プロパンジオール加mPBSを媒液として凍結した.I法ではストロー内の胚(2個/ストロー)を含む液層(5~10mm)の両端を空気層(3~5mm)ではさみ,残りの部分は耐凍剤を含まない同液で満たした.II法では,ストロー内の胚(2個/ストロー)を含む液層(5~10mm)の両端を空気層(3~5mm)ではさみ,残りの部分を0.2Mシュクロース加mPBSで満たした.
    次いでI法では,ストローを-7Cにセットしたプログラムフリーザー(ET-1,富士平工業製)内に移して,植氷後10分間保持した.その後毎分0.45Cで-25Cまで温度を下げ,液体窒素中に投入して保存した.H法では,ストローを直接0Cにセットしたプログラムフリーザー内に移し,毎分1Cで-6Cまで冷却後,植氷を行い10分間保持した.その後毎分0.3Cで-30Cまで温度を下げ,同温で10分間保持した後,液体窒素中に投入して保存した.
    凍結胚は30Cの微温水中で融解後直ちに受卵牛に移植(1ストロー/頭)した.受胎率はI法で12.5%(3/24),II法で37.8%(17/45)であった.現在までI法では妊娠した3頭中1頭が分娩し,残りの2頭は妊娠中である.II法では17頭中11頭(2頭は双子)が分娩を終了し,4頭(1頭は双子)が妊娠2ヵ月齢から4ヵ月齢の間に流産,残りの2頭(1頭は双子)は分娩予定月に襲った台風による事故と母ウシの肺炎のため,母ウシと共に胎児も死亡した.
  • 磯貝 保, 有馬 真紀子, 宮腰 伸, 渡辺 裕一郎
    1992 年 38 巻 5 号 p. j21-j25
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛の過排卵処理に用いる外因性性腺刺激ホルモン剤として,市販のFSH製剤(FSH-P)と混有するLH活性を低減した高純度FSH製剤(FSH-R)の比較を行った.ホルスタイン種初産搾乳牛12頭ずつに,それぞれ計36AUを4日間漸減投与し3日目にPGFを投与した.全頭とも発情確認後に人工授精を行い,6~8日目に屠殺して卵巣を肉眼的に観察した.また,解体時に子宮が傷付いた3頭を除くFSH-P処理区11頭,FSH-R処理区10頭について,子宮および卵管を灌流し胚を回収した.
    その結果,FSH-P処理区とFSH-R処理区の黄体数および胚あるいは卵子の回収総数に差は認められなかった(各々,14.2±10.6対14.7±7.4,9.1±8.2対10.7±6.8).しかし,FSH-R処理区では回収総数に対する受精率および正常率が高かった(各々,86.0対94.4%,P<0.05,72.0%対82.2%,P<0.05).また,黄体数および正常胚数が3個以上であった個体の割合が,FSH-R処理区ではいずれも100%であったのに対し,FSH-P処理区では66.7%および45.5%と低く(各々,P<0.05,P<0.01),黄体数の分散には差がうかがわれた(56.9~327.0対27.2~156.4,いずれも95%信頼区間).さらに,FSH-R処理区では子宮内環境への影響が推測される卵胞数が少なく(10.3±6.5対5.5±3.6,P<0.05),異常卵胞が存在した個体の割合が低かった(33.3%対0%,P<0.05).
    以上の成績は乳用牛の過排卵処理への利用において,FSH-RがFSH-Pに比べ有効であることを示唆するものである.
  • 徳永 智之, 古沢 軌, 岡崎 正幸, 林 司, 須藤 忠
    1992 年 38 巻 5 号 p. j27-j32
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,非129系マウス胚に由来するES細胞(F1/1)がトランスジェニック動物作製に応用可能かを検討する目的で,F1/1細胞にネオマイシンリン酸転移酵素(neo)遺伝子を導入して,得られたネオマイシン耐性ES細胞のキメラ形成能を調べた.
    減衰パルス発生装置と矩形パルス発生装置を用いたエレクトロポーション法によってF1/1細胞にneo遺伝子を導入したが,ネオマイシン耐性コロニーの出現頻度に有意差は認められなかった.得られたネオマイシン耐性ES細胞株のゲノムDNAを抽出してサザンプロットハイブリダイゼーションを行った結果,2株はバンドが検出されず,継代培養の過程で欠失したものと考えられた.他の4株では,neo遺伝子の挿入が確認された.また,それらの染色体分析を行ったところ,正常核型を示す細胞の割合は4株では元株と同程度の正常性を維持していたが,他の2株は有意に低下した.キメラマウスの作製を行った結果,作製に供した4株はいずれもキメラ形成能を維持していることが判明したが,矩形パルス発生装置を用いたネオマイシン耐性ES細胞の場合,産子生産率が低い傾向が見られた、以上の結果から,F1/1細胞は外来遺伝子の導入操作後もキメラ形成能を維持することが判明し,実際にトランスジェニックマウスの作製に応用可能と考えられた.
  • 新村 末雄, 細江 実佐, 新井 吉典, 石田 一夫
    1992 年 38 巻 5 号 p. j33-j37
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    排卵後2,11および26時間のマウスの未受精卵表面におけるレクチン結合を細胞化学的に観察し,卵表面の複合糖質がどのように変化するかを調べた.
    MPA,GS-IIおよびConAの結合は,排卵後2時間と11時間の未受精卵では前者が強度,後二者が弱度であったが,排卵後26時間の未受精卵では弱まり,MPAが弱度,GS-IIとConAが陰性となった.PNA,GS-I,DBA,SBA,BPA,WGAおよびFBPの結合は,いずれの時間の未受精卵の間においても強さに変化はみられず,FBPは弱度,それ以外のものはすべて強度であった.また,UEA-IとLPAの結合は,いずれの時間の未受精卵にも観察されなかった.
    以上の結果から,受精能が消失したマウスの未受精卵表面では,MPAに親和性のあるN-アセチルガラクトサミンを含む複合糖質が減少し,マンノースとN-アセチルグルコサミンを含む複合糖質が消失することが推察された.
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