家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
6 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 胎膜を目標とする牛の早期妊娠鑑定に関する研究
    斎藤千 寿男
    1960 年 6 巻 2 号 p. 42-50
    発行日: 1960/11/10
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    実験成績の結果を要約すれば次の通りである。
    1.卵巣について
    (1)左右卵巣の排卵比は左卵巣29右卵巣34で46:54である。
    (2)卵巣の大さは1.5~4.0cmで126ケの中84例は2.0~3.0cmの大さである。
    (3)卵巣の形状は山形及び卵形が大部分で126例中86例である。黄体の存するものは山形,卵円形のものに多く,中には球形のものもある。棒状及扁平のものは一般に小にして黄体を有しない。
    (4)妊娠黄体の他に小黄体の存するものは2例であって45日と78日のものである。
    (5)妊娠卵巣中にグラーフ氏胞を有するものもあるが,254号(在胎49日),98号(59日)268号(66日)の3頭で他は何れも1.0cm以下の未完成のものであるが,大多数のものに存在する。
    2.子宮について
    (1)妊娠30~60日までの左右子宮の大さは第7表の通りである。
    3.胎児について
    (1)胎児の大さ3カ月迄は在胎日数に極めて一致して発育するが,3カ月以降に至れば多少の大小はある。以降逐次増大する。
    4.胎膜の発育
    胎膜は胎児着床部位を基点として発育する。30日にして妊子宮角全面に発育する。38~40日にして不妊角に於いても全面に発育する。50日前後に於いて先端はネグローゼとなり卵管に進入する
    5.羊膜嚢の発育
    40日前後までは円形であるが45日を経過すれば楕円形となる。
    6.胎盤の発育
    胎盤の発育は胎児着床部位を基点として発生し漸次周囲に及ぶ。
    30日にては妊角,不妊角共に明かでない。32~35日に至れば胎児着床部位附近に少数認める。36~40日に至れば灰白色の斑点として現われる。
    45日に於ては妊角の全面に認めるが先端と体部附近は不明瞭で又不妊角にも認められない。57日に至れば全面的に現われ妊角に於ては一部のものは隆起し面は絨毛密生して暗赤色となる。60日まではその形,球状であるがそれ以降に至れば多くのものは楕円形となる。
    7.妊娠診断の目標
    以上述べたる如く妊娠の現象として子宮の変化並びに胎児,羊膜嚢,胎膜,胎盤宮阜の発生と其の発育の状態は在胎日数の進展につれ顕著なる変化を示すものである。亦卵巣に於いても必ず妊娠黄体を保持するものである。既に述べたる如く妊娠鑑定の有効なる目標は妊娠時の必然的変化を対象とすることは論を俟たざる処であって子宮の大さ或は妊娠黄体を目標にする如きは価値が低い。子宮は妊娠時のみならず子宮炎,蓄膿症に於ても其の大さを増し又子宮炎,蓄膿症に罹患の場合は多くは黄体を保有するものであって,発情黄体,永久黄体,妊娠黄体は触診上鑑別不可能であるからである。即ち妊娠時の必然的変化とは胎児,胎盤,胎膜等の発生とこれらの物体は時日を経過すると共に在胎日数に相応して発育するため,これらの変化の何れかを触知する場合は妊娠の確徴である。
    然るに胎児,胎盤は何れも発育進度は緩慢であることは前述の通りであって早期妊娠鑑定の触知目標としてば不適当である。これに反して胎膜は発育速かにして35日前後に於いて妊角不妊角に全面的に発育し,のみならず子宮の内面積より胎膜は大なるため子宮壁よりの触知容易であって,早期に且つ確実に鑑定を行うことが出来る最も有利なる方法である。
    適中率は前項に述べたる如く操作の熟練せるせざるとによって異なるが妊娠35日以上に於いては触知容易であって95%以上の成績を得ることは左程困難でない。
  • 吉田 信行
    1960 年 6 巻 2 号 p. 51-53
    発行日: 1960/11/10
    公開日: 2009/08/14
    ジャーナル フリー
    昭和32年に家畜栄養研究協議会が農林省農林水産技術会議によつて組織され,組織的,総合的な仕組で家畜栄養に関する研究が進められることとなつた。
    この研究協議会によつて進められている研究は,もちろん,家畜栄養に関する研究のすべてではないが日本の畜産を背景として考えた場合農家の当面する問題として最も必要と考えられる諸課題を集約して行おうとする意図を持つもので現在は乳牛に問題をしぼり,その飼養標準設定及び栄養障害に関する研究並びにこれに関連する基礎研究に主力をそそいでいる。なおこの研究協議会は農林省農林水産技術会議により59人(昭和34年度末現在)の委員を委嘱することによつて構成されている。
    この研究協議会の構想ならびにその主なる研究テーマは以上の通りであるが,栄養と繁殖障害の関連についてはこの協議会においても重要なテーマとして常に検討がなされて来た。しかし乍ら34年度末の協議会では,家畜繁殖の問題が極めて重要であるために,今後は,なんらかの形の家畜栄養の研究とならんで組織等を考えることにより研究推進の途がないものであろうか,もしそのような途があるならば栄養研究とならんで繁殖研究を推進し,できるだけ早い機会にこれら両者の関連を明らかにすべきであるという結論が下された。
    協議会による家畜栄養研究は家畜飼養の合理的な方法を確立することを目的とするが,家畜栄養障害を考える場合には,その臨床症候群の重要な一つとして,繁殖障害があり,ある意味では繁殖障害を考えずして家畜の栄養を論ずること自体がナンセソスであるともいわれている。このように栄養研究の立場から繁殖障害の問題は切つても切れない関係にあり,両者の関連の考え方も家畜栄養と家畜繁殖の両面から夫々考えてみなければならない。
    このような両面からの見方を最近の研究状況や研究者の意見に私見を加え整理してみると,つぎの6点になろうかと考える。
    1.家畜の栄養は,その結果として家畜繁殖に重要な影響を及ぼし,栄養障害症候群の一つとしての家畜繁殖障害が当然考えられる。
    2.家畜繁殖障害は家畜栄養障害症候群の一つとしての見方は成立するが,家畜繁殖障害そのものは性器及び性器外諸因子の異常によつて生ずるもので,家畜の栄養状態は性器外諸因子の一つであり,環境,ストレス,体質等の諸因子がこれとならんで考えられなければならない。また,これらの因果関係を完全に分離して考えることは難かしい。従つて,家畜繁殖の側からは栄養は重要ではあるが一因子である。
    3.家畜栄養と家畜繁殖障害の関連を解明する手段の一つとして野外の栄養障害の実態を調査研究することがある。これを行う場合には,なんらかの傾向は察知でき又問題の提供は期待できるが,その限界点も明らかに存在する。即ち実際問題としては,例数を多くする時には不正確となり,正確を期する時には例数不足となる。しかし乍ら,これらの調査を行うことは大切でありその意義は深いことは勿論である。
    4.家畜栄養と繁殖障害の関連を明らかにするためにとるべき方法としては,つぎの諸点を考えるべきである。
    a.家畜栄養研究(例えば飼料の過不足,醸酵吸収不全)の一環として,繁殖障害の要因を採るときには相当長期間の観察が必要であり,とくに育成期間の影響を成牛に至るまで観察するということが必要である。
    b.分娩前後の栄養状態が,その後の繁殖に及ぼす影響は,大切な問題であり,この場合には実際に家畜を経済的に飼育管理するという目的に立場を置いて,栄養,繁殖,泌乳の三者の関係を特に究明しなくてはならない。
    c 繁殖障害の重要因子としての家畜栄養の状態を明らかにするには,繁殖障害多発地帯または群を明らかにして,この地帯または群における栄養状態(飼料給与,飼料組成,成分)を精査することが望ましい。しかも,この場合,栄養状態を明らかにするためには,他の地帯又は群との間に,飼料給与量,組成,成分等を明確に比較することが可能であり,しかも,その他の因子には差がないことが必要である。
    5.家畜栄養研究において繁殖障害との関連を求める前に,飼養標準,ルーメン醗酵,栄養素の吸収,栄養障害判定基準等の研究が大切であるように,家畜繁殖の立場からは繁殖生理,繁殖障害判定基準等の研究の進展が望まれ,これらの研究を進めない限りは栄養との関連を求める研究にも限界点がある。
    6.家畜栄養と繁殖障害との関連は,実用技術の段階では因果関係として明らかにされればいいのであつて,そのProcess研究は二義的ではないかという見解もある。たしかに,栄養面からの研究では,繁殖に現われる結果をある程度の関連として眺めることが出来,その因果関係を正常に戻すことによつて,相当数の繁殖障害を防除できる可能性もあるが,もし栄養に関連すると考えられる繁殖障害をその範囲の中ででも最大限に防除するとしても矢張り他の諸因子を含めて
  • 山内 亮
    1960 年 6 巻 2 号 p. 54-59
    発行日: 1960/11/10
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 徳衛, 宮田 万司, 剣持 計夫, 古川 平吉
    1960 年 6 巻 2 号 p. 60-68
    発行日: 1960/11/10
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    以上述べたことを総括すると,
    1.調査牛の一般的事項
    私達の調査対象牛は,平均年令4.4才,r均産次数2.1産,平均分娩間隔14.7ケ月,生後より初産までの'F均月令30.4ケ月,平均産乳日量11.7kg,平均体重467.9kgであつた。これからみても生産効率そのものは低いとは思われないが,平均年令および平均産次数より観察すると,耐用年数が極めて短かく,また日本ホルスタイン登録協会の発育基準に比較して,著しく小格であることなどは,さらに検討すべきであると考える。
    2.繁殖並びに繁殖疾患
    病的空胎,すなわち繁殖疾患が17.5%の高率を示し.多くの先人の報告(10%前後)と著しい相違が認められたが,このことは,調査時期,調査方法などの相違によたが,このことは,調査時期,調査方法などの相違によるのか,あるいは調査地区内の飼養管理,環境,気象などの外的条件がよくないために繁殖疾患が多発するものか,別の角度より観察することも必要であろう。
    また繁殖疾患の内容を観察すると,最も多いのは卵巣疾患で74.1%,次いで子宮疾患の14.8%,卵巣疾患と子宮疾患の合併したものは11。1%である。さらにこれらを病名別に観察すると,卵巣機能不全が最も多く,繁殖疾患総数(81頭)の44.4%を占め,卵巣のう腫と黄体遺残症は,ともに8.7%認められた。
    3.給与飼料の実態
    飼料構成は多種多様であり,また飼養管理については知識の不足からか適正を欠くものが多い。
    給与飼料養分中のTDN,DCPの組合せで,同じ比率の級に属したものを,ノミランスのとれたものと仮定すれば,実際野外においては9月期,12月期,3月期,6月期の年4回の断面調査の平均は55%程度で,また絶対栄養不足の状態を,「低栄養,低蛋白」の組合せと仮定すれば,約30%もあることは意外である。一般に3月期は給与飼料の状態が悪く,12月期と6月期がよく,9月期はやや劣る傾向を示した。
    4.断面調査時の給与飼料と繁殖疾患
    私達の調査成績では,断面調査時の給与飼料と繁殖疾患との間に特別関連を見出すことできなかつた。すなわちTDN,DCPの組合せにより,それぞれの比率ごとに級を作り,繁殖疾患群と繁殖疾患でない群をそれぞれ展開させ検討したが,理論的に肯定できる結果をえられなかつた。
    5.見かけの栄養状態と繁殖疾患
    見かけの栄養状態と繁殖疾患との間には,栄養状態の悪いものほど繁殖疾患の発生が多い傾向が認められた。なお卵巣のう腫は卵巣のう腫以外の疾患と比較すると,栄養状態の良いものにやや多いが,調査総数および繁殖疾患でない群と栄養状態(上,中,下)別分散を比較すると,「上」ではほとんど差がなく,「下」ではむしろ高率を示した。しかしながら卵巣のう腫は例数に不足のきらいがある。
    6.繁殖疾患と細密検査所見
    繁殖疾患と赤血球数との関係では,赤血球数の少ない級に繁殖疾患がやや高い傾向を示し,繁殖疾患とグロス反応との関係では,繁殖疾患群は繁殖疾患でない群より,グロス反応陽性率がやや高く,推計学的にも5%有意水準でこれを認めている。また肝蛭虫卵陽性群は,繁殖疾患の罹病率が高く,推計学的にも1%有意水準でこれを認めている。
  • 特に肝機能との関係について
    常包 正
    1960 年 6 巻 2 号 p. 69-72
    発行日: 1960/11/10
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
  • 臼井和 哉
    1960 年 6 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 1960/11/10
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
  • 檜垣繁 二光
    1960 年 6 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 1960/11/10
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
  • 1960 年 6 巻 2 号 p. e1
    発行日: 1960年
    公開日: 2009/08/14
    ジャーナル フリー
feedback
Top