日本繁殖生物学会 講演要旨集
第100回日本繁殖生物学会大会
選択された号の論文の235件中1~50を表示しています
優秀発表賞
卵巣
  • 米澤 智洋, 久留主 志朗, 汾陽 光盛
    セッションID: AW-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
     ラットの性周期黄体は、発情休止期2日目(D2)の午後に退行を開始する。これまでに我々は、この時期の黄体で、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)と、GnRH刺激で発現が増加する蛋白質であるアネキシン5(AX5)の発現が上昇し、黄体のアポトーシスに関与することを報告した。本研究では、GnRHの発現がD2に時期特異的に増加する機序を明らかにするために、視床下部でGnRHの分泌を促進することが知られているMetastinに着目してその関与を検討した。Wistar-Imamichi系雌ラットの性周期各時期の黄体を採取し、Real-time PCR法で、各種遺伝子の転写活性を測定したところ、黄体のMetastin転写活性は、発情前期の夜とD2の午前から午後にかけて有意に増加した。同じサンプルのGnRHとAX5のmRNAは、Metastin転写活性の上昇に遅れて、D2の午後から有意に増加した。D2におけるこれらの遺伝子の転写活性の増加は、発情期からのプロラクチン(PRL)投与(10 IU、1日2回)によって著しく抑制された。さらに、PRL投与で黄体を機能化したラットの卵巣嚢内にMetastinを局所投与すると、GnRH、AX5 mRNAの有意な増加がみられ、TUNEL法によるアポトーシス陽性細胞が検出された。このMetastinの黄体退行作用にGnRHが介在するか否かを検討するために、MetastinとともにCetrorelixを添加して黄体を培養したところ、GnRH、AX5 mRNAと、アポトーシス関連遺伝子であるFas、FasL mRNAの転写活性は著しく抑制された。黄体のMetastin転写活性は、Estradiolの添加によって、用量依存的に増加した。以上より、ラットの黄体でMetastinが発現しており、D2で発現が増加することで、黄体のGnRH、AX5の発現を促し、黄体細胞のアポトーシス開始に密接に関与することが示唆された。これらの遺伝子発現は、PRLによって抑制されることが明らかになった。また、Estrogenが濃度依存的にMetastinの転写活性を増加させたことから、D2にみられる卵胞発育によるEstrogenの上昇が、Metastinの発現を促進し、D2の時期特異的なGnRH発現の引き金になっている可能性が考えられた。
精巣・精子
  • 中村 和美, 田手 俊輔, 設楽 修, 原山 洋
    セッションID: AW-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】哺乳類の精子は雌性生殖道内でキャパシテーションとよばれる一連の変化を経て初めて先体反応を行い,卵へ侵入できる。このような受精現象には細胞内環状アデノシン1リン酸(cAMP)が深く関与しているが,cAMPのターゲット分子としてはタンパク質キナーゼA(PKA)が主体的に働くと考えられてきた。しかし以前に私達が行った実験から, PKAを介さないcAMPシグナリングがブタ精子頭部において機能していると推定された。本研究ではcAMPの非PKAターゲット分子であるexchange protein directly activated by cAMP(Epac)に着目し,ブタ精子の受精におけるEpacの役割を明らかにすることを目的とした。【方法】ブタ濃厚部精子を洗浄した後,一部の精子を抗Epac抗体を用いた間接蛍光抗体法に供してEpacの分布を調べた。残りの精子はEpac特異的cAMPアナログ8-pMeOPT-2'-O-Me-cAMP (8pM),PKA阻害剤(H89),カルシウムイオンキレート剤(EDTA)を適宜添加した培養液中で最大3時間インキュベートした。インキュベーション後に,各薬剤が精子のキャパシテーションおよび先体反応に及ぼす影響をそれぞれCTC染色法およびPNA-PI染色法に従って調べた。またキャパシテーションに必須の細胞内カルシウム濃度上昇を検出する実験では,カルシウム指示薬fluo-3/AMを予め導入した精子をインキュベーション後に蛍光顕微鏡下で観察した。【結果】Epacはブタ精子頭部の先体部に局在した。また8pMを用いたEpacの活性化処理によりキャパシテーション精子の割合は上昇したが,先体反応の発生は検出されなかった。このことはEpacがキャパシテーションの進行に関与することを示唆している。さらに,8pM処理後の精子の頭部では細胞外カルシウムイオン存在時にのみ細胞内カルシウム濃度の上昇が認められたことから,cAMP-Epacシグナリングは細胞外カルシウムの流入を導く分子に作用すると推定される。以上の結果よりcAMP-Epacシグナリングがブタ精子頭部での細胞内カルシウム濃度上昇およびキャパシテーションに関与すると考えられる。
卵・受精
  • 遠藤 墾, 加納 聖, 内藤 邦彦
    セッションID: AW-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)はクラスI~IIIのファミリーに分類される。ブタ卵成熟過程では卵核胞崩壊(GVBD)後にHDACsの働きによりクロマチン全体の脱アセチル化が起こるが、このとき卵内でどのHDACsが作用するかは不明である。我々は以前ブタ卵を用いて、GV期でも核内・核外に十分なHDAC活性が存在し、核膜を人為的に崩壊すれば脱アセチル化が起こることを明らかにした。本研究では、GV期の核内・核外に存在するHDACsファミリーを特定し、GVBD後の脱アセチル化に関与するHDACsクラスを調べるとともに、核膜消失の必要性を考察した。【方法】屠場由来卵巣より採取したブタGV卵の核と細胞質を顕微操作により分離後、クラスI特異的HDAC阻害剤のValproic Acid(VPA)を処理し、Cyclex HDAC Assay kitを用いてHDAC活性を測定した。また、ブタ卵をVPA添加培地中で既報に準じて体外成熟培養し、GVBD後のアセチル化状態を調べた。さらに、GVを顕微操作で除核した卵に、卵丘細胞核を注入し、そのアセチル化状態を検査し、GV内因子の脱アセチル化への必要性も検討した。【結果】VPA阻害実験より、核内のHDAC活性はほぼ完全に阻害され、細胞質の活性は阻害されなかった。また、ブタ卵をVPA添加培地で培養しても、GVBD後の脱アセチル化は阻害されなかった。さらに、除核後の卵細胞質に注入した卵丘細胞核は、核膜消失後に脱アセチル化が起こった。以上より、GV期の核内にはクラスI、細胞質にはクラスI以外のHDACsが存在し、GV内のクラスI HDACs及び他のGV内因子は脱アセチル化には必要なく、核膜消失に伴い細胞質に存在するクラスI以外のHDACsが、クロマチンと接触することで脱アセチル化が起こることが示唆された。
  • 柳内 嘉在, 岡崎 哲司, 前田 照夫, JoAnne S Richards, 島田 昌之
    セッションID: AW-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は,Toll-like receptor(TLR)が卵丘細胞に発現し,グラム陰性菌や陽性菌のみでなく,短鎖ヒアルロン酸により活性化されることを明らかとした.排卵過程において,卵丘細胞間には長鎖ヒアルロン酸が蓄積し,受精時に精子が分泌するヒアルロニダーゼにより分解される.この過程において,短鎖ヒアルロン酸が出現し,卵丘細胞を刺激すると推察されるが,ヒアルロン酸と卵丘細胞,その受精への役割は全く解明されていない.そこで本実験では,受精過程における卵丘細胞に発現するTLRの果たす役割について検討した.【方法】雌マウスにPMSG,hCGを投与し,卵管から卵丘細胞卵子複合体(COC)を回収した.COCは,短鎖ヒアルロン酸刺激,ヒアルロニダーゼ処理,あるいはIVFに供試した.IVFあるいは精子の運動性解析には精巣上体から回収した精子を用いた.【結果】短鎖ヒアルロン酸添加,ヒアルロニダーゼ処理,あるいはIVF時において,添加した短鎖ヒアルロン酸あるいは形成されたそれがTLR2とTLR4を介してNFkB系を活性化すること,その結果CCL2,CCL4,CCL5などのケモカイン類の発現・分泌を促進させることが明らかとなった.これらシグナル伝達経路の活性化と標的遺伝子の転写はTLR2とTLR4の中和抗体により完全に制御された.中和抗体の添加は,受精率も有意に低下させた.さらに,CCL2,CCL4,CCL5に対する受容体である,CCR1,CCR2,CCR5が精子に発現していること,その活性化により精子は卵子周辺にケモタキシスにより誘引され,その精子において受精能獲得の指標となるチロシンリン酸化が誘起されている事が明らかとなった.【結論】受精過程において,1.精子が分泌するヒアルロニダーゼの作用により短鎖ヒアルロン酸が生じ,2.それが卵丘細胞のTLR2およびTLR4を介して,ケモカイン類を発現・分泌させること,3.それらが精子の受容体を刺激し,卵子周辺へと誘導し,かつ受精能を獲得させ,_丸4_その結果,受精が完了する,という受精過程における卵丘細胞と精子との関係がはじめて明確化された.
  • 大串 素雅子, 宮野 隆, 斎藤 通紀, Fulka Josef Jr.
    セッションID: AW-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【イントロダクション】体細胞では核小体はリボソーム合成の中心的な役割を担っている。しかし,哺乳類の発育完了卵母細胞では核小体は緊密化しており,クロマチンは内部に存在せず,さらに転写はグローバルに抑制されている。この核小体の機能は明らかにされていない。そこで発育完了卵母細胞の核小体を顕微操作により除去し(脱核小体操作),核小体のない卵母細胞を成熟させ,受精もしくは体細胞核移植ののち発生させることでこの核小体の機能を検討した。
    【材料と方法】卵核胞期のブタおよびマウス卵母細胞から核小体を顕微操作によって除去し,脱核小体卵母細胞を作出した。これらの卵母細胞を成熟培養後,体外受精あるいは顆粒膜細胞,線維芽細胞,ES細胞をドナーとして体細胞核移植を行い前核中の核小体の形成さらにこれらの胚の初期発生状況を調べた。対照区として単離した核小体を第_II_減数分裂中期の脱核小体卵母細胞に再注入した卵母細胞を用い,実験区と同様に成熟培養したのち体外受精あるいは体細胞核移植を行い,胚の初期発生状況を調べた。
    【結果】核小体を顕微操作により除去したブタおよびマウス卵母細胞(脱核小体卵母細胞)は,対照卵母細胞と同様に成熟,受精し,雌雄両前核を形成するが,前核中に核小体は形成されなかった。また,この受精卵および初期胚はタンパク質合成,DNA複製を正常に行うものの,発生を停止した。対照として脱核小体したのち成熟させ,第_II_減数分裂中期で核小体を再注入した卵母細胞を受精させると,その受精卵の前核中には核小体の形成が見られ,胚は胚盤胞にまで達した。脱核小体卵母細胞に体細胞核移植を行い,発生させると再構築卵・胚には核小体の形成は見られず,発生を停止した。つまり,体細胞の核小体は卵母細胞の核小体を代替することはできないことが明らかとなった。
  • 塚本 智史, 久万 亜紀子, 村上 未玲, 山本 章嗣, 水島 昇
    セッションID: AW-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    受精直後には、卵子由来のmRNAやタンパク質の分解、受精卵ゲノム由来の新たなタンパク質の合成、オルガネラの再構築が起こり、初期胚は受精卵型の発生パターンへとプログラミングされる。中でも、卵子形成の過程で細胞質に蓄積された母性タンパク質は受精後に急速に分解され、受精卵型のタンパク質発現パターンへと劇的に変化することが知られている。しかしながら、これまでのところ、母性タンパク質の大規模な分解がおこる分子メカニズムは明らかになっていない。オートファジーは、リソソームを分解の場とする細胞質成分の大規模分解系である。オートファジーが誘導されると細胞質に隔離膜が出現し、これが伸長して二重の膜で取り囲んだ直径1μmほどのオートファゴソームが形成される。次に、オートファゴソームの外膜とリソソーム膜との融合によってオートリソソームとなり、内膜とともに内容物が分解される。私たちは、オートファゴソーム蛍光標識マウスを用いて、受精直後の初期胚で活発にオートファジーが誘導されることを見いだした。受精前の未受精卵ではオートファジーは誘導されないことから、受精後の初期胚特異的に機能することが示唆された。そこで、隔離膜の伸長に必須なAtg5を、卵子特異的に欠損したマウスを作製し、オートファジーの受精直後の発生に及ぼす生理学的意義を解析した。このメスマウスの卵子では、Atg5が発現せず、受精後のオートファジーは抑制されるが、卵子形成や排卵、受精は正常に起こることが分かった。次に、Atg5ヘテロ欠損オスと交配させたところ、Atg5+の精子由来の産仔を得ることができたが、Atg5-精子由来の産仔を得ることはできず、受精後の4細胞期から8細胞期に胚発生が停止することにより着床前致死になることが明らかとなった。以上の結果から、オートファジーは受精直後の胚発生に必須であり、母性タンパク質を大規模に分解して胚発生に必要なアミノ酸を供給していると考えられる。
  • 齊藤 耕一, 色川 詠美子, 渡邉 将史, 春日 和, 小林 正之, 小嶋 郁夫
    セッションID: AW-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】私達はマウス桑実胚において発現量が増加するホメオティック遺伝子Egam-1を発見し,その機能解析を行っている。マウスES細胞を用いた機能解析より,Egam-1はES細胞の分化に伴い発現量が増加すること,および強制発現によりES細胞の分化を誘導することが判明している。ホメオティック遺伝子は転写調節因子として細胞運命の決定に関与しており,Oct4,Nanogは未分化状態維持能,Cdx2は分化誘導能を有することが知られている。Egam-1も転写調節因子として機能すると考えられるが,標的遺伝子は不明である。そこで本研究では,ES細胞を用いることによりEgam-1が転写調節因子としてOct4,Nanog,Cdx2の発現を制御する可能性について検討した。【方法および結果】Oct4,Nanog,Cdx2遺伝子の開始ATG上流約4kbをEGFP遺伝子の上流に連結し,レポーターベクターを構築した。続いて,それぞれのレポーターベクターとEgam-1強制発現ベクターをマウスES細胞に一過性に同時導入し,EGFPの蛍光強度を指標としてプロモーター活性を定量した。その結果,Egam-1強制発現によりOct4プロモーターの活性のみが変化し,約30_%_低下することが判明した。次に,Oct4プロモーター領域におけるEgam-1の結合部位を同定するために,ChIPアッセイを行ったところ,Egam-1がOct4近位エンハンサー(PE)領域付近に結合することが示された。そこで,Egam-1がOct4 PE活性に与える影響を検討するために,Oct4 PE領域をminimal TKプロモーター/EGFPの上流に連結し,Oct4 PE活性を定量した。その結果,Egam-1強制発現によりOct4 PE活性が約50_%_低下することが判明した。【考察】以上の結果より,Egam-1はOct4 PE領域に直接結合し,Oct4発現を抑制することが示された。このことから,ES細胞の分化時にはEgam-1がOct4発現を抑制する転写調節因子として機能し,細胞分化を進行させる可能性が考えられる。また,Egam-1およびOct4はマウス初期胚においても発現することから,Egam-1は初期胚においてもOct4発現を抑制することにより細胞運命の決定に関与することが考えられる。
生殖工学
  • 松成 ひとみ, 小野寺 雅史, 多田 昇弘, 望月 秀樹, 春山 エリカ, 中山 順樹, 斎藤 仁, 上野 智, 黒目 麻由子, 長嶋 比呂 ...
    セッションID: AW-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    蛍光タンパク遺伝子を組込んだトランスジェニック(Tg)ブタは,有用な大型実験動物となり得る。本研究では,新規の赤色系蛍光タンパクであるhumanized Kusabira-Orange(huKO)遺伝子を組込んだTgクローンブタの作出と,解析を目的とした。gene silencing耐性レトロウイルス(RV)ベクターを用いてhuKO遺伝子を導入した胎仔繊維芽細胞を核ドナーに,体外成熟卵をレシピエント卵に用い,核移植を行った。再構築胚を1-2日間培養後,レシピエント雌の卵管内に移植し,産仔の作出と胎仔回収を行った。得られたクローン産仔は,組込み遺伝子コピー数をサザンブロッティングにより解析した他,脳,消化器,生殖器等全23臓器・組織から新鮮組織断片,凍結及びパラフィン包埋切片を作製し,蛍光発現を評価した。脳組織切片では,huKO発現細胞を抗体染色により同定した他,血球での発現をFACS解析した。クローン胚合計505個を5頭のレシピエントに移植した結果,全頭が妊娠した。1頭の雌から回収した3頭の胎仔(発達率:3/76,3.9%)はいずれも,赤色蛍光を全身性に発現していたが,蛍光強度には個体差が見られた。他の4頭の雌からは,合計18頭のクローン産仔が得られた。16頭のゲノムDNAの解析の結果,各々に 2~17コピーのhuKO遺伝子の組込みが確認された。調べた全臓器・組織が,明瞭な蛍光発現を示し,特に膵ラ氏島や腎糸球体では,発現が顕著であった。脳組織では,前駆ニューロン細胞,ニューロン,ミクログリア,アストロサイトで,また血球では顆粒球,マクロファージ,リンパ球,血小板で蛍光が見られたが,赤血球の発現レベルは低かった。以上より,gene silencing耐性RVベクターにより遺伝子導入された細胞を用いて,高効率にTgクローンブタを生産できること,gene silencing耐性の機構は,ブタにおいても有効であること,huKO遺伝子の導入と発現は,ブタの胎仔発育に致死的な影響を及ぼさないこと,などが示された。
一般口頭発表
性周期・妊娠
  • 坂口 実
    セッションID: OR1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高泌乳化に伴うホルスタイン種乳牛の繁殖性低下は、世界的な現象であり、持続的な酪農生産にとって大きな脅威となりつつある。遺伝的背景や飼養管理など、多くの要因が関与していると考えられるが、乳牛側の要因としては、分娩後発情回帰の遅れと、発情行動の微弱化が大きな問題である。そこで、分娩後早期の排卵における発情行動発現の有無について調べた。【方法】北農研で飼養されたのべ100頭のホルスタイン種搾乳牛について、週1~3回の超音波あるいは直腸検査により排卵を確認した。発情観察は1日2回以上行い、スタンディング行動(ST)観察の補助として、ヒートマウントディテクターまたはテイルペイントを用いた。分娩45日後から人工授精を開始したが、8頭は受胎しなかった。受胎した92頭について、各排卵時の発情の有無と強度をまとめ、産次別にも分析した。発情行動はSTを認めたものと、マウンティング行動(MT)のみ、さらに無発情の3つに分類した。【結果】観察した排卵はのべ368回で、このうち136回(37%)は無発情であったが、5回排卵までには全頭で初回発情を観察した。初回から5回までのそれぞれの排卵で初回発情を観察した割合は、11%、55%、28%、4%および2%であった。2回から5回以降排卵まで、ST発情の割合は10%から74%と増加したが、MT発情も19-24%の排卵で観察された。6頭(7%)で、観察した全ての排卵(3-5回)時にST発情を確認した一方、初回発情(STまたはMT)回帰後の無発情排卵は、14頭(15%)で、のべ17回観察され、そのほとんどは分娩後2-4回目の排卵であった。305日乳量は初産で8,127(n=36)kg、2産で10,063(n=23)kg、3産以上では10,755(n=33)kgであった。初産牛では排卵の52%でSTを観察したが、2産および3産以上では41%および43%であった。これら、各排卵時に示される発情行動の頻度は、繁殖性向上にむけての基礎データとして活用できる。
  • 吉田 真弓, 一宮 良和, 濱野 光市, 辻井 弘忠
    セッションID: OR1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】リラキシンは雌における分娩ホルモンとして知られているが,近年多面発現ホルモンとしての機能,特に,卵子の成熟などにも影響を与えることが明らかになってきている。しかし,着床時にリラキシンが子宮に与える影響については不明な部分が多い。そこで本研究では,リラキシンがスナネズミの脱落膜反応に及ぼす影響を調べた。【方法】2-3ヶ月齢の雌スナネズミにE2を投与し,Day 3に卵巣除去し,その後P4を投与し,Day 7に左子宮角にオイルを注入することにより脱落膜反応を誘起させた。Day 7から12にかけてE2およびP4を連続投与し,さらに投与群にはリラキシン(0.1mg)を,非投与群には溶媒のみを連続投与し両者を比較した。Day 12に子宮を摘出し,子宮重量・タンパク質含量・コラーゲン含量を比色検定にて比較した。また,組織を14C-メチオニンを含むKrebs-Ringer bufferで37°C・1時間培養し,タンパク質含量を測定した。【結果】この処理方法で、スナネズミの脱落膜反応を誘起した。リラキシン投与の処理/非処理の子宮角重量比は、非添加区と比較して有意に高かった。リラキシンの投与により,処理子宮角におけるタンパク質合成および子宮中のタンパク質含量が有意に増加した。以上のことから,リラキシンが脱落膜反応をより強く誘起させ、着床の際に子宮組織でのタンパク質の合成などを増加させることにより,子宮組織の構成に影響を与えている可能性が示唆された。
  • 溝呂木 敏弘, 内田 陽, 織田 銑一, 福田 勝洋, 井上 直子
    セッションID: OR1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】スンクス(Suncus murinus)は食虫目トガリネズミ科に属する交尾排卵動物であるが、繁殖機構に関して特異な性質を有し、その一つに卵巣除去個体にエストラジオール(E2)の代償投与を施しても、子宮および膣重量、組織像などの変化が見られないとの報告がある。しかしながら我々はこれまでに、ステロイドホルモン受容体が非妊娠、妊娠スンクス子宮において発現することを明らかにしており、本研究ではスンクス子宮のステロイドホルモンへの感受性に着目し、その作用の局在や反応性を明らかにすることを目的とした。【方法】KAT系統雌スンクスに卵巣除去(OVX)、卵巣除去および副腎除去(OVX+ADX)を施し、術後2週間以上経過した個体にセサミオイル(0.1ml/個体)、E2(0.5μg/0.1ml/個体)、P4(2mg/0.1ml/個体)、E2+ P4(E2;0.5μg/0.1ml/個体、P4;2mg/0.1ml/個体)を皮下投与し、22時後にBrdU(10mg/ml/kg B.W.)を腹腔内投与し、24時間後に子宮を採取した。子宮湿重量測定後、4%PFAにて固定、常法に従いパラフィン切片を作製し、免疫組織化学により、BrdU陽性細胞、ERα、PR発現を比較した。【結果】OVXの対照群(セサミオイル)に対してE2投与群の子宮湿重量は有意に増加していた。BrdU陽性細胞はE2投与群は間質、P4投与群では子宮上皮、またE2+ P4投与群では上皮ならびに上皮下の間質において見られた。PRは対照群に対し、E2投与群で子宮上皮、間質において発現が増加し、P4投与群で子宮上皮、子宮腺、筋層で、E2+ P4投与群で子宮上皮における発現が減少していた。一方、ERαはE2投与群では対照群と同様に子宮上皮で強い発現が、P4およびE2+ P4投与群で子宮上皮、子宮腺、筋層における発現の減少が見られた。いずれもOVX、OVX+ADX間における差は見られなかった。これらの結果から、スンクス子宮はE2に反応性を示し、E2とP4が相互作用することにより子宮の上皮細胞や間質細胞における細胞増殖を促し、ERαやPRの発現を制御していることが示唆された。
  • 田崎 ゆかり, 西村 亮, 柴谷 雅美, 李 和容, アコスタ トマス, 奥田 潔
    セッションID: OR1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は第 99 回本大会において,ウシ子宮内膜に vascular endothelial growth factor (VEGF) mRNA が発情周期を通じて発現することを示した。本研究では,ウシ子宮内膜における VEGF の生理的役割を明らかにする目的で,ウシ子宮内膜における発情周期を通じた VEGF レセプター (Flt-1 および Flk-1) mRNA 発現量の変化を調べるとともに,子宮内膜間質細胞の prostaglandin (PG) F2α, および PGE2 合成におよぼす VEGF の影響について検討した。 【方法】1) 発情周期各期 (排卵日 [Day 0], 黄体期初期 [Days 2-3], 黄体形成期 [Days 5-6], 黄体期中期 [Days 8-12], 黄体期後期 [Days 15-17], 卵胞期 [Days 19-21]) のウシ子宮内膜組織における Flt-1 および Flk-1 mRNA 発現量の変化を半定量的 RT-PCR により調べた。2) 排卵後 0-5 日の子宮内膜組織から単離した間質細胞に VEGF (5, 50, 200 ng/ml) を添加し,6 時間または 24 時間培養した。その後,培養上清中の PGF2α および PGE2 濃度を EIA により測定するとともに,細胞数を DNA 量から算定し,PG濃度を細胞あたりに換算した。 【結果】1) 子宮内膜組織の Flt-1 および Flk-1 mRNA 発現は発情周期を通じて認められた。また,Flt-1 mRNA 発現は,排卵日,黄体期初期および黄体形成期と比較して黄体期中期から卵胞期にかけて高く (P<0.05),Flk-1 mRNA 発現量は黄体期初期および黄体形成期と比較して黄体期中期に高かった (P<0.05)。 2) VEGF (200 ng/ml) は 24 時間の培養において,子宮内膜間質細胞の PGF2α分泌を刺激したが (P<0.05),PGE2 分泌におよぼす VEGF の影響は認められなかった。以上より,VEGF は発情周期を通じてウシ子宮内膜の機能調節に関与し,その作用はレセプター発現の高い黄体期中期および後期において強い可能性が示された。また,VEGF はウシ子宮内膜間質細胞の PGF2α 合成を刺激することにより,黄体退行を促進する可能性が示唆された。
  • 田村 和広, 吉江 幹浩, 加島 英明, 原 孝彦, 向後 博司
    セッションID: OR1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] ヒト子宮内膜間質細胞(ESC) は月経周期の分泌期に脱落膜細胞へと分化する。この分化は、in vitroでも誘起でき、この時、敷石状細胞への形態変化とIGF結合蛋白質1(IGFBP-1)分泌の高進がみられる。初代培養ESCの脱落膜化の進行は、微小管結合蛋白質であるスタスミン発現のノックダウンにより抑制されるデータを得ていることから、脱落膜化と微小管動態及びその機能が密にリンクしていると推察された。そこで、微小管動態とESC分化との関連性を調べるためにESCの脱落膜化に及ぼす微小管作用薬の効果について検討した。
    [方法] 初代培養ESCを脱重合促進薬であるコルヒチンとビンブラスチン、重合促進薬のパクリタキセルを処置した。各微小管作用薬の処置後に、脱落膜化刺激としてジブチリル(Bt)-cAMPを加え、脱落膜マーカーであるIGFBP-1分泌レベル並びに細胞形態、細胞生存率を解析した。
    [結果]コルヒチンまたはビンブラスチン処置群において、ESC培養上清中のIGFBP-1分泌レベルは、細胞生存率に影響しない濃度(前者: 0.001 – 10 nM, 後者: 0.1 nM)で、有意に減少した。一方、パクリタキセル処置群では10 nM以上の濃度でIGFBP-1分泌と生存率は低下した。これら3種の薬物 1µM 以上の処置によりESCは扁平状細胞へと変化し、細胞数の著しい低下がみられた。この時にはIGFBP-1 mRNA量も顕著に低下した。また、IGFBP-1分泌阻害が観察された量のコルヒチン(0.001- 10 nM) 処置後に、通常メディウムで24時間培養すると、Bt-cAMP処置によって正常レベルの高進が観察された。
    [考察・結論] 微小管脱重合促進薬は細胞生存数に影響しない低用量で脱落膜化を強く抑制した。この結果と脱重合促進(微小管不安定化)因子であるスタスミンが脱落膜化の進行に関与するという以前のデータをあわせて考えると、子宮内膜間質細胞の分化には、特に脱重合と関連した微小管動態調節が寄与していることが示唆された。
  • 中村 順平, 磯部 直樹, 吉村 幸則
    セッションID: OR1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ウシの上皮組織で働く自然免疫物質として抗菌性ペプチドのβディフェンシンが知られている。最近,ウシβディフェンシンであるLingual antimicrobial peptide(LAP)のmRNAがウシ乳腺において発現していることが報告されたが,LAPが乳汁中へ分泌されているかどうかは明らかになっていない。そこで,本研究はLAPが乳汁中に含まれるか否かを確認することを目的とした。【方法】成熟型LAPの42アミノ残基のうち抗原性の高い10アミノ酸残基を合成し,キャリア蛋白を付加後,ウサギに免疫した。得られた抗血清を合成LAP結合アフィニティーカラムに通し,LAP抗体を精製した。次に,健康なウシ3頭の乳汁から脂肪およびカゼインを除去し,Sep-Pakによりペプチドを抽出した。さらに,LAP抗体結合アフィニティーカラムで精製後,限外濾過(>3KDa)によって脱塩し,LAP様物質を得た。実験1:抗菌活性を調べるため,E.coliと乳汁から抽出したLAP様物質とを混合し,培養(4h)した後、寒天培地に塗布して,さらに24時間培養した。CFUを算出して,LAP様物質を添加しない対照区と比較した。また,乳汁から抽出したLAP様物質を2倍ずつ段階的に希釈し,同様にCFUを求めた。実験2:ELISA法を用いて,乳汁から抽出したLAP様物質と合成LAPとの競合を調べた。乳汁から抽出したLAP様物質は2倍ずつ段階的に希釈し,希釈倍率による競合の変化を調べた。【結果】実験1:乳汁から抽出したLAP様物質の場合,対照区と比べてCFUは著しく減少していた。また,乳汁から抽出したLAP様物質を段階的に希釈した場合,希釈倍率の増加に伴いCFUは上昇した。実験2:乳汁から抽出したLAP様物質を64倍希釈するまで,吸光度は増加し続けた。以上の結果から,乳汁中において,LAPが存在していると考えられ,乳腺上皮細胞から乳汁中へLAPが分泌されていることが示唆された。
  • 中野 靖子, 羽田 真悟, 菊池 允人, 三宅 陽一, 南保 泰雄, 酒井 仙吉, 永岡 謙太郎, 今川 和彦
    セッションID: OR1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    ウマの着床過程は非常にユニークである。例えば、ヒトでは子宮内に侵入した胚は約2日で子宮内膜に接着するのに対し、ウマ胚は受精後6~7日目に子宮に侵入した後、17日目に子宮内膜へ固着するまで約10日間もの間、左右の子宮角を遊走している。なぜこのような長期間の遊走が行われるのかは解明されていないが、この時、胚の遊走を制限すると着床が成立しないことが知られている。また、ヒト胚は子宮内膜へ接着後、直ちに浸潤を開始し胎盤を形成した後、胎児の器官形成が始まるのに対して、ウマでは胎盤形成以前の受精後21日目に胎仔の器官形成が始まり、その後36日目で初めて浸潤が開始される。このような着床過程を有するウマであるが、着床過程を制御する因子は解っておらず、妊娠認識期において早期胚死滅が多発し、生産性向上の妨げとなっている。本研究の目的は、ウマにおける妊娠認識物質を同定することにより、第一に早期胚死滅を予防しウマの生産性を向上させること、第二に今だ明らかとなっていない哺乳類における初期の着床成立機構を、ウマをモデルとして解明することである。ウマの着床成立に胚の遊走が重要であると考え、遊走期である妊娠13日に特異的に発現しているmRNAを、非妊娠13日とのサブトラクションによりクローニングした。クローニングしたcDNAの中からNK細胞が分泌し、ヒトの脱落膜において発現がみられるGranzyme Bに着目し、リアルタイムPCRによる解析を行った結果、固着期である妊娠19日で高い発現が確認された。さらに、マクロファージが分泌するNK細胞増殖因子であるIL-15、及び上皮細胞にアポトーシスを誘導するTGF-β1の発現についても妊娠19日で増加していた。これらの結果から、遊走期の胚からの何らかの因子、もしくは子宮内膜に対する胚の物理的な接触刺激により、子宮内膜のマクロファージの『覚醒化』が誘起され、その後胚の固着へ向けて、Granzyme BやTGF-β1などによる子宮内膜の脱落膜様効果が引き起こされる可能性が示唆された。
  • 羽田 真悟, 中野 靖子, 菊池 允人, 三宅 陽一, 南保 泰雄, 酒井 仙吉, 永岡 謙太郎, 今川 和彦
    セッションID: OR1-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    一部の遅延着床動物を除く哺乳類(真獣類)の中で、ウマの着床(初期胚発達・孵化から胎盤形成まで)期は4週間以上にも及び、ヒトの1週間と比べても著しく長い。着床期前半のウマの胚仔は(左)子宮角-子宮体-(右)子宮角と子宮腔内全体を活発に移動・遊走し、そのことが母親の妊娠認識に必須であることが知られている。ところが、妊娠認識に関与する因子が同定されていないばかりでなく、胚仔の遊走メカニズムも明らかにされていない。本研究は、胚仔が活発に移動している妊娠13日目と、非妊娠13日目の子宮内膜で発現しているmRNAをcDNAサブトラクション法で解析し、妊娠前期の妊娠13日目に特異的に発現している因子群の同定から、妊娠認識物質の探索、同定とその利用法の確立を目指している。本cDNAサブトラクションの結果から、インターロイキン(IL)とその関連遺伝子群の着床過程への関与に着目し、IL-1α、IL-1β、IL-1R(レセプター)1およびIL-1R2やIL-1レセプター・アンタゴニスト(ra)と、IL-1αの制御下にあるIL-6およびIL-8 mRNAの発現変化を解析した。IL-1βのmRNAでは変化が見られなかったが、IL-1αのmRNAは妊娠19日、25日で上昇しており、とくに妊娠25日の胚仔存在側での上昇が顕著であった。IL-1raのmRNAは19、25日の胚存在部の子宮角側において大きく上昇していた。IL-R1のmRNAは25日の胚存在部の子宮角側においてやや上昇していたが、IL-1R2は19日からやや減少傾向を示していた。一方、IL-6は胚側子宮角において19と25日に上昇が見られ、IL-8のmRNAは25日の胚側で上昇していた。これらは、着床前期から中期にかけての胚仔遊走期にIL-1の機能が必要であるが、着床中期の胚固着以降の胚側子宮角IL-1ra mRNAの顕著な上昇から、胚仔の固着以降ではIL-1αそのものの機能ではなく、IL-6やIL-8の機能が重要になってくることを示唆している。
  • 常川 久三, 大橋 愛美, 田中 孝一, 源野 朗, 北 満夫, 平子 誠, 下司 雅也, 高橋 ひとみ
    セッションID: OR1-9
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】体細胞クローン受胎牛は,人工授精受胎牛や受精卵移植受胎牛に比べて流産の発生頻度が高く,出生産子では過大・産後直死が問題となっており,病理学的には,過大子,免疫不全,胎盤異常などの発生頻度が高いことが報告されている。妊期を全うし,娩出産子が良好に発育した体細胞クローン受胎牛について,胎盤機能を反映するとされている末梢血中エストロンサルフェート(E1S)の濃度を測定し,その推移と在胎日数について検討した。
    【材料及び方法】体細胞クローン胚は,黒毛和種の卵管上皮細胞および胎子繊維芽細胞をドナーとして核移植を行い,発生培養開始後,7~8日目の胚を受胚牛に移植した。試験区は体細胞クローン受胎牛5頭(黒毛和種4頭,ホルスタイン種1頭),対照区を人工授精受胎牛および受精卵移植牛の合計5頭(ホルスタイン種5頭)とし,妊娠7週以降分娩まで継続的に採血した。妊娠末期には個体の分娩徴候を観察しながら,末梢血中エストラジオールの上昇とプロジェステロンの低下を確認し,体細胞クローン受胎牛が黒毛和種である場合には,帝王切開により産子を娩出させた。E1Sの測定はDCC法を用いたRIAにより行った。
    【結果】試験区,対照区全てで生存産子が得られた。対照区の平均在胎日数は280.8日,出生時平均体重は44.1 kgであったのに対し,体細胞クローン牛の平均在胎日数は302.8日,5頭中4頭で300日以上の長期在胎となった。出生時平均体重は42.8kgであった。体細胞クローン受胎牛でのE1S濃度は妊娠期間を通じ対照区に比べ低く推移し,妊娠中期(18週齢前後)でのE1S濃度上昇が遅れる傾向が認められた。このE1S濃度の上昇遅れは,胎盤機能の発育あるいは成熟の遅れを反映し,結果として在胎日数の延長につながったものと推察された。
  • 櫻井 敏博, 坂本 敦史, Godkin JD, Ealy AD, 今川 和彦
    セッションID: OR1-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    インターフェロン・タウ(IFNT)は、反芻動物において胚のトロホブラスト細胞が妊娠・着床期に時期・細胞特異的に分泌するサイトカインで、母体の妊娠認識に不可欠な因子である。単なるIFNTの発現が妊娠認識というだけでなく、その発現量と発現時期が母体の妊娠準備過程と同期化しないと受胎率の低下に至ると考えられている。しかしながら、IFNT遺伝子の時期・細胞特異的な発現制御機構はほとんど解明されていない。我々は、IFNTの時期・細胞特異的な発現にエピジェネティックな遺伝子発現制御機構が関与していると考えた。そこで、ヒストンH3のメチル化・アセチル化に着目し、クロマチン構造を精査することにより、この遺伝子の発現制御とクロマチン構造の関連性について検討を行った。着床周辺期のヒツジ・トロホブラスト細胞(受精後14.5日、16日、20日)におけるIFNT遺伝子のプロモーター領域およびオープンリーディングフレーム(ORF)領域のクロマチン構造をクロマチン免疫沈降法で検討した。その結果、胚の接着(受精後16日)以降のIFNT遺伝子の発現抑制に伴い、クロマチン構造がユークロマチン状態(転写活性状態)からヘテロクロマチン状態(転写不活性状態)へ変化していることが認められた。そこで、このクロマチン構造の変化が、子宮側の因子によるものか、胚自身によるものかを検討するため、受精後15日の妊娠子宮の灌流液およびその妊娠子宮の培養上清液をウシ・トロホブラストCT-1細胞に処置し、クロマチン構造の変化とIFNT遺伝子発現を検討した。その結果、灌流液および培養上清液共に、クロマチン構造を変化させ、IFNT遺伝子の発現を亢進させることを確認した。すなわち、胚のIFNT遺伝子のプロモーター領域およびORF領域は、子宮側の因子の影響によりクロマチン構造に変化が起こり、IFNT遺伝子のプロモーター領域への転写因子群の結合領域への結合調節が行われている。この結果より、IFNT遺伝子発現をエピジェネティックに制御されているものと考えられる。
  • 金 民 洙, 櫻井 敏博, 佐藤 大祐, 坂本 敦史, 室井 喜景, Chang Kyu-Tae, Ochs Greg J., Robert ...
    セッションID: OR1-11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    インターフェロン・タウ(IFNτ)は反芻類において母体の黄体退行抑制因子として働く。IFNτの産生は胚が伸長を開始するおよそ受精10日後に始まり、受精15日後にピークに達する。転写因子Cdx-2とOct-4は胚が伸長する発生初期にトロフォブラストに共存するが、発生が進むにつれてOct-4の発現量が減少する。本研究は、IFNτの発現に関して促進的に働く転写因子Cdx-2、c-jun、Ets-2と、抑制的に働くOct-4による発現調節機構を明らかにすることを目的とした。ヒツジIFNτ遺伝子の発現調節領域を組み込んだルシフェラーゼ・レポーター・ベクターを作成し、各転写因子の発現プラスミドとともに、ヒト絨毛性癌細胞由来JEG3細胞に強制発現した。Cdx-2、Ets-2、c-junの各転写因子を強制発現した場合、ルシフェラーゼ活性は有意に増加し、共発現することによって相加的に作用することがわかった。Oct-4の強制発現により、ルシフェラーゼ活性は、転写因子を強制発現していない場合に比べて、約40%減少したが、Cdx-2、c-jun、Ets-2と共発現した場合、Oct-4による抑制はわずかしかみられなかった。そこで、Cdx-2、c-jun、Ets-2とOct-4の遺伝子導入のタイミングに差をつけて実験を行った。Oct-4を遺伝子導入した24時間後に、Cdx-2、Ets-2、c-junを遺伝子導入した場合、Oct-4はほぼ完全にIFNτの発現を抑制した。これに対し、Cdx-2、Ets-2、c-junを導入した24時間後にOct-4を遺伝子導入した場合、IFNτの発現に対するOct-4の抑制効果はみられなかった。以上の結果から、胚が伸長する以前はOct-4の働きによりIFNτの産生は抑えられており、発生が進むにつれてCdx-2の発現量が増加し、Oct-4の発現量が減少する結果、IFNτの発現量が増加すると考えられる。
  • 坂本 敦史, 櫻井 敏博, 金 民洙, 高橋 透, 橋爪 一善, 酒井 仙吉, 永岡 謙太郎, 今川 和彦
    セッションID: OR1-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】インターフェロン・タウ(IFN-τ)はウシ、ヒツジなどの反芻動物のトロホブラスト細胞特異的に分泌され、母体の黄体退行を抑制する妊娠認識物質である。しかし、IFN-τ遺伝子の細胞・時期特異的な発現機構は解明されていない。当研究室ではヒト絨毛性癌細胞株(JEG-3細胞)を用いたLuciferase assayにより、トロホブラスト細胞特異的に発現している転写調節因子Cdx2がIFN-τ遺伝子の転写活性を上昇させることを明らかにした。本研究では、Cdx2が内在性IFN-τ遺伝子の発現上昇作用をもつか否かをさらに検討する目的で、内在的にIFN-τ遺伝子を発現しているウシのトロホブラスト細胞株(BT-1細胞)を用いて検討した。【方法】ウシと同じ反芻動物であるヒツジの妊娠15日目、17日目、21日目のトロホブラストよりRNAを回収し、IFN-τ遺伝子やCdx2の発現動態をRT-PCRを用いて検討した。また、Cdx2強制発現ベクターを作成し、RT-PCR、Western blotにて強制発現を確認した。そのコンストラクトをBT-1細胞にtransfectionしたCdx2強制発現系、およびCdx2 siRNAを用いたノックダウンにより内在性IFN-τ遺伝子の発現変化を検討した。さらに、Chromatin immunoprecipitation assay(ChIP)を用いてCdx2とIFN-τ遺伝子の上流域との結合状態を観察した。【結果】ヒツジのトロホブラストの各ステージにおけるCdx2の発現はIFN-τ遺伝子の発現と同様に、妊娠21日目への進行と共に低下していることが確認できた。また、Cdx2の強制発現系においてIFN-τ遺伝子の発現増加、siRNAを用いたノックダウンではIFN-τ遺伝子の発現低下が確認された。以上の結果は、Cdx2がIFN-τ遺伝子の発現制御の役割を担っていることを示唆している。
  • 佐藤 大祐, 金 民洙, 室井 喜景, 櫻井 敏博, 坂本 淳史, 永岡 謙太郎, 今川 和彦
    セッションID: OR1-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    反芻動物に特有なインターフェロン・タウ(IFNτ)は胚トロホブラスト細胞のみから時期特異的に発現され、母親の黄体機能を維持する妊娠認識機構に必須なサイトカインとして知られている。IFNτのcDNA(mRNA)、アミノ酸やDNA配列は20年前に同定されたが、その遺伝子発現制御機構とくに着床期に限定される発現のメカニズムは全く明らかにされていない。多くの増殖細胞では、恒常性転写因子Ets-2やc-jun が発現している。ヒツジのトロホブラスト細胞では、Ets-2やc-junの発現に加え、トロホブラスト細胞特異的な転写因子Cdx2が発現していることが知られている。当研究室では、IFNτ遺伝子転写調節領域(上流域)において、プロモーターにEts-2結合サイトが、またエンハンサーにはAP-1やCdx2結合サイトがあり、それぞれの転写因子の役割を報告してきた。転写因子Ets-2とc-junはCBPを介して複合体形成を行い、さらにCdx2がIFNτ遺伝子の上流域に結合することで、この遺伝子の転写が亢進された。本研究ではIFNτの時期特異的な発現抑制機構の解明のために、トロホブラスト細胞特異的に発現する転写因子Cdx2とEomesの発現制御によるIFNt遺伝子の発現を検証した。具体的には、IFNτ遺伝子の発現制御機構をヒトの胎盤絨毛性癌細胞(JEG3)にIFNτ遺伝子の上流域をルシフェラーゼレポーター遺伝子に接続したコンストラクトとCdx2やEomesなどの発現ベクターを導入し、ルシフェラーゼ・アッセイを行い精査した。その結果、IFNτ遺伝子の発現はEomesの濃度依存的に抑制された。また、Eomes とCdx2のベクターの導入量を変えていく実験系を用いることによって、IFNτ遺伝子発現開始から停止の方向へ切り替わることを明らかにした。以上の結果から時期特異的なIFNτ遺伝子発現制御には転写因子Eomesが関与していることが示唆された。
精巣・精子
  • 斯 琴, 皆川 至, 与語  圭一郎, 小谷 麻衣, 名倉 義夫, 藤田 優, 甲木 潤, 濱野 光市, 富岡 郁夫, 佐々田 比呂志, 佐 ...
    セッションID: OR1-14
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】リラキシンは、子宮改変作用のほか、多岐にわたる組織で作用が注目されている6 kDaの多機能性ホルモンである。しかし、反芻家畜ではリラキシンの存在は不明瞭で、その代替としてリラキシン関連タンパク(RLF)の存在が示唆されてきたが、その機能はよくわかっていない。我々は、反芻家畜のパイロットアニマルとしてヤギを用い、これまでに精巣でRLFとその受容体LGR8の遺伝子発現を見出し、さらに、全塩基長cDNA解析よる推定アミノ酸構成より、RLFにはリラキシンファミリーに見られる典型的なB-C-A鎖ドメイン構造が、またB鎖に受容体結合モチーフが存在するなどの特徴を明らかにした。しかし、リラキシン同様、プロセシングの過程でC鎖が解離し、B鎖とA鎖からなるヘテロダイマーとして産生・分泌されるのか不明であった。本研究ではヤギ精巣よりRLFを精製しその構造特性を調べると共に、精巣での存在様式について検討した。【方法】ヤギ精巣は、未成熟(生後1、3ヶ月)、春機発動(4ヶ月)と成熟(繁殖季節)ザーネン種より採取した。精製には成熟精巣の抽出液を用い、各種クロマトを組み合わせ単離した。また、A鎖ペプチド抗体を作製し局在・発現動態を解析した。さらに、血中への分泌についても調べた。【結果】精巣より精製したRLFは、分子量約12 kDaの単一蛋白として単離できた。このサイズはcDNAから推定されるプロRLFの分子量と符合していた。還元条件下での逆相HPLC解析から、RLFはA鎖とB鎖よりなるヘテロダイマー構造をとらないことが判明し、RLFはプロセシングを受けることなくB-C-A鎖からなるプロRLFとして精巣に存在することがわかった。動態と局在の解析では、本蛋白は生後1ヶ月の精巣で既に発現しているものの、成熟に伴い増加すること、その産生源はライディッヒ細胞で血中へ放出されることが明示された。【結論】ヤギ精巣においてリラキシン関連タンパクRLFはライディッヒ細胞でプロホルモンとして産生・分泌されることが示唆された。
  • 岡田 健三, 辻 岳人, Somfai Tamas, 中井 美智子, 菊地 和弘, 金子 浩之, 国枝 哲夫, 野口 純子
    セッションID: OR1-15
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 FK506結合蛋白6 (Fkbp6)は減数分裂前期厚糸期に発現する。TTラットはFKBP6欠損により,減数分裂前期厚糸期に精子形成が停止し、無精子症を呈する。この時、精母細胞では染色体の対合異常と共に、細胞質にリボソームの集塊が出現する。この集塊形成の分子メカニズムの解明を目的として、リボソームのサブユニット解析を行い、FKBP6とリボソームの関係について検討した。
    【材料および方法】野生型およびTTラットの精巣から、遠心エルトリエーション法により厚糸期精母細胞(以下、P期細胞)を分画採取した。
    <実験1>
    野生型およびTTラットのP期細胞の細胞溶解液を作製し、遠心分離により、核、ミトコンドリア、リボソーム、その他細胞小器官を含む細胞質の画分に分離し、各画分についてRPS16(小サブユニットの構成蛋白)およびRPL26(大サブユニットの構成蛋白)の検出を試みた。
    <実験2>
    野生型P期細胞溶解液を15-40%のショ糖密度勾配により遠心分離した。分離後、フローセルを用いて上層から連続的に吸光度を測定すると共に、一定量ずつ回収し、RPS16,RPL26 およびFKBP6の検出を試みた。
    【結果および考察】
    <実験1>
    ウェスタンブロットの結果、野生型およびTTラットのP期細胞に含まれるリボソーム量に差はなかった。TTラットのリボソーム集塊は核画分に検出され、リボソーム画分には野生型より少量のリボソーム蛋白が検出された。
    <実験2>
    吸光度から小サブユニット、大サブユニット、モノソームおよびポリソームのピークが検出され、FKBP6は大サブユニット以外のピークに相当する画分に検出された。FKBP6には分子シャペロン機能が推測される事から、小サブユニットに結合して大小サブユニットの会合、または新生ポリペプチド鎖の立体構造の形成に関与していることが推測された。
    以上の結果から、FKBP6はリボソームに直接作用し、TTラットの集塊は合成の亢進を伴わないリボソーム生合成調節機構の異常によるものと示唆された。
  • 与語 圭一郎, グリスナロング ワンバンデュー, 青島 拓也, 石神 昭人, 高原 英成, 高坂 哲也
    セッションID: OR1-16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
     PAD (Peptidylarginine deiminase)は、Ca2+依存的にタンパク質中のアルギニン残基をシトルリンに変換する特殊な翻訳後酵素であり、これまでに5つのファミリー遺伝子が見つかっている。このうちPAD6は卵巣、精巣特異的に発現していることが知られているが、その役割については不明な点が多い。本研究では、マウス精巣におけるPAD6の機能を調べる目的で、RT-PCRならびに免疫染色による発現解析を行うとともに、組換えタンパク質を調製して酵素活性を調べた。まず、生後5-70日齢におけるPAD6mRNAの発現を調べたところ、20日から本発現は認められ、30-35日にプラトーに達し、その後一定レベルを維持した。免疫染色の結果から、PAD6は生殖細胞に発現し、なかでも精子完成過程後期の精子細胞(ステップ13-16)で強く発現していることがわかった。PAD2の発現も調べたところ、PAD6とは異なり、いずれの精子細胞(ステップ1-16)においても弱く発現していた。さらに、シトルリン化タンパク質の局在を調べたところ、PAD6の発現パターンと一致していた。これらの結果から、精子細胞内でのシトルリン化には、主としてPAD6が関与していることが推測された。ところが、PAD6の組換えタンパク質を発現・精製して酵素活性を調べたところ、意外なことに全く活性が認められなかった。同様に、哺乳動物細胞で発現させた場合でも活性は検出できなかった。そこで、PAD6はPAD2の活性化に関与するのではないかと考え、PAD6 とPAD2を293細胞で共発現させたところ、PAD2単独に比べ細胞内のシトルリン化タンパク質量が顕著に増加した。さらに、PAD6とPAD2はCa2+依存的に直接結合することもわかった。これらの結果から、PAD6は酵素活性を持たないものの、PAD2活性化因子として機能することで標的タンパク質をシトルリン化し、精子形成に関与している可能性が示唆された。
  • 後藤 名美子, 原山 洋
    セッションID: OR1-17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】哺乳類精子の鞭毛におけるタンパク質セリン/スレオニンリン酸化状態は,リン酸化を担うプロテインキナーゼA(PKA)と脱リン酸化を行うプロテインホスファターゼ(PP)のそれぞれの活性化状態によって変化するが,このような鞭毛タンパク質でのリン酸化状態の変化は鞭毛運動の調節に重要である。本研究ではPKAとPPとの間での相互作用の有無を明らかにする目的で,PP1/2A阻害剤がマウス精子の鞭毛主部におけるPKAの超活性化状態に及ぼす影響について検討した。【方法】cAMPアナログ(cBiMPS)またはPP1/2A阻害剤(Calyculin A)で90分間処理したマウス精巣上体尾精子をウエスタンブロット法および間接蛍光抗体法に供し,リン酸化PKA触媒サブユニット(pThr-197,超活性化型)の分布およびタンパク質のセリン/スレオニンリン酸化状態を調べた。また,cBiMPSまたはCalyculin Aでの処理による精子の運動性の変化を光学顕微鏡下で観察した。さらに,間接蛍光抗体法により精子におけるPP1γ2の分布を調べた。【結果】cBiMPSまたはCalyculin Aの処理により,鞭毛主部ではPKA触媒サブユニットのThr-197でのリン酸化およびタンパク質のセリン/スレオニンリン酸化が誘起された。また,このような処理を行った精子の運動性を調べたところ,cBiMPSおよびCalyculin Aのいずれの場合も,運動精子率には変化はないが,運動様式が変化し,直進性の低下が観察された。なお,PP1γ2の分布を間接蛍光抗体法により調べたところ,鞭毛主部での存在が確認された。以上の結果から,マウス精子の鞭毛主部においてPP1γ2はPKA触媒サブユニットのThr-197を脱リン酸化することによりPKAの超活性化を抑制していることが示唆され,この抑制は精子の直進運動の維持に関与していると考えられる。
  • 吉元 哲兵, 仲村 敏, 山内 昌吾, 仲田 正, 建本 秀樹
    セッションID: OR1-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】他の家畜精子に比べて耐凍能の劣るブタ精子は凍結処理時に様々な細胞障害を受け易く,その現象はアグー精子においてより顕著である。しかも,夏期にはブタ凍結精子の品質はさらに悪化する。特に,高温多湿期間が長期に及ぶ沖縄の環境下では,この時期のアグー凍結精子作成は困難な状況にある。すなわち,年間を通して良好なアグー凍結精子を作成する技術の確立が求められており,本研究では,夏期のアグー精子に適した凍結時のグリセリン添加濃度を検討した。【方法】6-7月に採取したアグー2頭からの射出精子を既報に従い抗酸化剤AA-2Gを添加した希釈液(BF5)で錠剤化凍結した。実験1では,融解後の精子細胞膜正常性を指標とし,夏期の精子凍結に最適なグリセリン濃度(0.5-3%)を決定した。実験2では,1.5もしくは2.5%(冬期の至適濃度)グリセリン濃度で凍結した精子における,融解後の運動性,ATP量,さらには,細胞膜,DNAおよびミトコンドリアの正常性を評価した。なお,それらの精子性状を冬期(12-2月)に2.5%グリセリン濃度で凍結した同一個体の精子と比較検討した。【結果】実験1:両アグー精子において,細胞膜正常性は1.5%グリセリン区で他の区に比べて有意に高いレベルで維持された。実験2:1.5%グリセリン濃度で凍結された精子では,2.5%グリセリン区と比較して融解後の精子運動性が有意に改善された(P<0.05)。また,1.5%グリセリン区の精子においては,DNAとミトコンドリアへの障害が軽減されATP量も増加した。しかし,両個体とも,それら性状は冬期に作成した凍結精子に比べて劣っており,特に精子の運動性とミトコンドリアの正常性は著しく低下した。【考察】耐凍能の劣る夏期のアグー精子を凍結する際には,グリセリン濃度を2.5%から1.5%に減少することが融解後の精子性状を維持する上で望ましいと考えられた。しかしながら,融解後の精子性状には夏期と冬期の精子間で大差があり,通年的に良好な凍結精子を作成するには更なる凍結技術の改良が必要である。
  • Mohamed S. MEDAN, Alaa E. ZEIDAN, Medhat H. KHALIL, Hesham H. KHALIFA, ...
    セッションID: OR1-20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    The present study was planned to study the effects of different concentrations of catalase enzyme (CE; 0, 250, 500 and 1000 IU/ml) addition to the extended cooled dromedary camel semen (DCS) with Tris-yolk-fructose (TYF) extender on semen quality and enzymatic activities, during storage at 5?C for up to 5 days. Conception rates of she-camel artificially inseminated with whole fresh or extended cooled camel semen without or with 500 IU/ml CE, were also estimated. The results showed that supplementation of CE at 250 or 500 IU/ml to the extended cooled DCS increased significantly the percentage of sperm motility and decreased significantly the percentage of dead spermatozoa, sperm abnormalities and acrosomal damage. Also, supplementation of CE at 250 or 500 IU/ml decreased significantly the amounts of aspartate-aminotransferase (AST), alanine-aminotransferase (ALT) and alkaline phosphatase (ALP) enzymes released into the extracellular medium during storage at 5?C. The highest value of the percentage of sperm motility was recorded with the extended cooled DCS supplemented with CE at 500 IU/ml and the lowest value was recorded with CE at 1000 IU/ml. While, the lowest value of the percentage of dead spermatozoa, sperm abnormalities, acrosomal damage of spermatozoa were recorded with the extended cooled DCS supplemented with 500 IU/ml and the highest value were recorded with CE at 1000 IU/ml. The advancement of storage time at 5?C decreased significantly the percentages of sperm motility and increased significantly the percentages of dead spermatozoa, sperm abnormalities, acrosomal damage of spermatozoa and the amounts of AST, ALT and ALP enzymes released into the extracellular medium.
  • Nikorn Thongtip, Jumnia Saikhun, Sittidet Mahasawangkul, Kornchai Korn ...
    セッションID: OR1-21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    Due to the high risks of extinction and increasing concerns about decreasing in genetic diversity of ex situ population, a great effort has been devoted to the establishment of a self-sustaining population of Asian elephants in Thailand. Male subfertility attributed from poor motility and immotile of spermatozoa was found in high proportion of overall ejaculates obtained from a manual collection technique. The searching of motility stimulation for elephant sperm may be improving a quality of the preserved semen. The objective of this study was to investigate the effects of pentoxifyllines (PTX) on stimulating motility in elephant semen with low-motile sperm. Eleven ejaculates were collected from 8 elephant bulls by manual stimulation and were separated into two groups: poor- and low-motile sperm groups. PTX was added to the semen samples at a final concentration of 0.5, 1.0 and 2.0 mg/ml. Samples without PTX were use as control. Semen analysis was performed at 15 and 30 min after incubation at 37 C using computer-assisted semen analysis. PTX did not significantly improve percentage of total and progressive motility, and characteristics of sperm motion in both groups. However, in a low-motile sperm group, PTX treatment could maintain the percentages of total and progressive motility, path velocity (VAP) and progressive velocity (VSL) on the higher level than a control group. The present study indicates that supplementation with PTX has a tendency for partially maintaining rather than increasing sperm motility and sperm motions in Asian elephant semen with low-motile sperm.
内分泌
  • 束村 博子, 足立 幸香, 山田 俊児, 本間 玲実, 上野山 賀久, 井上 金治, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    メタスチン(キスペプチン)は、KiSS-1遺伝子がコードする新規神経ペプチドである。メタスチンニューロンは性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)/LH分泌の制御に中心的な役割を果たすと考えられており、その脳内分布には明瞭な雌雄差が認められる。エストロジェンの正のフィードバックによるLHサージの誘起は、雌ラットにのみ見られ、雄ラットでは見られず、この性差は、新生児期のステロイド環境により制御される。本実験では、LHサージの有無の性差はメタスチンニューロンの性差に起因するとの仮説を立て、これを確かめるための実験を行った。出生直後に精巣除去した雄ラットおよび成熟後に卵巣除去した雌ラットでは、前腹側室周囲核(AVPV)のKiSS-1mRNAおよびメタスチン発現がエストロジェン依存性に増加し、高濃度エストロジェン処置によりLHサージが誘起された。一方、出生直後にエストラジオールベンゾエート(EB)処理した雌ラットおよび成熟後に精巣除去した雄ラットでは、高濃度エストロジェン処置を施してもLHサージは誘起されず、AVPVのKiSS-1mRNAおよびメタスチン発現量はエストロジェン処理に関わらず低値を示した。以上の結果より、エストロジェンの正のフィードバック機構はAVPVのメタスチンニューロンにより仲介されること、および雄ラットにおけるLHサージ機構の消失は、AVPVにおけるメタスチンニューロンの消失に起因することが強く示唆された。
  • Vutha PHENG, Koichi Hasegawa, Shunji Yamada, Yoshihisa Uenoyama, Hirok ...
    セッションID: OR1-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    Metastin neurons are located in the anteroventral periventricular nucleus (AVPV) and arcuate nucleus (ARC) with their fibers found in the median eminence (ME) and medial preoptic area. The present study aims to determine the neuronal projection of the two metastin neuronal populations in female rats in order to provide the morphological basis for the action site to stimulate GnRH release. Female rats were injected i.v. with FluoroGold (FG), a retrograde tracer and the others were stereotaxically injected with FG into the ARC. Colchicine was then injected into the lateral cerebroventricle. Some animals were ovariectomized and the others were primed with high dose of estrogen to enhance metastin immunoractivities in the ARC and AVPV, respectively. Coronal sections of the brain were made on a cryostat and dualstained with anti-FG and -metastin. Dual fluorescent immunohistochemistry revealed that 75% of metastin-immunopositive neurons in the ARC, but 5% of AVPV metastin-immunopositive neurons showed FG-immunoreactivities in animal with i.v. FG injection. This indicates that most metastin neurons projecting to the ARC-ME region originate in the ARC. Approximately 50% of metastin neurons in the AVPV had FG-immunoreactivities in animals with ARC FG injection, indicating that half of AVPV metastin neurons project to the ARC-ME region. Taken together, AVPV metastin neurons might have their neuronal terminals projecting to the ARC. In addition, most of the ARC metastin neurons might be neuroendocrine neurons projecting to the ME. In conclusion, both AVPV and ARC metastin neurons may control GnRH release at their terminals in the ARC-ME region.
  • 前多 敬一郎, 杉浦 瞳, 山田 俊児, 上野山 賀久, 束村 博子
    セッションID: OR1-24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    脳内には、前腹側室周囲核(AVPV)と視床下部弓状核(ARC)2つのメタスチンニューロンの集団がある。従来からAVPVはGnRH/LHサージの中枢であり、またARCはGnRH/LHパルスの中枢であると考えられてきた。実際、メタスチンの遺伝子であるKiSS-1のmRNA発現は、AVPVでは高濃度のエストロジェンにより上昇し、ARCでは抑制されることから、AVPVのメタスチンニューロンはサージの誘起に、またARCの同ニューロンはパルスの発生に関与しているという考え方が一般的である。しかしながら、各メタスチンニューロン集団の役割についてはいまだ不明である。本実験は、c-Fosをニューロン活性化の指標としてARCのサージにおける役割を明らかにするために行った。Wistar-Imamichi系雌ラットを用い、発情休止期群、発情前期群、卵巣除去群、卵巣除去+低濃度エストロジェン処理群、卵巣除去+高濃度エストロジェン処理群、および卵巣除去+高濃度エストロジェン+プロジェステロン処理群の計6群の処理群について灌流固定を行い、脳を採取し、c-Fosおよびメタスチンの2重蛍光免疫染色を行った。脳の採取はGnRHサージが起こると思われる14:00前後に行った。ApoTomeにより光学的にスライスした画像をコンピュータに取り込み、画面上で免疫陽性細胞の数を数えた。その結果、発情休止期ではc-Fosを発現するメタスチン細胞はARCにはほとんどみられなかったが、発情前期には顕著な増加を示した。このことはARCのメタスチンニューロンがサージの成立に関与していることを示唆している。卵巣除去群ではc-Fosを発現するメタスチンニューロンはほとんどみられず、低濃度エストロジェン処理あるいは高濃度のエストロジェン処理でも発情前期の水準には回復しなかったが、高濃度エストロジェン+プロジェステロン処理で、発情前期のレベルにまで回復した。このことから、雌ラットでは、発情前期に起こるGnRH/LHサージにARCのメタスチンニューロンが関与しており、性ステロイドによりその活性が制御されていることが明らかとなった。
  • 岡村  裕昭, 茂木 一孝, 市丸 徹, 森 裕司, 束村 博子, 前多 敬一郎, 大蔵 聡
    セッションID: OR1-25
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】エストロジェンは性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌調節に大きな影響を持つ。しかし、GnRHニューロン自体はエストロジェン受容体を持たないため、エストロジェンのGnRH分泌に対する作用は別の神経機構を介して行われていると考えられている。本研究では、GnRH分泌を強く促進することが示されているメタスチンに着目し、メタスチンニューロンに対するエストロジェンの作用を、シバヤギにおいて形態学的に明らかにすることを目的とした。【方法】卵巣除去(OVX)シバヤギの皮下に、内径3 mm、長さ20 mmのエストロジェン含有シリコンカプセル1本(low E、n=2)あるいは長さ60 mmカプセル3本(high E、n=2)を埋め込み、1週間後、過剰量のネンブタールで屠殺し、頭部を灌流固定した。視床下部を含む脳ブロックから凍結切片を作製し、抗ラットメタスチン抗体を用いて定法に従い免疫染色した。一部の切片では、メタスチンとエストロジェン受容体との二重免疫染色を行った。メタスチン陽性細胞の分布と染色性について、OVX(第99回日本繁殖生物学会で報告)とlow Eおよびhigh E群間で比較検討した。【結果】OVX群では、メタスチン陽性細胞は視床下部弓状核に限局して分布していた。どちらのエストロジェン処理群でも、弓状核でメタスチン陽性細胞が確認されたが、その染色性は、OVX群に比べエストロジェン処理群で多少弱い傾向にあった。さらに、low Eおよびhigh E群では、内側視索前野においてもメタスチン陽性細胞が観察された。陽性細胞数は、low E群に比べ、high E群で多い傾向にあった。また、low E群では、内側視索前野の一部および弓状核のほぼすべてのメタスチン陽性細胞の核に、エストロジェン受容体の発現が確認された。【考察】以上の結果は、シバヤギにおいて、エストロジェンが用量依存的に内側視索前野のメタスチンニューロン活性を促進すること、また、エストロジェンによるGnRH分泌調節は、内側視索前野および弓状核のメタスチンニューロンを介して行われていることを示唆する形態学的知見を示すものである。
  • 茂木 一孝, 市丸 徹, 松山 秀一, 森 裕司, 束村 博子, 前多 敬一郎, 大蔵 聡, 岡村 裕昭
    セッションID: OR1-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】メタスチンは視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の放出を介して、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)分泌を強力に促進することが知られている。本研究では、シバヤギにおけるメタスチンの生理的役割をさらに検討することを目的として、視床下部弓状核のメタスチンニューロンの神経活動を電気生理学的に調べるとともに、その神経活動とLH分泌との関係を検討した。【方法】実験には精巣除去成熟雄シバヤギを用いた。まず、雄シバヤギのメタスチン免疫組織染色像の解析により、視床下部弓状核におけるメタスチンニューロン局在部位の座標を推定した。その座標をもとに外科的に記録電極を慢性的に留置して、その部位における多ニューロン発火活動(MUA)を記録した。同時に頸静脈より連続採血を行い、血中LH濃度の詳細な動態を調べた。また、エストロジェン含有シリコンカプセル(内径3 mm、長さ20 mm)を皮下に埋め込み、MUAの変化を解析した。実験終了後、記録電極の先端を電気破壊して脳を潅流固定し、視床下部切片を抗メタスチン抗体および抗GnRH抗体を用いた免疫組織化学染色に供した。【結果】シバヤギで記録されたMUAにおいて、約30分の間隔で発生する一過性の発火頻度上昇(MUA volley)が観察された。末梢血中のLH濃度はパルス状に推移し、LHパルスはMUA volleyと常に同期していた。また、エストロジェン処理によりMUA volley間隔は次第に延長し、処理後6日目には約50分に達した。電極の留置部位にはメタスチンニューロンの局在が確認された。一方、GnRHニューロンの神経繊維はほとんど観察されなかった。【考察】観測した神経活動は視床下部弓状核のメタスチンニューロン由来であると考えられ、視床下部弓状核に局在するメタスチンニューロンはLHのパルス状分泌に必須なGnRHのパルス状放出の形成に深く関与する可能性が示された。また、弓状核のメタスチンニューロンの神経活動はエストロジェンにより抑制的に制御されることが考えられた。
  • 上野山 賀久, 木下 美香, 山田 俊児, Somchai SAJAPITAK, 榊原 基嗣, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-27
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    galanin-like peptide(GALP)ニューロンの細胞体は視床下部弓状核に存在し、その神経線維は内側視索前野の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンの近傍に投射している。また、雄のラット、マウスおよびサルを用いた実験では、GALPを脳室内投与すると黄体形成ホルモン(LH)分泌が促進されることが報告されている。一方、雌におけるGALPのLH分泌におよぼす影響は促進的とも、効果無しとも報告され、一致した結論が得られていない。本研究では雌におけるGALPの生理的役割を明らかにする目的で、ふたつの系統の雌ラットを用いてパルス状LH分泌におよぼすGALPの影響について検討した。すなわち、正常な性周期を回帰するWistar-Imamichi系ラットにおいて、卵巣除去群およびエストロジェンを代償投与した卵巣除去群をモデルとして、第3脳室内へのGALP(5 nmol)投与後のLH分泌を調べた。次に、レプチンレセプター欠損によりGALPの発現低下とLH分泌の異常を呈するZuckerラットをモデルとしてGALP投与がGnRH分泌を同期化させ、ひいてはLHパルスを回復させる可能性について検討した。その結果、Wistar-Imamichi系ラットではエストロジェン代償投与群においてのみ、GALP投与直後から血中LH濃度が上昇し、その後パルス頻度が有意に増加した。一方、卵巣除去群ではLHのパルス状分泌にGALP投与による変化は見られず、GALPのLH分泌促進作用がエストロジェン依存性であることが示された。また、エストロジェンを代償投与した卵巣除去ZuckerラットのLH分泌は不規則で、明瞭なパルス状を示さなかった。GALPを脳室内に投与すると血中LH濃度が一過性に増加し、パルス状分泌は回復されないものの、GALPが神経終末からのGnRH分泌を同期化させる可能性がうかがわれた。以上の結果から、雌ラットにおいてGALPがGnRH/LHパルス状分泌の調節に関与すること、そのGnRH/LH分泌促進作用がエストロジェン依存性であることが明らかとなった。
  • 坪井 知恵, 今村 拓也, 岩田 衣世, 上野山 賀久, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    GPR40は、中~長鎖の遊離脂肪酸をリガンドとするGタンパク共役型受容体である。膵島B細胞では、GPR40は中~長鎖の遊離脂肪酸のセンサーとして働き、インスリン分泌の制御に関わると考えられている。われわれはラットの後脳に位置する第4脳室(4V)周囲に存在する上衣細胞がグルコースやケトン体の利用性を感知し、生殖機能や摂食行動を制御していることを報告してきた。さらに、これらの上衣細胞が同時に脂肪酸を感知するのではないかと考えている。しかし、これまでにラットのGPR40 mRNAは、膵臓で強い発現を示し、また大腸でわずかに発現することが多数報告されている一方で、その脳における発現に関する報告はわずかである。以上のことから、本実験は、GPR40が4V周囲の上衣細胞に存在するか否か、また遊離脂肪酸の感知機構に関与しているという仮説を検証するために行った。無処置のWistar-Imamichi系成熟雌雄ラット(7-8週令)の4V、大脳皮質、視床下部腹内側核から、total RNAを抽出し、RT-PCRによりGPR40 mRNA発現を調べた。その結果、4VにおいてGPR40 mRNAの発現が認められた。一方、視床下部腹内側核や大脳皮質では発現は検出されなかった。4V周囲の細胞の初代培養においてGPR40のアゴニストGW9508を負荷したところ、細胞内カルシウム濃度の上昇する細胞が観察された。以上の結果から、脳内GPR40の発現には、領域に従った明確な差が存在することが明らかとなった。また、4V周囲の上衣細胞はグルコースやケトン体の利用性だけでなく、GPR40を介して脂肪酸をも感知することが示唆された。
  • 松本 華代, 岩田 衣世, 坪井 知恵, 上野山 賀久, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-29
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
     脳は体内のグルコースレベルを感知し、生殖機能や摂食行動を制御していると考えられている。グルコースの拮抗剤である2-deoxy-D-glucose(2DG)をラット第4脳室へ投与することにより、黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌が抑制され摂食行動が誘起されること、またin vitroで低濃度グルコースを上衣細胞へ負荷すると、細胞内カルシウム濃度が上昇することが明らかになっている。これらから、われわれはグルコース感知を担っている部位が、第4脳室周囲の上衣細胞であると考えている。しかしながら、上衣細胞のグルコース感知における細胞内機構の詳細は明らかになっていない。AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、細胞内ATPレベルの低下に伴い、AMPレベルが増加する細胞内環境において活性が上昇する酵素であり、細胞内のエネルギーセンサーとして知られている。本研究は、上衣細胞のグルコース感知におけるAMPKの関与を検討するため行った。まずAMPKが上衣細胞に存在するか否かを確認するため、mRNA、タンパクレベルでのAMPKの発現を調べた。Wistar-Imamichi系ラットから得た脳組織を用い、RT-PCR、免疫染色を行った。その結果、第4脳室周囲組織においてAMPKのmRNAの発現が確認され、上衣細胞に活性型AMPKの免疫活性が見られた。さらに、上衣細胞の細胞内AMPK活性による生殖機能への影響について検討するため、ラット第4脳室へAMPK活性剤であるAICARを投与し、血中LH濃度を測定した。その結果、AICAR投与により、パルス状LH分泌が抑制された。以上のことより、低エネルギー状態における生殖機能の低下は、第4脳室周囲上衣細胞における細胞内AMPK活性化により仲介されていることが強く示唆された。
  • Zabuli Jahid, Lu Wengeng, Kuroiwa Takenobu, Tanaka Tomomi, Kamomae Hid ...
    セッションID: OR1-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    The aim of this study was to determine whether acute dietary supplementation stimulates LH and FSH secretion in goats with different body weights. Ovariectomized Shiba goats (n=9) were used and were maintained with a feed of 100 % of their energy requirement. They were subcutaneously implanted with an oestradiol capsule and were divided into light (LBW; <24kg, n= 4, mean±SD, 23.5±1.0kg) and heavy body weight (HBW; >24kg, n=5, mean±SD, 32.0±6.3kg) groups 8 days before the start of experiment. At the start of experiment (Day 0), the level of a feed changed to 250 % of their energy requirement and it was maintained for 7 days in both groups. Blood samples were collected daily starting from Day-8 and frequently (at 10 min intervals) for 6 h on Day -1, Day 2 and Day 6. LH pulse frequency significantly increased on Day 2 as compared with that on Day -1 in both HBW (8.0±1.2 vs. 6.6±0.5 pulses/6h, p<0.05) and LBW (7.3±1.0 vs. 5.8±1.0 pulses/6h, p<0.05) groups, whereas it decreased on Day 6 (HBW, 7.0±0.7; LBW, 6.5±1.3 pulses/6h, p>0.05 vs. Day -1). Plasma glucose and insulin concentrations increased temporarily from Day 1 to Day3, and then started to decrease to the level before the start of dietary supplementation in both groups. There were no significant differences in the LH pulse frequency, daily concentrations of FSH, glucose and insulin between HBW and LBW groups throughout the experimental period. The present study indicated that acute dietary supplementation stimulates pulsatile LH secretion in parallel with the changes in blood glucose and insulin levels. However, influence of body weight on these responses between light and heavy animals was not observed.
  • 南保 泰雄, 岡野 篤, 松井 朗, 国井 博和, 早川 聡, 永田 俊一, 渡辺 元, 田谷 一善
    セッションID: OR1-31
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】馬は長日期に性腺機能が活性化され、交配可能な状態となる。短日期に馬房内に照明をつけることによって人為的に長日期を作り出すライトコントロール(LC)法は、繁殖雌馬の性腺機能を早期に賦活化し、排卵を促進することに利用されている。一方、2歳育成馬において、LC法が性腺機能を賦活化し、骨格筋や毛艶に影響を及ぼすか否かについては不明である。本研究では、雌雄サラブレッドにLC法を実施し、生体への影響を内分泌学的に調べた。【方法】日高育成牧場(北海道)に繋養されている2004年2-5月生まれのサラブレッド種62頭(雄31頭、雌31頭)を用いた。うち30頭(雄15頭、雌15頭)について、2005年の12/20から翌4/10まで約4ヶ月間LC法を実施し、残り32頭は無処置対照群として自然光で飼育した。LC法は、馬房内に100ワット白色電球を設置し、明期14.5時間、暗期9.5時間の照明条件をタイマー操作により作出した。実験期間中は、1週~1ヶ月に1回採血を行うとともに、RIA法またはTR-FIA法にて各種血中ホルモンの測定を行った。また、27頭(LC群14頭、対照群13頭)について、月1回、超音波装置により臀部の脂肪厚を測定し、Kearnsらの方法により除脂肪体重を算出した。さらに毛艶状態について、盲検的に1月および4月に3点法で採点し、両群で評価点を比較した。【結果と考察】1)雄のLC群では、1月からtestosterone(T), FSH, inhibin, prolactinが対照群と比較して有意に上昇し、LHは上昇する傾向が認められた。また、雌のLC群では、1月からprogesterone, estradiol, LH,prolactinが有意に上昇したが、FSH、inhibinでは両群間に差は認められなかった。2)雄LC群の除脂肪体重は、4月に対照群と比べ有意に高値であった。雌では両群に差は認めなかった。3)毛艶評価は、1月は群間に差は認めなかったが、4月はLC群が高かった。以上の結果から、育成馬にLCを行うことによって毛艶が良化し、これらの効果は血中prolactin濃度の早期上昇に起因することが示唆された。また、雄では、LH, FSH, Tの上昇により、除脂肪体重の増加につながることが推察された。
  • 勝俣 悦子, 前田 義秋, 勝俣 浩, 金野 征記, Sukanya Jaroenporn, 上田 陽子, 渡辺 元, 田谷 一善
    セッションID: OR1-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    鯨類雄の成長過程における精巣機能を明らかにすることを目的として、長期間飼育している3種類の鯨類(シャチ、ベルーガ、バンドウイルカ)の性行動を観察するとともに血中テストステロンとインヒビン濃度を測定した。本研究には、鴨川シーワールドで飼育している3種類の雄鯨類、シャチ、ベルーガ、バンドウイルカを使用した。採血は、トレ-ニングにより受診動作を取らせることで、保定することなく無麻酔下で尾静脈から約1ヶ月間隔で行った。血中テストステロン濃度の有意な上昇が認められた時点を内分泌学的に性成熟時期と判定し、雌との交尾行動を併せて解析した。<シャチ>:ビンゴは、採血開始時点で血中テストステロン濃度は、3.9ng/mlと高い値を示し、性成熟に達していると判断された。オスカーは、推定年齢12才で血中テストステロン濃度の明らかな上昇が認められた。血中インヒビン濃度は、オスカーでは性成熟前が性成熟後に比べて高い値を示した。ビンゴでは、12歳で、雌と交尾し受胎させた。オスカ-では、雌が出産に至る交尾は、認められなかった。性成熟後の血中テストステロン濃度は、ビンゴがオスカ-よりも高い値を示した。ビンゴはオスカ-よりも年齢が高く,優位な雄である事から、血中テストステロン濃度の差は、2頭の順位制によると推察された。<ベルーガ>:ナックは10才で、デュークは12才で、それぞれ血中テストステロン濃度の明らかな上昇が認められた。いずれの個体でも性成熟前が性成熟後に比べて血中インヒビン濃度が高く性成熟後に低下した。ベル-ガでは、雌との交尾は観察されているが、出産には至っていない。<バンドウイルカ>:レグレスは、搬入時の血中テストステロン濃度が、15ng/mlと高く、すでに性成熟に達していたと判断された。マ-スは、17歳で血中テストステロン濃度が明らかに上昇した。レグレスが、11歳と13歳で、雌と交尾し受胎させた。以上の結果を総合すると、飼育下においては、野生下におけるよりも雄の性成熟時期が早く、雌との交尾も野生よりも若い年齢で行われる事実が判明した。
  • 北郷 潤, 武内 ゆかり, 森 裕司
    セッションID: OR1-33
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    これまで我々の研究室において、緬山羊で「雄効果」を引き起こすフェロモンが雄シバヤギの頭部皮膚において部位特異的およびアンドロジェン依存的に産生および放出されていることなどを明らかにしてきた。さらに昨年の第99回繁殖生物学会において、雄効果を引き起こすフェロモンの合成に関わる候補遺伝子としてlong-chain fatty acid elongase, family member 5(ELOVL5)、stearoyl-CoA desaturase 1(SCD1)という2つの遺伝子が雄ヤギの皮脂腺細胞内で発現することを報告した(Momozawa et al. 2007 Biol. Reprod. 77;102-107、Kitago et al. J. Reprod. Develop. 投稿中)。これらの遺伝子とフェロモン合成の直接的な因果関係を示すためにはin vitroの実験系の存在が不可欠である。そこで本研究では、その第一段階として雄ヤギ皮脂腺細胞の初代培養法を確立することを目的とした。まず雄ヤギの頭部皮膚から採取した皮脂腺の組織培養を行い、増殖した細胞の分化条件を検討したところ、脂肪細胞の分化を誘導するdexamethasone、3-isobutyl-1-methylxanthineおよびinsulinを同時に処置することにより、細胞内において脂質の産生が増加されるとともに培養細胞からの脂質を含有する液体成分の分泌が促進されることが明らかとなった。さらに、この培養細胞においてはヒトやハムスターなど他種動物の皮脂腺細胞において分化に伴い発現が誘導されるperoxisome proliferator-activated receptor γの発現が確認された。これらのことから、この3種類の物質の処置によってシバヤギ皮脂腺細胞が分化誘導されることが示唆された。またin vivoにおいて皮脂腺細胞で発現が確認されたELOVL5、SCD1の両遺伝子の発現量が分化誘導に伴い増加することも明らかとなった。以上、本研究の結果より、雄効果フェロモンを産生しうる皮脂腺細胞の初代培養および分化誘導が可能であること、その分化誘導に伴ってフェロモン合成候補遺伝子の発現量が増加することが示唆された。
  • 大原 海, 茂木 一孝, 市丸 徹, 酒向 隆司, 李 俊祐, 大蔵 聡, 森 裕司, 岡村 裕昭
    セッションID: OR1-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒツジやヤギでは、成熟した雄の被毛を嗅がせると、雌のパルス状黄体形成ホルモン (LH) 分泌頻度が増加する。これは被毛に付着する雄効果フェロモンの作用だと考えられている。興味深いことに、ヤギのフェロモンは雌ヒツジに対して活性を示すとの報告がある。そこで本研究では、まず雄ヤギ被毛抽出物の雌ヒツジに対するフェロモン活性を検証すること (実験1)、この実験系を用いて雌ヒツジ中枢神経系における雄効果フェロモン情報伝達経路を組織学的に検討すること (実験2) を目的とした。【方法】成熟雌セントクロイ種ヒツジを供試し、2006年3月から6月に実験を実施した。曝露する試料には、雌ヤギでのフェロモン活性を確認した成熟雄ヤギの被毛抽出物酸性画分 (雄ヤギ被毛抽出物)、対照としてヤギでフェロモン活性を示さない去勢雄ヤギ被毛抽出物酸性画分を用いた。各試料は10分間隔で2分間ずつ計3回ヒツジに曝露した。<実験1>雌ヒツジへの試料曝露の前後2時間、10分間隔で採血を行い、血中LH濃度をRIAにより測定した。<実験2>雌ヒツジを試料曝露2時間後に過剰量ネンブタールで安楽死させ、頭部を灌流固定して脳を採取した。嗅球、視床下部および扁桃体、梨状葉を含む組織から凍結切片を作製し、Fos抗体を用いた免疫染色を行い、Fos免疫陽性 (Fos-ir) 細胞の局在を解析した。【結果と考察】<実験1>雄ヤギ被毛抽出物曝露後2時間の血中LH濃度は、対照と比較して有意に高く (n=8, P<0.05)、雄ヤギ被毛抽出物は雌ヒツジに対してフェロモン活性を持つことが示された。<実験2>雄ヤギ被毛抽出物曝露群 (n=4) の副嗅球、扁桃体内側核、後内側皮質核、梨状葉後腹側部、前分界条床核、弓状核、内側視索前野におけるFos-ir細胞数は、対照 (n=3) と比較して有意に多かった (P<0.05)。主嗅球、扁桃体前皮質核等の領域では有意な差は認められなかった。Fos-ir細胞の増加が確認された領域は、雄ヤギ被毛抽出物曝露によって活性化することが考えられ、雄効果フェロモン情報伝達経路の一部を構成していることが示唆された。
  • Sukanya Jaroenporn, Kentaro Nagaoka, Ryo Ohta, Gen Watanabe, Kazuyoshi ...
    セッションID: OR1-35
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    Hatano high (HAA)- and low (LAA)-avoidance rats are two lines of Sprague-Dawley rats genetically selected on the basis of their active avoidance behavior in a shuttle-box. They also differ in several other behavioral responses, such as their locomotors activity in novel environments (open-field, circular corridor), with the HAA rats being more active than the LAA animals, as well as in endocrine reactivity, immune functions and stress response. We therefore set out to investigate the adrenal endocrinology of the HAA and LAA strains. It was found that the LAA rats had a significantly blunted ACTH response to restraint stress compared with HAA, but higher corticosterone and prolactin (PRL) response. This finding suggested that the HAA adrenal is less sensitive to ACTH than LAA. This was confirmed by investigating the corticosterone dose response to ACTH in adrenals from the two strains incubated in vitro. Several possible intra-adrenal regulators were investigated. The level of expression of steroidogenic acute regulatory (StAR) and long form of PRL receptors (PRLR-L) mRNA were higher in LAA rats as compared with HAA rats, but lower expression of melanocortin-2 receptors (MC2R) and CYP11A1 mRNA. These finding clearly demonstrate that the adrenals of the HAA strain have a diminished sensitivity to stimulation with ACTH, while the LAA have increased sensitivity. We purpose that PRL is responsible for increasing adrenocortical responses to ACTH stimulation in the LAA strain. The observed changes in adrenal sensitivity to ACTH suggest that this rat strain may have considerable implications for the animals' adaptive stress response.
  • 桐畑 佑香, 杉本 実紀, 久米 新一
    セッションID: OR1-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】生体内のカルシウム濃度は厳密に調節されており、その制御因子の一つにエストロゲンがある。エストロゲンは骨や小腸においてカルシウム代謝を調節しており、カルシウムに関連するビタミンDレセプター(VDR)やアルカリフォスファターゼ(ALP)の発現に関与している。植物エストロゲンは内因性エストロゲンに構造が類似しているため、カルシウム代謝への影響が報告されている。家畜の分娩に伴う低カルシウム血症である乳熱の原因の一つが牧草中の植物エストロゲンではないかと考えられているが、詳細は不明である。そこで本研究では、植物エストロゲンの一種のクメステロールの妊娠および分娩期のカルシウム代謝に対する影響と作用機序を調べた。【方法】クメステロール(200 µg/kg/day)を妊娠ICRマウスに妊娠6.5日から16.5日まで連日強制経口投与し、出産1日後に十二指腸、空腸、腎臓および血液を採取した。十二指腸、空腸および腎臓で VDRの局在の変化を酵素抗体染色法により検討し、十二指腸、空腸で ALPの活性を酵素染色法により検出した。また、VDR、ALPならびにカルシウム輸送に関連する因子であるcalbindin D-9k、ECaC1および ECaC2、エストロゲン誘導遺伝子であるc-fos、VEGFの各mRNA発現量を半定量的RT-PCRにより調べ、血清中のカルシウム、リン濃度を測定した。【結果】クメステロール投与群において十二指腸および空腸のALP活性が低下した。十二指腸ではALP mRNA発現およびエストロゲン誘導遺伝子のmRNA発現が低下したが、空腸ではこれらのmRNA発現に変化は認められなかった。VDRやカルシウム輸送関連因子には変化が見られず、血清カルシウム、リン濃度にも変化は見られなかった。これらの結果から、クメステロールによるALP活性低下には、十二指腸ではエストロゲンレセプターを介する機構が関与していると考えられるが、空腸においては別の作用機序による可能性がある。また、本実験において血清カルシウム濃度に変化は認められなかったがクメステロールがALP活性の低下を介してカルシウム代謝に影響する可能性が示唆された。
  • 吉田 薫, 賀 培建, 平田 雅美, 山内 伸彦, 橋本 誠一, 服部 眞彰
    セッションID: OR1-37
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    ラット顆粒膜細胞および黄体細胞における時計遺伝子の振動リズムの内分泌調節
    ○吉田 薫1・賀 培建1・平田雅美1・山内伸彦1・橋本誠一2・服部眞彰1
    (九大院農1・アステラス製薬2)
    【目的】視神経を介した光刺激が視交叉上核に入力し,コア時計遺伝子(Per1, Per2など)の発現を伴って神経や内分泌シグナルにより概日リズムが同期化される。一方,中枢とは独立して時計遺伝子が様々な末梢組織においてリズム的に発現していることが報告されている。しかし,生殖組織での時計遺伝子のリズム的発現についてはまだ明らかでない部分が多い。本研究では,時計遺伝子の一つであるPer2のプロモーター融合のdLuc遺伝子を組み込んだトランスジェニック(TG)ラットを用い,顆粒膜細胞(GC)および黄体細胞(LC)における時計遺伝子のリズム的な発現について解析した。
    【方法】3週齢のTGラットに3日間毎日DESを投与,またはeCGを投与して48時間後にそれぞれ未成熟および成熟のGCを採取した。さらに,eCGの投与48時間後にhCGを投与して4日経過したTGラットからLCを採取した。これらの細胞をコラーゲンコートディッシュに播種し,2~3日培養した。ルシフェリンを添加して,Per2プロモーター活性を72~96時間にわたって計測した。また黄体組織の免疫組織化学によりPER1の概日リズムを調べた。
    【結果】未成熟GCにおいてPer2の振動リズムは見られなかったが,FSH添加によって1回の振動が見られた。成熟GCにおいても振動リズムは見られなかったが,LH添加によって約24~25時間を周期とする振動リズムが認められた。一方,LCではゴナドトロピンを添加しなくても振動リズムが見られた。また,黄体組織の免疫組織化学的所見によっても概日リズムが認められた。このことから,GCにおける時計遺伝子の振動リズムの発振はゴナドトロピン,特にLHの影響を受けており,GCがLCに分化することによってその振動リズムが発振し始めるということを示唆している。
  • 平田 雅美, 賀 培建, 吉田 薫, 山内 伸彦, 橋本 誠一, 服部 眞彰
    セッションID: OR1-38
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    ラット子宮内膜間質細胞における時計遺伝子の発現振動リズムと同調因子
    ○平田雅美1・賀 培建1・吉田 薫1・山内伸彦1・橋本誠一2・服部眞彰1 (九大院農1・アステラス製薬2)
    【目的】視神経を介した光刺激が視交叉上核に入力し、コア時計遺伝子(Per1, Per2など)の発現を伴って神経や内分泌シグナルにより概日リズムが同期化される。一方、中枢とは独立して末梢組織において時計遺伝子が周期的に発現していることが報告されているが、生殖組織での時計遺伝子の周期的発現についてはまだ明らかでない部分が多い。本研究では、子宮についてPer1の概日リズムを組織学的に観察するとともに、Per2のプロモーター融合dLuc遺伝子を組み込んだトランスジェニック(TG)ラットを用い、子宮内膜間質細胞(USC)における時計遺伝子発現の振動リズムを解析した。
    【方法】子宮における時計遺伝子発現の振動リズム、およびその振動リズムに及ぼすホルモンの影響を観察するために、eCGあるいはeCG-hCG処理した3週齢TGラット子宮から分離したUSCのPer2プロモーター活性を72〜96時間にわたり計測した。また子宮組織におけるPer1の概日リズムおよびステロイドホルモン(E2, P4)によるPer1の発現をin situ hybridization(ISH)により検討した。
    【結果】ISHによる子宮組織の所見ではPer1の概日リズムが認められ、組織部位により発現は異なるもののE2あるいはP4の投与によってPer1の発現が増加した。無処理ラットのUSCではPer2プロモーターの転写活性は周期的な振動リズムを示したのに対し、E2レベルが高いeCG処理(2日目)ラットのUSCでは、明確な振動リズムは示さなかった。一方、P4レベルが高いeCG-hCG処理(4日目)ラットでは、周期的な振動リズムが回復した。以上の結果により、ラット子宮組織においてステロイドホルモンは時計遺伝子の発現に影響を与え、特にUSCではP4が子宮の時計の同調因子であることが示唆された。
  • 田村 仁彦, 三嶌 裕志, 角田 祐一郎, 長谷川 喜久, 太田 昭彦
    セッションID: OR1-39
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】実験動物として多用される齧歯類において、その種由来のFSH標品を大量に入手することは非常に困難である。本研究では、哺乳類株化細胞の一つであるCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞を用い、ラットおよびマストミス組換えFSH生産系を構築し、生産された組換えFSHの生物学的活性と、マストミスにおける過剰排卵誘起への有用性について検討した。【方法】ラット下垂体total RNAから作製したCGα鎖、FSHβ鎖cDNAそれぞれにCAGプロモーターを連結し、それらをタンデムに連結したベクター(pCX-rFSH puro vector)を構築した。またマストミスについても同様の方法でベクター(pCX-mFSH puro vector)を構築した。ベクターをリポソーム法でCHO-K1細胞に導入、puromycinで選別後、northern blottingで高発現株を選択、増殖後、無血清培地で48時間培養し、上清を回収、限外濾過によって濃縮し、Time-resolved fluoroimmunoassay(TR-FIA)による定量を行い、生物学的活性の検討に用いた。【結果】抗ラットFSH抗体を用いたTR-FIA における組換えラットFSHの競合カーブは、Rat-FSH RP-2の競合カーブと平行であったことから、組換えラットFSHはラット下垂体FSHと同等のimmunoreactivityを有することが示された。また、組換えマストミスFSHも、組換えラットFSHと同様にラットFSH抗体に対するcross-reactivityが認められた。Granulosa cell Aromatase Bioassayにおいては、組換えラットFSHおよび組換えマストミスFSHは共に用量依存的にエストロジェン産生を増加させ、in vitroにおいてFSH活性を有することが示された。さらに、マストミスで過剰排卵誘起試験を行ったところ、組換えマストミスFSHは、eCG処置とほぼ同等の採卵数が得られることが示された。【考察】本研究において、CHO細胞によって生物活性を有する組換えラットおよび組換えマストミスFSHの生産が可能であることを示した。このことによって両組換えFSHの安定的、継続的な供給を行うことが可能となり、FSHの生物学的研究および過剰排卵誘起法の改良への貢献が期待される。
  • 諏佐 崇生, 佐藤 崇信, 佐野 亜希子, 加藤 たか子, 加藤 幸雄
    セッションID: OR1-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、生殖機能を主要に調節する下垂体前葉ホルモンである、性腺刺激ホルモン遺伝子の発現調節機構を明らかにするために、ブタFSHβ鎖遺伝子上流領域の-852/-746 b(Fd2領域)に結合する核タンパク質のクローニングを進めてきた。その結果の一つとして、最近、paired related 型ホメオドメイン転写因子Prx2を同定し、FSHβ鎖遺伝子だけでなくLHβ鎖やα鎖遺伝子の発現も促進していることを報告した。この因子は、GnRHシグナルの下流の転写因子であることが認められたことから、ゴナドトロピン合成に深く関与していると思われる(第22回下垂体研究会 佐藤)。今回、Prx2についてブタ下垂体のPCR解析と免疫組織化学、およびブタFSHβ鎖遺伝子上流領域-2323/+10 bについて制御領域の解析を行ったので報告する。
    ブタ下垂体発生段階におけるPrx2の発現をRT-PCRで調べると、Prx2は胎児期40日齢から発現しており、出生後においてもその発現は持続していた。出生後30日齢の雌ブタ下垂体について、Prx2とLHに対する抗体を用いた蛍光2重免疫組織化学を行うと、Prx2はゴナドトロフに発現していることが確認された。一方、FSHβ鎖遺伝子上流領域-2323/+10 bを段階的に欠失させたレポーターベクターとPrx2発現ベクターをCHO細胞に共導入するトランスフェクションアッセイ、および、組換え体Prx2と蛍光標識DNAを用いたゲルシフトアッセイならびにDNaseIフットプリンティングの分析から、Prx2は、Fd2領域とその近傍に存在する複数の結合領域を介してFSHβ鎖遺伝子の発現を促進することが示された。
    以上の結果から、転写因子Prx2はゴナドトロフにおいて、FSHβ鎖遺伝子上流配列の複数の領域を介してその発現を制御していることが明らかとなった。
卵巣
  • 曵地 七星, 富岡 郁夫, 佐々田 比呂志, 佐藤 英明
    セッションID: OR1-41
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】骨髄細胞(BM)は大動脈生殖隆起中腎(AGM)領域に由来し,その起源が生殖細胞と同じであり,それらの中にES細胞に匹敵する特性を示す,極めて高い多能性を持った成体前駆細胞(MAPC)の存在が報告されている。そこで本研究では,ラットにBMを移植し,生殖細胞を含めた卵巣組織への寄与について詳細な解析を行った。【方法】Wistar Imamichi 系成熟雌ラット(WIラット)にBusulfan (Bu) 0~18 mg/kg体重とCyclophosphamide (Cy) 0~180 mg/kg体重を複合投与した。投与後,GFP遺伝子導入ラット(GFPラット)より採取したBMをWIラットの尾静脈より移植した(BMTラット)。移植後2ヵ月で卵巣および体細胞組織を採取し,4% palaformaldehydeで固定後,凍結切片を作製した。作製した切片のGFP陽性細胞をUV照射下で観察した。さらにGFP陽性細胞を抗GFP抗体により免疫組織化学的に染色し,局在を調べた。また,末梢血中の全細胞に対するGFP陽性細胞数を算出した。【結果】Bu 18 mg/kg体重とCy 180 mg/kg体重の投与区で,4.9%の個体で移植した骨髄細胞の定着が認められた。末梢血中のGFP陽性細胞の割合はGFPラットで51.5%であったのに対し,BMTラットでは38.1%であった。移植後2ヵ月のBMTラット卵巣において,間質細胞,黄体細胞,卵胞内顆粒層細胞および卵丘細胞で多数のGFP陽性細胞が観察され,免疫組織化学的染色の結果でも同様の局在が認められた。一方,GFP発現を示す卵母細胞は観察されなかった。また,卵管や子宮の生殖器官,肝臓,脾臓,筋肉や消化器官などの臓器でもGFP陽性細胞が観察された。【考察】BuとCyの複合処理により免疫機能を抑制することで移植した骨髄細胞が定着することが示された。組織学的解析の結果,骨髄細胞は体組織だけでなく,卵母細胞を除く卵巣組織や生殖器官にも寄与する知見が初めて明らかにされた。
  • 栗田 敦史, 岩田 尚孝, 増田 恵, 中村 光子, 新井 信元, 桑山 岳人, 門司 恭典
    セッションID: OR1-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】卵巣に存在する胞状卵胞数には大きな個体差が存在する。本研究では、品種・月齢を固定した卵巣の組織標本を作製し、個体の卵胞数と卵巣中の発育途中の卵胞数と相関があるかどうかを明らかにする目的で行った。【方法】食肉センターでウシの卵巣を採取し、個体識別番号から黒毛和種およびホルスタイン種の卵巣を採取した。月齢は若年(39ヶ月齢未満)、中年(40-99ヶ月齢)、老年(100ヶ月齢以上)の3区分に分けた。さらに品種・月齢区分ごとにそれぞれの卵巣を分け、その卵巣の外見(3-5mmの胞状卵胞数、重量)と組織標本から得られたデータ(二次、一次、早期一次、原始卵胞の表面積あたりの予測数)を比較検討した。【結果】卵巣は加齢に伴って重量が増加し、胞状卵胞数と重量との間に正の相関があった。月齢と相関があった要因は、黒毛和種では原始卵胞数、早期一次卵胞との間に負の相関が、二次卵胞数との間に正の相関があった。ホルスタイン種では原始卵胞数、早期一次卵胞との間に負の相関があった。胞状卵胞数と相関があった要因は、黒毛和種の若年区(平均29.8ヶ月齢:n=52)では二次卵胞数との間に、中年区(平均74.3ヶ月齢:n=41)では原始卵胞数、早期一次卵胞数との間に正の相関があったが、老年区(平均143.5ヶ月齢:n=41)ではいずれのステージの卵胞とも相関がなかった。ホルスタイン種の若年区(平均29.1ヶ月齢:n=36)では一次卵胞数との間に、中年区(平均66.7ヶ月齢:n=42)では原始卵胞数、早期一次卵胞数との間に正の相関があったが、老年区(平均123.3ヶ月齢:n=42)ではいずれのステージの卵胞とも相関はなかった。以上のことより中年では原始卵胞の多い個体に卵巣表面の胞状卵胞数が多いことが推測された。
  • 國枝 孝典, 澤田 京子, 内尾 こずえ
    セッションID: OR1-43
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】哺乳類卵胞発育において,卵母細胞を包み込む顆粒層細胞,莢膜細胞の機能が不可欠であり,健常あるいは閉鎖退行卵胞を選択するメカニズムに深く関与している。TNFαとその受容体(TNFR1およびTNFR2)は哺乳類卵巣において顆粒層細胞に局在することが報告されているが,卵胞発育における役割は完全に解明されてはいない。そこで本研究では,TNFα,TNFR1およびTNFR2のマウス卵巣内発現を精査し,その作用機序を解明することを目的とした。【材料と方法】(1)発情前期,発情後期I,発情後期II,休止期群(10週齢ICRメスマウス) (2)4週齢および8週齢C57BL/6Jメスマウスにゴナドトロピン(PMSG)投与後24,48,72時間経過群および無処理群(3)6週齢脳下垂体摘出C57BL/6JメスマウスにPMSG投与後24,48,72時間経過群および無処理群の合計16群を設定し,各群6匹を供試した。各実験群より卵巣を採取し,タンパク抽出および凍結切片作製に用いた。ウエスタンブロット,免疫染色によりTNFα,TNFR1およびTNFR2の発現量の経時的変化,局在を精査した。【結果と考察】各実験群でのTNFR1,TNFR2の発現は卵胞の顆粒層細胞ならびに莢膜の内側での局在を観察したが,発現量はPMSG投与後経過時間の違いによる変化は認められず,各群での有意差は確認できなかった。しかしながらTNFαの発現量は、卵胞の発育にともなって増加することが認められ、その局在については現在解析中である。また卵巣内でのTNFR1およびTNFR2の発現部位は,血管の走行と類似していることが明らかとなった。卵胞内血管の局在は,卵胞発育や黄体化の指標となることが知られていることから,TNFαおよびTNF受容体が,卵胞発育メカニズムに関与していることが示唆された。
feedback
Top