Journal of Reproduction and Development
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39 巻, 6 号
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  • 佐々木 恵, 大津 信一, 近藤 栄, 三宅 陽一, 金田 義宏
    1993 年 39 巻 6 号 p. j37-j42
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    乳牛の二排卵した時の人工授精後における臨床内分泌学的な基礎資料を得ることを目的として,ホルスタイン種経産牛で自然発情期に人工授精して,二排卵した後に2個の黄体の形成が認められた17例と一排卵し正常黄体を形成して受胎した8例について卵巣の変化を調べるとともに末梢血中progesterone(P)およびestradiol-17β(E2)濃度の消長を,受胎例では排卵後30日まで,不受胎例では次回排卵日まで比較検討した.さらに,二排卵後受胎例については,産子数を調べた.
    その結果,17例中5例は双子,4例は単子を分娩し,2例は授精後それぞれ95日と106日に双子を流産した.受胎しなかった6例における次回排卵までの日数は,2例では20日と21日であり,他の4例では26~58日であった.双子分娩1例と単子分娩4例では,2個の黄体のうち1個が排卵後14~42日の間に,また不受胎で性周期が延長した4例では黄体の1個が排卵後15~33日に,他の1個が21~53日の間に退行し始めた.血中P値は,全例で排卵後12~13日まで一排卵受胎例の平均値±2SD(以下,基準値)の範囲内で推移したが,単子分娩1例と不受胎で性周期が延長した4例では,1個の黄体の退行に伴って低下した.一方,E2値は,受胎例では基準値の範囲内で推移したのに対して,不受胎例では,基準値の上方またはそれを上回る値で推移し,変動の範囲は広い傾向がみられた.
    以上の成績から,二排卵後には胚の死滅が高率に発生し,血中E2値が高い傾向にあることとの関連が推察された.
  • 林 司, 岡崎 正幸, 古沢 軌, 須藤 忠
    1993 年 39 巻 6 号 p. j43-j48
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    日本白色種あるいはダッチ種ウサギの胚盤胞から機械的に分離した内細胞塊をマウスあるいはウサギ胎仔線維芽細胞のフィーダー上で培養したところ,培養開始から1週間前後で未分化細胞様コロニーが出現した.これらを継代培養したところ,マウス胚性幹細胞に類似した細胞境界の不明瞭な島状のコロニーを形成する細胞株がそれぞれの品種から2株ずつ,計4株(M4, R1, DMR2, DMR3)得られ,このうちR1株を除く3株がマウスフィーダーを用いた培養系で樹立された.
    核型分析の結果,これらの細胞株は高率に正二倍体の染色体を維持しており,さらに浮遊培養下で胚様体を形成し,接着培養下で多様な分化像を示したことから,ni vitroにおいて多分化能を有することが明らかとなった.またマウスにおける未分化細胞の組織化学的指標とされるアルカリフォスファターゼ活性も陽性であったが,長期継代培養に伴い活性が低下し,未分化状態が失われつつあることが示唆された.
  • 李 喜和, 岩崎 説雄, 中原 達夫
    1993 年 39 巻 6 号 p. j49-j55
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    顕微授精における卵子の成熟培養時間および精子注入条件(操作液注入区と操作液無注入区)を検討し,受精卵の発生および雌雄核形成の経時的変化を明らかにした.卵胞卵子を18~26時間培養し,成熟培養時間と授精後の体外発生能の関係について検討した.その結果,成熟培養時間の延長に伴い分割率と胚盤胞期への発生率は増加傾向を示し,特に,25時間区で最も良好な成績(2細胞期胚:71.4%胚盤胞期:11.4%)が得られた.一方,操作液無注入区では分割率および桑実胚~胚盤胞期への発生率はそれぞれ28.8%(15/52)および9.6%(5/52)で,操作液注入区の19.5%(8/41)および4.9%(2/41)より有意に高かった.このことから,卵細胞質内に注入された操作液は顕微授精卵の分割および発生に悪影響をもたらすことが認められた.顕微授精および体外受精について,受精後の胚発生時間を比較した結果,顕微授精卵では3-8細胞期で4時間および8細胞期以降では8時間,それぞれ体外受精卵に比べて遅れることが示された.雌雄核形態の経時的変化の分析により,この原因は顕微授精後の雄性前核形成の遅延に起因するものと推察された.
  • 榎元 勝治, 近藤 晋, 上村 俊一, 浜名 克己
    1993 年 39 巻 6 号 p. j57-j60
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシの胚移植37例における移植後の胚の生存性を,継続的なEPFの測定により検討した.
    ウシへの胚移植は発情日を0日として,体外受精由来の新鮮胚(3例)と凍結胚(24例)を7~9日目に,融解培養胚(6例)を9~11日目に,生体由来凍結胚(4例)を7~8日目に,頚管経由法により受胚牛へ移植した.採血は移植日,移植後7日目および14日目に頚静脈から行い,また発情が回帰しないものは,その後発情が回帰するまで毎週採血し,血清中EPFと血漿中プロジェステロン濃度を測定した.
    胚移植の最終的な受胎(率)は,37例中7例(18.9%)と低かったが,体外受精由来新鮮胚の受胎(率)は3例中2例(66.7%),生体由来凍結胚では4例中3例(75.0%)と高く,凍結による体外受精由来胚の脆弱性が示唆された.血漿中プロジェステロン濃度は,移植日に全例が2.Ong/ml以上であったが,14日目には16例と減少した.血清中EPFは,移植後7日目のウシでは59.5%に検出されたが,28日目には18.g%と減少し,その間の早期胚死滅が示唆された.EPFで推測された移植後28日目(発情後35~36日目)の胚の生存率は,移植後35日目の超音波診断による妊娠数とよく一致し,早期胚死滅の診断としてのEPFの有用性が示された.
  • 培養液中のプロジェステロン値を中心として
    川上 静夫, 大地 隆温, 紫野 正雄, 香本 頴利
    1993 年 39 巻 6 号 p. j61-j66
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    要約牛黄体組織片あるいは個々に分離した黄体細胞をin vitroで培養し,これにプロスタグランジンF(PGF)単味あるいはそれに2,3の添加試料を併用した場合,in vivoでみられるような黄体機能抑制効果がみられるかどうかについて,培養液中に分泌されるプロジェステロン(P)量を目途に検討した.
    開花期大の黄体を食肉センターで採取し,次の各培養液中で37C,12,24時間培養して比較した.1)無血清培養液(基本培養液•コントロール),2)PGF単味添加培養液,3)PGF+牛子宮内膜培養濾液添加培養液,4)PGF2α+牛子宮内膜組織同時併用培養液,5)PGF注射牛由来の血清添加培養液,6)HCG十PGF添加培養液.
    その結果,HCGとPGFとの組み合わせにおいて一部Pの産生が反対に促進されたほかは,どの培養液でも,in vivoでみられるような顕著なPの分泌抑制は認められず,生体内での黄体抑制には微妙な諸因子,機序の存在が示唆された.
  • 河野 友宏
    1993 年 39 巻 6 号 p. j67-j75
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    核移植による哺乳動物におけるクローン作出技術の確立を目的に,マウス胚を用い核移植技術の開発および再構築卵の発生特性について追究した.本研究により明らかにされた主な結果は,次の通りである.1)除核2細胞期胚片側割球への核移植法により,高率に一卵性双子の作出が可能なことを示した.さらに,一卵性3つ子の作出に成功したことから,一卵性4つ子マウス作出が可能なことを強く示唆した.2)未受精卵への核移植では,まず,第一成熟分裂終期(Telophasel)の卵子から確実かつ簡便に染色体を除去できることを明らかにし,未受精卵への核移植系の確立を計った.3)除核未受精卵へ後期2細胞期胚の核を核移植して作出した再構築卵から,産子の生産に成功した.また,胚盤胞内部細胞塊細胞および胸腺細胞から作出した再構築卵が,胚盤胞にまで発生することを明らかにした.4)さらに,核移植システムによりそれぞれ適切なドナー核の細胞周期が存在し,再構築卵の発性能と密接に関連していること,およびレシピエント細胞質の活性化とドナー核の融合のタイミングが,ドナー核の再構築様式を支配する重要な要因であることを示した.これらの結果は,除核未受精卵への核移植により,初期胚核ばかりでなく,より発生の進んだ胚の核および体細胞核も再プログラムされることを明らかにした.
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