家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
34 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 武石 昌敬, 種村 高一, 原田 豊造, 奥田 勝, 津曲 茂久, 高木 香, 田中 茂男
    1988 年 34 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    英国メディェータシステム社のドップラー型妊娠診断器(商品名レクタルドクター:周波数2MHz)を用いて,神奈川,千葉および茨城県下の酪農家で飼養されている乳牛204頭を用いて妊娠診断を行った。
    供試牛を人工授精後日数により5区に区分した妊娠診断結果は,39日以内で90.6%,40~59日で92.5%,60~79日で91.9%,80~149日で94.5%および150日以上で100%と,高い診断率が得られた。誤診は,妊娠牛を空胎と診断したものと空胎牛を妊娠と診断したもので,ほぼ同数認められた。妊娠診断の適中率は直腸検査法と比較して有意な差は認められなかったが,診断に要した時間は直腸検査法の約半分の時間であった。
    以上のことより,レクタルドクターの実用性が認められた。
  • 石橋 功, 西藤 裕一郎, 安部 哲朗, 中川 明
    1988 年 34 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    高単位のGTHを投与した未成熟ラットの着床困難の要因を検討するため,種々の量のPMSG(A群),PMSG•hCG(B群)の投与及び下垂体移植を行って,これら各群の採卵及び卵子の受精と発育過程を比較検討すると共に,血清中のPとE2濃度を測定した。
    1)採卵出来た個体の割合は,A, B群共に,20IU投与の交配後108h,40IU投与の84~108hに低下した(P<0.05~0.001)。2)交配後12~36hにおける採卵及び受精卵数は,10~20IU投与ではA,B群間に差がないが,40IUではB群が多かった(P<0.01又は0.001)。3)GTH投与量の増加に伴って,交配後60hに卵子下降の促進が見られ,採卵数と受精卵数はA群の20~40IU投与及びB群の10~401U投与の交配後84~108hに低下(P<0.05又は0.01),又は低下する傾向が見られた。5)下垂体移植ラットの交配後84~108hにおける採卵(受精卵)数は低下するが(P<0.01又は0.001),なお26~27(24~26)個を子宮内に保持して居り,採卵個体数の低下と卵子下降の促進が見られなかった。6)B群の20~40IU投与の交配後12~108hにおけるP値と12~60hのE2値は,5IU投与に比較して有意に高いが(P<0.05~0.001),下垂体移植ラットのE2値は差がなかった。
    以上の結果から,高単位のGTHを投与した未成熟ラットの着床困難の主な原因は,高いE2値によって卵子下降が促進され,胚が子宮内から消失するためであり,過剰妊娠誘起のためには,下垂体を経由する方法による胚胎環境の調節が必要であることが示唆された。
  • 岩崎 説雄, 塩谷 康生, 花田 章, 中原 達夫
    1988 年 34 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    体外受精により作出したウシ2細胞期胚を用い,染色体標本作製のための分裂中期停止及び低張処理条件を検討した。同時に染色体検査により性判別を行った。
    分裂中期核板検出率は,0.08μg/mlのVinblastin-Podophyllotoxin, 12時間処理区で高く(69.1%),この濃度を2倍に増しても検出率の増加はみられなかった。Colcemid(0.04μg/ml)4時間処理区での検出率は42.9%で低かった。クエン酸ナトリウムによる低張処理は濃度(0.75~1.0%),時間(15, 30, 60分間)ともに性判別率に影響はなく,中期核板像を有する125の胚のうち,61個の胚で性判別が可能であった。内訳は雌:22(36.1%),雄:39(63.9%)であった。低張処理濃度の低下に伴い染色体は分散し,間隔が広がり,染色体の辺縁が滲んで輪郭が不鮮明になる傾向がみられた。濃度は0.9~1.0%でも処理時間を短縮した場合には,染色体の分離が不十分で,判別が困難であった。<BF>以上の結果より,ウシ2細胞期胚の分裂中期像を得るには,媒精28時間後の胚をVinblastin-Podophyllotoxin(0.08μg/ml)で12時間処理し,1%クエン酸ナトリウムで60分間低張処理する方法が最適と考えられた。
  • 辻井 弘忠, 山本 静二, 小嶋 健司, 橋爪 一善
    1988 年 34 巻 2 号 p. 84-90
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    酵素免疫法によって,乳汁中のプロジェステロンを目視判定する診断薬(Ovuchek, Cowside)を用いて,乳牛15頭の妊娠診断と黄体の有無について検討した。
    人工授精後20日での直腸検査で15頭すべてに黄体が存在した。しかし,RIAで測定した血清中のプロジェステロンが高濃度(1ng/ml以上)を示したのは11頭であった。また,Ovucheckの妊娠陽性を示したのも11頭であった。40日直腸検査で14/15に黄体が存在した。Ovucheckの妊娠陽性を示したのは14/15であった。しかし,60日目の直腸検査では11/15が妊娠であった。これらから,20日および40日でのOvucheckによる妊娠的中率および非妊娠的中率は各々10/11(91%),11/14(79%),3/4(75%),1/1(100%)であった。
    本法は乳汁を少量採取するだけで,黄体の存在の有無が判り,野外での妊娠診断などに利用できるものと思われる。
  • 手塚 雅文, 福井 豊, 小林 正之, 町山 救郎, 赤池 政彦, 小野 斉
    1988 年 34 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    サフォーク種雌羊の繁殖季節(実験1)および非繁殖季節(実験2)に,アンドロジェン自働免疫注射薬(Fecundin)を単独投与,合成黄体ホルモン(MAP;60mg)含有腟内スポンジ(MAPスポンジ)とPMSGを併用,およびこれら三者を併用した場合の排卵率と産子率を比較した。実験1の翌年の繁殖季節におけるFecundinのブースター注射の効果についても検討した(実験3)。実験1および2における実験群は,1)無処置,II)Fecudin2回注射(交配の42と21日前),III)MAPスポンジ(交配直前9日間挿入)とPMSG(500IU;交配前日に投与)の併用,IV)Fecundin 2回注射とMAPスポンジおよびPMSG(250IV)の併用の4群であった。実験1では,II~IV群の排卵率は1群に比べて有意に高かった。産子率も,IIとIII群では,I群よりも有意に高かった。実験2では,IおよびII群の雌羊は発情を示さなかったが,一部のものでは排卵が認められた。しかし,これらの群の排卵率は皿或はIV群に比べて有意に低かった。IV群の産子率は皿群よりも有意に高かった。実験3では,Fecundinのブースター注射により産子率が高く維待された。以上の如く,繁殖季節におけるFecundin投与により,サフォーク種雌羊の排卵率と産子率が向上することが明らかとなったが,非繁殖季節ではその効果は認められなかった。
  • 稲葉 俊夫, 川手 憲俊, 森 純一, 高橋 千太郎, 松岡 理
    1988 年 34 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    雄ビーグル犬における血漿中LH,テストステロン(T),およびエストラジオールー17β(E2)濃度の動態について検討し,以下の結果を得た。
    1.生後14日間においては,雌雄のLHとT値は雄成犬の値よりも有意(P<0.001)に低値を示した。新生子期における雄のT値は同時期の雌のそれに比べて有意(p<0.05)に高値を示した。
    2.雄イヌのLH値は年齢とともに増加し,8年以降13年までは一定の値を持続した。雄イヌのT値は年齢とともに増加し,1年以降10年までは高値を持続した。その後,T値は減少する傾向を示した。一方,雄成犬のE2値には加齢の影響は認められなかった。
    3.雄成犬のLHとT値は年間を通して有意な変化を示さなかった。
  • 金井 幸雄, 石川 尚人
    1988 年 34 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    性周期のDay3とDay10(黄体期)およびDay-1(卵胞期)に,5頭のシバヤギから連続4時間10分間隔で頸静脈血を採取し,血漿中のLH,プロジェステロン(P)およびエストラジオール(E2)濃度の変化を調べた。Day10における2例を除き,全てのステージで約20分で半減する明瞭なLHのパルス状分泌が観察された。パルスの頻度は黄体最盛期に減少し,卵胞期に増加した。一方,パルスの振幅には有意な変動は認められなかった。LHパルスの頻度とP濃度との間には有意な負の相関があった。また,卵胞期では,LHパルスの出現の後,20-40分間にわたってE2濃度の有意な上昇が見られた。以上の成績から,シバヤギの性周期におけるLH分泌が律動的であること,また,卵巣でのE2分泌がLHパルスによって促進されることが示された。
  • 石川 尚人, 金井 幸雄
    1988 年 34 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    シバヤギの妊娠期(3頭)および哺乳期(4頭)の前,中および後期に,それぞれ,連続4時間10分間隔で頸静脈血中のLH濃度を測定し,パルス状分泌の特徴を調べた。妊娠期におけるLHのパルス状分泌は,どの時期においても不活発であり,妊娠中期の1例を除いて4時間の間に検出されたLHパルスは0回もしくは1回で,振幅も小さかった。哺乳中のシバヤギでは,4頭中3頭で分娩後1,2週間の間に1ng/ml以上の振幅を示すパルス状LH分泌がみられ,これらの3頭は分娩後15-66日の間に初回発情を示した。一方,分娩後78日の実験終了まで無発情のまま経過した残りの一例では,LHのパルス状分泌が回復しなかった。以上の成績から,シバヤギにおけるLHのパルス状分泌は,妊娠期に減少し,分娩後再び活発になること,また,哺乳期における卵巣周期の回復には,LHパルスの頻度の増加が必要な条件であることなどが示唆された。
  • 真鍋 昇, 宮本 庸平, 佐藤 英明, 石橋 武彦
    1988 年 34 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    石川県小松市を中心に集めたニホンイタチ精巣について組織学的および酵素組織化学的に検討し,その特徴を明らかにした。概要は以下の通りである。
    精巣重量は繁殖期の方が明らかに重く,精巣の白膜は非繁殖期に厚い傾向を示し,精細管は繁殖期に太くなることが観察された。また非繁殖期には精子細胞や精子が消失し,精母細胞の退行変性像や小型化したライディヒ細胞が観察された。エネルギー代謝関連脱水素酵素(LDH, G-6-PDH, SDH, MDH, IDH, α-GPDH)および加水分解酵素(ATPase, AlPase, AcPase, NSE)の活性を酵素組織化学的に調べ,その活性と局在性を明らかにした。繁殖期の精巣における間質ではLDH, G-6-PDH, MDH、IDH, ATPase, AlPase, AcPase, NSEなどが強い活性を示し,精細管上皮の細胞は強いMDH活性および中等度のLDH, G-6-PDH, ATPase活性を呈した。また精子には強いLDH, G-6-PDH,α-GPDH活性が検出された。ステロイド代謝関連脱水素酵素7種について調べた結果,3α一HSDは非繁殖期,繁殖期ともに間質に強い活性が検出された。3β-HSDは繁殖期に入り活性が強まり,とくにEpiandrosteroneを基質とした場合極めて強い活性が検出された。11β-,17α-,17β-,20α-,20β-HSDの活性は非繁殖期,繁殖期ともに陰性であった。.
  • 長嶋 比呂志, 加藤 行男, 山川 宏人, 尾川 昭三
    1988 年 34 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    多くの実験動物胚,家畜胚の凍結保存が可能であるのに対して,豚胚は15°C以下への冷却により死滅するとされてきた。著者らは,豚の透明帯脱出胚盤胞の低温感作に対する耐性が透明帯脱出期前の胚に比して高いこと,特に拡大期胚盤胞からの培養により透明帯脱出に至った胚盤胞(vitro-HB)が15°C以下への冷却後も生存性を保持し得ることを見出した。
    1) 上記のvitro-HB,子宮より採取した透明帯脱出胚盤胞(vivo-HB)および透明帯脱出期前の対照胚(拡大期胚盤胞,透明帯除去胚盤胞,初期胚盤胞,桑実胚)を16%牛胎仔血清加のダルベッコPBSとともに0.25m1プラスティックストローに封じ,6°Cに冷却した。6°Cに1時間保存後の培養により,vitro-HBの全例(26/26)およびvivo-HB65例中51例(78.5%)が生存と判定された。
    一方,対照胚では拡大期胚盤胞32例中の11例(34.4%)と,透明帯除去胚盤胞15例中1例(6.7%)が生存徴候を示したが,他は完全に死滅した。保存時間を16時間にした場合,vitro-HBとvivo-HBの生存性の間に明らかな差(95.2%vs53.7%,p<0.05)が認められた。
    2) vitro-HB18例を15°Cから11°Cにかけて3分間冷却した後,2頭の雌に移植した結果,1頭が妊娠し1匹の正常胎仔(27日齢)が得られた。この冷却条件で桑実胚22例および初期胚盤胞18例を処置したところ,全例が死滅し,vitro-HBの低温に対する耐性の高さが示された。
feedback
Top