Journal of Reproduction and Development
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40 巻, 6 号
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  • 和田 貴子, 小西 正人, 板倉 はつえ, 武富 敏郎, 青柳 敬人
    1994 年 40 巻 6 号 p. j53-j57
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシ胚盤胞の内部細胞塊(ICM)を分離することを目的として,ウシ体外受精由来胚におけるCaイオノホアの影響を処理時間とその濃度について検討した.
    ウシ卵巣より卵胞卵子を吸引採取し,常法の体外成熟,体外受精および体外培養をおこない,7または10日目の胚盤胞を実験に供した.処理時間は10~30分間および40~60分間とし,Caイオノホア濃度はそれぞれに20μM,100μMおよび200μMの3つの区を設けた.7日目胚盤胞においては200μMで処理したところ,10分経過した時,実施した全ての胚盤胞でICMの崩壊がみられたので200μM区を中止した.7日目胚盤胞を用いた場合,10~30分間•20μM処理区においてその他の区に比べ有意に高いICMの分離率(81.8%)が得られた(P<0.05).一方,10日目胚盤胞におけるICM分離率は40~60分間•100μMおよび200μM処理区において有意に高いICM分離率(80.0%および9t2%)が得られた(P<0.05).また,7日目胚盤胞および10日目胚盤胞においてそれぞれ分離率の有意に高かった3つの区においてその細胞数を調べたところ,7日目胚盤胞の10~30分間•20μM処理区において有意に多い細胞数が得られた(P<0.05).
    以上の結果よりウシ胚のICMはCaイオノボアにより分離することが可能であるが,その処理条件は胚齢により異なることが示唆された.
  • 小西 正人, 板倉 はつえ, 青柳 敬人
    1994 年 40 巻 6 号 p. j59-j64
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシ体外受精における移植可能胚の作出効率の向上を目的として,卵丘細胞との共培養系での合成培地(CR1aa)へのグルコース添加がウシ体外受精卵の胚盤胞への発生率に及ぼす影響について検討した.
    CR1aaに2%子牛血清を加えたものを基礎培地にして,グルコース無添加区,0.1mMグルコースを0~3日目まで添加した区,同濃度のグルコースを0~8日目まで添加した区,および3~8日目まで添加した区の4区で,ウシ体外受精卵の胚盤胞への発生率に及ぼす影響を調べた.基礎培地に対する0.1mMグルコース添加時期の胚盤胞への発生率に及ぼす影響では,3日目から添加した区で他区に比べて高い傾向が認められた.
    次に,3日目まではグルコース無添加で培養し,3日目から0mM,0.5mM,1.0mM,10mMまたは20mMのグルコースを添加した6区を設けて10日目まで培養し,胚盤胞~脱出胚盤胞への発生率についても検討した.基礎培地に3日目からグルコースを添加した場合の8日目の胚盤胞への発生率は,10mMおよび20mMグルコースを添加した区ではそれぞれ2.8%および0%であり,胚盤胞への発生はほとんど認められなかった.無添加区,0.1mM,0.5mMおよび1.0mMにおける8日目の胚盤胞への発生率は33.8~35.9%の範囲にあったが,10日目の脱出胚盤胞への発生率は0.1mM,0.5mMおよび1.0mMでは11.7~17.4%の範囲にあり,無添加区(5.6%)より有意に高い値であった.
    今回の実験において,ウシ体外受精卵の卵丘細胞との共培養では,血清添加CR1aaに対しグルコースを媒精後3日目に0.1mM~1.0mMの濃度で添加すれば,拡張胚盤胞と脱出胚盤胞への発生率が高まることが示されたことから,グルコースがウシ胚盤胞の拡張期および脱出過程に関与していることが示唆された.
  • 小松 武志, 坪田 敏男, 岸本 真弓, 濱崎 伸一郎, 千葉 敏郎
    1994 年 40 巻 6 号 p. j65-j71
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ニホンツキノワグマ(Selenarctos thibetanus japonicus)の捕殺個体27頭から採取した精巣と,捕獲個体13頭の精巣から採取したバイオプシー材料を用いて,性成熟年齢と,未成熟および成熟個体における精子形成の開始および至開始にかかわる幹細胞について検討した.
    精巣の大きさ,重量および精細管直径の各値は2~3歳において急激に上昇し,また精巣の組織学的観察により成熟と判断された個体は,1歳で0%,2歳で50%,3歳以上で100%であった.よって生理的な性成熟(春機発動)年齢は,2~3歳であると推定された.
    未成熟個体の精細管中には,セルトリ細胞と巨大円形細胞のみが観察された.この後者の細胞は他種の動物で報告されているGonocyteと形態学的に一致した.よってこの細胞は未成熟期から精子形成を開始するための幹細胞であると推察された.
    一方成熟個体の精細管中には,Gonocyteと類似する巨大細胞が観察され, Gonocyte-like cellと名付けられた.この細胞は非繁殖期の精細管中に急激に増加した.このような性質は他種の動物で報告されている未分化型A型精祖細胞の性質と類似した.よってこの細胞は未分化型A型精祖細胞であり,成熟期の非繁殖期から精子形成を再開するための幹細胞であると推察された.
  • 松山 浩二, 福井 豊
    1994 年 40 巻 6 号 p. j73-j79
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシ体外成熟•受精由来胚の体外発生に及ぼす酸素濃度ならびに抗酸化剤の影響について検討した.抗酸化剤としてフリーラジカル•スカベンジャーであるスーパーオキシド•ジスムターゼ(SOD)とカタラーゼの2種の酵素を用いた.実験1,2では,胚発生に対するそれぞれの最適濃度を調べた.SOD濃度を高くするにつれ(125~750μg/ml),発生が阻害される傾向がみられた.カタラーゼは,5μg/ml区が分割率,発生率ともに高い値を示したが,全ての区(25,50,100μg/ml)において有意差は認められなかった(P>0.05).実験3では,SODとカタラーゼの混合添加による胚発生への影響を調べたところ,SOD125μg/ml+カタラーゼ5μg/ml区が一番高い胚盤胞への発生率(25.6%)を示した.この結果を参考にして実験4では,2種の気相下(5%CO2,5%02,90%N2と5%CO2inAir)でのこれらの抗酸化剤の影響を調べた.その結果,5%CO2,5%02,90%N2の抗酸化剤添加区が,5%CO2inAirの抗酸化剤,添加区,無添加区の2区に対し有意に高い発生率を示した(P<0.05).しかし,5%CO2inAirでの抗酸化剤による,胚発生の改善は見られなかった.以上の結果から,高酸素下による酸素ストレスは,培養液中のフリーラジカルだけによるものではなく,他の阻害要因が存在することが考えられた.
  • 村上 司, 安達 善則
    1994 年 40 巻 6 号 p. j81-j86
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛の胚移植(ET)における受胚牛で,黄体と卵胞が共存する例および嚢腫様黄体形成例について,ETによる受胎性と血中プロジェステロン(P)濃度を検討した.その結果,黄体と卵胞が共存する例および嚢腫様黄体形成例のET当日の血中P濃度は,いずれも卵胞が共存しない例と比べて差がなかった.さらに,ETの前日から当日にかけての血中P濃度の増加量は,黄体と卵胞の共存する例,嚢腫様黄体形成例および卵胞が共存しない例のいずれにおいても,受胎例では1.6ng/ml以上であり,高いことが認められた.黄体と卵胞の共存する例と卵胞が共存しない例の受胎率は,黄体の形態が良好であったA型のものでそれぞれ66.7%,63.9%,黄体の形成がやや不十分であったB型のものでそれぞれ33.3%,25.0%であり,有意差は検出されなかったが,黄体の形態により差のあることが示唆された.また,黄体と卵胞の共存する例において,共存卵胞の破砕および外陰部の所見による受胎率への影響はみられなかった.嚢腫様黄体形成例は,黄体内腔液排除の処置により,黄体の形状の正常化と血中P濃度の増加が認められ,受胎率はこの処置をET前日に行ったものでは58.3%であり,当日に行った場合の40.0%と比べて高かったものの有意な差は検出できなかった.以上の成績から,卵胞が共存していても黄体の形状が正常であれば,また,嚢腫様黄体形成例では黄体内腔液を排除することにより,受胚牛として供用できるものと考えられた.
  • 森好 政晴, 田中 祥誉, 中尾 敏彦, 河田 啓一郎
    1994 年 40 巻 6 号 p. j87-j92
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/08/14
    ジャーナル フリー
    市販の牛乳用プロジェステロン(P)測定キット(オブチェック牛乳用EIAキット,ケンブリッジライフ サイエンス社)を用いて豚の唾液中P濃度の測定を試み,その信頼性を検討するとともに,早期妊娠診断への応用の可能性について検討を行った.
    唾液中P濃度の測定操作は,牛乳中P測定と同様であるが,標準P唾液(0.5~30.0ng/ml)は自家製のものを使用した.本法による測定感度は1,25ng/mlで,測定可能範囲は1.25~30.Ong/mlであった. P濃度が異なる2穆類のプール唾液における測定内変動係数(n=6)は6.7%(平均2.0ng/ml)と4.1ng/ml(平均14.9ng/ml),浪1定間変動係数(n=6)は17.5%(平均2.0ng/ml)と10.5%(平均13.6ng/ml)であった.また測定に要した時間は2時間以内であった.オブチェックEIAと二抗体法EIAによって測定した唾液中P濃度の間には高い相僕(r=0.937,p<0.01, n=20)が認められた.
    唾液中P濃度測定を268例の豚の早期妊娠診断に応用したところ,最終交配後17~24日目における診断適ヰ率は陽性例で96.2%(227/236),陰性例で96.9%(31/32)であった.
    以上の結果から,オブチェックEIAキットの応用により豚の唾液中P濃度の測定が可能であり,本法によって豚の早期妊娠診断が可能であることが明らかとなった.
  • 高野 有紀子, 甲斐 藏, 佐藤 孝二
    1994 年 40 巻 6 号 p. j93-j98
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    子宮への好酸球の浸潤に対する肥満細胞の関与を調べるために,肥満細胞欠損(W/Wv)マウスを用いた.卵巣除去後に7用量(0.001-0.25μg/g体重)のエストラジオールー17β(E2)を2回投与し,24時間後の子宮重量と子宮の好酸球数を組織切片上で算定した.子宮の好酸球はvehicle投与の対照群には認められなかった.子宮重量と好酸球数は投与E2量に応じて増加したが,0.05μg(/g体重)以上ではE2投与群間に有意の差は認められなかった.子宮の部位(反間膜部,間膜部,側面部)による好酸球数には差異はなかった.また,E2投与後の時間経過に伴う子宮重量と好酸球数の変化では,重量は24から48時間後まで一定であったが,好酸球数は増加し続けた.子宮内のヒスタミン含量を0.15μg(/g体重)E2を2回投与後,24時間で測定した.ヒスタミン含量はvehicle投与対照群より有意に多かったが,子宮重量当たりの濃度では差は認められなかった.以上のことから,E2投与後の好酸球の子宮浸潤は肥満細胞欠損(W/Wv)マウスにおいても示されたので,好酸球浸潤における肥満細胞の関与はないことが示唆された.
  • 苫米地 多惠子, 田谷 一善, 赤井 誠, 笹本 修司
    1994 年 40 巻 6 号 p. j99-j104
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    lgG Corporation製のACTH抗体(lgG-ACTH-1)を用いて,各種動物に応用可能なACTHのラジオイムノアッセイ(RIA)の設定を試み,サンプルからの抽出操作が不要で,高感度なRIAを安定して実施できることが判明した.RIA操作の概要は以下に示す通りである.
    測定用ポリスチレン製試験管に,BSA•RIA緩衝液を加えて全量を100μlとした血液サンプルをとり,第一抗体100μlを加えて4Cで24時間反応させる.これに標識ホルモン100μlを添加し,24時間インキュベート後,第二抗体1OOμlを加えてさらに24時間反応させる. BSA•EDTA緩衝液1mlを加え,4C,1700 gで30分間遠心分離して得られた沈澱の放射活性をγ一カウンターにて測定する.標準溶液から得られた標準反応曲線を用い,サンプル中のACTH濃度を算出する.
    本法により,各種生理的条件下のラット血中ACTH濃度の測定を試みた結果,標準曲線とラット血清の用量反応曲線は良く並行し,ラットの血清あるいは血漿1~40μlで測定可能であった.また,ラット以外の4種類の動物の血中ACTH濃度の測定を試みた結果,いずれの動物の血清も標準曲線と良く並行し,測定が可能であることが判明した.
  • 野崎 眞澄
    1994 年 40 巻 6 号 p. j105-j115
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,ニホンザルの季節繁殖を調節している機構を明らかにする目的で,環境要因と体内要因の両面から検討したものである.1)月経周期の発現状況や血中ホルモン動態を屋外飼育個体と屋内飼育個体で比較した結果,環境の季節変化に乏しい屋内飼育条件では,非繁殖期における卵巣機能の抑制が弱いことがわかった.2)サルを人工気象室に入れ,短日条件と長日条件を4ヶ月毎に負荷した.結果は日長条件に無関係に繁殖期に一致して月経周期が回帰した.そこで,非繁殖期の5-8月に短日•低温条件を,繁殖期の9-12月に長日•高温条件を負荷したところ,短日•低温条件で卵巣機能の充進がみられた.これらの結果から,ニホンザルの季節繁殖リズムを支配している主要環境要因は光周期単独ではなく,光周期と環境温度の複合要因であることが示唆されるとともに,内因性の概年リズムの存在も暗示された.4)性腺からのインヒビン分泌は,雌雄とも繁殖期に亢進し,非繁殖期に低下した.繁殖期間中,インヒビンとFSH分泌に負の相関関係がみられたことから,インヒビンは繁殖期におけるFSH分泌調節に関与していることが示唆された.5)性ステロイドホルモンに対する中枢の感受性の季節変化を知るため,卵巣摘除後エストロジェンを慢性的に投与して,エストロジェンのネガティブ•フィードバック作用の季節変化を調べた.その結果,血中LHは繁殖期の開始時期に一致して急増し,繁殖期の終了時期に一致して急減したことから,エストロジェンに対する中枢の感受性に明瞭な季節差があり,その感受性の変化がニホンザルの季節繁殖リズムの発現に重要な働きをしていることが示唆された.6)群れ飼育下のサルでは,繁殖期の開始時期におけるオスの性腺機能の上昇がメスよりも先行することから,雌雄の社会的要因も季節繁殖の発現に関与している可能性が高い結果を得た.これらの結果から,ニホンザルの季節繁殖リズムは,内因性の概年リズムと光周期•環境温度•雌雄の社会的要因などの環境要因の複合要因が,視床下部一下垂体系に働き,その部位のエストロジェンに対する感受性を繁殖期型と非繁殖期型に変化させることにより成り立っているものとの結論を得た.
  • 岡野 彰
    1994 年 40 巻 6 号 p. j117-j129
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    黒毛和種雌ウシの生涯的な繁殖能力について,以下の諸点を明らかにした.1)胎子発育:胎子体長と体重より成長曲線が得られ,胎子の発育過程が明らかになった.2)出生から性成熟までの雌性生殖器の発育:出生から性成熟までの生殖器発育を,摘出生殖器により検討した.体重約260kg以上あるいは約300日齢で性成熟に達した個体では,生殖器も十分発育していた.性成熟時の子宮重量は78-139g,子宮角の直径は1.8-2.9cmの範囲にあった.3)分娩後の子宮修復:分娩後の子宮修復過程を知るため,摘出子宮を組織学的に観察した.分娩後18から29日目では,内膜組織に多数の食細胞やリンパ球が認められた.子宮腺は不定形な断面を示し,内膜上皮直下の毛細血管の収縮は不十分であり,修復が完了していなかった.分娩後46日以後では,内膜組織から上記の異種細胞が消失し,修復が完了していた.生体内子宮の超音波映像からも,子宮修復は分娩後約40日で完了することが明らかになった.4)生涯的な繁殖能力:繁殖供用開始から淘汰までの生涯的な繁殖能力を検討したところ,雌ウシ221頭の計1167回の妊娠例で,分娩後の発情回帰,空胎日数および分娩間隔の平均は,それぞれ67.7,125.5および417.5日であった.初産と最終産年齢の平均は,2.53および8.15歳であり,累積淘汰率は5産後までに51.8%,8産後までに83.0%であった.黒毛和種雌ウシでは,繁殖供用開始月齢は15-20ケ月齢であり,他方供用限界は7-8産が目安であった.
  • 荒木 武紀
    1994 年 40 巻 6 号 p. j131-j136
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛の改良,増殖を目的に農家が飼養する多様な受胚牛を対象に胚移植(EmbryoTransfer,以下ET)を試み,その実践と普及に取り組んだ.その結果正常発情確認牛以外に,発情の外部徴候が不明瞭で外陰部より出血を発見した牛(以下出血牛)や直腸検査(以下直検)の黄体や子宮所見での発情を推定した牛(以下推定牛),また多回授精牛を対象に移植した場合でも高い受胎率をあげることができた.すなわち受胚牛の約42%を占めた出血牛でも正常発情確認牛と大差ない受胎率が得られた(57.1%;1,316/2,305対64.8%;730/1,127).
    また多回授精牛に対しても,多頭数受胎させることができた(48.3%;343/795).ETは受胎率の低い夏季に重点的に行ったが,A1に劣らない受胎率であった.これらのことが酪農家に認められ普及につながったものと思われた.ETによる生産牛は各種共進会で上位に入賞するものも多く,このことも普及に役立ったと思われた.
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