家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
36 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 金子 浩之, 寺田 隆慶, 渡辺 元, 田谷 一善, 笹本 修司
    1990 年 36 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    豚由来のFSH製剤を投与したウシの末梢血中のインヒビン,FSH, LH,エストラジオールおよびプロジェステロン濃度を測定した。結果は,同一牛の無処置の発情周期中におけるホルモン濃度の変化と比較した。FSH投与群では,排卵前のエストラジオールおよび排卵後のプロジェステロンの血漿中濃度は無処置時に比べて著しく高値であった。血漿中インヒビン濃度はFSH製剤投与後,急激に上昇し,LHサージ後もエストラジオールより長時間高値を維持した。血漿中インヒビンとプロジェステロン濃度は,過排卵誘起牛では関連した変化を示さなかった。過排卵誘起群では排卵前のFSHサージのピーク値が無処置群の70.4%に抑制されたが,LHサージは抑制されなかった。これらの結果より,FSH製剤投与後の高濃度のインヒビンが排卵前のFSHサージを抑制するものと推察された。また,これらの知見から,残存卵胞がインヒビン分泌活性を保持していること,並びに黄体は過排卵誘起牛ではインヒビンの主要な分泌源ではないことが示唆された。
  • 成田 成, 新村 末雄, 石田 一夫
    1990 年 36 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    貯蔵型原始卵胞の卵母細胞と排卵直後の卵母細胞の微細構造がマウスの加齢に伴ってどのように変化するかを調べた。
    貯蔵型原始卵胞の卵母細胞において,微絨毛と顆粒層細胞との間のデスモソームは2日齢の動物に比べ,20日齢,60~90日齢および360~390日齢のものでは少なく,減少の程度は加齢に伴って著しかった。核は円形または楕円形であったが,360~390日齢のものに核膜の陥入がみられた。ミトコンドリアは,2日齢のものでは比較的大型で円形または楕円形であったが,20日齢と60~90日齢のものでは著しく大型のものも出現した。クリステは板状または空胞状を呈していたが,加齢に伴って板状のものは減少し,空胞状のものが増加した。ゴルジ装置,滑面小胞体およびリボソームは加齢に伴って減少した。
    排卵直後の卵母細胞において,透明帯は30日齢のものでは均一で電子密度が低かったが,60~90日齢と180~210日齢のものでは卵黄周囲腔側が粗な網状を呈するものもみられた。ミトコンドリアはどの日齢のものでも不定形で,クリステは板状または空胞状であったが,加齢に伴ってミトコンドリアは小型化し,板状クリステが減少した。表層顆粒は30日齢のものでは少なかったが,60~90日齢と180~210日齢のものでは多かった。線維構造物は30日齢と60~90日齢のものに比べて180~210日齢のものが多かった。
  • タウィワット タサナワット, 太田 克明, 横山 昭
    1990 年 36 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    泌乳期後半あるいは延長泌乳期にみられる泌乳量の減少時期が卵巣除去により遅延することが知られている。本実験ではこの現象にプロラクチンあるいはコルチコステロンが関与しているかどうかを調べるため,延長泌乳ラットを用い吸乳によって引き起こされるプロラクチン及びコルチコステロン分泌反応に及ぼす卵巣除去の影響を検討した。分娩日を泌乳0日とし,泌乳1日に卵巣除去を行なった。泌乳2日に乳子を8匹に調節した。泌乳16日より8日毎に6-8日令の乳子に付け替え40日まで泌乳を延長した。泌乳8,16,24,32及び40日の午前中乳子を母親から4時間隔離した後,30分再び同居させた。吸乳開始時より0,10,20,30,60,90,及び120分後に採血を行なった。泌乳量は,乳子の体重増加を指標として測定した。偽手術群では泌乳16-24日に泌乳量は減少したが,卵巣除去によりこの減少時期は24-32日に遅延した。偽手術群,卵巣除去群ともに,泌乳8及び16日では,吸乳開始後30分以内に血中プロラクチン及びコルチコステロン濃度が上昇した。泌乳24日以降では,吸乳により引き起こされるプロラクチンおよびコルチコステロン分泌は,ほとんど見られなかった。卵巣除去は,泌乳8日におけるプロラクチン分泌の反応を弱めた他はこれらのホルモン分泌に影響をあたえなかった。以上の結果から卵巣除去による泌乳量減少時期の遅延には,プロラクチン及びコルチコステロン分泌は関与していないことが示唆された。
  • タウィワット タサナワット, 太田 克明, 横山 昭
    1990 年 36 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    泌乳動物における乳生産と,母体維持に対する栄養素分配の生理的機序を知るため,正常及び延長泌乳ラットを用い,泌乳期の進行にともなう摂食量並びに体組成の変化を検討した。泌乳量は泌乳24日から徐々に減少した。摂食量は泌乳期を通して,変化はみられなかった。母体の脂肪蓄積量は泌乳0日から24日にかけて徐々に減少した。タンパク質蓄積量は泌乳16日から24日の間に急激に減少したがその後増加した。脂肪およびタンパク質蓄積量の減少速度は正常泌乳群と延長泌乳群の両群において差がみられなかった。摂食量と泌乳量との間の収支には,本実験の結果からは明らかな相関はみられなかった。以上の結果から,正常泌乳期の末期(泌乳約24日)では母体における栄養素の分配調節機構になんらかの変化が起こっていることが示唆された。
  • 河原崎 達雄, 曽根 勝, 番場 公雄
    1990 年 36 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    豚の胚移植のための発情同期化方法として,離乳時雌豚にPMSG•hCGを投与(処置I),PGFにより流産させた妊娠初期未経産雌豚にPMSG•hCGを投与(処置II),未経産雌豚にAltrenogestを投与した後にPMSG•hCGを投与(処置III)した3処置について検討した。
    発情の確認は1日2回,成熟雄豚を用いて行った。発情(許容)は処置I,IIではDay0~1,IIIではDay1で開始するものが多かった。卵巣嚢腫は処置Iで3頭認められたが,IIおよびIIIでは認められなかった。
    発情を発現した雌豚は2~3回の人工授精を行い,day 5~8に胚を回収した。正常胚の割合は処置I,IIおよびIIIで,それぞれ81.8%,81.0%,52.5%となり,処置I,IIとIIIとの間に有意差が認められた(P<0.05)。
    処置I,II,IIIにより発情を同期化した受卵豚に対して13~22の正常な胚を移植した結果,受胎率は処置Iで高く,IIIで低い傾向が認められたが有意な差ではなかった。
    以上の結果から,処置IIは発情誘起率,正常胚の回収率ともに優れており末経産豚の発情同期化方法として有効と思われた。処置IIIについては,発情発現のコントロールは正確であるが正常胚の回収率が低く,正常胚の回収率を高くするための検討が必要と思われた。処置Iは卵巣嚢腫の発生は認められたものの経産豚のための発情同期化方法として応用可能と思われた。
  • 鈴木 達行, 郭 志勤, 陳 静波, 丁 紅
    1990 年 36 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    Thirty five and 40 bovine embryos collected on day 7 of pregnancy were suspended into 1.4M glycerol and 1.6M 1, 2-propanediol solutions employed as cryoprotectants respectively. They were loaded into 0.25ml plastic straws with 0, 0.2, 0.4 and 0.8M sucrose in PBS. Those straws were cooled directly to 0°C in the cooling chamber, seeded at -6°C, cooled to-30°C at a rate of 0.3°C/min and then stored in liquid nitrogen. The straws were thawed in a water bath at 30°C, followed by zero-step dillution of cryoprotectant. The recovered embroyos were cultured with Ham's F-10 medium supplemented with 10% calf serum to evaluate the survival rate from their developments in vitro. With 0. 0.2, 0.4 and 0.8M sucrose in PBS, the survival rates of embryos were 83, 91, 91 and 100% for 1.6M 1, 2-propanediol and 0, 0, 83 and 90% for 1.4M grycerol, respectively. This study indicates that, when 1.6M 1, 2-propanediol solution is employed as a cryoprotectant, a high survival of bovine embryos after being frozen-thawed can be obtained without using sucrose solution for the dilution of cryoprotectant.
  • 後藤 和文, 宅萬 義博, 大江 伸幸, 小川 清彦
    1990 年 36 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    屠場由来の雌牛卵巣から末成熟卵子を吸引採取して,個体毎に体外で成熟,授精,培養を行い胚盤胞への発育率を調べた。精子は一頭の種雄牛の凍結精巣上体尾部精子を用いた。その結果以下のことが明らかとなった。
    1.一頭当りの採卵数(卵子-卵丘細胞塊)が,31個以上のグループは,21~30個のグループおよび20個以下のグループより胚盤胞への発育率が高い傾向にあった。(14.3%vs7.9%,9.0%)。
    2.一頭当りの採卵数が同一グループに属しても4-cell,8-cell,桑実胚および胚盤胞への発育率に大きなバラツキがみられた。
    3.一個体由来の卵子から0~11個(平均3個)の胚盤胞が得られた。以上の結果より屠場由来の雌牛卵巣を個体毎に処理して体外受精試験(体外成熟一体外受精一体外培養)を行うと,胚発生率に関して雌牛個体による差がきわめて大きいことが明らかとなった。
  • 舟橋 弘晃, 丹羽 晧二
    1990 年 36 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ラット2-胞期胚に1回あるいは連続した2回の直流パルス(1.0~2.0kV/cm)を50~200μs通電し,割球の融合率と融合に要する時間を調べた。1.0kV/cmで50μsのパルスでは融合は困難であり,1あるいは2回付与のいずれにおいても15個の処理胚のうち割球の融合したものはわずか1個(7%)であった。融合率は1.5~2.OkV/cmの電圧および100~200μsの通電において最も高くなった(80~100%)。1.0kV/cmで100~200μsの条件下では1回よりも2回の連続通電により融合率は高くなったが,1.5および2.0kV/cmでは2回通電の効果はほとんど認められなかった。通電後1時間以内に融合した胚について融合に要した時間を測定した結果,1.0および1.5kV/cmでは50~200μsのパルスを2回通電することによって融合時間が短縮されたが,2.0kV/cmでは殆ど短縮されなかった。1.0,1.5および2.0kV/cmで150μs通電された後割球融合の生じた胚を偽妊娠雌ラットの卵管に移植し,3日後に回収した結果,回収卵のうちそれぞれ15(83%),12(80%)および9個(64%)が桑実期あるいは胚盤胞にまで発生していたが,これら3者間に有意差は認められなかった。
  • 木曽 康郎, 山下 昭雄, 佐々木 文彦, 山内 昭二
    1990 年 36 巻 2 号 p. 120-126
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    妊娠30日から63日(満期)までのイヌ胎盤における母体側血管構築に関して,血管鋳型標本を用いて走査電子顕微鏡的に検索した。
    イヌ胎盤の各領域は弓形動脈から派生した放射状動脈によって血液を供給される。放射状動脈は胎盤迷路部内で3~5本の細動脈に分枝したが,それらの細動脈は胎盤迷路部の漿尿膜面にまで達していた。細動脈は漿尿膜面を走行しながら,迷路部内に毛細血管を出している。毛細血管は迷路部内で分枝•吻合を繰り返し,網状構造を形成した後,接合帯付近で細静脈に続き,放射状静脈へと集められ,最終的に弓形静脈へと連続していた。従って,母体側毛細血管網の血流様式は胎子一母体方向である。
    妊娠30日で,迷路部内の毛細血管網は既に基本的な構築を整えていたが,30日から45日まで,量的に顕著な増加を示し,特に40日から45日にかけて著しかった。45日以後も,毛細血管網は発達したが,45日以前ほど顕著ではなかった。迷路部の毛細血管網は,妊娠45日でその構築様式だけでなく,血管網の密度,毛細血管の迂曲および管腔の拡張などの発達においても完成することが示唆された。
  • 呂 容真, 塩田 邦郎, 豊田 裕, 高橋 迪雄
    1990 年 36 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 1990/06/09
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    WM-HEPES培養液中の体外培養において2-cell blockが起るとされているCD-1系マウスの1細胞の受精卵を用いて,アクチビンAあるいは赤芽球性白血病細胞赤化因子(EDF)として同定されているペプチド標品の受精卵発生に対する影響を検討した.
    PMSG(5IU)とhCG(5IU)を用いて過排卵処置した3~4週令の雌マウスを成熟雄マウスと交配させ,hCG投与19時間後に卵管から受精卵を採取した.次に150U/mlのhyaluronidaseを用いてcumulus massを除去し,3mg/mlのBSAを含むWhitten'smedium中で48時間培養した.アクチビンAは後半の24時間に添加し,その濃度依存の効果を検討した.その結果,アクチビン A 添加群では,16.7%の受精卵しか4細胞へ移行しなかったが,0.1ng/mlアクチビンA添加群では42.9%1.Ong/mlアクチビンAでは83.1%,10.0ng/mlアクチビンAでは39.6%の受精卵が4細胞期へ移行した.
    次に,培養液中のアクチビンA存在時期を3時間ずつずらして培養したところ,hCG投与後41~44時間にアクチビンAが存在していた群で4細胞期への移行が高率に観察された.この時間帯は,2細胞期中期に当たり,アクチビン A はこの時期に作用していると考えられた.
    また,アクチビンA添加により4細胞期へ移行した胚を仮親に移植したところ,妊娠,分娩を経て正常に発育した.以上の結果から,マウスの2 cell blockはアクチビンAによって極めて高率に解除できること,また,アクチビンAの作用時期は2細胞期中期であることが示唆された.
feedback
Top