【目的】排卵後に形成される黄体は一過性の内分泌器官であり, 子宮からのプロスタグランジン (PG) F
2α の作用により退行することが知られている。ウシにおいて, 黄体の形成は著しい血管新生を伴うことが報告されているが, 黄体退行時における血管分布の変化は十分解明されていない。また黄体を構成する血管には血管平滑筋を伴う太い血管ならびに毛細血管の 2 種類が存在するが, それぞれの血管分布の発情周期を通じた変化は黄体機能の変化を知る上で興味深い。本研究では, ウシ黄体組織における 2 種類の血管分布を発情周期を通じて調べるとともに, 血管分布におよぼす PGF
2α の影響を検討した。
【方法】1) 発情周期各期 (排卵日 [Day 0], 黄体初期 [Days 2-3], 黄体形成期 [Days 5-6], 黄体中期 [Days 8-12], 黄体後期 [Days 15-17] および黄体退行期 [Days 19-21]) のウシ黄体より常法に従いパラフィン切片を作成し, 血管内皮細胞の分布を知る目的で von Willebrand factor 抗体を用いて免疫組織染色を行った。染色後、結合組織を含まない中心部を 400 倍で撮影し, 得られた組織像に450の交差点を有する格子を重ね, 陽性を示す部分と重なる交差点の割合を算出することで血管分布を評価した。また, α-smooth muscle actin の局在を血管平滑筋の指標として調べ, 血管平滑筋を伴う血管数を算出した。 2) 黄体期中期に PGF
2α を投与し, 0.5, 2, 12 時間後に経膣で黄体を摘出し, 上に示した方法により血管の分布を調べた。
【結果】1) ウシ黄体を占める血管の割合は形成期および後期において他の周期と比較して高く (P<0.05), また血管平滑筋を有する血管の数は後期および退行期に有意に多かった (P<0.05)。2) PGF
2α 後血管の割合ならびに平滑筋を有する血管の数はともに時間依存的に増加した。本研究において, ウシ黄体に占める血管の割合は発情周期によって変化することから, 黄体機能の変化に血管占有率が関係していることが示唆された。
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