ホルスタイン種供胚牛の過排卵処理による胚生産成績に影響する要因を検討した.分析には84頭延455回の処理記録を用い,回収総数,回収胚数,正常胚数,受精率,正常率の5項目について,回収時における季節,年,季節と年の交互作用,分娩年齢,分娩後経過時間,分娩年齢と分娩後経過時間の交互作用および処理間隔を変動因とする分散分析を行い,さらに,処理回数毎の分娩後経過時間の影響を分析した.
その結果,回収総数,回収胚数,正常胚数において季節が,回収総数,回収胚数,受精率,正常率において分娩年齢が,回収胚数,正常胚数,受精率,正常率において分娩後経過時間が有意な影響を示したのに対し,年,季節×年,分娩年齢×分娩後経過時間および処理間隔には明らかな影響は認められなかった.各効果の最小二乗平均値をみると,季節については春先にあたる4~5月の上昇と暑熱期にあたる8月を最大とする低下が示された.分娩年齢については採卵数,正常率ともピーク以降加齢に伴う成績低下がみられたが,そのピークにずれ(それぞれ3歳と5歳)がみられ,正常胚数には3~6歳の間に顕著な差が認められなかった.分娩後経過時間については,その影響が反復の効果とは別に単独で存在することが示唆され,分娩後1年目と2年目に差がみられなかったのに対し,3年目以降の胚生産成績は明らかに低下した.一方,処理間隔の長短による差は全くみられなかった.
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