Journal of Reproduction and Development
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40 巻, 5 号
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  • 小西 正人, 青柳 敬人
    1994 年 40 巻 5 号 p. j1-j4
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシ核移植による再構築胚の発育効率を改善することを目的として,TCM-199およびCRlaaの2種類の培地を用い,媒精後1日目の卵丘細胞を除去したウシ体外受精由来胚の胚盤胞への発育率を比較検討した.
    卵巣より卵胞卵子を吸引採取し,常法の体外成熟ならびに体外受精を行った.0.1%ヒアルロニダーゼPBS(一)溶液で媒精後14~16時間目に卵丘細胞を除去し,CRlaaおよびTCM-1 99培地を,血清と卵管上皮細胞の有無により,6区に分けて媒精後8日目まで培養した.各区の構成はCRlaaおよびTCM-199培地ともに血清無添加の区,5%子牛血清を添加する区,5%子牛血清およびウシ卵管上皮細胞を添加する区の3つの区とした.7日目の胚盤胞率とその形態的評価,8日目の拡張胚盤胞率を各区間で比較検討した.胚盤胞への発育率はCRlaaの血清添加区と血清および卵管上皮細胞添加区が,それぞれ24.1%および22.1%で他区に比べて有意に高い値を示した(P<0.05).拡張胚盤胞への発育率および胚盤胞の形態的評価についても同様の傾向が認められた.また,胚盤胞率の高かったCRlaaの血清添加区と血清および卵管上皮細胞添加区での平均細胞数はそれぞれ100.1±27.7個および97.2±31.4個であり有意な差は認められなかった.
    以上の結果より,CRlaaはウシ胚の胚盤胞への発育に対して,血清成分を必要とすることならびに血清添加すれば,卵管上皮細胞と共培養した場合と比べて差のない発育効果のあることが明らかになった.
  • 直流パルス,Caイオノホアおよびサイクロヘキシマイドを用いた複合活性処理について
    青柳 敬人, 小西 正人
    1994 年 40 巻 5 号 p. j5-j11
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシ体外成熟卵子の人為的活性化処理条件ならびに活性化刺激後の胚盤胞への発育率について検討を行った.
    実験1:体外成熟培養30時間目の卵丘細胞除去卵子を直流パルス(150V/mm,90μsec)またはCaイオノホア(5μM,5min)処置により,活性化処置を行った.活性化処理卵子をサイトカラシンDを含むTCM-199+5%子牛血清(CS)にて10~18時間培養した.さらに,7日間, CRlaa+5%CSにて体外培養を行った.直流パルス区の胚盤胞への発育率は7%,Caイオノホア区のそれは9%であった.
    実験2:体外成熟培養24時間目の卵丘細胞除去卵子を直流パルス(24h:100 V/mm,90 μsec)+サイクロヘキシマイド(24~30h)区,直流パルス(24h)+サイクロヘキシマイド(24~30h)+Caイオノホア(30h)区またはCaイオノホア(24h)+直流パルス(25h)+サイクロヘキシマイド(24~30h)区で複合活性化処理した.活性化処理開始(24~42h)からサイトカラシンD処理も併用した. CRlaa+5%子牛血清にて7日間培養後の胚盤胞への発育率は37%(直流パルス+サイクロヘキシマイド区),49%(直流パルス+サイクロヘキシマイド+Caイオノホア区)および50%(Caイオノホア+直流パルス+サイクロヘキシマイド区)であった.
    本試験結果より,ウシ体外成熟卵子の人為的活性化処理により,胚盤胞への発育が可能なことならびに24時間目の若齢卵子であっても,直流パルス,Caイオノホアおよび蛋白合成抑制剤であるサイクロヘキシマイドとの複合処理により,高率に活性化誘起の可能なことが明らかとなった.
  • 小西 一之, 鈴木 一男
    1994 年 40 巻 5 号 p. j13-j17
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    黒毛和種供胚牛の過剰排卵処理に影響を及ぼす要因を調べた.卵胞刺激ホルモン(FSH)を用いて過剰排卵処理した野外での成績の中から,反復処理の影響を除くために,個々の牛における第1回目の過剰排卵処理のみを対象とし,その成績(回収卵数,正常胚数)について供胚牛の産次(4水準),FSH投与量(4水準)および季節(4水準)を要因として取り上げ,分散分析を行ってそれらの影響を検討した.その結果,産次について有意な影響を認めたが,FSH投与量と季節についてはその影響を認めなかった.また,産次とFSH投与量,産次と季節,FSH投与量と季節の交互作用は認められなかった.そこで,同成績について,産次についてのみ取り上げ,未経産,初産,2産,3産,4産,5産,6産,7~9産および10産以上の9水準を設定して,分散分析を行って検討した.その結果,回収卵数,正常胚数とも未経産の成績が最も悪く,産次の進行と共に成績は上昇し,回収卵数が5産,正常胚数は6産がピークとなるパターンがみられた.
    これらの結果から,黒毛和種供胚牛におけるFSHを用いた過剰排卵処理においては,産次ないしは年齢がその成績に大きな影響を及ぼすことが示された.
  • 小西 一之, 鈴木 一男
    1994 年 40 巻 5 号 p. j19-j23
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    黒毛和種供胚牛における分娩をはさむ反復過剰排卵処理について検討した.卵胞刺激ホルモンを用いて,同一牛に分娩をはさんで反復過剰排卵処理したものを,その分娩前の産次(前産次)において1回のみ過剰排卵処理した群(a群)および2回(b群)あるいは3回(c群)それぞれ反復過剰排卵処理した群に分け,さらに供胚牛の前産次の産次数により,3産以下を1群,4産以上を2群として分け,計6群に区分した.これら6群について,前産次と分娩をはさんだ次の産次(次産次)の過剰排卵処理成績(回収卵数,正常胚数,正常胚率)を比較し,前産次の産次数と前産次の過剰排卵処理回数が,次産次の1回目の過剰排卵処理成績に及ぼす影響を調べた.前産次の産次数が3産以下の1群では,前産次の処理回数が今回調べた3回以内(a, b, c群)においては,次産次の成績が前産次の成績に比べて有意にあるいは有意差はみられないが優っていた.このことから,前産次の処理は次産次の過剰排卵処理成績に悪い影響を及ぼすことなく,むしろ好影響を及ぼす可能性が考えられた.しかし,前産次の産次数が4産以上の2群では,前産次の処理回数が2回以内(a,b群)の場合には,前産次と次産次の成績の間に有意差は認められなかったが,前産次の処理回数が3回(c群)の場合には,次産次の1回目の成績は前産次の1回目に比べ,正常胚数,正常胚率において有意に劣るものであった.これらのことより,分娩をはさんだ反復過剰排卵処理では,供胚牛の前産次における産次数と処理回数が,次産次の過剰排卵処理に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 外丸 祐介, 河野 友宏, 中原 達夫
    1994 年 40 巻 5 号 p. j25-j30
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    融合操作に先立ち,成熟培養後33時間目に活性化処置を施した除核未受精卵(活性化卵区)および過齢卵(過齢卵区)をレシピエントに用いて,核移植卵を作出し,ホールマウント標本を作製してドナー核の形態的変化を調べ比較した.さらに,活性化卵子のヒストンH1キナーゼ活性の変化を測定し,核の再構築との関係について考察した.得られた結果は,次に示す通りである.
    1)早期染色体凝縮は,活性化卵区においては全く認められなかったが,過齢卵区では約30%の卵子に認められた.2)活性化卵区においては,ドナー核は融合後直ちに膨化に転じたが,3時間以降の膨化は限られ,顕著な膨化は認められなかった.過齢卵区では融合後3時間目から顕著な膨化が認められ,6時間目には3倍以上の膨化を示す卵が出現した.3)成熟培養後33時間目に活性化処置を行った成熟卵子におけるヒストンH1キナーゼ活性は,処置後1時間目には基礎値にまで低下していた.4)以上の結果より,ウシの活性化卵への核移植では,活性化刺激によりドナー核融合時のレシピエント卵MPF活性が基礎値にまで低下しており,ドナー核の形態的変化は極めて限られていることが判明した.
  • 関沢 文夫, 荒井 徹, 河野 友宏, 外丸 祐介, 青野 文仁, 高橋 知子, 荻原 勲, 中原 達夫
    1994 年 40 巻 5 号 p. j31-j34
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    クローン牛の生産を目的とし,活性化未受精卵への核移植法により作出した核移植胚の産子への発生能を検討した.受胚牛33頭に53個の核移植胚を移植したところ,13頭(39%)が受胎し,1卵性双子1組を含む7頭の子牛が誕生した.このうち逆子で生まれた1例を含む2頭は,生後まもなく死亡したが,外見上および剖検上は異常が認められなかった.ドナー胚が生体由来の場合と体外受精由来の場合とでは,受胎率(38%対43%)に有意差は認められなかった.しかし,流産発生率はドナー胚として体外受精由来胚を用いた場合には67%(6/9)と高率であった.また,在胎日数は正常であるようにプロスタグランジンFを使って制御しても分娩時の子牛の体重は,双子分娩の1例を除き,42.5Kg~56.0Kgと,やや大きくなる傾向が認められた.これらの結果から,活性化未受精卵を用いて作出した核移植胚は,産子への発生能を有していることが明らかになった.また,生体由来胚をドナー胚とした場合,核移植胚の産子への発生能が高いことが示唆された.
  • 青野 文仁, 河野 友宏, 外丸 祐介, 高橋 知子, 荻原 勲, 関沢 文夫, 荒井 徹, 中原 達夫
    1994 年 40 巻 5 号 p. j35-j40
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛胚の核移植に用いるドナー胚の発育ステージが,核移植卵の体外における発生能に及ぼす影響を検討した.ドナー胚は,体外受精胚を用い,媒精後68,92,116および140時間目にレシピエント卵細胞質との融合に供した.レシピエント卵は,体外成熟卵子を除核後活性化処理して用いた.融合した核移植卵は体外で牛卵管上皮細胞と共培養した.用いたドナー胚の細胞数の平均は,それぞれ13.6,13.5,23.2,40.5個であり,融合率は82-96%であった.融合した核移植卵を培養した結果,2細胞期への分割率は73-87%であり,116時間区で最も高かった.また8細胞期への分割率は22-53%で,116時間区で最も高く,140時間区で最も低くなった.胚盤胞への発生率は,それぞれ13%(13/102),3%(2/71),35%(33/95)および12%(12/99)と92時間区で低く,116時間区で高かった.本実験系において,ドナー胚の発育ステージが,核移植卵の発生能に影響を及ぼすことが明らかとなり,それはドナー胚の割球の細胞周期の時期の違いによる影響であることが示唆された.
  • 永井 卓
    1994 年 40 巻 5 号 p. j41-j52
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,豚の体外成熟•受精において安定して高い受精率および雄性前核形成率が得られる精子の処理方法ならびに卵子の成熟培養方法を確立することを目的として実施した.得られた主な結果は以下の通りである.1)射出精子を15Cで約24時間保存すると,精子の受精能獲得が促進された.2)凍結融解精巣上体尾部精子は卵子に侵入可能で,得られた受精卵が個体への発生能を有した.3)未成熟卵子を体外で成熟(静置培養)させた場合,卵子を取りまく卵胞細胞の数および培養液中のプロジェステロン濃度は,卵子の第二減数分裂中期(M-ll)への成熟率および体外受精後の雄性前核形成率に影響した.4)成熟培養液に卵胞を添加して振とう培養を行うと,付着した卵胞細胞の数に関係なく卵子の成熟率および雄性前核形成率が高くなった.5)雄性前核形成率の高低に関わらず,体外成熟卵子は成熟および体外受精後共に体内成熟卵子と同様のタンパク質合成パターンを示し,受精6時間後から経時的に25Kのポリペプチドが減少し,22Kのポリペプチドが増加した.6)卵子の受精後の雄性前核形成には卵子内のグルタチオン濃度が関与しており,システイン(0.08mM)を添加した比較的単純な培養液を用いて成熟させた卵子は個体への発生能を有した.これらの結果から,卵子を取りまく卵胞細胞の数,成熟培養液中のプロジェステロン濃度,培養方法(静置培養および振とう培養)および卵細胞質内のグルタチオン濃度が卵子の成熟,とくに受精後の雄性前核形成に重要であることが明らかになった.
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