家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
30 巻, 1 号
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  • 守野 繁, 中尾 敏彦, 角田 修男, 河田 啓一郎
    1984 年 30 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    獣医臨床領域への応用に適した脱脂乳中Pの簡易測定法として,有機溶媒による抽出操作を省略した二抗体法による高感度の直接法EIAを確立した。
    1. Mixedanhydride法により11α-OH-P-Succと大腸菌由来のβ-Galの結合体を作製•精製後,トレーサーとして用いた。
    2.直接法EIAにおいては,従来の二抗体法EIAに対して,標準PにPを除去した脱脂乳を測定試量と同量加えるとともに,キャリアプロテインとして正常家兎血清を用いることが必要であった。
    3.本法による脱脂乳中Pの測定感度は4pg/tubeで,測定内および測定間変動係数はそれぞれ4.4~8.6%および10.1~10.7%であった。また,脱脂乳中Pを石油エーテルで抽出して行う従来のEIAによる測定値と本法のそれとの間には高い相関(r=0.95)が得られ,本法は信頼性の高い,実用的な測定法といえる。
  • 三善 隆広, 新村 末雄, 石田 一夫
    1984 年 30 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    着床遅延マウス胚盤胞(Day 10,17,24および30)について脂肪小滴とグリコゲン顆粒を組織化学的に検出し,正常妊娠マウスの胚盤胞(Day4)のものと比較した。得られた成績はおよそ次の通りである。
    1.脂肪小滴.Day4の胚盤胞の内細胞塊では脂肪小滴を含むものが多かったが(94.3%),着床遅延胚盤胞の内細胞塊では含まないものが多かった(76.7~94.6%)。一方,栄養膜はいずれの胚盤胞においても脂肪小滴を含んでいた。しかし,栄養膜に脂肪小滴を多量に含む胚盤胞の割合は,Day4の胚盤胞(31.4%)より着床遅延胚盤胞(70.3~90.6%)のほうが多かった。
    2.グリコゲン顆粒.Day4の胚盤胞の内細胞塊ではグリコゲン顆粒を含むものが多かったが(86.1%),着床遅延胚盤胞の内細胞塊では含まないものが多かった(74.2~94.1%)。栄養膜においては,Day4の胚盤胞はグリコゲン顆粒を含むものと含まないものがそれぞれ34.7%,65.3%みられたが,着床遅延胚盤胞では含まないものが著しく多かった(88.2~100.0%)。
    なお,着床遅延胚盤胞の内細胞塊と栄養膜に含まれる脂肪小滴とグリコゲン顆粒の量は,遅延期間を通して著しい変化を示さなかった。
  • 澤向 豊, 守野 繁, 中尾 敏彦, 河田 啓一郎
    1984 年 30 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    正常性周期を1~2回繰返し,発情徴候を示すたびに卵胞嚢腫と診断され,試験開始日の直腸検査では直径2.5cm以上の嚢腫卵胞(FC)と直径1~2cmの正常様卵胞(GF)が共存していた卵胞嚢腫牛(FC-GF牛)10頭に対し,ホルモン剤の投与を行わず,外部的発情徴候,卵巣の変化ならびに脱脂乳中プロジェステロン濃度(P4値)の変動を5日間隔で,約20日間にわたって調べ,発情徴候を10日間以上も持続または無発情で経過していたGFが共存しない卵胞嚢腫牛(FC牛)9頭と比較した結果,次のような成績を得た。
    1.FC-GF牛10頭の外部的発情徴候は正常性周期牛と同様な変化を示し,6頭が20日目そして4頭が21~24日目に発情を回帰した。一方,FC牛では,6頭が観察期間の20日間にわたり発情徴候を持続し,他の3頭は無発情で経過した。
    2.FC-GF牛の試験開始日における卵巣所見は,GFがFCと同側卵巣に共存していたものは6頭で,対側のものが4頭であった。これらのGFはすべて2日以内に破裂し,以後黄体化•退行そして新たなGFの発育という一連の過程が順調に営まれた。しかしFCは破裂することなく20日間以上存続した。一方,FC牛ではFCの破裂はなく,いずれの観察日においても数と位置には大きな変化が認められなかった。
    3.FC-GF牛のP4値は,試験開始日が0.6±0.2(Mean±SD)ng/mlと低く,5日目2.0±1.4ng/ml,10日目4.5±2.1ng/mlそして15日目1.9±0.7ng/mlと高くなったが,20日目にはふたたび0.6±0.2ng/mlと全頭が1.0ng/ml以下の低値を示した。一方,FC牛では0.5±0.3ng/ml(試験開始日),0.6±0.2ng/ml(5日目),0.6±0.3ng/ml(10日目),0.7±0.4ng/ml(15日目)そして0.8±0.3ng/ml(20日目)と低値のままで経過し,周期的変動を示さなかった。
    以上の結果からFC-GF牛では,FCの破裂はないが,GFは破裂•黄体化し,その後も順調に黄体退行と新たなGFの発育がみとめられ,外部的発情徴候ならびにP4値の変動も正常発情牛と同様な傾向を示したことから,このような卵胞嚢腫牛ではホルモン剤の投与を行わなくとも,正常周期発情日に授精を行えば,受胎する可能性のあることが示唆された。
  • 田中 幹郎, 三浦 昇, 竹内 啓, 山内 亮
    1984 年 30 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    子宮の摘出が黄体の寿命を延長させることは,60年前に初めて報告されて以来,種々の動物で検討されて来た。しかしヤギにおいては,妊娠黄体に及ぼすその影響が検討されているに過ぎない。今回著者らは,排卵後間もないシバヤギに子宮摘出手術を施して,その後の末梢血中P濃度を測定することにより,この処置が性周期中の黄体に及ぼす影響を検討した。
    シバヤギは表1に示す3頭を用い,キシラジン,フローセン麻酔下で図1~3に示す方法で子宮摘出術を施し,術後約50日にわたって末梢血中P濃度をRIAにて測定した。その結果,手術時に出血体あるいは黄体の存在を確認した2頭においては,図4,5に示す通り,少なくとも50日の長期間にわたって,P濃度が0.7ng/ml~3.9ng/mlと日によって大きく変動はするものの,P分泌は持続していることが認められ,その間に発情の回帰は認められなかった。このことからシバヤギにおいても他の家畜と同様に,黄体退行因子の産生場所は子宮である可能性が示唆された。一方子宮摘出時に黄体が存在しなかった1頭においては,図6に示す通り処置後46日間P濃度は0.5ng/ml前後の低値を維持し,黄体のないことと一致した。
  • 田中 幹郎, 伊東 信夫, 山内 亮
    1984 年 30 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    シバヤギの子宮,卵巣に分布する血管系に着色したラテックスを注入した後,肉眼的に観察し,すでに報告されている他の動物のそれらと比較検討した。
    その結果,シバヤギにおける子宮,卵巣の血管分布はヒツジのそれに類似していた。卵巣動脈は腹大動脈から分岐後,卵巣静脈上を蛇行しながら途中で卵巣枝,子宮枝,卵管枝に分かれる。この蛇行の程度はウシほど顕著でなく,図2,4で示すように卵巣動,静脈は非常に密接に付着していることが認められた。一方,子宮からの静脈血は,図2,4で示すように子宮の間膜縁に形成された多数の分岐を持つ網目状の静脈叢を通過し,その大部分が卵巣静脈子宮枝に集められ,一部が子宮静脈に流入すると推察される。
    この結果から,シバヤギにおいてはヒツジ同様,子宮由来の黄体退行因子の移行に卵巣動,静脈間のcountercurrent mechanismが関与している可能性が高いことが推察された。
  • 高橋 芳幸, 花田 章
    1984 年 30 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    種雄牛2頭の射出精子を合成培地(BRACKETT &OHPHANT,1975;BO液)で洗浄し,37°Cの炭酸ガス培養器内で4~5時間プレインキュベートした後,カルシウムイオノホアA23187(I-A)で処理して,体外での精子の受精能獲得と先体反応の誘起に対するI-Aの効果を吟味した。1-Aの効果は体外における透明帯除去ハムスター卵への精子侵入により評価した。
    プレインキュベーション前に高イオン強度のBO液(376mOsmol/kg)で15分間精子を処理した場合は,3~3.5時間の継続加温後も全く精子侵入卵は認められなかった。精子侵入卵はI-A処理精子によってのみ認められたが,I-Aの効果は使用する培地とI-A濃度およびその処理時間によって異なった。BSA無添加培地内では,BSA添加培地内におけるよりもI-Aの濃度減少および処理時間の短縮によって,処理後の精子活力の維持と精子侵入卵率の向上が認められ,I-A処理の効果が効率的に示された。I-Aの濃度上昇と処理時間の延長に伴って精子活力は損なわれた。I-A処理後の全ての精子浮遊液で,精子の鞭打つような運動が認められた。カフェイン(2mM)はI-A処理所要時間の短縮により1-Aの効果を増進させるように見受けられた。精子侵入卵率には明瞭な種雄牛精子間の差が認められ,この差は精子活力やI-A処理条件と直接の関係がないようであった。最高の精子侵入卵率は1頭の種雄牛精子をBSA無添加液中で0.5μM I-Aにより2.5分間処理した場合に認められ,卵への実質的な精子侵入はI-A処理後3時間以内に行われた。精子のLA処理にとって精子浮遊液のプレインキュベーションは必須ではなかった。
    以上の成績から,一定条件下で精子をLA処理することにより,牛射出精子の受精能獲得と先体反応を体外で3時間以内に誘起できることが示唆された。
  • 鈴木 修, 佐藤 匡美
    1984 年 30 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    黒毛和種経産牛30頭を用いて2つの試験を行った。試験1では分娩後4~90日目までの1日1回並びに1日2回の制限哺乳が母牛の繁殖機能および子牛の発育に及ぼす影響について自然哺乳と比較検討し,試験2では制限哺乳子牛の発育に対する別飼い濃厚飼料の効果を検討するとともに子牛の摂食生態を観察した。結果の概要は以下の通りである。
    1.母牛の分娩後の体重回復は制限哺乳群で良く,分娩から初回排卵,初回発情および受胎までの日数はいずれも1日1回哺乳<1日2回哺乳<自然哺乳の順に短く,また制限哺乳によって初回排卵時に発情を伴う牛が増加した。
    2.初回~第2回目排卵間隔,受胎に要した授精回数および血中プロジェステロン濃度については,いずれも哺乳法の違いによる相違はみられなかった。
    3.1日2回哺乳子牛は自然哺乳子牛とほぼ同じ発育を示したが,1日1回哺乳子牛の発育は前2者に有意に劣った。4.しかし,別飼い濃厚飼料の給与によって1日1回哺乳子牛は1日2回哺乳子牛と同じ発育を示した。3カ月齢までの乾草摂取量は両区間に差はなかったが,1日1回哺乳子牛は1日2回哺乳子牛の約2倍量の濃厚飼料を摂取した。
    5.日齢が若い時期の摂食行動は1日1回哺乳と1日2回哺乳で違いはみられないが,日齢が進むにつれて,濃厚飼料への摂食時間は1日1回哺乳で長く,逆に乾草への摂食時間は1日2回哺乳で長くなる傾向にあった。
  • 南 直治郎, 細井 美彦, 葛西 孫三郎, 丹羽 晧二, 入谷 明
    1984 年 30 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    家兎桑実胚をDMSO,Ethyleneglycol,GlycerolあるいはErythritol(いずれも1.5M)を含んだPBSに浮遊させ緩慢あるいは急速に凍結して,液体窒素中に保存した。緩慢凍結したサンプルは緩慢あるいは急速に,急速凍結したサンプルは急速に融解した。融解後0.5M-sucroseを含むPBS中で耐凍剤を除去した後,血清加Tyrode液で約48時間培養してexpandedblastocystまで発育した胚を生存胚とした。その結果,緩慢凍結一緩慢融解法を用いた場合の生存率はDMSO区で最も高く(70%),ついでEthyleneglycol区(38%),Glycerol区(24%)の順であった。緩慢凍結胚を急速融解した場合も同様の傾向がみられたが,DMSO区(52%)およびGlycerol区(12%)の生存率は低下した。一方急速に凍結融解した場合の胚の生存率もDMSO区(27%),Eth-yleneglycol区(16%),Glycerol区(4%)の順に低下したが,いずれも3つの凍結融解法の中では最も低い値であった。Erythritol区では,急速凍結を用いた場合を除いて,形態的に正常な胚さえも回収されず,いずれの凍結融解法でも,発育胚は得られなかった。以上の結果から,家兎桑実胚はDMSOを用いて,緩慢に凍結融解するのが最も適していると思われる。
  • 小島 敏之, 角田 幸生, 小栗 紀彦, 相馬 正, 杉江 佶
    1984 年 30 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 1984/03/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    現在までのところ,DMSO(ジメチルスルホオキサイド)以外の耐凍剤を用いて凍結保存された家兎胚から産子は得られていない。最近,DMSOよりも毒性が低いエチレングリコールがラット胚,マウス胚で有効性が認められている。本実験は,家兎胚用の耐凍剤としてのエチレングリコールの応用の可能性を探るために実施した。
    FSHとhCGによる過剰排卵処置を施した日本白色種の成雌兎から,交配後62~65時間目に採取した桑実期の胚を,DMSOあるいはエチレングリコールを用いて凍結保存し,融解後の生存性を培養と移植によって検討した。
    種々の濃度のエチレングリコールを用いて凍結保存した胚を融解後培養した結果,48時間後に胚盤胞に発育したものの割合は,1.2M濃度のとき最も高かった。1.5M-DMSOと1.2M-エチレングリコールを用いた結果では,1.5M-DMSOを用いた方が,1.2M-エチレングリコールを用いた場合よりも高かった。1.5M-DMSOまたは1.2M-エチレングリコールを用いて凍結保存した胚を偽妊娠兎の卵管に移植した結果,妊娠雌の割合,着床率および産子率には両耐凍剤間で有意差は認められなかった。また,エチレングリコールを用いて凍結保存した胚の移植で,正常な産子が得られた。しかし,本実験の条件下では,エチレングリコールが家兎胚の凍結保存のための耐凍剤として,DMSOよりすぐれているとは結論できなかった。
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