乳牛において,搾乳条件の変更が乳房内圧,搾乳速度および搾乳量にいかなる影響を与えるかを調べる目的で,ホルスタイン種7頭を用いて実験を行なった。結果は以下のとおりである。
1.搾乳条件を変更した1回目の搾乳時において,乳房内圧の変化は個体によって異なり,乳房内圧が全く上昇しないもの,上昇が遅れるもの,緩やかに上昇するもの,さらに正常に上昇するものなどがあった。
2.搾乳条件に適応する過程における乳房内圧の変化も,個体によって異なった。1回目の搾乳時において乳房内圧の上昇が起こらなかった個体では,異常に高い乳房内圧と乳房内圧の上昇が遅れるという過程を経て,5回目の搾乳時から乳房内圧の変化が正常となった。これに対して,1回目の搾乳時において乳房内圧の上昇が遅れた個体では,1回目より幾分高いが同じような変化を示す過程を経て,4回目の搾乳時から乳房内圧の変化が正常となった。
3.搾乳速度と搾乳量は,乳房刺激後乳房内圧が上昇するまでの時間よりも,乳房内圧の上昇幅と強い関連があった。しかしながら,内圧が異常に高いときには,乳房刺激後内圧の上昇がなくても,正常時に近い搾乳速度と搾乳量が得られた。
4.搾乳条件に適応する過程における搾乳速度および搾乳量は,交感神経一副腎系の興奮,乳房の容量,乳頭および乳槽をとりまいている組織の緊張のような乳房の形態的特質,さらに残乳の量などが関係しているようである。
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