家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
11 巻, 4 号
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  • 小笠 晃, 須川 章夫
    1966 年 11 巻 4 号 p. 103-107
    発行日: 1966/02/28
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    以上性機能障害牛として交尾欲欠如症(発育不良のものを含む)4頭,精子減少症5頭計9頭に対してVetro-phinによる治療を行ない,性行動,精液検査,biopsyによる精巣紐織検査を実施して経過を観察した。交尾欲欠如症4頭のうちNo.B1はVetrophin投与開始後12日目に射精可能となった。またNo.B2は発育不良で体重220kg程度であったが,No.B1よりも投与量を増し5RUを連日5回静注した結果6日目に始めて射精した。本牛は若令牛でありながら精液性状も短期間に促進されて良好な精子を生産した。No.FB15は黒毛和種,体重975kgで交尾欲が廃絶し精液採取不能となったが,No.B1同様testosteroneの投与で効果を表わさなかった牛である。勿論相当多量(300mg)のtestosteroneを投与すれば,交尾欲が発現したかもしれないが,testosteroneの投与によって下垂体機能が抑制され,精液性状が1時的に低下すること,さらにtestosteroneの投与によって発現した交尾欲が長く持続するとは限らないので,Vetrophin 5 RU連日10回筋注を試みた結果投与終了後9日目から交尾欲が発現し精液性状も改善された。FB36は陰茎の勃起突出が不十分で,時折精液を包皮内に射出したが,その後採取不能となった。本牛はVetrophin 10RUを連日5回皮下注射したが,ホルモン投与後直ちに採取可能となった。しかし未だ正常牛より精液採取に時間を要する。
    このことから交尾欲,射精能の減退~欠如している症例に対してVetrophin投与は奏効することが認められた。
    次に精子減少症を呈する牛5頭の内No.B3,No.FB23は障害の程度が軽く,No.FB17,No.FB27は極めて重度な造精障害と考えられ,とくにNo.17は予後不良と診断した。No.FB20は供用開始時より精液性状が不良で,今日まで治療が試みられていたが,供用可能な程度には好転することなく長期間造精機能の減退した状態が持続していた。これらの障害牛はVetrophinの投与によって精子数の増加,精子活力の増進,奇形率の減少など精液所見の改善が認められたが,一方間質結合織の増生或は線維化が時日の経過とともに漸次高度に進行する様な症例6)や,広汎な石灰変性の認められるものでは治療効果が期待できなかった。しかし,No.FB20,FB27は体重1,500kg程度であり,投与量の増加,投与期間の延長,投与方法を変ることによって,さらに増進するかもしれないが,Antihormoneの産生が考慮されるので,一応1クールを10回までとして次回は別のgonadotrophin製剤の投与に切り替えることにした。以上今回の治療試験から明らかな様に精巣の病変の程度を良く理解した上で処置しないと折角の治療も無効となる様に思われた。
    すなわち間質組織に著しい変化がなくて,主として精娘細胞~精子細胞の段階で精子形成が遅滞している程度の造精障害牛では早期に治療すれば,かなりの効果が得られるものと考える。
  • 山内 昭二, 石尾 泰三
    1966 年 11 巻 4 号 p. 108-111
    発行日: 1966/02/28
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    外見的に何ら異常が認められないにも拘らず,精液中には全く精子が存在しない1例の豚について記録がまとめられた。2回精液採取を行なった後,精巣biopsyを試み,その後17月齢において剖検された。
    精巣は極めて小さく,正常発達の,5,6月齢程度であり,また割面は濃黒褐色を呈していた。副生殖腺はいずれも正常のものに比べ小形であったが,肉眼的な異常は認められなかった。精巣と精巣上体は疎性結合織のみで結合されていて,そこには管による連結が認められなかった。
    精巣の大部分は間細胞のみで構成されていた。散在性に管状構造の遺残と思われるものが存在していたが,ある領域では,殆んど退化した精細管から全く正常な精細管に至る各段階の精巣管が認められた。一方,精巣上体の管腔には精子は全く存在していない。
    管状構造の内部には多核巨細胞が認められたが,これは精巣形成不全および精巣機能不全の場合に見られる巨細胞とは異なる形質のものである。多核巨細胞については不明の点もあるが,精細管の退行に関連するものであろうと想像される。
    本例はWOLFF氏管の形成不全による一つの型であろうと考えられる。すなわち,精巣網と精巣輸出管との連結が実現しなかった症例と思われる。しかしながら,領域的に精細管組織が認められる経緯は現在の所説明できない,従来報告されてきた精巣および附属性腺の形成不全の例にくらべ,精巣の組織学的所見は極めて特異的であり,興味深い知見が得られた。
  • 岸 昊司, 谷口 隆一
    1966 年 11 巻 4 号 p. 112-114
    発行日: 1966/02/28
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    マメ科草中のEstrogen様物質の乳牛繁殖に及ぼす影響を知る目的で,2頭の経産牛(2経産)を最初の1性周期(対照期)はマメ科植生比率10~30%の草地に,次の1性周期(試験期)は40~55%の草地に夫々放牧し,ほぼ3日間隔で血中遊離EstrogenをSULMAN法により定量すると共に,卵巣の変化並びに発情徴候を観察し,次の結果を得た。
    1.対照期並びに試験期を通じて血中遊離Estrogenの消長は黄体開花期及び発情期附近においてピークを有する2項曲線を示し,正常牛のEstrogen曲線とほぼ一致した。
    2.卵巣所見及び発情徴候は正常と考えられた。
  • 竹内 三郎, 清水 寛一, 豊田 裕, 河合 豊雄, 足立 定彦
    1966 年 11 巻 4 号 p. 115-119
    発行日: 1966/02/28
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    An experiment of oestrus synchronisation by CAP (chlormadine) and the following fertility were carried out with 7 Japanese Native cattle. The range of months after the last calvings in these cows varied from 2 to 7 months, and the stage of the cycle laid between 2nd and 16th day when the treatment started. 0.05 mg/Kg body weight of CAP was daily given for 15 days per os. The oestrus appeared between 3rd and 6th day after the end of the treatment (excluded one cow of accident). Conception rate (examined by rectal palpation and non-return over 50 days) at the first oestrus was 2/6, and at 2nd 3 out of 6 (included 2 cows which return to oestrus after 51, 75 day-possibly due to early embryonic death).
    Judging from the results of ovarian changes detected by rectal palplation, CAP did not depress the follicular development, however, did ovulation and oestrus. In addition, cows of younger (a few) months after the last delivery (lactating) seemed difficult to be conceived at earlier insemination.
    The treated cows showed a considerable increase (ca 30 Kg in average) in body weight during and especially after the administration (so far 18 days after the end of treatment when weight measured), although slight changes were seen in controls (dry and wet, 10 each).
    The case numbers of the present experiment were not enough to draw any definite conclusion, but evidences which should be carefully considered in the future trial were pointed out.
  • 柏原 孝夫, 田中 亮一, 松本 卓也
    1966 年 11 巻 4 号 p. 120-126
    発行日: 1966/02/28
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    大豆種子種(たちすずなり,ねましらす,農林2号)および改良ベツチ(那系6号)種子のlectinを用いて吸収試験を実施した。牛精子のZI,IIおよびIII agg-lomerationを調べ,雄牛の個体間で抗原的特異物質に量的ならびに質的差異が認められた。たちすずなりおよびねましらすではホルスタイン種H-33が最も強い反応で,H-31が最も低かった。また農林2号ではH-2が常に強く一方H-8が常に弱く反応した。改良ベツチを用いるとき,H-15が常に強く反応し,H-8は最低の反応を示した。血縁関係の類似性は,父子間の方が異母兄弟または異父兄弟より有意に大きかったが,不明の点が多く結論は出せなかった。
    次に血縁関係の反応の類似性は父子間が異母兄弟と比較して有意に高いことを示したが,父子間の類似性が強ければ異母兄弟も当然類似しても良く,従ってこの結果は不思議である。しかし第3表を詳細に検討するとき父子間でもH-2とH-4の間で共通率が60%程度のものもみられ,一方異母兄弟間でもH-5とH-6の間では共通率88.2%,H-14,H-25,H-60の間で共通率90%もみられることより必ずしも画一的な反応を示すとは考えられず。一概に統計的結果を信用するわけには行かない,この例数より反応の遺伝的変化を解析することは危険で,将来例数を増して後,判断を下すことにする。
  • 佐伯 祐弍, 秋田 富士, 村上 一雄, 神部 昌行
    1966 年 11 巻 4 号 p. 127-132
    発行日: 1966/02/28
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    生後20~22日齢の未成熟雌マウスを用いて,まずPMSで前処置を行ない,54時間後にHCGを追注し,20時間後に剖検して排卵成績を求め,両ホルモンの使用適量を検討した。
    1.PMS0.5I.U.で前処置したのち,HCGの0.51.U.追注で100%の排卵率がみられ,PMS4.0I.U.を用いるとHCGは0.1~0.9I.U.の範囲ですべての区が100%の排卵率を示した。しかし,PMSの用量と排卵率との間には4.0I.U.を中心とする曲線回帰を示すから,PMSを一定量以上に用いるとかえって排卵率は低下する。
    2.排卵した卵子数とホルモン量との関係は,排卵率の場合と類似した曲線回帰を示した。
    3.以上の排卵率および卵子数の2点からみて,最高の排卵成績を得るためには,PMS3I.U.と,HCG0.3~0.5I.U.を用いるのが適切であろう。しかし,実際性腺刺激ホルモンの力価を検定する場合には,前処置に用いるPMSを適宜調節する必要があろう。
    4)卵巣および子宮重量はPMSおよびHCGの共用によって,かなり大きい影響を受けるが,これだけでGTHの力価を検定することは困難である。また,ネズミの体重についてその平均が8~109の範囲に止まるよう規正する必要があろう。
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