家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
15 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 大沼 秀男
    1969 年 15 巻 2 号 p. 39-46
    発行日: 1969/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    精子の頭部前半をおおっている帽子状の構造, すなわち, acrosomeは約70年前MEvEs1) によって発見されたが, その構造や役割が明らかになってきたのは比較的新しい。
    1950年LEBLOND2) はacrosomeがPAS染色で良く染まることに着目し, PAS染色を用いて, それまで意見の一致しなかったラットの精子完成を見事に画くことに成功した。更にBURGOS&FAWCETT3) は優れた電子顕微鏡技術を駆使してモルモットの精子完成を研究し, それらが端緒となって精子完成ばかりでなく, 精子形成に関する研究も著しく進展した。
    また, ウニ精子が受精に際してacrosome反応を起こすことが知られ4), 受精におけるacrosomeの役割についても多大の関心が寄せられるようになった。
    しかし, 家畜精子のacrosomeを対象とした研究は比較的少なく, 未解決のまま残されている問題が多い。そこで, 家畜精子のacrosomeをめぐる問題点の解明を目的として一連の実験を行なった。
  • 窪道 護夫, 猪 貴義, 鈴木 勝夫
    1969 年 15 巻 2 号 p. 47-50
    発行日: 1969/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    PMSGのdd-マウスによる生物学的測定法を検討する目的で前報の実験結果にもとづきPMSGの用量反応曲線,標準品による反復試験をおこなった。得られた結果は次のものである。
    1.PMSG1回皮下注射後,解剖時間を96時間に限定してPMSGO.5~10.0I.U.の用量に対する各生殖腺反応を検討したところ,腟開口反応は2.0I.U.まで0%,4•5~10.0I.U.の範囲で一定傾向を示す反応曲線が得られた。卵巣重量はかなりの増加を示したが急な傾斜は示さなかった。しかし,子宮重量は1.0~2.0I.U.の用量で漸増した。出血炉胞黄体形成反応は4.5~10.0IU.の用量でY0=5.373X+0.404のプロビット回帰直線が得られ直線性は否定されなかった。子宮重量反応は1.0~2.0I.U.の用量で回帰直線Y0=14.82X+2.41が得られ直線性並びに回帰係数の高い有意性が認められた。
    2.出血 ?? 胞黄体形成反応,子宮重量反応について1用量15頭による4点法検定を3回反復したところ両反応ともに試験はすべて成立した。力価比は0.9~1.1であった。誤差の95%信頼限界はかなりの巾を示したが,一定の範囲にあった。
  • 窪道 護夫, 猪 貴義, 鈴木 勝夫
    1969 年 15 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 1969/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    HCGとPMSGから成る混合製剤中の各GTH活性を特異的に分離測定する可能性について検討したところ次の結果を得た。
    1)交叉赤血球凝集抑制反応において,HCG,PMSGの特異反応が成立し,抗-HS,抗-ESとの反応は成立しなかった。また,HCGとPMSGを混合した検体を用いてHAIRをおこなった結果,HCG,PMSGを各々特異的に分離測定することが可能であった。
    2)各抗血清のGTH活性に対する生物学的作用を検討した結果,抗-HCG注射マウス群はHCG活性を抑制したが,PMSG活性は抑制せず,抗-PMSG注射マウス群はPMSG活性を抑制したが,HCG活性を抑制しなかった。また,各ホルモン用量と抗血清との用量反応について出血源胞黄体形成反応,卵巣重量反応で検討した結果,HCG, HCG+NRS, HCG+PMSG+抗-PMSG群の用量反応はHCG単味の用量反応に近似した曲線を示し,PMSG, PMSG+NRS, PMSG+HCG+抗-HCG群においてはPMSG単味の用量反応に近似した曲線を示した。
    従って,HAIRと生物反応抑制試験を併用して製剤検定をおこなえばHCGとPMSGの混合製剤中の各GTH活性を特異的に分離測定することが可能であるとみられる。
  • 渡辺 守之, 三浦 雅彦, 茂田 洋史
    1969 年 15 巻 2 号 p. 58-60
    発行日: 1969/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    38ヵ月令の白色種雄から採取した原精液0.1mlを10ヵ月令の青銅色種雌に注入して次の成績を得た。
    1.受精率は97.3%,ふ化率83.4%でかなり良好な結果を得た。
    2.受精卵の持続日数は61日で七面鳥の平均受精卵持続日数よりかなり上廻った。
    3.上記の成績は今後のわが国における七面鳥の人工授精の実施に明るい見透しを示すものである。
  • 永瀬 弘, 富塚 常夫
    1969 年 15 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 1969/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    凍結,融解後の馬精子の生存におよぼす要因を吟味するため数次の実験を行ない次の結果を得た。
    1.精液濃縮のための遠心分離は,凍結,融解後の精子生存率の改善に効果的であった。
    2.精液を遠沈するためには,事前に予備希釈を行なう必要があり,その組成は卵黄,ブドウ糖の両者を含むことが必要で,添加量は精液と等量~1/4量が適当である。
    3.遠沈後の濃縮精液に対する凍結用希釈液の添加は室温または5°Cに冷却後に一度に実施しても差はなかった。
    4.希釈精液を5°Cまで冷却するさい,室温から5°Cの気温中で直接冷却するか,または氷水中に直ちに浸漬しても,精子生存率に悪影響は認められなかった。このさいの精液量の多少は0.1ml以上であれば考慮する必要がない。
    5.錠剤化凍結法とストロー,アンプルを利用する液体窒素ガス凍結法との比較では,錠剤とストローが良好で,グリセリン濃度は錠剤化凍結,ストロー法ともに3.5, 5.5, 7.0%の間に有意差はなかった。錠剤化凍結とストロー法の問の精子生存率の比較では,グリセリン0%の場合のみが有意差が認められ,前者が良好であった。
    6.ドライアイス粉末,液体窒素中で保存された,各種のグリセリン濃度を含むしょ糖,ラフィノース液を希釈液とする錠剤化凍結精液は,90日以内の保存期間では精子生存率の変化は両保存温度ともに明らかでない。
    また,しょ糖,ラフィノースの希釈液の間およびドライアイス保存と液体窒素保存の間の差は,殆ど認められず,勿論有意でもなかった。
  • 金田 義宏, 岡 基, 旭 興正
    1969 年 15 巻 2 号 p. 68-76
    発行日: 1969/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1964年6月から1965年8月の間,青森県集約酪農地域内で乳牛飼養頭数の比較的多い8市町村において,400戸の農家を対象として3回にわたって成雌牛延3,520頭の繁殖状況を調査して次の成績が得られた。
    1.妊否の割合は各調査時ともほぼ同率でとくに差異は認められなかった。
    2.病的空胎牛は510頭(14.5%)で,この内訳は卵巣疾患が166頭(32.6%),卵巣と子宮疾患の合併症が168頭(32.9%)で最も多く,ついで子宮疾患が119頭(23.3%),低受胎が25頭(4.9%),その他31頭(6.3%)であった。
    3.卵巣疾患の主体は鈍性~微弱発情および卵胞発育障害で,その他に持続性発情,卵巣嚢腫,黄体形成不全,卵巣卵管癒着,永久黄体が少数みられた。
    4.子宮疾患の主体は子宮内膜炎で,その他に子宮下垂,子宮粘液症,頸管炎,子宮発育不全,子宮膿瘍がみられた。
    5.腟疾患では尿腟が多く,その他に腟炎が少数みられた。
    6.経産牛では鈍性~微弱発情,卵胞発育障害あるいはこれに子宮内膜炎を併有する合併症が多く,未経産牛では子宮内膜炎,低受胎,卵巣発育不全が多くみられた。
    7.子宮疾患,卵巣•子宮•腟疾患の合併症,腟疾患および低受胎と診断されたもののうち,1年以内に回復受胎したものは39.1%(52/133頭)であり,卵巣疾患および卵巣•子宮疾患の合併症における65.4%(138/211頭)と比較して低率を示していた。
    8.調査期間中に受胎した1,076頭のうち授精3回以内で受胎したものは,未経産,経産牛ともに90%内外を示していたが,空胎期間がかなり長いものが経産牛において多く認められた。
    9.空胎期間は分娩月によってかなりの差がみられ,4~6月および11~12月分娩牛はその他の月の分娩牛に比べて長い傾向がみられた。
    10.調査期間中に売却された乳牛421頭のうち繁殖障害および不妊の理由によるものが124頭(29.5%)でかなり高率を示していた。
    11.繁殖成績は地区により著しく異なり,病的空胎率はとくに開拓農家において高率であった。
  • 松浦 健二, 星野 邦夫, 山本 次郎
    1969 年 15 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 1969/09/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    羊水が粘稠な流動体であることから,アルギン酸ソーダを主剤とした代用羊水を作り,助産を必要とした24例に子宮内にポンプ加圧によって注入を行なった結果,陣痛が促進されるものが多く,また粘滑性の増加によって娩出が容易となった。従って難産時に応用して極めて有効であり,緊急時に簡単に調製され衛生的で副作用のない優秀なものであることを認めた。
feedback
Top