ウシ体外受精における移植可能胚の作出効率の向上を目的として,卵丘細胞との共培養系での合成培地(CR1aa)へのグルコース添加がウシ体外受精卵の胚盤胞への発生率に及ぼす影響について検討した.
CR1aaに2%子牛血清を加えたものを基礎培地にして,グルコース無添加区,0.1mMグルコースを0~3日目まで添加した区,同濃度のグルコースを0~8日目まで添加した区,および3~8日目まで添加した区の4区で,ウシ体外受精卵の胚盤胞への発生率に及ぼす影響を調べた.基礎培地に対する0.1mMグルコース添加時期の胚盤胞への発生率に及ぼす影響では,3日目から添加した区で他区に比べて高い傾向が認められた.
次に,3日目まではグルコース無添加で培養し,3日目から0mM,0.5mM,1.0mM,10mMまたは20mMのグルコースを添加した6区を設けて10日目まで培養し,胚盤胞~脱出胚盤胞への発生率についても検討した.基礎培地に3日目からグルコースを添加した場合の8日目の胚盤胞への発生率は,10mMおよび20mMグルコースを添加した区ではそれぞれ2.8%および0%であり,胚盤胞への発生はほとんど認められなかった.無添加区,0.1mM,0.5mMおよび1.0mMにおける8日目の胚盤胞への発生率は33.8~35.9%の範囲にあったが,10日目の脱出胚盤胞への発生率は0.1mM,0.5mMおよび1.0mMでは11.7~17.4%の範囲にあり,無添加区(5.6%)より有意に高い値であった.
今回の実験において,ウシ体外受精卵の卵丘細胞との共培養では,血清添加CR1aaに対しグルコースを媒精後3日目に0.1mM~1.0mMの濃度で添加すれば,拡張胚盤胞と脱出胚盤胞への発生率が高まることが示されたことから,グルコースがウシ胚盤胞の拡張期および脱出過程に関与していることが示唆された.
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