黄体期の牛86頭に対してPGF
2α10 mgを筋肉内注射し,黄体退行の認められた65頭のうち51頭に合成LH-RH-1200μg(A群)またはHCG 1,000~2,000 i.u.(B群)をPGF
2α投与後42~47時間(A-I群8頭,B-I群11頭),57~60時間(A-II群8頭,B-II群7頭),72~74時間(A-II群9頭,B-III群8頭)に筋肉内注射して,これらの発情発現と排卵状況及び受胎性をPGF
2α単一処置(C群14頭)のそれと比較検討して,つぎの成績を得た。
1. PGF
2α投与後37~84時間における発情発現率は,A, B両群のI群ではそれぞれ25.0%,27.3%,II群では37.5%,42.8%であり,C群の71.5%と比べて低かったが,III群では66.7%,62.5%で大差なかった。
2. PGF
2α投与後84時間以内に発情発現がみられなかった牛は,すべて120時間以内に無発情排卵した。
3. PGF
2α投与後排卵までの平均(±S.D.)時間は,A,B両群のI群ではそれぞれ74.5(±6.7),79.5(±6.9)時間,II群ではそれぞれ88.0(±3.7),87.0(±4.6)時間,III群ではそれぞれ98.7(±8.2),94.0(±9.8)時間であり,排卵誘起剤の投与時期が早いほど短かった。なお,C群のそれは89.9(±13.3時間)であった。
4. PGF
2α投与後3~5日の間の授精による受胎率は,A, B両群のI群ではそれぞれ37.5%(3/8頭),12.5%(1/8頭),II群では37.5%(3/8頭),42.9%(3/7頭)でC群の50.0%(7/14頭)に比べて低かったが,III群では55.6%(5/9頭),50.0%(4/8頭)でC群のそれとほぼ同率であった。
5. 以上の成績から,PGF
2αと合成LH-RHまたはHCGの併用により排卵を効果的に同期化することが可能であり,PGF
2α投与後これら薬剤を投与するまでの時間間隔が長いほど処置後の発情発現率は高く,同期化した発情時の受胎成績が良い傾向が認められた。
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