Journal of Reproduction and Development
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44 巻, 6 号
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原著
  • 伊藤 貴子, 青柳 敬人, 小西 正人, 板倉 はつえ, 武富 敏郎, 矢澤 慈人, 赤根 佳代子
    原稿種別: 原著
    1998 年 44 巻 6 号 p. j27-j32
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    ウシ胚盤胞の内部細胞塊を7日間培養して得られた細胞(以下ED細胞)の全能性を確認するため, ED細胞を核体として核移植を行った(ED細胞区).また,対照区として体外受精後5日目のウシ体外受精由来桑実胚の割球を核体とした核移植も同時に行い(桑実胚区),核移植後の再構築胚の発育率ならびに受胚牛へ移植した場合の受胎率および産仔への発育率について検討した.その結果,ED細胞区および桑実胚区における核移植後の桑実胚または胚盤胞への発育率は,桑実胚区が有意に高い値(P<0.05)であった.また,受胚牛への移植後の受胎率においては,ED細胞区と桑実胚区で有意な差は認められなかった.なお,ED細胞区の受胎牛6頭のうち4頭が分娩した.以上の結果から,本培養系によるED細胞の核は全能性を有することが確認された.
  • 岩田 尚孝, 赤松 真一, 南 直治郎
    原稿種別: 原著
    1998 年 44 巻 6 号 p. j33-j38
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    体外受精卵に由来する子牛と体内受精卵に由来する子牛の生時体重および妊娠期間について比較した.体内受精卵については,母牛群を兵庫県産と島根県産の2系統を用いて比較したところ,兵庫県産の産子体重は島根県産に比べて有意に小さく,また偏差も小さかった(雄: 兵庫県産:29.1±4.3kg vs 島根県産:31.1±5.1kg,雌:兵庫県産:28.6±5.2kg vs 島根県産:31.1±7.6kg).そこで,父母牛群に兵庫県産牛を用いて体外受精卵および体内受精卵を定法によって作製して移植後の,それぞれの産子体重,妊娠期間について比較した.体外受精卵に由来する雄の産子体重は培養液にTCM-199培地を用いた場合およびm-SOF培地を用いた場合の両者において,体内受精卵に由来する産子体重に比べ有意に大きかった(体外受精卵(TCM-199):37.6kg:(m-SOF):36.6kg vs 体内受精卵:29.2kg).また,雌の産子については体外受精卵に由来する産子の体重が体内受精卵に由来するそれに比べて大きくなる傾向が見られたものの有意な差は観察できなかった.さらに,体外受精卵由来産子の体重と体内受精卵由来のそれとの差は雄子牛において顕著であった.妊娠期間については体外受精卵および体内受精卵で有意な差は認められなかった.以上の結果より (1)体外受精卵に由来する雄産子の生時体重は体内受精卵のそれに比べて大きいこと,(2)TCM-199培地もしくはm-SOF培地で発生した体外受精卵由来の産子体重間に明らかな差は認められないこと,(3)体外受精卵および体内受精卵の妊娠期間には差が認められないことが示された.
技術短報
  • 中田 健, 土屋 英路, 森好 政晴, 中尾 敏彦, 渡辺 元, 田谷 一善
    原稿種別: 技術短報
    1998 年 44 巻 6 号 p. j39-j45
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    第一抗体に抗ヒトFSH抗体および抗ヒツジLH抗体を用い,標識ホルモンにラットFSHおよびラットLHを用いて,イヌのFSHおよびLHのラジオイムノアッセイ(RIA)の設定を試み,高感度なRIAを安定して実施できることが判明した.RIA操作の概要は以下に示す通りである.イヌFSH-RIA:BSA・RIA緩衝液を加えて全量を200μ1とした血清(血漿)サンプルをとり,第一抗体100μlを加えて32Cで24時間反応させる.これに標識ホルモン50μlを添加し,32Cで24時間反応させた後,第二抗体100μlを加えてさらに4Cで24時間反応させる.4C,1700gで30分間遠心分離して得られた沈澱の放射活性をY-カウンターにて測定する.標準溶液から得られた標準反応曲線を用い,サンプルのFSH濃度を算出する.イヌLH-RIA:BSA・RIA緩衝液を加えて全量を150μlとした血清(血漿)サンプルをとり,第一抗体50μlを加えて4Cで24時間反応させる.これに標識ホルモン50μlを添加し,4Cで24時間反応させる.第二抗体以降の処理は, FSH-RIAと同様に行い,標準溶液から得られた標準反応曲線を用い,サンプルのLH濃度を算出する.本法により,各種生理的条件下のイヌ血中FSHおよびLHの測定を試みた結果,両RIAによる標準曲線とイヌ下垂体抽出液および各種イヌ血漿の用量反応曲線は良く平行し,イヌの血漿25~100μlで測定可能であることが判明した.
1998年度島村賞受賞講演論文
  • 舟橋 弘晃
    原稿種別: 1998年度島村賞受賞講演論文
    1998 年 44 巻 6 号 p. j47-j52
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    屠畜卵巣由来卵子を利用した動物生産系は,核移植などの胚操作を産業レベルで実施する時に,その大量生産を可能にし,生産コストの削減を期待出来る.しかし,体外成熟・受精豚卵子の初期発生能は極めて低いので,本研究は,体外成熟・受精卵の初期発生能に関与する要因の解析を目的とした.まず,体外成熟・受精豚胚の発生能は,雄性前核形成不全および多精子受精の問題を改善するような体外成熟・受精系を用いても低く,成熟培地中のNaCl濃度,ソルビトールやタウリンなど細胞内浸透圧を調節する物質によっても影響を受けることを示した.また,屠畜卵巣由来卵子卵核胞の形態は体内卵胞卵子と比較して大きなばらつきが存在し,この卵核胞の形態のばらつきが初期発生能を低下させている可能性を示した.さらに,卵子内サイクリックAMPの一時的な上昇によって卵子卵核胞の形態を特異的なステージで一時的に停止させ,体外受精後の胚盤胞期への発生能を改善した.また,顆粒層細胞から分泌される Tissue inhibitor of metalloproteinase-1が成熟培養の後半に存在すると,成熟培地中に顆粒層細胞を添加した場合と同等レベルまで体外受精後の初期発生能を向上させ得ることを明らかにした.以上の知見から,体外受精後の胚盤胞への発生率を飛躍的に向上させ,移植後正常な産子を効率的に作出出来る豚受精卵の体外生産系を確立した.
1998年度斎藤賞受賞講演論文
  • 澤向 豊
    原稿種別: 1998年度斎藤賞受賞講演論文
    1998 年 44 巻 6 号 p. j53-j60
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    牛の生殖器の超音波断層像から授精後22日以降に,低エコー輝度の黄体が存在する側の子宮角腔にエコーフリーな胎嚢が観察され,また,馬では最終交配後11日頃から妊否判定が可能になった.牛の卵胞嚢腫は,音響インピーダンスが異なる嚢腫様黄体,黄体嚢腫などと識別され,卵胞の辺縁に低エコー輝度で映像化される黄体は,治療効果の判定を容易にした.牛および馬の顆粒膜細胞腫、卵巣炎,卵巣出血などは,構造物のエコー輝度が異なることから,リアルタイムに区分された.牛の子宮筋炎(実質炎,膿瘍),パピローマなどの形態異常は,健常な子宮組織および内腔の貯留液と異なる断層像を示し,馬の子宮粘膜層の嚢胞も,その形状および辺縁が胎嚢と相違することが判明した.牛の卵管通気検査では、卵管を通過する高エコー輝度のCO2が映像化され,通気不能な卵管の特定を可能にした.牛および馬の陰茎血腫,陰嚢・精巣炎,腫瘍,潜伏精巣,副生殖腺炎などは,その構造物のエコー輝度が周囲の健常組織と異なり,リアルタイムな識別が容易になった.
  • 旭 日干
    原稿種別: 1998年度斎藤賞受賞講演論文
    1998 年 44 巻 6 号 p. j61-j69
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    内蒙古は中国の牧畜産業の重要な基地の一つであり,1997年に全自治区で飼養されている家畜の総頭数は約7,112万頭に達している.近年来,国家の改革・開放及び市場経済政策の実施に伴い,自治区の畜産業も大きな変化を見せている.自治区政府は外国からの新品種導入,また,人工授精技術の普及並びに体外受精,胚移植などの畜産におけるバイオテクノロジー技術の応用化によって,品種の改良と繁殖事業を進めつつある.それでは,この研究と応用現状を紹介したい.近年来,家畜胚移植における国際交流の活発化に伴い,生体の代わりに外国から良質牛凍結保存胚の導入とそれに関する移植試験も行った.1991~97年の間に,胚移植した家畜が一万頭に達している.その胚移植の受胎率については,草原放牧と乳用飼養場の場合に分け,牛は,それぞれ,41.1%(145/353)と51.6%(157/304)であり,綿羊とカシミヤ山羊は,それぞれ,74.6%(241/323)と79.9%(314/393)である.一方,体外受精における牛胚生産効率,凍結保存等の分野においても数多くの応用的試験を行った.1995~96年にオーストラリアで一万個の牛体外受精凍結保存胚を生産し,内蒙古地区を中心に大規模な胚移植計画を実施している.移植後の受胎率と産仔率の平均値が1996年には,それぞれ19.9%(33/166)と16.9%(28/166)であった.また,生後1.5~5.0ヶ月齢のカシミヤ子山羊をドナーとして用い,FSH-LHによる過剰排卵処理した結果,1.5~3.0ヶ月齢のものにおいて,発育卵胞数,回収卵胞卵数及び体外成熟供試可能卵数が,一頭当りそれぞれ,42~56,28~31,22個であった.子山羊卵の体外成熟,体外受精後の分割卵率を指標として,成熟培養時間を検討した結果,16~20時間の成熟培養が適していると判断した.体外受精後48時間で2~4細胞期に発生した胚の移植により子山羊がF3代まで生産され,若齢山羊の卵胞卵は,十分に個体への発生能を有していることが認められた.
1998年度 日本繁殖生物学会シンポジウム講演論文-卵巣機能調節の基礎と臨床
  • 佐藤 英明
    原稿種別: 1998年度日本繁殖生物学会シンポジウム
    1998 年 44 巻 6 号 p. j71-j80
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    卵胞発育は卵巣内外の因子により制御されている.卵巣外からの因子は血管網や組織液の流れを経由して卵胞に届き機能を発揮するので,その機能発現は血管網の発達の程度に影響されると予想される.組織学的に観察すると卵巣における血管分布には大きな偏りがある.小さな卵胞には血管分岐が少なく,大きな卵胞には卵胞基底膜周囲に豊富な毛細血管網をつくる.このような形態学的特徴は卵胞発育,特に卵胞の選択的発育に血管網や血管網の増殖・退行調節因子が係わることを示唆している.著者らは卵胞の選択的発育に及ぼす毛細血管網や血管増殖・退行調節因子などの影響について解析してきたが,その概要を紹介する.
  • 束村 博子
    原稿種別: 1998年度日本繁殖生物学会シンポジウム
    1998 年 44 巻 6 号 p. j81-j90
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    哺乳動物の生殖機能は視床下部一下垂体―性腺軸と呼ばれる一連の神経内分泌機構により制御される.雌では視床下部の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンからパルス状に分泌されるGnRHにより下垂体からの性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン:LHおよび卵胞刺激ホルモン:FSH)のパルス状分泌が促され,これにより卵胞発育ならびに性ステロイドホルモンの合成が刺激される.周排卵期にはGnRHパルスの頻度の上昇に伴い成熟卵胞から分泌されるエストロジェンの血中濃度が上昇し,そのポジティブフィードバック作用によりGnRH/LHサージを引き起こし排卵に至らしめる.一方,血中エストロジェンは低濃度ではネガティブフィードバック作用によりGnRH/LHのパルス状分泌を抑制する.光周期,ストレス,吸乳刺激などの環境因子は,GnRH/LHのパルス状分泌に影響を及ぼし,性腺機能を調節する.一方,これらの環境因子によってパルス状GnRH/LH分泌が抑制された動物においても外因性の高濃度エストロジェン投与によりGnRH/LHサージを誘起することができる.このことは,脳内にはGnRH/LHのパルス状およびサージ状分泌を制御する機構が独立して存在することを示唆するとともに,パルス発生を制御する脳内機構が卵胞発育から排卵に至る過程の制御に中心的な役割を果たすことを示唆するものである.
  • 李 俊佑, 石田 真帆, 西原 真杉, 澤崎 徹, 高橋 迪雄
    原稿種別: 1998年度日本繁殖生物学会シンポジウム
    1998 年 44 巻 6 号 p. j91-j97
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    ラットのような不完全性周期動物では,排卵後に形成される黄体はプロジェステロン分泌能を持たないまま機能的に退行するため,約4日間という短い性周期を回帰する.一方,完全性周期動物では約2週間の黄体期が存在するため,性周期の長さはそれ以上に延長する.完全性周期動物においても,ウシ,ヒツジなどの反芻動物では霊長類などと異なり,黄体期に排卵に至らない1,2回の卵胞群の発育(以下,黄体期発育波)が起こることが知られている.シバヤギにおいて黄体期発育波を超音波画像診断装置を用いて検討したところ,基本的に2回の黄体期発育波を持つことが明らかとなった.次に,排卵後第3,4日にプロスタグランジン(PG)F2αを投与して黄体を退行させたたところ,第1黄体期発育波の主席卵胞の排卵が第6日に観察された.さらに,このようにして誘起した排卵後,同様にPGF2α 処置を繰り返すことにより,6頭の動物で4周期にわたってほぼ6日毎に排卵を誘起することができた.すなわち,シバヤギにおいても黄体からのプロジェステロン分泌を阻止することにより,ラットに見られるような不完全性周期様の性周期が回帰することが明らかとなった.ラットでは黄体にプロジェステロンを代謝する20α-水酸化ステロイド脱水素酵素(20α-HSD)の遺伝子が発現することにより不完全性周期が維持されている.ラットとシバヤギでは20α-HSD遺伝子プロモーターの活性化機構が異なると考えられ,適切なプロモーターの支配下で黄体に20α-HSD遺伝子を発現する形質転換シバヤギを作出すれば,不完全性周期を回帰する可能性が高いと考えられる.
  • 澤向 豊
    原稿種別: 1998年度日本繁殖生物学会シンポジウム
    1998 年 44 巻 6 号 p. j99-j105
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    分娩後30日以降に,卵胞発育障害と診断された乳用牛5頭の卵巣の変化をおよそ3週間にわたり,超音波画像で観察した.その結果,3頭の卵巣に卵胞ウエーブ様の形態学的な変化が映像化された.また,中途で黄体形成を認めた1頭を除く,4頭の血漿中P4濃度は1.0 ng/ml以下で推移した.2~3日間の連日人工授精後,排卵障害と診断された乳用牛5頭の卵巣に直径1.0~2.0 cmの卵胞が映像化され,そのうちの2頭にはややエコー輝度の高い黄体が共存し,血漿中P4濃度は1.0 ng/ml以上であった.しかし,超音波画像でも成熟卵胞と変性卵胞との識別は困難であった.思牡狂症状型の卵胞嚢腫と診断された乳用牛3頭の卵巣を10日間隔で30日間にわたり,超音波画像で観察した.全頭で新たな卵胞の異常発育と退縮がみられ,卵胞ウエーブ様の変化の存在を窺わせた.しかしながら,嚢腫卵胞にある顆粒層細胞の増殖,変性,消失などは映像化されなかった.血漿中P4濃度はhCG10,000 IU投与後,2頭で上昇を認めた.
  • 中尾 敏彦
    原稿種別: 1998年度日本繁殖生物学会シンポジウム
    1998 年 44 巻 6 号 p. j107-j113
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    ウシの発情のコントロールには,これまで主に,gestagenの投与により人為的に黄体期を作る方法と,prostaglandin(PG)F2α 投与により黄体期を短縮する方法が用いられてきた.これらの方法は発情発見効率の向上にはある程度有効であるが,処置後発情発現までの日数に1~5日間のバラツキがあり,定時人工授精を行った場合,十分な受胎率が得られないという大きな問題を抱えている.このような問題を解決できるものとして最近注目されているのが,予め,gonadotropin releasing hormone(GnRH)の投与により,卵胞ウエーブをコントロールしておいてからPGF2α を投与し,首席卵胞が成熟した段階で再度GnRHを投与して排卵を誘起する方法である.この方法によれば,2回目のGnRH投与後24~32時間に排卵が同期化されるため,その12時間前,すなわち,2回目GnRH投与後12~20時間が授精の適期になる.したがって,この時期に人工授精を行えば,発情発見を行わなくても,十分な受胎率をあげることができる.この排卵同期化の方法は,発情発見なしで,一定期間内に100%の牛に人工授精を実施できることから,米国を中心に急速に普及しつつあり,今日では,ウシの繁殖管理技術に革命をもたらした新しい技術としてその実用性が高く評価されている.排卵同期化法の方法論についてさらに詳細な検討が行われ,定時人工授精による受胎率に影響する要因が明らかにされれば,繁殖管理における実用性はますます高くなるものと考えられる.
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