家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
35 巻, 3 号
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  • 徳永 智之, 角田 幸雄
    1989 年 35 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    体外培養において2-cell blockが起るとされているCD-1系マウスの前核期卵と胎子線維芽細胞との共培養を行ない,初期発生に及ぼす影響を調べた。得られた結果は以下の通りである。
    1)CD-1系マウスの前核期卵はC57BL系マウス由来の胎子線維芽細胞との共培養によって,2-cell blockが解除されることが明らかとなった。この作用は胎子線維芽細胞層の細胞濃度ならびに継代数に影響された。また,共培養によって得られた胚盤胞を受卵雌に移植することによって正常な産子が得られた。
    2)胎子線維芽細胞由来の液性因子を期待して条件づけ培地によるマウス卵子の培養を試みた。その結果,条件づけ培地に2-cell blockに解除作用は認められなかった。
    3)胎子線維芽細胞層と卵子を接触しない状態で共培養した結果,4-細胞期あるいは胚盤胞への発生率は対照に比べ向上したが,接触する状態に比べると有意に低かった。これらの結果から,本実験では胎子線維芽細胞との共培養による2-cell block解除は,液性因子と接触因子のいずれに依存するのか明らかにできなかった。
  • 鈴木 達行, 石田 隆志, 酒井 豊
    1989 年 35 巻 3 号 p. 125-129
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    授精後7日目に回収したウシ胚を1.4Mグリセロールを含む0.2Mまたは0.35M蔗糖加PBSの凍結用培地を用い,0.25mlの容量のストローに注入して実験に供した。ストローを-6°Cに設定したフリーザー内に直接浸漬し,5分後に植氷したのち毎分0.3°Cの速度で冷却し,-6°C,-10°C,-15°C,-20°C,-25°C,-30°Cの各温度域から液体窒素中に浸漬して融解後の生存性を調べ,さらに生存性の高かった領域からの凍結融解胚からグリセロールを除去することなく受卵牛に移植して受胎性を調べた。
    0.2M蔗糖加PBSを用いた試験区の胚の生存性は,-20°C,-25°C,-30°Cの各温度域から液体窒素中に浸漬した各区で高く,それぞれ100%(6/6),100%(3/3),80%(4/5)となった。また0.35M蔗糖加PBSを用いた場合の胚の生存性は-15°Cと-20°Cから浸漬した両区で高く,それぞれ74%(14/19),67%(8/12)となった。凍結融解後0.2Mと0.35M蔗糖加PBSとも生存性の高かった-20°Cおよび-15°Cから液体窒素中に浸漬した両胚を用い,融解後グリセロールを除去することなく直接注入により受卵牛へ非手術的に移植した実験では,それぞれ57%(4/7),36%(5/14)が受胎し,計10頭の産子が得られた。
  • 長嶋 比呂志, 加藤 行男, 山川 宏人, 松本 徹郎, 尾川 昭三
    1989 年 35 巻 3 号 p. 130-134
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    透明帯脱出期前後の種々の発達段階にある豚胚盤胞を用い,豚胚の凍結に対する耐性について調べた。拡張胚盤胞,透明帯脱出途上の胚盤胞,透明帯脱出胚盤胞および対照の桑実胚,胚盤胞を1.5MDMSO存在で-20°Cに凍結し、融解後の生存性を培養により判定した。凍結•融解の結果拡張胚盤胞33例中16例(48.5%),透明帯脱出途上胚盤胞23例中13例(56.5%)および透明帯脱出胚盤胞55例中26例(47.3%)の生存例が得られた。これに対し,対照胚すなわち,より初期の胚では全く生存例が得られなかった。さらに,拡張胚盤胞を培養して得られた透明帯脱出胚盤胞32例を凍結•融解したところ,高い生存率(83.3%)が認められた。以上の結果より,豚胚の凍結に対する耐性は,透明帯脱出期前後において拡張胚盤胞期を境として生じる事,および透明帯脱出胚盤胞が凍結耐性に優れていることが示された。
  • 林 哲, 小林 一彦, 水野 仁二, 斉藤 邦男, 平野 進
    1989 年 35 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    豚初期胚の凍結保存の可能性を調べた。供試胚はHampshire種雌とDuroc種雄の交配により得られたF1拡張胚盤胞ないし脱出胚盤胞である。これらの胚を1.5Mグリセリンを含む20%FCS加PBSを用いて緩慢法により-35°Cまで下降凍結した。次いで37。C微温湯中に20秒間浸漬し急速融解した。凍結融解胚の生存性は18時間培養後の胚の発育形態観察,および一部の胚に蛍光色素(FDA)による生体染色を施しその蛍光を観察することにより判定した。更に凍結融解胚の正常性を移植試験により調べた。
    供試凍結•融解胚14個中13個が培養後に良好な発育形態を示した。また生体染色により供試胚2個が共に胚全体から明瞭な蛍光を発した。残る11個を1頭の雌に移植した結果受胎し,移植後70日目に超音波断層診断装置により複数の胎子が確認された。
    本報告は-35°C凍結融解胚が胎子へと発生することを実証するとともに,さらにより低温下での長期保存の可能性をも示唆するものである。
  • 建本 秀樹, 前田 照夫, 寺田 隆登, 堤 義雄
    1989 年 35 巻 3 号 p. 140-146
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    家兎未受精卵と1細胞期から脱出胚盤胞期(hatchedblastocyst)までの受精卵における極体を蛍光色素(Hoe-chst 33342)とアセト•ラクモイドを用いて観察した。
    25羽の家兎から計179個の卵が回収され,その内140個が受精卵であり39個が未受精卵であった。第一極体と第二極体との区別は,Hoechstを用いて核相を調べることにより可能となった。一般に第一極体の核は数個の穎粒物として分散していたが,第二極体の核は塊状を呈していた。1細胞期においても第一極体又は第二極体の消失が見られたが,特に8細胞期以降で顕著に両極体の崩壊及び消失が認められ,脱出胚盤胞期では全て消失していた。
    第一極体の分裂は受精卵だけでなく未受精卵でも見られ,その分裂には紡錘糸の形成がなく,分裂した娘細胞の大きさや娘細胞中の染色質量が一定でないこと,更には数回の分裂を繰り返す場合があることよりこれは第二減数分裂と見るよりも第一極体の無糸分裂,若しくは断裂であると思われた。
    また,極体状の核物質を含まぬ小型球状体が囲卵腔内に見られ,それが第一卵割時に両割球の接触に関連して出現するものであることを4個の受精卵で観察した。
  • 岩崎 説雄, 河野 友宏, 中原 達夫
    1989 年 35 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    体外受精により作出した牛2~8細胞期胚をプロナーゼ処理により透明帯除去後,胚を二分離し,一方で染色体標本を作製して核型分析を行い,性判別率を調べるとともに,他方を体外培養して体外発生能を検討した。本法で得られた二分離胚の体外発生能を,マイクロマニピュレーションによる二分離胚のそれと比較した。
    プロナーゼ処理で得られた二分離胚151個を,ビンブラスチンおよびポドフィロトキシンで処埋した結果,82個(54.3%)で分裂中期(M期)核板像が出現し,57個(供試胚の38%,M期核板像を示した胚の70%)で核型が判別できた。これは対照胚に比べ,M期核板出現率で10%,核型判別率で12%の減少であった。対照胚および二分離胚のうち,M期核板が出現した胚は総計152個で,このうち35個(23.0%)に染色体数の異常が認められ,このうち68%が多倍体であった。またプロナーゼ処理後の割球分離をPBS(一)中で行うと,二分離胚のうち一割球でも分割したものは25.4%(32/126胚)と低率であったが,発生用培養液(10%FCS含有TCM199)中で行うと,分割率は85.5%(59/69胚)に上昇した。一方,マニピュレーションによる二分離胚の分割率は86.9%(53/61胚)であった。このことから、プロナーゼ処理後の胚の分離条件によっては,分離胚の体外発生能はマニピュレーションによる二分離胚のそれに比べ,低下がみられないことが明らかになった。
  • 近松 典子, 浦川 真実, 福井 豊, 青柳 敬人, 小野 斎
    1989 年 35 巻 3 号 p. 154-158
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    屠殺牛の卵巣から得た未熟卵子を顆粒膜層細胞添加または無添加の条件下で体外成熟させた後,2つの異なる方法(swim-up+ヘパリン法またはカフェイン+Ca-イオノホア法)で処理した精子を用いて体外授精し,受精率および分割率を比較した。受精率は,成熟方法および精子処理方法の相異により差は見られなかったが,両前核形成率は,顆粒膜層細胞とともに成熟培養を行なった後,ヵフェイン十Ca-イオノホア処理精子を受精した卵子において最も低かった(P<0.05)。また,多精子受精率は,顆粒膜層細胞とともに成熟培養を行った卵子においてのみ異なる精子処理間で有意差(P<0.005)が認められ,カフェイン十Ca-イオノホア法処理精子による受精卵において高かった(P<0.005)。分割率は,顆粒膜層細胞の存在下で成熟培養後swim-up+ヘパリン処理精子を受精した卵子において最も高かった(P<0.005)。また8細胞あるいはそれ以上に分割した胚の出現割合はカフェイン+Ca-イオノホア処理方法の場合,成熟培養時に顆粒膜層細胞を添加した方が有意に高い値を示した(P<0.005)。
  • 曽根 勝, 河原崎 達雄, 小笠 晃, 中原 達夫
    1989 年 35 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    豚精液から分離された代表的な3種類の細菌(E. coli, Staphylococcus sp., Pseudomonas sp.)の培養液を豚精液に添加し,これを発情期または黄体期の経産雌豚の子宮内に注入し,生殖器の形態および受胎成績に及ぼす影響を調べた。
    発情期に非病原性細菌に汚染された精液を注入しても,と殺後の子宮からは細菌が検出されず,子宮内膜は肉眼的にも組織学的にも異常が認められなかった。また,受精や受胎にも影響が認められなかった。一方,黄体期に汚染精液を注入された雌豚の子宮からは多数の細菌が検出され,軽度の子宮内膜炎や子宮蓄膿症が認められた。しかし,次回発情期にはこれらの炎症所見は消退し,子宮内膜は正常に修復していることが認められた。
  • 牛島 仁, 角田 幸雄
    1989 年 35 巻 3 号 p. 165-168
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    交流電流を併用した電気融合法を用いてマウス除核未受精卵細胞質と2および8細胞期胚割球の融合を行った。除核未受精卵細胞質と2および8細胞期胚割球との融合率は,76%(38/50)および51%(48/94)であった。2細胞期胚割球由来再構築胚38個のうち7個(18%)が胚盤胞に発生したが,8細胞期胚割球宙来の再構築胚では胚盤胞への発生はみられなかった。
  • 渡辺 伸也, 前原 郁夫, 遠藤 敏明, 桝田 博司, 折笠 精一, 正木 淳二
    1989 年 35 巻 3 号 p. 169-172
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシおよびヒトの精漿ホスホリパーゼA活性と精液性状との関係について検討を加えた。ウシ精漿では19例(19頭)全てに,ヒト精漿(無精子症患者および精管結紮処置者のものを除く)では50例(50人)中27例(54.0%)に本活性が検出された。ウシおよびヒトともに,精漿中の本活性と精液量,精子濃度および精液のpHとの間には有意の相関は認められなかった。しかしながら,ヒトで本活性と運動精子率の間に有意の相関(P<0.05)が認められた。一方,ヒト無精子症患者より得た精漿について4例(4人)中2例に,ヒト精管結紮処置者より得た精漿については3例(3人)全てに本活性が検出された。以上の結果は精漿のホスホリパーゼA活性と精液性状の間には密接な関係がないことおよび本活性が副生殖腺分泌液に含まれることを示唆している。
  • 徳永 智之, 角田 幸雄
    1989 年 35 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    129/SVJ系マウスより得た,3.5日齢の胚盤胞あるいは免疫手術法により単離した内部細胞塊を,マイトマイシンC処理胎子線維芽細胞(C57BL由来)層上で継代培養を行った。その結果,異なる胚盤胞に由来する6株(7%,6/85;TT-3,-12,-23,-B2,-B3,-B4)の胚性幹細胞株を得た。これらの細胞株は,胚性癌細胞に類似した細胞境界が不明瞭でコンパクトな島状のコロニーを形成した。
    2株(TT-12,TT-B4)について染色体分析を行ったところ,2株とも観察した分裂中期像の78%(39/50)が正常2倍体の核型を有していた。細胞株の分化能を調べるために,増殖性の良好な細胞株(TT-12)を浮遊条件で培養した。その結果,外層が内胚葉と思われる組織に分化し,内部に外胚葉および前羊膜腔に類似した組織の形成が認められる胚様体が形成され,in vitroにおいて多能性が認められた。
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