家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
23 巻, 1 号
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  • 繁殖障害豚の実態調査とホルモン投与効果について
    河部 和雄, 籠田 勝基, 山田 渥, 阿部 登, 糟谷 泰
    1977 年 23 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    道立滝川畜産試験場における8年間の豚繁殖障害を調査し,一部のものにつき直腸検査による診断を試み,各種ホルモソ療法を行った結果,次の成績を得た。
    1.繁殖障害豚の発生率は7.5%で品種による差はなかった。
    2.既往歴に基づいて繁殖障害豚を分類すると,持続性発情2%,未経産無発情9%,不受胎無発情14%,離乳後無発情25%および低受胎58%で,低受胎例が最も多かった。
    3.直腸検査により卵巣機能不全と診断されたもので,両卵巣に卵胞および黄体の認められない豚には,PMSG(1,000IU)投与が有効であった。両卵巣に米粒大の小卵胞を有する豚ではPMSG(1,000IU)の投与は,卵巣に過剰刺激を与え卵巣のう腫に移行する例が認められた。
    4.小卵胞性のう腫の治療はHCG(3,000~4,000MU)投与が有効であった。
    5.低受胎豚の治療および流産経歴豚には,持続性黄体ホルモソ(110mg)1回投与が有効であった。
    6.卵巣疾患の治療にあたっては,直腸検査による診断を行ったのち治療を行えば,治癒率を向上し得ることを明らかにした。
    7.直腸検査可能月令は,個体差はあるが普通生後13ヵ月令に達すれば可能であった。
  • 飯塚 三喜, 元井 葭子
    1977 年 23 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ラジノクローバーおよびアルファルファからエタノール抽出した植物性エストロジェソ様物質に関して,その性状,力価およびラット乳腺に対する影響などについて試験を行い,次のような成績を得た。
    1)ラジノクローバーおよびアルファルファのエストロジェン様物質を測定した結果,ラジノクローバーには生草1kg当たりestrone換算で約2.1μg,アルファルファでは約3μ9であった。
    2)これら牧草抽出物を泌乳ラットに経口投与したところ,乳腺中のNa,Clなどの電解質が増加し,K,K/Na比が減少,カリクレインが増加した。乳汁中白血球数の増多,子宮重量の増加もみられた。
    3)同時に,これら泌乳ラット乳腺内のエストロジェン様物質を測定したところ,対照群に比し実験群の方が高い活性値を示した。
    4)牧草抽出物および乳腺内のエストロジェソ様物質の一つはペーパークロマトグラムおよび紫外吸収スペクトルからcoumestrolではないかと思われた。
  • 佐藤 英明, 入谷 明, 西川 義正
    1977 年 23 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    卵胞卵の培養において,供試卵の状態や培養方法が培養成績に大きく影響すると考えられる。本実験ではブタ及びウシの卵胞卵を用いて培養条件と卵の成熟の関係についてしらべた。
    1) 屠場での卵巣の採取から採卵までの卵巣の最適保存温度及び保存時間の限界について検討した。33~35°C,20~25°C,4~10°Cに調整した生理食塩液に浸漬して実験室にもちかえった場合,33~35°C保存でもっとも良い培養成績が得られた。33~35°Cでは保存時間はブタでは3時間が限界と考えられた。ウシでは8.5時間保存した場合でも高率に成熟したが,さらに保存時間が長くなると退行変性する卵が著しく増加した。
    2) 各種完全合成培養液で卵胞卵を培養したところ,ウシ,ブタともにエネルギー基質の添加されていないKRB液中では成熟しなかったが, TCM 199, Ham F12,Eagle MEM及びグルコース,ピルビン酸,乳酸を含む修正KRB中で成熟した。培養液に添加する高分子物質として,ウシ血清アルブミン,ウシ血清アルブミン分画V及びフェトインを用いても高率に成熟したがポリビニルピロリドンでは幾分成熟率が低下した。またブタ卵胞卵の成熟に対して培養液に添加されるウシ血清アルブミンの最適濃度は1 mg/mlであった。またブタ卵胞卵では至適pHは7.2~7.4であって, PH7.0以下では卵核胞崩壊率が低下し,またpH7.6以上になると染色体異常凝縮,細胞崩壊などの退行卵が高率に出現した。ウシ卵胞卵ではpH 6.8~7.6で高率に成熟し,ブタ卵胞卵の場合にくらべて至適pH域の広いことが明らかにされた。ブタ卵胞卵は316,355milliosmols区で高率に成熟したが,より低張ないし高張の液では退行卵が高率に出現した。ウシ卵胞卵でも316,355milliosmols区で高率に成熟したが,234~388milliosmolsの範囲で30%以上中期IIへ移行しブタ卵胞卵にくらべ広い浸透圧範囲で成熟しうる傾向を示した。
    3) 機能的な黄体の存在する卵巣から採取した卵胞卵を培養した場合,退行卵の出現率が高かった。白体の存在する卵巣から採取した卵はすべて成熟した。未成熟個体の卵巣からの卵では,培養後種々の成熟ステージのものが観察され,性成熟個体からの卵にくらべて分裂の同調性の点で劣っていた。卵丘細胞の付着していない卵では付着している卵にくらべて成熟率は低下した。また卵黄実質の直径が50~90μの発育不良と思われる卵では成熟せず退行卵が高率に出現した。
  • 金田 義宏, 加茂前 秀夫, 百目鬼 郁男, 中原 達夫
    1977 年 23 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    黄体期の牛86頭に対してPGF10 mgを筋肉内注射し,黄体退行の認められた65頭のうち51頭に合成LH-RH-1200μg(A群)またはHCG 1,000~2,000 i.u.(B群)をPGF投与後42~47時間(A-I群8頭,B-I群11頭),57~60時間(A-II群8頭,B-II群7頭),72~74時間(A-II群9頭,B-III群8頭)に筋肉内注射して,これらの発情発現と排卵状況及び受胎性をPGF単一処置(C群14頭)のそれと比較検討して,つぎの成績を得た。
    1. PGF投与後37~84時間における発情発現率は,A, B両群のI群ではそれぞれ25.0%,27.3%,II群では37.5%,42.8%であり,C群の71.5%と比べて低かったが,III群では66.7%,62.5%で大差なかった。
    2. PGF投与後84時間以内に発情発現がみられなかった牛は,すべて120時間以内に無発情排卵した。
    3. PGF投与後排卵までの平均(±S.D.)時間は,A,B両群のI群ではそれぞれ74.5(±6.7),79.5(±6.9)時間,II群ではそれぞれ88.0(±3.7),87.0(±4.6)時間,III群ではそれぞれ98.7(±8.2),94.0(±9.8)時間であり,排卵誘起剤の投与時期が早いほど短かった。なお,C群のそれは89.9(±13.3時間)であった。
    4. PGF投与後3~5日の間の授精による受胎率は,A, B両群のI群ではそれぞれ37.5%(3/8頭),12.5%(1/8頭),II群では37.5%(3/8頭),42.9%(3/7頭)でC群の50.0%(7/14頭)に比べて低かったが,III群では55.6%(5/9頭),50.0%(4/8頭)でC群のそれとほぼ同率であった。
    5. 以上の成績から,PGFと合成LH-RHまたはHCGの併用により排卵を効果的に同期化することが可能であり,PGF投与後これら薬剤を投与するまでの時間間隔が長いほど処置後の発情発現率は高く,同期化した発情時の受胎成績が良い傾向が認められた。
  • とくに細胞数の変化及びプロジェステロン産生について
    川上 静夫, 大地 隆温
    1977 年 23 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1.乳牛のGCは,LCと同様にprolactinやHCGを添加することにより増殖が促進されたが,今回の実験範囲内ではprolactin 100IU及びHCG 1000MU以上にその作用が認められた。
    2.大きさの異なる卵胞由来GC間には,GTH添加に対する感受性には顕著な差は見られなかった。
    3.GTHの各添加濃度の差による細胞増殖率の比較では,用いた添加量の範囲において,
    a)HCGは,GCに対して添加量を増すにつれて細胞増殖率は高くなり,LCもGCに比べてやや低いが類似の所見が認められた。
    b)PMSは,GCに対してやや抑制的であり,control及び比較のために用いたHela-s3細胞の場合より細胞増殖率は低かった。LCに対しては,1000IU添加した時が最も細胞増殖率は低かった。
    c)prolactinは,GCに対して50IU添加した時が細胞増殖率は最も高く,100,200IUと次第に低くなった。LCに対しては,添加量を増すにつれて細胞増殖率は高くなることが認められた。
    4.GC及びLCは,培養細胞のレベルにおいてもGTHに対して特異的に反応することが認められた。
    5.GC及びLCは,prolactinの添加濃度を増すにつれて細胞形態が次第に線維芽化することが認められた(図1~12)。
    6.中卵胞由来GCの継代3代細胞のGTH添加試験における培養液中のプロジェステロンは,control:0.74ng/ml,HCG 1000IU:0.50ng/ml,PMS 500IU:0.41ng/ml,prolactin 100IU:0.93ng/miがそれぞれ検出され,LCの継代3代細胞による同様の実験では,control:6.38ng/ml,HCG 1000MU:6.00ng/ml,PMS500IU:2.50ng/ml,prolactin 100IU:12.0ng/mlが検出された。
  • 百目鬼 郁男, 中原 達夫
    1977 年 23 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    性周期及び妊娠初期における牛頸静脈血中のE及びPの消長をRIA法により追究して次の成績を得た。
    経産牛6頭の性周期における血中E1,E2の消長は全期間を通じてほぼ同じ傾向を示し,E2はE1にくらべて高値であった。総E値(E1+E2)は6頭中3頭では,黄体期の3~12日にかけてピーク(9.0~10.5pg/ml)を形成したのち,次回の排卵3~1日前にふたたび鋭いピーク(10.6~19.5pg/ml)を形成した。残りの3頭では黄体期に明瞭なEのピークを形成しなかった。しかし次回の排卵2~1日前にはいずれも鋭く,かつ高いピーク(12.7~20.0 pg/ml)を形成した。いっぽう血中Pは発情期に最低値(0.2~0.3 ng/ml)を示し,11~17日の黄体期に最高値(1.8~4.2 ng/ml)に達し,次の排卵前4~5日から急激に低下した。
    経産牛5頭の妊娠初期における血中濃度はE1はE2にくらべて低く,総E値は2頭では排卵後5日目に一時的に高値(12.4及び7.2pg/ml)のを示したが,他の3頭では12日頃まで低値(2.3~6.0 pg/ml)で経過した。その後漸次増加の傾向が認められ27~28日以降はかなり高い値(6.2~11.6pg/ml)のを示した。いっぽう血中P濃度は排卵後急激に上昇し,妊娠31~32日には高値(6.0±1.7ng/ml)を示した。
  • I.死滅精子の沈降中における方向の変化ならびに沈降速度
    河野 憲太郎, 木野勢 芳紀, 樋浦 善敬, 山本 興三郎
    1977 年 23 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    マウス,家兎,ウシ及びニワトリの精液を用い,死滅精子が沈降中に回転して重力の方向に方向転換を完了する時間ならびに沈降速度の実測を試みた。精液にホルマリンを滴加して精子を殺し,哺乳類はTyrode液,ニワトリは0.154Mリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて希釈し,内径250~350μの毛細管内に吸引し,横に倒した顕微鏡の載物台に鉛直の方向に保定して精子の回転完了時間ならびに沈降速度を測定した。得られた結果は概略下記のとおりである。
    1.哺乳類の精子の回転完了時間は著しく短く,5~7秒後にはすでにすべての精子が頭部を下げていた。ニワトリの精子に関しては,上向き精子は30~35分で0となり,他方下向き精子は35~40分を要して90%前後に達し,以後ほぼ平衡状態となった。
    2.精子の沈降速度は哺乳類0.363±0.079μ/秒,ニワトリ0.148±0.027μ/秒であった。
    以上の成績から沈降中における精子の方向性に及ぼす重力の影響は哺乳類では著しいが,ニワトリでは小さいと考えられた。
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