日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
選択された号の論文の187件中1~50を表示しています
優秀発表賞二次審査(口頭発表部門)
内分泌
  • 岩田 衣世, 木下 美香, 須崎 直樹, 佐藤 弘明, 上野山 賀久, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: AW-1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    脳はエネルギーレベルをモニターしながら,摂食行動と生殖機能を制御している。負のエネルギーバランス時には摂食行動が誘起され,生殖機能が抑制されることから,このとき産生されるケトン体が,負のエネルギーレベルを示すシグナルとして脳のエネルギーセンサーに感知されているのではないかと考えた。まず,ケトン体の輸送体であるmonocarboxylate transporter 1 (MCT1) が第4脳室(4V)周囲の上衣細胞に発現していることが免疫組織化学的手法により明らかとした。ケトン体の一つである3-hydroxybutyrate (3HB) を4Vに投与したところ摂食量が増加し,その摂食量増加はMCT1阻害剤の投与により阻害された。同時に黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌は,濃度依存的に抑制された。このとき室傍核のNE放出量増加,あるいはカテコールアミン合成阻害剤の局所投与などから3HB投与によるLHパルスの抑制は室傍核へ投射するNEニューロンにより仲介されると考えられた。またstreptozotocin投与による糖尿病モデルラットにおいて摂食量は増加するが,MCT1阻害剤の投与が摂食量を正常レベルにまで復帰させたことから,ケトーシスにおける過食はケトン体により誘起されることが確かめられた。以上の結果から,ケトン体は負のエネルギーシグナルでありMCT1を介して4V周囲の上衣細胞に感知され,室傍核のNEニューロンを介して生殖を抑制し,摂食量を増加させることが示唆された。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされています。
  • 本間 玲実, 榊原 基嗣, 岩田 良香, 前田 麻希, 山田 俊児, 稲本 瑶子, 上野山 賀久, 前多 敬一郎, 束村 博子
    セッションID: AW-2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】雌ラットではエストロジェン(E)のポジティブフィードバックによりLHサージが誘起されるが,雄ラットでは誘起されない。KiSS-1遺伝子にコードされるメタスチンは強力な性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)/LH放出作用を持つペプチドである。我々は以前,メタスチンがポジティブフィードバックによるLHサージ誘起を仲介すること,及びメタスチンニューロンの脳内分布に性差があることを示した。本研究は,新生仔期のステロイド環境によりメタスチンニューロンの脳内分布に性差が生じ,その結果GnRH/LHサージ機構の性差が決定するとの仮説を検証することを目的とした。【方法】出生直後の雄ラットに精巣除去した群 (D0 Cast),生後5日の雌にestradiol-benzoate (EB)を投与し,成熟後に卵巣除去した 群(D5 EB),成熟後に性腺除去した雌雄ラット(Adult CastとAdult OVX群)を設けた。10-12週齢の全群の動物に高濃度Eを処置し,LHサージの誘起,および前腹側室周囲核(AVPV)と弓状核(ARC)でのメタスチンのペプチドとmRNA,及びメタスチン受容体(GPR54)mRNA発現量を解析した。【結果】D0 CastとAdult OVX群ではE処置によりLHサージが誘起され, AVPVのメタスチンとそのmRNA発現が,D5 EB およびAdult Cast群に比して有意に高かった。またD5 EB およびAdult Cast群ではLHサージが誘起されなかった。GPR54mRNA量はすべての群間で有意差はなかった。新生仔期の性ステロイド感作によりAVPVメタスチンニューロンおよびLHサージが消失すること,新生仔期にこの感作がなければAVPVメタスチンニューロンの発現とLHサージ誘起が認められたことから,新生仔期のステロイド環境がAVPVのメタスチンニューロンに性差をもたらし,これによりGnRH/LHサージ機構の性差が決定されることが明らかとなった。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされている。
卵巣
  • 若林 由季, 北崎 志帆, 江崎 尚二, 金井 幸雄, 清水 隆, 宮崎 均
    セッションID: AW-3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】夏の暑熱ストレスは,雌家畜に発情や排卵の抑制を起こす。我々は,暑熱ストレスが体内で活性酸素種を発生させ,卵胞顆粒膜細胞の細胞死を誘導し,排卵障害を起こすと考えている。本研究は,地中海地域の健康食品として知られるオリーブ,特にその葉成分に着目し,夏季不妊を改善する化合物の探査とその作用機序の理解を目的とした。【方法】実験にはオリーブ葉含有化合物5種を用いた。顆粒膜細胞をと畜場のブタ卵胞から採取し培養後,活性化型キナーゼはウェスタンブロッド法,生存率はMTS Assay,mRNA発現レベルはReal-time PCR,細胞内過酸化水素量はDCF-DAを用いて測定した。また,3週齢雌Wisterラットに暑熱暴露を行い,ヒドロキシチロソル(HT),その前駆体のオレウロペイン(OLE)を経口投与し,PMSGとhCGにより排卵を誘発させ,排卵卵子数を測定した。【結果】HTとルテオリンは,過酸化水素との同時添加で過酸化水素依存的な顆粒膜細胞のアポトーシスを有意に抑制した。一方,オリーブ葉化合物を細胞に添加し24 時間経過後に化合物を培地から取り除き過酸化水素処理をした場合,HTのみが同様の抑制効果を示した。同細胞の生存に重要なAktとその上流のPDK1は,HT添加により活性化され,過酸化水素依存的なアポトーシスを仲介するJNKとp38は, HTの前処理でその活性化が有意に抑制された。HT添加16時間後,Catalase,SOD1,SOD2のmRNAレベルが上昇した。暑熱ストレス下のラットは,対照区に比べ排卵数が1/3に減少したが,OLEの5.0及び1.5 mg/kg経口投与によりその減少は完全に改善された。以上より,HTはスカベンジング作用,生存シグナルの活性化,アポトーシスシグナルの抑制,活性酸素除去酵素の発現上昇を誘導し,顆粒膜細胞に酸化ストレスへの耐性を持たせることが分かった。OLEは,経口摂取後体内でHTに変換され,上記の作用機序により暑熱ストレス依存的な排卵数減少を改善すると考えられる。
  • 佐藤 学, 申 承旭, 野老 美紀子, 西川 慧, 中野 彰太, 畑中 勇輝, 清水 なつみ, 佐伯 和弘, 細井 美彦, 入谷 明, 福田 ...
    セッションID: AW-4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    (目的)タンパク質は単体で機能するものもあるが,多くは他のタンパク質や生体高分子と相互作用して機能する。その機能解明にはタンパク質間相互作用は必要不可欠な情報である。Gse(gonad-specific expression gene)は母性から胚性遺伝子支配に変わるZGA期から単離した生殖細胞特異的に発現している新規遺伝子で、分化系列細胞への分化に関与する可能性が示唆されている(Zhang et al., 2002; Mizuno et al., 2006)。しかし,GSEタンパク質と相互作用するタンパク質は不明で,これを同定することはGse遺伝子の機能解析に重要な情報になる。本実験では,酵母two-hybrid system(YTHS)と共免疫沈降法(IP)を用いて候補タンパク質を同定,相互作用確認を行った。さらに,GSEペプチド抗体と候補タンパク質ペプチド抗体を用いて卵巣および精巣の切片で免疫組織化学的二重染色を行い局在の解析を行った。(材料及び方法)本実験にはICR系マウスを用い,卵巣cDNAを用いてYTHSで候補タンパク質を同定した。候補タンパク質のペプチド抗体を作成し,卵巣と精巣タンパク質を用いてIPを行った。卵巣,精巣の組織切片を作製し,一次抗体(GSEペプチド抗体,候補タンパク質のペプチド抗体)処理後,二次抗体Alexa Flour488,594で標識し,蛍光顕微鏡で両タンパク質シグナルを観察した。(結果及び考察)候補タンパク質を同定,解析した結果,全長881bp,25.3kDa(225aa)のアミノ酸をコードする新規遺伝子で,予測アミノ酸配列にはMethyltransferase activityもしくはTransferase activityの予測部位が存在したことからGSEタンパク質が基質として触媒され,機能する可能性とメチル化の関与が考えられた。また,IPにより卵巣と精巣で,生体内での相互作用を確認した。蛍光免疫染色により,卵巣では二次卵胞以降の卵母細胞の核および細胞質にGSEタンパク質および候補タンパク質のシグナルを認め,精巣では精子形成周期VIII-XIIの精細管でGSEタンパク質および候補タンパク質は精子細胞に強いシグナルを認め,局在が重なり相互作用していると考えられる時期は,生殖細胞の成長期であった。
卵・受精
  • 伊藤 潤哉, Yoon Sook-Young, Lee Bora, Vanderheyden Veerle, Vermassen Elke, ...
    セッションID: AW-5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】哺乳動物の受精時にはCa2+オシレーションが認められ,卵活性化,母性mRNAの分解,胚性ゲノムの活性化等,初期胚発生に必要な現象が起こる.我々の以前の研究において卵核胞期(GV)においてイノシトール3リン酸受容体1(IP3R1)はすでに発現していたにも関わらず,GV卵を受精に用いてもCa2+オシレーションは誘起されなかったことから,IP3R1の機能を制御する機構が関与していると考えられるが,それらは全く明らかにされていない.本研究では,卵減数分裂進行に関わる諸因子(Plk1, CDK1,およびMAPK)の新規役割を検討した. 【方法】(実験1)3-5週齢のICR雌マウスからGV卵を採取し,種々の時間培養してwestern blotting(WB)によりリン酸化Plk1(p-Plk1),リン酸化IP3R1(p-IP3R1)量を検出した.(実験2)Plk1の詳細な役割を明らかにする目的で,恒常的活性化Plk1(CA-Plk1),不活性型Plk1(PBD-Plk1)のcRNAを作製し,IBMXで処理したGV卵に顕微注入を行い,WBに供した.(実験3)Plk1,MAPKのIP3R1の局在に関する役割を明らかにする目的で,U0126添加および無添加培地で培養した卵を免疫蛍光染色し,局在を検討した. 【結果】(実験1)GVBD以降の卵においてp-Plk1,p-IP3R1量が著しく増加した.(実験2)CA-Plk1区の卵は,p-IP3R1の増加が認められた.一方PBD-Plk1区の卵は,p-IP3R1量の増加は認められなかった.(実験3)Plk1とIP3R1はGVBD以降,紡錘体付近に供に局在していた.一方U0126区ではPlk1およびIP3R1の局在には異常が見られた.【結論】卵はGVBD以降において,Plk1がIP3R1を直接リン酸化していること,またMAPKはIP 3R1の局在を制御していることが初めて明らかとなった.これらの機構によりCa2+オシレーションが制御されていると考えられる.
生殖工学
  • 小林 久人, 山田 かおり, 森田 慎之介, 樋浦 仁, 福田 篤, 鏡 雅代, 緒方 勤, 外丸 祐介, 河野 友宏
    セッションID: AW-6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    ゲノムインプリンティング機構を獲得した哺乳類では、単為発生胚が妊娠初期で致死となる。このことは、片親アレル特異的に発現する”インプリント遺伝子“の存在に起因する。インプリント遺伝子は、現在までにマウスでは約80同定されてきているが、全遺伝子で網羅的に探査されたことはない。また、インプリント遺伝子は胚の成長・発達だけでなくヒトの遺伝病や発癌に関与するものが多いため、インプリント遺伝子の研究は、哺乳類の個体発生における雌雄ゲノムの役割を解き明かすばかりでなく、疾病の原因解明や治療法の開発にも極めて重要となってくる。本研究は、約4万のマウス遺伝子の発現解析が可能なAffymetrix社のGeneChip Mouse Genome 430 2.0 Arrayを使用し、マウスの体外受精胚および雌核発生胚における遺伝子発現の網羅的解析を行うことで、新規インプリント遺伝子を探査することを目的とした。
    遺伝子発現の比較解析では、体外受精胚と比較して雌核発生胚において発現の低い遺伝子群をスクリーニングした。得られた39遺伝子のうち、既知の父方発現インプリント遺伝子は16遺伝子含まれており、残る23遺伝子を新規父方発現インプリント遺伝子候補とした。得られた候補遺伝子が実際に片アレル発現しているか検証するために、多型を基にした発現アレル解析を行った。B6、DBA、JF1間で多型を用いた発現アレル解析の結果、候補遺伝子のうち、2つのEST,BB075402とAV328498は父方アレルでのみ発現していることが明らかとなった。AV328498は、2006年に新規父方発現インプリント遺伝子であることが既に報告されている。一方、BB075402は、インプリント遺伝子がこれまで同定されていなかったマウス1番染色体に存在する遺伝子Zdbf2と一致することが明らかとなった。本講演においては、新規インプリント遺伝子Zdbf2について行ったDNAメチル化解析や、ヒトホモログ遺伝子の解析を含む詳細な解析結果を紹介する。 
  • 吉岡 徹哉, 岩谷 美沙, 姫野 絵美, 佐藤 奈緒子, 田中 智, 八木 慎太郎, 塩田 邦郎
    セッションID: AW-7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    栄養芽層から樹立された栄養膜幹細胞(TS細胞)は胎盤を構成する栄養膜巨細胞、海綿状栄養膜細胞、迷路層栄養膜細胞全てへの分化能を持ち、培養条件下で分化したTS細胞は主に栄養膜巨細胞となる。プロモーター領域のDNAメチル化は一般にクロマチンを凝集させ転写を抑制する。ゲノムには組織間でDNAメチル化状態が異なる領域(Tissue-dependent Differentially Methylated Region, T-DMR)が多数存在する。我々はTS細胞の分化においてDNAメチル化状態が変化する領域が存在することを明らかにしているが、現在までその領域はほとんど特定されていない。本研究では新たなDNAメチル化解析手法を用いてDNAメチル化状態を解析し、TS細胞の分化に伴いDNAメチル化状態が変化する領域をゲノムワイドに探索した。D-REAM法(T-DMR profiling by Restriction-tag mediated Amplification Method)とは、メチル化感受性制限酵素で切断したゲノムDNAを増幅し、マイクロアレイを用いて検出する方法であり、全遺伝子の転写開始点近傍に存在する約17万領域を解析対象とする。D-REAM法によって未分化・分化TS細胞のDNAメチル化状態を比較した結果、メチル化が亢進する領域が約1600ヶ所検出された。それら高メチル化T-DMRを持つ遺伝子についてオントロジー解析を行ったところ、濃縮されていたアノテーションには細胞分裂に関連する遺伝子群が見られた。そこで“M phase of mitotic cell cycle” に関連づけられた遺伝子領域に注目し、高メチル化T-DMRのメチル化状態をリストリクションマッピング法により解析すると、16領域中11領域において、少なくとも2系統のTS細胞株で分化に伴った有意なメチル化の亢進が認められた。本研究ではD-REAM法によりTS細胞の分化に伴ってメチル化が亢進する多数の領域を明らかにした。今回明らかとなったT-DMRは転写開始点近傍にあり、そのメチル化は遺伝子発現を制御するものが含まれると考えられる。よって今回明らかとなったDNAメチル化プロフィールの変化はTS細胞の分化を規定する要素の一つであると考えられる。
臨床・応用技術
  • 中川 奨麻, 前泊 直樹, 菊地 和弘, 永井 卓, 眞鍋 昇
    セッションID: AW-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ブタ卵巣内には多数の発育途中卵母細胞が存在している。これらのガラス化保存が可能になれば、より多くの雌性遺伝資源が保存できる。しかし、ブタ卵母細胞は耐凍能が非常に低く、ガラス化保存後の生存性が著しく低下する。この原因が卵細胞質(Cytoplast: CP)か卵核胞(Germinal vesicle: GV)のどちらにあるかは明らかでない。そこで、ガラス化保存がGVに与える影響を明らかにするため、ブタ発育完了卵母細胞(FG)および前胞状卵胞由来発育途中卵母細胞(EA)からGVを取り出した後にガラス化保存を行い、その後のGVの減数分裂能を評価した。【方法】FGは直径3~5 mmの卵胞、EAは直径501~700 µmの前胞状卵胞より採取した。これらの卵母細胞から顕微操作によりGVを取り出し、新鮮な状態、あるいはガラス化保存後に、新鮮なCPに卵核胞顕微移植(GVT)を行った。すなわち、新鮮なFGのGVをFGおよびEAのCPに移植(AおよびC区)、新鮮なEAのGVをFGのCPに移植(B区)、ガラス化保存したFGおよびEAのGVをFGのCPに移植(DおよびE区)した。次いで、実験区の減数分裂能を知るために、体外成熟培養(IVM)に供し、卵丘細胞を除去したFGおよびEAを対照区として成熟率(MII率)を比較した。【結果】IVM後のMII率(%)は、対照区では54.7(FG)および0.0(EA)であり、実験区ではA: 57.5、B: 9.3、C: 0.0、D:43.9およびE:7.1であった(AとD区、およびBとE区間に有意差なし: Fisher’s exact test)。以上から、FGおよびEAのGVはガラス化保存による影響を受けず、さらに、ガラス化保存されたFGおよびEAのGVが減数分裂能を有することが明らかになった。また、ガラス化保存時の低耐凍能は、卵細胞質に起因する可能性が示唆され、EAの卵細胞質は減数分裂能を保持していないことが確認された。
一般口頭発表
卵巣
  • Woro Anindito Sri Tunjung, Masaki Yokoo, Yumi Hoshino, Eimei Sato
    セッションID: OR1-1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    Objective: Our previous studies have revealed that follicle stimulating hormone (FSH) inhibited apoptosis in pig granulosa cells. FSH stimulated hyaluronan (HA) synthesis. Furthermore the synthesized HA could decrease apoptosis, indicating that one of FSH inhibitory mechanism is mediated through HA. The present study was aimed to elucidate the apoptosis inhibitory action of HA in pig granulosa cell by analyzed the binding of HA and CD44, the receptor of HA. Materials and Methods: Pig follicles having 3-5 mm in diameter were isolated from ovaries. Cumulus-oocyte complexes with a granulosa layer which is designated as COCG, were dissected from follicles, and then cultured for 48 hours in DMEM/F-12 supplemented with FSH 50mU and various concentration of 4-MU (HA synthase inhibitor) or IM7 (anti-CD44 antibody) which reduced the binds of HA and CD44. The control group had only the medium. The protein expressions were detected using western blotting. We examined the expression of CD44 at COCG cell. Furthermore we analyzed the effect of HA-CD44 bind on apoptosis. Results: HA synthesis could be stimulated by FSH and inhibited by 4-MU. In this study, CD44 expressed after cultured for 48 h with FSH, decreased in addition of 0.1 mM/ml 4-MU, whereas no expression detected in high concentration of 4-MU, indicating that when the synthesis HA is inhibited, the amount of CD44 also decreased. Addition of IM7 decreased the expression of precursor caspase-3,8,9 indicating that the perturbation of HA-CD44 bind leads to activation of caspase-8,9 the initiator of apoptosis, also caspase-3 the executer of apoptosis. In conclusion, HA-CD44 interaction has been implicated in granulosa cells apoptosis inhibition.
  • 程 圓, 前田 晃央, 高橋 創, 後藤 康文, 松田 二子, 眞鍋 昇
    セッションID: OR1-2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    [目的]成熟した哺乳類の卵巣では99%以上の卵胞がその発育・成熟の途上で選択的に閉鎖して死滅し、次世代に受け継がれる卵胞細胞はわずかである。この閉鎖過程には顆粒層細胞のアポトーシスが支配的に関与しているが、その分子制御機構は未解明である。X-linked inhibitor of apoptosis protein (XIAP)はcaspase-3, -7, -9を阻害し、抗アポトーシス作用を持っている。先に我々は、ブタ顆粒層細胞においてcaspase-9とcaspase-3がアポトーシスの誘導に深く関与することを示している。今回XIAPが顆粒層細胞においてアポトーシスに関与するか否か調べた。[方法]食肉処理場にてブタ卵巣を採取し、cDNA libraryを作製し、ブタXIAP配列をRACE法にて決定した。ついで健常、閉鎖初期及び閉鎖後期の卵胞から顆粒層細胞を単離し、各細胞におけるXIAP mRNAおよびタンパクの発現量の卵胞閉鎖に伴う推移をRT-PCR法とWestern blot法にて調べた。卵巣の組織切片を作製し、卵巣組織のおけるXIAP mRNAおよびタンパクの局在の推移をin situ hybridization法および免疫染色法にて調べた。[結果と考察] ブタ XIAP (1488 bp, 496 aa) はヒトおよびマウスXIAPとアミノ酸レベルで92および89%、 mRNAレベルで 93および89%相同であった。XIAP mRNAとタンパクは健常卵胞の顆粒層細胞に高く発現し、退行に伴って有意に低下した。In situ hybridization法および免疫染色法による所見からXIAP mRNAとタンパクは健常卵胞の顆粒層細胞において強い反応が検出され、閉鎖後期の卵胞では検出されなかった。これらの結果から、ブタ卵胞の顆粒層細胞においてXIAPは抗アポトーシス因子として働き、そのアポトーシスを制御していると考えられた。
  • Kannika Wongpanit, Hua-Zi Jin, Akihisa Maeda, Hiroshi Gonda, Hajime Ta ...
    セッションID: OR1-3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    To study the roles of an anti-apoptotic factor, cellular FLICE-like protein (cFLIP), in the regulation of apoptosis in luteal cells of rat ovaries, we revealed that the changes in the expression levels and the localization of cFLIP mRNA and protein in CLs during estrus cycle and pregnancy. cFLIP short form and long form (cFLIPS and cFLIPL, respectively) mRNA and protein levels in the CLs which were categorized in first generation (G1) and second generation (G2) based on their structural and functional regressions and in those prepared from different pregnancy stages [1.0, 7.5, 9.0, 12.0, 13.5, 18.0 and 21.0 days of post coitus (dpc)] were determined by reverse transcription-polymerase chain reaction (RT-PCR) and Western blot, respectively, and that the changes in the localization of these proteins were demonstrated by immunohistochemistry. Lower levels of cFLIPS and cFLIPL mRNAs were noted in CLs with proestrus stage of G2, and higher levels were noted in CLs of mid pregnancy stages (12.0 and 13.5 dpc). Higher expression levels of cFLIPS protein were seen in CLs of mid of pregnancy stages and lower levels in CLs with proestrus stage of G2. Strong positive stainings for cFLIPS/L proteins were demonstrated in CLs of mid of pregnancy stages. In the present study, we firstly showed the changes in cFLIP expression levels and the localization in CLs during estrus cycle and pregnancy in rat, and these findings suggest that cFLIP may acts as a dominant survival factor by inhibiting intracellular apoptosis signal transduction in rat CLs.
  • 永井 香也, Beindorff Nicola, 白砂 孔明, Bollwein Heinrich, 佐々木 基樹, 清水 隆, 宮本 明夫
    セッションID: OR1-4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ウシの妊娠認識時において,インターフェロン(IFN)τ により刺激される IFN-stimulated gene (ISG) 15 mRNA 発現が黄体で増加することが今年になって報告され,妊娠黄体は長期間維持されるための構造へとこの時期に既に変化を始める可能性がある。本研究では妊娠認識時を周期黄体から妊娠黄体への移行期と考え,黄体組織の形態的観察に加え,黄体内での血管新生因子の mRNA 発現を調べた。【方法】黄体期中期(ED12),後期(ED16)及び初期妊娠期(PD16, PD40)の雌牛(排卵= D1)から黄体を採取した (n=5/各周期)。採取した黄体の血管平滑筋細胞とペリサイト (SMA),増殖細胞(Ki67)及びコレステロール側鎖切断酵素(P450scc)を ABC 法で免疫組織染色した。また P450scc の染色から黄体細胞数を算出した。さらに,ISG15 と血管新生因子である,血管内皮増殖因子(VEGF)のアイソフォームである VEGF121 と VEGF165,アンギオポエチン(Ang)-1 と Ang-2 mRNA 発現をRT-PCR 法によって測定した。解析は黄体の中心部と周辺部に区分して黄体局所別に行なった。【結果】PD40の黄体中心部において単位面積あたりの黄体大細胞数が増加し, SMA の染色面積が減少したことから,PD40で黄体中心部の黄体大細胞の割合が増加したと考えられた。 VEGF165 及び VEGF121 mRNA 発現に変化はみられず, Ki67 の染色面積及び Ang-2/-1 mRNA 発現の比(血管構造の不安定さの指標)が, PD16では黄体周辺部のみで減少し, PD40で黄体中心部・周辺部で減少した。このことから,黄体の血管構造は, PD16 の黄体周辺部から既に安定化への変化が始まり, PD40 には黄体全体が安定化することが示唆された。 ISG15 mRNA 発現は PD16 に増加した。従って,初期妊娠黄体は,周辺部から血管構造が安定化し,中心部で黄体大細胞数が増加することによってその機能を長期間維持する状態にシフトしてゆく可能性が考えられ,それは初期胚が存在する妊娠認識時から既に始まることが示唆された。
  • Lee Seunghyung, Acosta Tomas J., 吉岡 伸, Al-ziábi Mohamad O., 奥田 ...
    セッションID: OR1-5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】ウシにおいて, 子宮由来の prostaglandin F (PGF) は黄体の退行を誘導することが知られているが, 培養した黄体細胞に PGF を添加しても progesterone (P4) 分泌が減少しないことから, PGF の黄体退行作用は直接的ではないことが示唆されている。ウシにおいて PGF 投与後血中一酸化窒素 (NO) 濃度が増加すること, 黄体内血流量の一過性の増加が見られること, また NO が培養ウシ黄体細胞の P4 分泌量を減少させ, さらにアポトーシスをも誘導することから, ウシの黄体退行機構において NO が重要な役割を果たすことが示唆されている。本研究では子宮由来の PGF は, ウシ由来血管内皮細胞 (LEC) の NO 合成を刺激し, NO を介して黄体退行を誘発するという仮説を証明する目的で, LEC における PGF-receptor (FPr) の発現を検討するとともに, NO 合成酵素である inducible nitric oxide synthase (iNOS) および endothelial nitric oxide synthase (eNOS) の mRNA, protein 発現に及ぼすPGF の影響を調べた。【方法】ウシ中期黄体より単離して得た細胞が LEC であることを Factor VIII (von Willebrand factor) 抗体を用いて確認した。培養 LEC における FPr mRNA 発現を RT-PCR 法, protein 発現を Werstern blot 法で, さらにウシ黄体組織における FPr の局在ならびに培養 LEC における FPr 発現を免疫細胞化学的に検討した。培養ウシ LEC の iNOS および eNOS の mRNA ならびに protein 発現に及ぼす PGF (1 µM) の影響を調べた。【結果】黄体組織切片における FPr 抗体に対する陽性反応は, 黄体細胞だけでなく血管内皮細胞にも認められ, また培養 LEC にも FPr の発現していることが明らかになった。PGF は培養 LEC の eNOS mRNA および protein の発現に影響を及ぼさなかったが, iNOS mRNA および protein 発現を有意に増加させた (P<0.05)。以上の結果から, 黄体退行時に子宮から分泌される PGF は LEC の iNOS 発現を増加させることにより NO 合成を刺激し, 黄体退行を促進する可能性が示めされた。
  • 笹原 希笑実, 白砂 孔明, 松井 基純, 清水 隆, 宮本 明夫
    セッションID: OR1-6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】中期黄体を持つウシにPGF (PG) を投与すると,黄体は速やかに退行する。一方,初期黄体を持つウシにPGを投与しても黄体は退行しない。近年,PGで退行を誘起した黄体組織中の血管内皮増殖因子 (VEGF) がPG投与後すみやかに減少することが報告されており,黄体退行において血管新生因子が減少することの重要性が示唆されている。そこで本研究では,血管新生が活発な時期である初期黄体と血管構造が安定している中期黄体では,PG投与後の血管新生因子の発現に違いがあるという仮説を立てた。また,VEGFや塩基性繊維芽細胞増殖因子(FGF2)により発現が誘導され,ネガティブフィードバック因子として血管新生をコントロールするvasohibin にも注目し,検証を行った。【方法】Day4 (初期)と Day10-12 (中期) にPGまたは生理食塩水を筋肉内注射し,1h後に卵巣を経膣法によって採取した。採取した黄体組織は周辺部と中心部に区分し,各遺伝子の発現はreal-time PCR法を用いて測定した。【結果】中期黄体において,VEGF120およびVEGF164 mRNA発現は,PG投与後,周辺部と中心部の両方で減少した。vasohibin mRNAはPG投与後,周辺部で減少する傾向が見られ,中心部では有意に減少した。また,血管構造の不安定さの指標となるアンギオポエチン (Ang)-2とAng-1 mRNA発現の比 (Ang-2/ Ang-1) は周辺部と中心部の両方で増加した。一方、初期黄体では,VEGF120,VEGF164, vasohibinおよびAng-2/ Ang-1はPG投与区の周辺部で有意に増加したが、中心部で変化しなかった。以上より,初期黄体と中期黄体では,PG投与後の血管新生関連因子のmRNA発現が正反対な動きをすること,さらに,初期黄体ではPGがそれら因子の発現を促進することが初めて示された。これは,PG刺激に対する血管新生関連因子の発現の差異が,初期黄体と中期黄体におけるPG反応性の違いの一因となる可能性を示唆している。
  • 法上 拓生, Al-ziábi  Mohamad O., Acosta Tomas J., 奥田 潔
    セッションID: OR1-7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】排卵後に形成される黄体は一過性の内分泌器官であり, 子宮からのプロスタグランジン (PG) F の作用により退行することが知られている。ウシにおいて, 黄体の形成は著しい血管新生を伴うことが報告されているが, 黄体退行時における血管分布の変化は十分解明されていない。また黄体を構成する血管には血管平滑筋を伴う太い血管ならびに毛細血管の 2 種類が存在するが, それぞれの血管分布の発情周期を通じた変化は黄体機能の変化を知る上で興味深い。本研究では, ウシ黄体組織における 2 種類の血管分布を発情周期を通じて調べるとともに, 血管分布におよぼす PGF の影響を検討した。 【方法】1) 発情周期各期 (排卵日 [Day 0], 黄体初期 [Days 2-3], 黄体形成期 [Days 5-6], 黄体中期 [Days 8-12], 黄体後期 [Days 15-17] および黄体退行期 [Days 19-21]) のウシ黄体より常法に従いパラフィン切片を作成し, 血管内皮細胞の分布を知る目的で von Willebrand factor 抗体を用いて免疫組織染色を行った。染色後、結合組織を含まない中心部を 400 倍で撮影し, 得られた組織像に450の交差点を有する格子を重ね, 陽性を示す部分と重なる交差点の割合を算出することで血管分布を評価した。また, α-smooth muscle actin の局在を血管平滑筋の指標として調べ, 血管平滑筋を伴う血管数を算出した。 2) 黄体期中期に PGF を投与し, 0.5, 2, 12 時間後に経膣で黄体を摘出し, 上に示した方法により血管の分布を調べた。 【結果】1) ウシ黄体を占める血管の割合は形成期および後期において他の周期と比較して高く (P<0.05), また血管平滑筋を有する血管の数は後期および退行期に有意に多かった (P<0.05)。2) PGF 後血管の割合ならびに平滑筋を有する血管の数はともに時間依存的に増加した。本研究において, ウシ黄体に占める血管の割合は発情周期によって変化することから, 黄体機能の変化に血管占有率が関係していることが示唆された。
  • 赤刎 幸人, 白砂 孔明, 佐々木 基樹, 松井 基純, Bajram Berisha, Dieter Schams, 清水 隆, 宮本 明 ...
    セッションID: OR1-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】ウシでは子宮からのPGF (PG)分泌, または中期以降黄体へのPG投与により黄体退行が誘引される。しかし,その機構の詳細は明らかではない。PGの作用発現にはレセプターであるFPrとの結合が必要である。ウシFPrには従来のもの(FPr-original)に加え新たに6つのアイソフォーム;FPr-alpha,betaとgamma(Type1),FPr-delta,epsilonとzeta(Type2)が存在すること, PGの刺激によりFPr-originalがプロテインキナーゼC(PKC)を活性化するのに対し,FPr-zetaは活性化せずFPr-originalによるPKC活性化を阻害することが報告された。そこで本研究ではFPrアイソフォーム発現の違いが黄体機能の調節に関与していると推測し,発情周期と黄体退行中でのFPr-original,alphaとzetaのmRNA発現変動について検討を行った。【方法】実験1:食肉処理場由来ウシ黄体を初期(Day3-5),中期(Day8-10),後期(Day13-15),退行期(Day18以降)の4区に分類し黄体組織を採取した(n=3-5/区)。実験2:Day8-12(中期)にPGを投与し0,2,4,12,24,48h後に黄体組織を採取した(n=5/時間)。実験3:Day4(初期)とDay10-12(中期)にPGまたは生理食塩水を投与後1hに黄体組織を採取し,周辺部と中心部に区分した(n=3-7/区)。回収した組織からreal-time PCR法によって各FPrアイソフォームのmRNA発現を定量測定した。【結果】実験1:全FPr mRNA発現が初期から中期にかけて増加した。実験2:PG投与後FPr-zeta mRNAは2hで10%まで減少した。一方FPr-original,alpha mRNAは2hで50%まで減少した後4hまで維持され,12hでさらに10%まで減少した。実験3:中期黄体ではPG投与後,全FPr mRNA発現が周辺部と中心部の両部位で減少した。しかし初期黄体ではPG投与後,FPr-zeta mRNAが両部位で減少したのに対し,FPr-original,alpha mRNAは中心部でのみ減少した。以上から,黄体退行中にFPr-originalとalphaがFPr-zetaより持続的に作用している可能性,そして初期黄体ではPG投与後,FPr-zetaは十分作用しているが,FPr-originalとalphaの作用は部位で大きな差がある可能性が示された。
性周期・妊娠
  • 木崎 景一郎, Carey Satterfield, Gwonhwa Song, Rebecca Simmons, 橋爪 一善, Thoma ...
    セッションID: OR1-9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】栄養膜(Tr)細胞の分化は着床や胎盤形成に必須であり、その過程には多くの制御因子が複雑な調節機構を介して関与している。ヒトや齧歯類ではさまざまな転写因子がTrの分化を制御していると考えられているが、反芻動物におけるその制御機構については不明な点が多い。今回我々は、転写因子の発現動態およびマイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析を通して、ヒツジTrの分化制御機構の解析を行った。【方法】受胎産物、子宮内膜および胎盤節(妊娠14日齢(D14)からD120)における転写因子群の発現をin situハイブリダイゼーション(ISH)で調べた。さらにD16 TrとD45絨毛叢(COT)、D45絨毛叢間胎膜(ICOT)からRNAを抽出して24kオリゴDNAマイクロアレイにより遺伝子発現動態を解析し、定量的RT-PCR(QPCR)で検証した。【結果】ISHの結果から、CDX2、GCM1、TFAP2AおよびTFAP2CはTr特異的に発現していた。特にCDX2GCM1は二核細胞(BNC)に発現が認められ、TFAP2AおよびTFAP2Cは単核Tr細胞(MTC)とBNC共に発現していた。一方、ETS2TEAD3、TCF12 mRNAはTrおよび内膜の両方に検出された。さらにD16 Tr、D45 COTおよびICOTのマイクロアレイ解析から、2倍以上(n=4, P<0.05)の差が認められた遺伝子数は2,337であった。D16 Trにおいて高発現を示した遺伝子にはインターフェロンτやEph/Ephrin群、インスリン様増殖因子群が含まれ、一方D45 COT-ICOTでは胎盤性ラクトジェンやTGFβファミリー関連遺伝子が高発現を示していた。これらの結果をQPCRおよびISHで検証したところ、アレイ解析の結果とほぼ一致した。以上のことから、ヒツジTrでの各種転写因子の発現動態が明らかとなり、さらにEph/Ephrin関連分子やTGFβファミリー分子等がヒツジTrの分化を制御している可能性が考えられた。
  • 中村 織江
    セッションID: OR1-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】Cytotoxic T-lymphocyte associated protein (CTLA)-2αはマウス活性化T cellにおけるmRNA発現増加により見いだされた分子であり、酸性システインプロテアーゼのカテプシンL (CtsL)プロ領域と高い相同性を持ち、in vitroでCtsL酵素活性を特異的に阻害することが明らかにされている。マウスでの発現は脳の神経細胞や脾臓、小腸で確認されているが、圧倒的に高い発現を示すのが妊娠子宮である。CTLA-2αはマウス妊娠子宮において胎盤形成初期のD7.5以降の妊娠期間を通して母体側間膜腺および脱落膜の間質細胞でmRNA、タンパク共に高発現を示すにも関わらず妊娠子宮における機能は明かではない。一方、CtsLはMMP等と共に胎盤のECM調節に関与していると考えられ、胎盤完成後のD12.5以降の間膜腺、脱落膜で発現・活性共に増加する。本研究では、マウス妊娠子宮におけるCTLA-2αの役割をCtsL活性の制御機構を通じて明らかにすることを目的として実験を行った。 【方法】【結果】材料として、D12.5の妊娠子宮の脱落膜を用いた。組織採取後、pH5.5、6.8のlysis buffer中でホモジナイズ、遠心後の上清をサンプルとした。LysateにリコンビナントCTLA-2α( rCTLA-2α)を添加し、pH5.5および6.8条件下でCtsL活性の変化を測定した。その結果、lysateにrCTLA-2αを添加するとCtsL活性は増加した。活性の増加はpH6.8条件下で顕著であった。コントロールとしてBSAを添加したものではCtsL活性に変化は見られなかった。また、免疫沈降を行ったところ、CtsLとrCTLA-2αの結合が増加していた。 【総括】マウス子宮内膜で発現しているCTLA-2αはCtsL活性を抑制するのではなく、pH6.8でCtsL構造を安定化させることで活性を保持していることが示唆された。
  • 若宮 香理, 亀森 泰之, 大谷 新太郎, 柴谷 雅美, 大河原 弘美, アコスタ トマス, 奥田 潔
    セッションID: OR1-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】胎盤停滞は,分娩後 12 時間以内に胎膜が子宮から排出されない状態であり,出産後の健康状態,乳汁産生および繁殖効率を低下させる。胎盤停滞を発生したウシ (胎盤停滞牛) において,インターロイキン (IL) -8 および IL-8 によって合成が促進される collagenase の不足がその発生に関与していることが示唆されている。また,ヒトやげっ歯類において,脱落膜の剥離にはアポトーシスが関与していることから,ウシにおいても胎膜剥離にアポトーシスの関与が考えられる。本研究では,ウシ胎盤停滞の発生機序を明らかにする目的で,胎盤停滞牛および正常牛の胎盤節組織における (1) IL-8,collagenase 群である matrix metalloproteinase (MMP) -1 ならびに MMP-13 発現,(2) アポトーシス実行因子である caspase-3 発現を比較した。
    【方法】分娩直後にウシ胎子が存在した側の子宮角から胎盤節組織を採取し,胎子側と母体側に二分した。分娩後 12 時間の胎膜排出状況から,胎盤停滞牛と正常牛に分類した。これらの胎盤節組織における (1) IL-8 mRNA および MMP-1,MMP-13 mRNA 発現量,ならびに IL-8 濃度 (2)caspase-3 mRNA 発現量をそれぞれ測定し,正常牛と胎盤停滞牛を比較した。なお,mRNA 発現量は半定量的 RT-PCR 法で,IL-8 濃度は EIA により測定した。
    【結果】胎盤節組織の (1) IL-8 mRNA 発現,濃度ともに正常牛と胎盤停滞牛の間で差はみられなかった。また,MMP-1,MMP-13 mRNA 発現は,胎子側と母体側の胎盤節組織の間で差はみられたが,正常牛と胎盤停滞牛の間で差はみられなかった。(2) caspase-3 mRNA 発現は,正常牛の母体側に比べて胎盤停滞牛の母体側において有意に低かった (P<0.05)。
    本研究では,胎盤停滞の発生と IL-8 ならびに MMP-1 および MMP-13 の関連を明らかにすることはできなかった。一方,胎盤の剥離には母体側の胎盤で起こるアポトーシスが重要であり,胎盤停滞はアポトーシスの不成立に依る可能性が示唆された。
  • 田村 功, 竹谷 俊明, 李 理華, 木塚 文恵, 谷口 憲, 前川 亮, 浅田 裕美, 松岡 亜希, 山縣 芳明, 田村 博史, 杉野 法 ...
    セッションID: OR1-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】着床期の子宮内膜では、TNFαなどのサイトカインが豊富となる。今回は、ESCにおけるTNFα,COX-2,Progesteroneの相互作用について検討することを目的とした。 【方法】(1):同意を得て採取した子宮内膜からESCを分離,TNFα(0,0.01,0.1,1,10 ng/ml)を添加して培養した。またTNFα(1 ng/ml)と同時にProgesterone(10 -6 M~10 -8 M)を添加して培養した。COX-2 mRNA 発現変化を real time RT-PCR 法にて解析した。(2)TNFαによるCOX-2 mRNAの誘導とProgesteroneによる作用の細胞内情報伝達系を調べるために,COX-2 promoter領域におけるNF-κB bindingをChIP assayにて検討した。 【結果】(1)COX-2 mRNA発現は,TNFαで濃度依存性に増加した。また,この作用はProgesterone(10 -6 M)添加により有意に抑制された。(2)TNFα刺激により,COX-2 promoter領域へのNF-κB binding が増加し,この作用はProgesteroneにより抑制された。 【考察】着床期における子宮内膜では,TNFαなどのサイトカインが増加する。これらにより誘導されたCOX-2は,PGF2αを誘導し,子宮収縮・内膜剥脱を引き起こす作用がある。着床が成立するためには,この発現を抑制する必要がある。ESCにおいてProgesteroneは、COX-2 promoter領域へのNF-κB bindingを抑えることで,その発現を抑制し,着床の成立に寄与していることが考えられる。
  • 室井 喜景, 櫻井 敏博, 柳田 絢加, 永岡 謙太郎, 今川 和彦
    セッションID: OR1-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    レトロトランスポゾンはあらゆる生物種のゲノム中に存在する可動性配列である。レトロトランスポゾンの移動によるゲノム配列の組み換えは、生物進化の過程において新しい遺伝子機能を生み出すことにつながり、生物が新しい形質を獲得する要因の一つとして考えられている。哺乳類の妊娠は、胚トロホブラスト細胞が子宮内膜に着床し、胎盤が形成されると確実になる。我々は胎盤が哺乳類に特異的な臓器である点に着目し、レトロトランスポゾンに由来する配列中に胎盤形成を可能にする遺伝子が存在するのではないかと考え研究を進めた。ウシ妊娠17日目と20日目の胚に発現しているRNAをDNAマイクロアレイ法で解析し、レトロトランスポゾンに相同性を示す配列を見出した。この発現量は妊娠17日目に比べ妊娠20日目に増加することがわかった。そこで、このRNAの全長配列を3’RACE法と5’RACE法により決定したところ、オープンリーディングフレーム(ORF)を形成しpoly(A)テイルを持つことがわかり、mRNAとして発現している可能性が高いことが示唆された。次に、このORFの発現コンストラクトをウシ腎臓由来MDBK細胞に導入したところ、細胞増殖が有意に促進された。この結果から、このRNAは細胞増殖に促進的に働くことが示された。次にタンパク質として機能していることを確認するため、タグを導入したORFの発現コンストラクトを強制発現したところ、タンパク質の発現は認められなかった。この結果から、タンパク質に翻訳され機能するのではなく、RNAとして機能する可能性が示唆された。現在、さらに詳細な機能を解析中である。
  • 佐藤 大祐, 櫻井 敏博, 唄 花子, 室井 喜影, 奥田 潔, 永岡 謙太郎, 今川 和彦
    セッションID: OR1-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】着床、胎盤形成の不全は妊娠率、出生率に大きく影響する。一般に着床、初期胎盤形成は胚子側、母体側で様々なホルモン、サイトカインなどにより調節され、進行していく。しかしながら、栄養膜細胞は接着後どのような調節を受け、初期胎盤へと形質転換するのかは未だ明らかにされておらず、またその現象を明らかにするin vitro実験系も確立されていない。本研究では、栄養膜細胞が初期胎盤へと分化していく調節機構を解析するため、ウシ栄養膜細胞株(CT-1)及びウシ子宮内膜上皮細胞(子宮細胞)、ウシ腎臓細胞株(MDBK)を用い、in vitro実験系の確立を試みた。【方法】ウシ子宮細胞上にCT-1細胞を共培養(比較対象として、MDBK細胞上にCT-1細胞を共培養)し、妊娠12日、15日、17日及び性周期15日の子宮灌流液を添加した。また同様に妊娠15日、17日、21日及び性周期19日の子宮内膜上皮細胞(初代培養)の培養上清を添加した。CT-1細胞と子宮細胞を共培養し、子宮灌流液などを添加した時間を0時間として、48時間後に子宮細胞と接着したCT-1細胞を分離回収後、CT-1細胞と子宮細胞それぞれからRNAを回収した。【結果】CT-1細胞における初期胎盤形成に関与する遺伝子群の発現は、子宮灌流液や子宮培養上清を添加しただけでは変化せず、初代培養細胞と共培養し子宮灌流液を添加することにより発現亢進もしくは、発現低下することを見いだした。これは、ウシ栄養膜細胞(in vivo)の妊娠17日、20日の結果と一致した。以上のことから、本実験系は栄養膜細胞の初期胎盤分化調節機構の解析に有効な手段であることが明らかになり、栄養膜細胞の分化はホルモン、サイトカインなどに調節され、接着シグナルが加わることで初期胎盤形成に向けて遺伝子群の発現が切り変わることが示唆された。
  • 菊池 允人, 羽田 真悟, 中野 靖子, 南保 泰雄, 永岡 謙太郎, 酒井 仙吉, 三宅 陽一, 今川 和彦
    セッションID: OR1-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【概容】雌ウマの着床期(受精~初期胎盤形成)は約4週間と他の哺乳動物に比べ著しく長く、この間に5~10%の発生率で生じる早期胚死滅が生産現場において問題になっている。雌ウマの胚は、着床期に子宮内を活発に動き回る特徴を持ち、この胚の遊走性が母体の妊娠認識に深く関与すること示唆されているが、胚および子宮内分子メカニズムはほとんど明らかにされていない。そこで本研究は、着床子宮内に特異的に発現する遺伝子を探索し詳細に解析を行うことで、雌ウマの着床過程の理解を深めることを目的としている。
    【方法】雌ウマ8頭を用い非妊娠、妊娠13日、19日、25日目の子宮を回収、子宮内膜を剥離後、部位により9分割しRNAおよびタンパク質を回収した。妊娠19日と13日の子宮内膜を用いたサブトラクション実験を行った。また、Real-timePCR法による遺伝子発現、Western blotting法によるタンパク質発現、更に免疫染色によるタンパク質の局在変化を調べた。
    【結果】サブトラクション実験の結果から、着床期に発現増加を示すいくつかの候補遺伝子が得られた。その内の一つであるStanniocalcin1(STC1)は、リンやカルシウム代謝に関与する遺伝子であり、初期胎盤形成に重要な役割を果たすと考え詳細な検討を行った。Real-timePCR法およびWestern blotting法により、妊娠25日目の子宮内膜において、STC1の顕著な発現上昇が確認された。また、胚との関係を調べるため9分割した子宮内膜を用いてWestern blotting法を行った結果、STC1タンパクは特に胚の存在部位(着床部位)で強く発現していることが明らかとなった。免疫染色の結果、着床期の子宮腺上皮においてSTC1タンパクの局在が確認された。
    【考察】以上の結果から、STC1は、着床期の子宮内膜、特に胚の存在部位において強く発現し、雌ウマにおける着床成立に関与することが示唆された。今後はSTC1の発現調節機構について、更なる検討を重ねてゆく予定である。
  • Duangjai Rieanrakuong, 米澤 智洋, 久留主 志朗, 長谷川 喜久, 汾陽 光盛
    セッションID: OR1-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    Annexin A5 (AX5) is expressed in the mammary epithelial cells of lactating rats and the expression is dramatically increased after pups removal. As GnRH antagonist reversed the increase of AX5 expression and apoptosis of the epithelial cells, local GnRH is hypothesized to be involved in involution. In the present study, we examined the effect of local GnRH on lactating mammary gland and also observed the distribution of GnRH in mammary tissues. GnRH agonist (GnRHa) 200ng/25microl was mixed with same volume of sesame oil and emulsified before injection. GnRHa was administered to the hemilateral inguinal mammary gland once a day from day 10 to 12 of lactation. Emulsified saline was given to another side of mammary gland. Inguinal mammary glands of both sides were collected. GnRHa induced both the expression of AX5 and apoptosis to the mammary epithelial cells. Further, GnRHa administration reduced the weight of inguinal mammary gland slightly but significant (P<0.05). Immunohistochemistry with anti-GnRH demonstrated that large oval cells found in interlobular tissues and between alveoli were positive. They were confirmed also to be AX5 positive. The number of these cells in mammary tissues was counted for both lactating and force-weaned rats under a microscope (x20) for 20 different fields of 9 slides from two rats each. GnRH positive cells were significantly increased by pups removal. The GnRH positive cells were demonstrated to be mast cells by metachromatic granules after staining with 0.1% toluidine blue. Our results suggest that the local mammary GnRH supplied by mast cells appears to play an important role in the regression of mammary gland at involution.
  • 永岡 謙太郎, 青木 不学, 伊川 正人, 岡部 勝, 今川 和彦, 酒井 仙吉
    セッションID: OR1-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】哺乳動物に必須である乳腺組織は外分泌腺の一つで外界に開放しており、泌乳期間中は哺乳や搾乳を通して微生物の感染リスクが高まるため、ミルク中に何らかの抗菌物質が存在すると考えられている。近年、我々はマウスミルク中において、L型アミノ酸を分解し過酸化水素を産出するL-amino acid oxidase (LAO)の存在を明らかにした。一方で、搾乳されたミルク中には特定のL型アミノ酸が欠如していることが知られていたが、その生理学的意義や分子メカニズムは長い間不明であった。本研究では、LAO遺伝子ノックアウトマウスを作出し、ミルクおよび乳腺機能の解析を行うと共にLAOタンパクが泌乳中の抗菌維持に関与しているかどうかの検討を行った。【結果】1. まず始めにLAO抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果、LAOタンパクは乳腺および泌乳特異的に産生されることが明らかとなった。2. 作出したLAO KOマウスは正常な発育と繁殖能を示し、乳腺発達、ミルク合成にも影響は見られなかった。3. LAO KOマウスのミルクは、アミノ酸存在下における過酸化水素発生能を完全に消失しており、in vitro細菌増殖に対して抗菌作用を示さなかった。4. 野生型マウスのミルク中にはLAOのターゲットとなるアミノ酸が欠如していたが、KOマウスのミルク中には十分量存在していた。5. 泌乳マウスの乳頭より一定数のブドウ球菌を接種し、24時間後の乳腺内における感染細菌数を測定した結果、野生型と比較してLAO KOマウスの乳腺内において100倍以上の感染細菌数が確認された。【結論】以上の結果から、マウスにおいて泌乳中の乳腺より産生されるLAOタンパクは、ミルク中に存在するアミノ酸を利用し過酸化水素を発生させることで乳腺内の抗菌維持に重要な役割を担っていることが明らかとなった。今後のウシのLAOタンパクと乳房炎の関係解明に期待がもたれる。
  • R.M.S.B.K. Ranasinghe, Toshihiko Nakao, Ataru Kobayashi, Kyoji Yamada
    セッションID: OR1-18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    The objective of this study was to investigate the effect of post-AI luteal function on first AI conception rate in dairy cows. A total of 119 Holstein Friesian cows from four dairy herds were used in this study. Milk samples were collected twice a week and progesterone concentrations in whole milk were measured by direct ELISA. The luteal function post-AI was shown by days to commencement of luteal activity after AI, progesterone concentrations during early luteal phase and these combinations. Cows with commencement of luteal activity during a period from 1 or 2 to 5d post-AI had the highest conception rate. Increasing progesterone concentrations during 5 to 9d post-AI were associated with higher conception rates. Animals with delayed luteal activity 9d post-AI or later, those with delayed and insufficient luteal activity and those with insufficient luteal activity had lower conception rates compared to cows with normal luteal activity (22.2%, 12.5%, 0.0%, vs 51.5%, respectively; P<0.10). Logistic regression analysis revealed that CL function (OR=0.6; p=0.001) significantly affects the first AI conception rate, whereas the other factors including parity, resumption of ovarian activity postpartum, season of AI and interval from calving to first insemination had no significant effect. In conclusion, both commencement of luteal activity post-AI and progesterone concentration during early luteal phase affect the conception rate.
  • 李 俊佑, 金 花子, Kannika WONGPANIT, 池田 正則, 冨松 理, 眞鍋 昇
    セッションID: OR1-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)日本在来種由来のシバヤギは、東京大学農学生命科学研究科附属牧場で40年以上クローズド・コロニーとして系統維持されてきた小型で温順かつ強健で周年繁殖する反芻動物の実験モデルであり、多くの研究に用いられてきている。今回これをウシの性周期制御機構と発情(排卵)周期回帰機構の研究のモデルとして供しえるか否か検討した。 (方法)超音波画像診断装置を用いてヤギとウシの卵巣を非侵襲的にかつ反復して観測し、PGF投与後の卵胞と黄体の動態を精査した。 (結果)ヤギ、ウシともに黄体期においても卵胞発育(卵胞発育波)が繰り返して起きていることがわかった。ウシにPGFとGnRHを組合せてプログラム投与したのでは発情同期化、授精定時化効果のバラつきが多いので、ウシのモデルとしてのヤギを用いて、排卵後2,3,4,5,15,16,17,18,19日にPGFを投与して血中Progesterone、Estradiol濃度の推移と排卵過程を調べ、発情同期化、授精定時化を不安定にする要因を調べた。
臨床・応用技術
  • 山内 昌吾, 仲村 敏, 吉元 哲兵, 仲田 正, 武藤 徳男, 建本 秀樹
    セッションID: OR1-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】細胞膜流動性の劣るブタ精子は凍結融解処理過程で障害を受けやすく,その現象は一般豚精子に比べてアグー精子においてより顕著である。通常の凍結用希釈液には20%の鶏卵黄が含まれており,その有効作用因子は低密度リポタンパク質(low density lipoprotein; LDL)であるとされている。近年,卵黄の代わりにLDLを添加した希釈液でウシおよびブタ精子を凍結した際,融解後の精子運動性が改善され,コールドショックに伴う細胞障害が軽減されると云った報告がなされた。そこで本研究では,アグー精子の凍結時における凍結用希釈液に含まれる卵黄のLDLへの置換が融解後の精子性状に及ぼす影響について検討した。【方法】精子凍結用希釈液には200 µM安定型アスコルビン酸誘導体(AA-2G)を添加したBF-5を用い,卵黄からのLDL抽出・精製法は既報に従った。アグー4頭の射出精子を20%の卵黄を含むBF-5(対照区),ならびに2,4,6,8および10%のLDLを含む卵黄不含BF-5で冷却・凍結処理し,融解後の精子性状を様々なパラメーターを用いて評価した。【結果】細胞膜正常性は,対照区に比較してLDLを含む凍結用希釈液で処理した時に有意に高いレベルで維持された(P<0.05)。そして,LDL処理区の精子においてはDNA,ミトコンドリアさらには先体への障害も軽減された。また,これらパラメーターを指標としたLDL至適濃度は個体間で差があるものの4または6%であった。さらに,全てのアグー精子の融解後の細胞内ATP量は,対照区に比べて4-6%のLDL処理区で著しく多く(P<0.05),高い生存性の維持が確認された。【考察】凍結融解処理過程で細胞障害を受けやすいアグー精子を凍結する際には,凍結用希釈液中の卵黄をLDLへ置換することが様々な細胞障害を抑制し融解後の精子性状を維持する上で非常に有用であると結論された。
  • 中野 和明, 松成 ひとみ, 小川 武甲, 藤原 主, 中山 順樹, 笹山 典久, 吉川 義洋, 白数 昭雄, 高橋 昌志, 長嶋 比呂志
    セッションID: OR1-21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】我々が新規に開発した中空糸膜法(高橋ら,2008)によりガラス化保存された,ブタ体外生産胚からの産仔作出の可能性を検証することを目的とした。【方法】NCSU23を基本とする培地でブタ卵丘卵子複合体を培養しMII期卵を得た。これらに電気的活性化(直流150V/mm,100μsec,1回)を加え,単為発生を誘導した。また、一部の卵には既法(Kurome et al.,2006)に従ってICSIを行い受精卵を作製した。これらの胚をPZM-5培地で4日間培養し,得られた桑実胚に非侵襲的方法による細胞質内脂肪顆粒除去処置(Esaki et al.,2004 を改良)を施した。すなわち,胚を38.5°Cの4% trypsinで1-4分間処理して透明帯を膨化させた後,7.5μg/ml cytochalasin B存在下で遠心処理(12000g,23min,38°C)し,細胞質内脂肪顆粒を囲卵腔内に偏在させた。胚を1hr培養した後,ガラスキャピラリーに装着したトリアセテート製の中空糸膜(ポアサイズ78Å(半径),内径185μm,膜厚15μm,長さ3-4 cm)に胚を吸入し,ガラス化・融解を行った。ガラス化には20%仔ウシ血清を添加した20mM Hepes緩衝TCM199を基本培地とし、15% ethylene glycol,15% DMSO,0.5M sucroseを含むガラス化液を用いた。融解後の培養には10%ウシ胎仔血清を添加したPZM-5培地を使用した。単為発生由来のガラス化胚を融解後3日間培養し,胚盤胞への発達能を調べた。また,ICSI由来のガラス化胚は融解後2日間培養し,発情同期化したレシピエントブタの子宮角に移植した。【結果】単為発生由来胚のガラス化後の胚盤胞形成率は非ガラス化胚のそれと同等であった(80.9%,38/48 vs. 95.1%,39/41)。また,ガラス化されたICSI由来胚盤胞27個を2頭のレシピエントブタに移植した結果,1頭が妊娠した(現在妊娠91日目)。以上より,ブタ胚のガラス化保存における中空糸膜法の有効性が胚移植試験によって実証された。
  • 内山 保彦, 細江 美佐, 瀬田 剛史, 中川 邦昭, 高橋 透
    セッションID: OR1-22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】ウシの過剰排卵処置に使用されているpFSHの徐放性,低抗原性及び投与量の低減等を目的として,pFSHにPEGを共有結合させたハイブリッドタンパク質(PEGylated pFSH)を作成し、その生理活性について検討した。【方法】pFSHはアントリンR(川崎三鷹製薬),PEGはsuccinimidyl ester of methoxy polyethylene glycol propionic acid(mPEG-SPA,M.W.=5000,NEKTAR)を使用した。mPEG-SPAは,タンパク質のN末端およびリジン残基のアミノ基に結合する事ができる。pFSHはαおよびβサブユニットに2個のN末端アミノ基と17個のリジン残基があるので,pFSHとmPEG-SPAを1:19のモル数比で反応させる条件をストイキオメトリー比1:1と定義した。pFSHとmPEG-SPAをストイキオメトリー比が1:0,1:1,1:3,1:10,1:30,1:100となるように混合して,4°Cで2時間反応させた。反応後に余剰のmPEG-SPAを除去し,PEGylated pFSHを得た。【結果】PEG修飾されたpFSHは分子量が増大し,修飾の程度に応じた複数のバンドがウェスタンブロットで確認された。ストイキオメトリー比が高い反応条件ではより高分子のPEGylated pFSHが生じ,1:30以上の条件では未修飾のまま残っているpFSHが確認されなかった。また,高いストイキオメトリー比で反応させたPEGylated pFSHはウェスタンブロットのバンドが薄かった。1:30の条件で修飾されたPEGylated pFSHには,未修飾pFSHより活性は低いものの,卵丘細胞の膨化と顆粒膜細胞のプロジェステロン分泌を促進する作用が認められた。未修飾のpFSHはウシFSH測定系に交差反応を示したが,PEGylated pFSH は検討した濃度範囲(〜40ng/ml)において全く交差しなかった。【結論】PEGylated pFSHはpFSHの生理活性の一部を有しているが,抗体に認識されにくいことが示唆された。
  • 永嶋 俊太郎, 川島 千帆, 澤田 久美子, Schweigert F.J, 木田 克弥, 宮本 明夫
    セッションID: OR1-23
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】ビタミンAの前駆物質であるβカロテン(BC)は生草に多く含まれ,それ自体にも黄体や卵胞に対する機能促進作用があることが知られている。これまで我々は乾乳後期に血中BC濃度が低い牛は,分娩後早期初回排卵が起こらないことを報告したが,この違いが分娩前のどの時期に現れ始めるかについては知られていない。そこで,分娩後早期初回排卵の有無における,乾乳期間中の血中BC濃度の推移を調査した。 【方法】2006年9-11月に分娩した6頭(放牧区)と,2008年1-4月に分娩した8頭(舎飼区)のホルスタイン種経産牛を乾乳開始から分娩3週後まで供試した。放牧区は,乾乳開始から分娩3週前まで昼夜放牧し,その後は牛舎でグラスおよびコーンサイレージ主体のTMRを給与し,分娩後は日中のみ放牧した。舎飼区は,試験期間中,放牧せず,上記のTMRを与えた。両区とも,週1回ボディコンディションスコア(BCS)測定と採血をし,BC,レチノール,代謝ホルモン,代謝物濃度を測定した。また,乾乳前期,乾乳後期,分娩後でエサの組成が異なるため,それぞれの期間で統計解析した。 【結果】分娩後早期排卵が起きた牛(+群)は,放牧区で3/6頭,舎飼区で4/8頭だった。両区とも,BCSは分娩後早期初回排卵の有無で差がなかった。乾乳期間中の平均血中BC濃度は,両区とも乳牛の推奨値(3.5mg/L)を超えていたが,放牧区(6.6mg/L)は舎飼区(4.6mg/L)よりも高かった(p<0.01)。放牧区では,乾乳前期において+群の血中BC濃度は増加したが(p<0.05),排卵しなかった牛(-群)では増加せず,乾乳後期以降は両群とも同様に低下した(p<0.05)。一方,舎飼区では,乾乳前期の-群の血中BC濃度は,+群より低く推移した(p<0.05)。乾乳後期では,放牧区と同様に両群とも血中BC濃度は減少したが(p<0.05),+群が分娩2週前に下げ止まったことに対し,-群は分娩1週前まで減少し続けた。以上より,分娩後早期に排卵しない牛は,乾乳前期における血中BC濃度が,BC摂取の多い放牧飼養下でも増加せず,また舎飼いした場合でも,排卵した牛より低く推移することが示された。
  • 山田 恭嗣, 中尾 敏彦, ゴカルナ ゴウタム
    セッションID: OR1-24
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】乳牛における分娩後の卵巣機能回復状況が、その後の子宮修復および子宮内膜炎の発生に及ぼす影響を明らかにすること。 【方法】北海道根室管内の1戸のフリーストール農場で飼育されているホルスタイン種乳牛のうち、2004年9月から2007年8月までに分娩した103頭を供試した。分娩後2週目から週に2回の間隔で乳汁を採取し、EIA法でプロジェステロン濃度を測定して卵巣機能の回復時期と回復型の調査を行った。また、分娩後3、5および7週の計3回、直腸検査と腟検査を行い、子宮修復状況と子宮内膜炎の有無を調べた。 【結果】103頭のうち、分娩後3週以内に初回排卵が認められた例は62頭(60.2%)で、4~5週は20頭(19.4%)、6週以降は21頭(20.4%)であった。また、分娩後の卵巣周期の回復型は、正常が43頭(41.7%)、初回あるいは2回目排卵後黄体期延長、黄体期短縮、周期停止および初回排卵遅延が、それぞれ17頭(16.5%)、2頭(1.9%)、5頭(4.9%)および36頭(35%)であった。分娩後4週目までに子宮が修復した例は49頭(47.6%)で、修復が遅延していた例は54頭(52.4%)であった。また、子宮内膜炎を発生していた例は103頭中20頭(19.4%)あった。分娩後の初回排卵の時期と子宮の修復との間に明らかな関係はみられなかった。卵巣周期の回復型が正常の群において、子宮の修復が遅延していた例は18頭(41.9%)あった。また、黄体期延長、黄体期短縮、周期停止および初回排卵遅延の群では、それぞれ15頭(88.2%)、1頭(50%)、1頭(20%)および19頭(52.8%)あり、正常群と比べて、黄体期延長群における子宮修復遅延の発生率は高かった(P<0.01)。子宮内膜炎の発生率も黄体期延長群では正常群と比べて高かった(35.3% vs 11.6%, P<0.05)。 【考察・結論】分娩後初回あるいは2回目排卵後の黄体期延長は子宮修復遅延と子宮内膜炎の発生を増加させる可能性のあることが示唆された。
  • Su Thanh Long, Toshihiko Nakao, Shiho Fujita, Shingo Okamura, Hidenori ...
    セッションID: OR1-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    A new progesterone intra-vaginal device for cattle has been developed in Argentina. The product (DIB) is Y-shaped and contains 1 g progesterone. The objective of this study was to know the effectiveness of DIB, in comparison with CIDR, in estrus synchronization of lactating dairy cows. A total of 110 Holstein Friesian cows from 22 commercial dairy farms in Yamaguchi Prefecture were used. The cows were 60d postpartum or later and were in their first to fourth lactations, and had no clinical abnormality in ovaries and uterus. The 110 cows were divided into two treated groups. One group of 54 cows was inserted into the vagina with DIB, which was removed 12d after insertion. The other group of 56 cows were treated with CIDR as same as DIB treated group. Milk samples were collected at 0, 7, 12, 14 and 21d after insertion to measure progesterone concentrations. Decrease in milk progesterone concentrations 14d after insertion (2d after removal) was considered to be positive response. Estrus was detected by visual observation by farmers with or without heat detection aids. Cows were inseminated artificially after estrus detection. Estrus detection rate within 6d after removal of CIDR and DIB was 57.1% and 44.4%, respectively. Estrus induction rate based on milk progesterone profile and expression of estrus was 64.3% and 66.7% in CIDR and DIB groups, respectively. Conception rate after AI at induced estrus was 21% in CIDR group and 19% in DIB group. It is concluded that DIB is equally effective to CIDR in estrus synchronization in dairy cows.
  • Muhammad Yusuf, Toshihiko Nakao, Su Thanh Long, Gokarna Gautam
    セッションID: OR1-26
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    The objective of this study was to show the characteristics of reproductive performance in today's high-producing dairy cows based on three years reproductive monitoring. A total of 131 dairy cows which calved from Feb 2005 to Dec 2007 at a commercial dairy farm in Yamaguchi Pref. with average milk yield of 10,200 kg/cow/lact were used. Pregnancy rate within 115d and average days open were 29.8% and 161±16d in 2005, 45.0% and 139±15d in 2006, and 50.0% and 114±12d in 2007. The cows were classified into three groups according to reproductive performance. Normal fertility (NF) cows were defined as those which conceived within 115d after one to three artificial inseminations (AI). Cows conceiving beyond 115d after one to three AI were defined as low fertility cows (LF). Repeat breeders (RB) were those AI three times or more without conception and having no clinical reproductive disorders. Fourteen cows were culled due mainly to mastitis within 115d and were excluded from the analysis. Out of 117 cows, 47 cows (40.2%) were NF, while the others 42 (35.9%) were LF. The remaining 28 cows (23.9%) were RB. In NF group first AI conception rate within 85d was 52.3%, pregnancy rate within 115d was 100%, and calving to conception interval was 72±3d. Pregnancy rate within 150d, 210d, and 300d were 28.6%, 57.1%, and 66.7% in LF group and 3.6%, 17.9%, and 50% in RB group. Calving to conception interval and estimated calving interval were 259±16d and 539±16d in RB group and 170±8d and 450±8d in LF group. In conclusion, 40% cows in the herd had normal fertility level, while 60% showed reduced fertility, which contributed to extended calving interval.
内分泌
  • 上野山 賀久, 井上 直子, 長谷川 浩一, 冨川 順子, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-27
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】メタスチン/キスペプチンはGnRH分泌を支配する神経ペプチドとして注目され,その主な作用部位は視床下部にある。一方,性腺においてもメタスチンをコードする遺伝子であるKiSS-1およびメタスチン受容体であるGPR54のmRNAの発現が確認されている。本研究ではラットメタスチンに対する能動免疫処置によるメタスチン作用阻害がゴナドトロピン分泌や性腺機能におよぼす影響について検討した。【方法】ラットメタスチンのC末16アミノ酸にkeyhole limpet hemocyaninを結合して抗原とし,雌雄ラットに2週間おきに皮内投与した。雄ラットでは3回目の免疫以降に血中テストステロン濃度を測定し,7回目の免疫の一週間後に採血を行いゴナドトロピン分泌におよぼす影響を検討した後に,精巣および精巣上体を採取した。一方,雌ラットでは実験期間を通じて腟スメア像により性周期を確認した。8回目の免疫後に卵巣除去とエストロジェンの代償投与を行い,一週間後に頻回採血によりゴナドトロピン分泌におよぼす影響を検討した。【結果】抗メタスチン抗体の産生は3回目の免疫後から確認された。雄ラットでは3回目の免疫以降に血中テストステロン濃度および精巣上体重量が対照群に比べて有意に低下した。一方,雌ラットでは4回目の免疫以降に性周期の乱れが認められ,卵巣重量は対照群と比較して有意に低下した。また全卵胞数に対する一次卵胞の割合が有意に高く,二次卵胞や胞状卵胞の割合は低かった。雌雄ラットともに免疫群では平均血中FSH濃度の低下が見られたが,LH分泌には抑制効果は見られなかった。このことからGnRH分泌の抑制を介さずに,性腺機能が低下したと推察される。性腺におけるKiSS-1およびGPR54 mRNAの発現を考え合わせると,メタスチンは性腺内において局所機能調節因子として卵胞発育やテストステロン産生に関与している可能性が示唆された。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされています。
  • 平野 隆之, 岡村 裕昭, 上野山 賀久, 束村 博子, 前多 敬一郎, 井上 直子
    セッションID: OR1-28
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】メタスチン(キスペプチン)は、kiss1遺伝子にコードされる神経ペプチドで、視床下部での性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌調節において重要な役割を果たしていることが、近年報告されつつある。性腺においてもkiss1 mRNAが発現することが報告されているが、卵巣におけるメタスチンの局在およびその機能はほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、卵巣におけるメタスチンの役割を明らかにするための第一段階として、ヤギおよびブタ卵巣においてメタスチンの局在を免疫組織化学的に解析した。また卵巣内においてメタスチンによるGnRH発現の調節の可能性を探る目的で、GnRHの局在と比較検討した。【材料および方法】雌性ヤギおよびブタ卵巣をそれぞれ4%パラホルムアルデヒドにて固定し、定法に従い凍結切片を作製した。抗メタスチン抗体あるいは抗GnRH抗体を用いて免疫組織化学を行った。【結果および考察】ヤギおよびブタ卵巣においてメタスチン陽性細胞はいずれも、原始卵胞、一次卵胞、二次卵胞および卵胞腔が形成され始める初期三次卵胞の顆粒層細胞で観察され、それ以降の成熟卵胞、排卵前卵胞ではメタスチン免疫活性が消失していた。また黄体細胞においてもメタスチン免疫活性は観察されなかった。一方GnRH陽性細胞は三次卵胞以降の卵胞の顆粒層細胞にのみ局在がみられ、メタスチン陽性細胞と全く逆の発現パターンを示した。これらのことより、ヤギおよびブタ卵巣におけるメタスチンは、GnRH分泌を促進する中枢系のメタスチンとは異なった機能を持ち、初期卵胞の発育ならびに卵胞腔形成に関与している可能性が示唆された。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされています。
  • 若林 嘉浩, 大蔵 聡, 上野山 賀久, 高瀬 健志, 束村 博子, 前多 敬一郎, 岡村 裕昭
    セッションID: OR1-29
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】Kiss-1遺伝子にコードされるメタスチン/キスペプチンは、繁殖調節に重要な役割を担うペプチドである。我々はこれまでに、去勢雄ウシへのヒトメタスチンC末端部分ペプチド(キスペプチン10)の末梢投与が、黄体形成ホルモン分泌を促進することを示している。本研究では、ウシにおけるメタスチンに関する知見をさらに深めるため、ウシKiss-1遺伝子の同定およびメタスチンニューロン分布の検討を行った。【方法】ホルスタイン種去勢雄ウシ(9ヶ月齢)を過剰量のペントバルビタールで屠殺後、視床下部弓状核を含む脳組織を採取した。組織からRNAを抽出し、RACE法によりウシKiss-1遺伝子の同定を行った。次に、ホルスタイン種去勢雄ウシ(9ヶ月齢)の頭部を4%パラホルムアルデヒドで潅流固定し、視床下部を含む脳組織を切り出した。凍結連続切片を作製し、抗ヤギメタスチン抗体を用いた免疫染色を行った。【結果】ウシKiss-1遺伝子は、408bpのコーディング領域を持ち、予想されるアミノ酸配列は135残基であった。このうち、メタスチンを構成するペプチド配列は53残基と推定され、ヤギおよびヒツジメタスチン配列と90%の相同性を示した。また生理活性部位と考えられているC末端10残基は、ヤギ、ヒツジ、ラット、マウスと同一であった。メタスチン陽性細胞は、背内側核の一部および弓状核で観察された。弓状核内の陽性細胞は、吻側で少なく、尾側では密に分布していた。一方、視索前野や脳室周囲核などその他の視床下部の部位では、メタスチン陽性細胞は認められなかった。【考察】ウシにおいてもKiss-1遺伝子が視床下部に発現していること、弓状核にメタスチンニューロンが分布することが示された。メタスチンの推定アミノ酸配列とメタスチンニューロンの分布様式は、ヤギやヒツジのものとほぼ同じであり、メタスチン神経系は反芻家畜の中で高度に保存されているものと推察された。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した
  • 田島 茂行, 柴田 貴子, 河野 建夫, 難波 陽介, 大蔵 聡, 上野山 賀久, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-30
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】メタスチン(キスペプチン)は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌調節に重要な役割を担っている神経ペプチドであり,養豚分野での,より効果的な性腺制御法の開発への応用が期待される。ラットを用いた基礎実験により、メタスチンの作用部位は脳内にあるが,末梢投与によって中枢投与と同様の効果が得られること、C末端側10個のアミノ酸配列(kisspeptin-10, kp-10)が生理活性を示すことから、家畜においても十分な実用性を有すると考えられる。本研究では,雌ブタにおいて,メタスチンのコアペプチドkp-10を静脈内投与し,黄体形成ホルモン(LH)分泌に及ぼす影響について検討した。【方法】約21日の正常な発情周期を示すランドレース経産雌ブタを用い,耳介静脈より挿入し,頚静脈に留置したカニューレを通じて,発情開始後7~13日の黄体期に10分ごと12時間の頻回採血を行った。採血開始8時間後に生理的食塩水またはkp-10(30nmol/頭または300nmol/頭)のいずれかを静脈内投与した。血漿中LH濃度はRIAにより測定した。【結果】kp-10投与群では,いずれの濃度においても投与直後10分以内に血漿中LH濃度の上昇が認められた。kp-10投与による血漿中LH濃度の上昇パターンは,内因性のLHパルスの振幅や持続時間と類似していた。kp-10投与後1時間における血中LH濃度のarea under the curveは投与前1時間に比べ,有意に高い値を示した。以上の結果から,雌ブタにおいて,kp-10の静脈内投与により,LH分泌が促進され,養豚分野における実用に向けての可能性が示された。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされています。
  • 井上 直子, 上野山 賀久, 大蔵 聡, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-31
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】神経ペプチドであるメタスチン(キスペプチン)が性腺刺激ホルモン放出ホルモン (GnRH)/黄体形成ホルモン (LH) の分泌制御に重要な役割を果たし、発情周期の制御を担っていることが、近年明らかにされつつある。しかしながら発情周期をもたない交尾排卵動物におけるその制御機構は未だ不明である。そこで本研究では、交尾排卵動物のモデルであるスンクス(Suncus murinus)を用いて、全長メタスチンまたはメタスチンのコアペプチドであり、生理活性を示すとされているC末端側10個のアミノ酸配列 (kisspeptin-10、 kp-10) の投与により排卵が誘起されるかどうかを検討した。【材料および方法】未経産のKAT系統雌スンクス(8-20週齢)を用い、human全長メタスチン、rat全長メタスチン、human kp-10、rat kp-10をそれぞれ5nmolまたは0.5nmol/頭、単回皮下投与した。投与72時間後に実体顕微鏡下にて黄体数を確認した。【結果および考察】humanまたはrat全長メタスチン投与群では現在のところ全頭で排卵が誘起されたが、humanあるいは rat kp-10投与群ではいずれも排卵が誘起されなかった。また全長メタスチン投与群の排卵数は自然交配による排卵数とほぼ同じであり、卵巣組織も自然交配時と変わらなかった。これらのことより、発情周期を持たない交尾排卵動物においてもメタスチンがLHサージを誘起することにより、排卵を誘起することが明らかとなった。スンクスkiss1遺伝子は現在クローニング中であるため、アミノ酸配列は決定できていないが、生理活性を示すとされているkp-10では排卵を誘起できなかったことより、kp-10以外にも活性部位が存在する可能性が示唆された。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされています。
  • 稲本 瑶子, 本間 玲実, 上野山 賀久, 前田 麻希, 山田 俊児, 井上 直子, 大蔵 聡, 前多 敬一郎, 束村 博子
    セッションID: OR1-32
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】我々は以前、雌ラットへの新生仔期のエストロジェン(E)長期投与が視床下部弓状核(ARC)のメタスチンニューロンを顕著に減少させ、黄体形成ホルモン(LH)パルスを抑制する事を報告した。本実験では新生仔期の雄ラットへの同様の処置がLHおよびテストステロン(T)分泌、生殖腺重量及びメタスチンニューロンへ及ぼす影響を確かめることを目的とした。【方法】出生日(生後0日)から生後10日までWistar-Imamichi系雄ラットに毎日エストラジオールベンゾエイト(EB)を投与した。9~11週齢に精巣除去し、精巣及び精巣上体重量測定、及びT濃度測定用の採血を行った。その2週間後、パルス状LH分泌測定用の頻回採血を行った。一部の動物にはメタスチンを投与しLH分泌への影響を見た。ARC-正中隆起(ME)、前腹側室周囲核及び視索前野におけるKiSS-1(メタスチン遺伝子)と、メタスチン受容体のGPR54のmRNAを定量した。ARC-MEにおいてメタスチン、チロシン水酸化酵素(TH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の免疫組織化学をおこなった。【結果及び考察】EB投与群の精巣、精巣上体重量及びT濃度は対照群に比べ有意に低く、パルス状LH分泌は顕著に抑制された。EB群のARC-MEのKiSS-1 mRNA量とメタスチン免疫陽性細胞数は対照群に比べ有意に低かった。一方、各組織のGPR54 mRNA量は両群間に差は認められず、両群においてメタスチン投与に対しLH分泌の上昇が認められた。TH及びGnRHの免疫陽性細胞数及び面積は群間での顕著な違いはなかった。本実験により、新生児期のEの長期投与はARCのメタスチンニューロンを特異的に減少させた。その結果パルス状LH分泌およびT分泌が顕著に抑制され、生殖機能を抑制することが推察されると共に、ARCメタスチンニューロンがGnRH/LHパルス状分泌発生機構の活動に重要な働きを持つ事が示唆された。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされている。
  • 長谷川 喜久, 橋本 統, 山口 高弘
    セッションID: OR1-33
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】Myostatinは1997年、TGF-βの類縁物質として8.5日令の胎児マウスのmRNAから発見されGDF-8と命名された。GDF-8遺伝子欠損マウスの骨格筋が肥大するためにGDF-8は骨格筋の増殖抑制因子、つまりMyostatinと命名された。我々はインヒビンやアクチビンの精製や生物活性に付いて検討してきたが、今回はアクチビンと構造的に類似しているMyostatinの生物活性に付いて検討した。 【方法および結果】生物活性:Myostatinの下垂体細胞からのFSH分泌促進作用とK562細胞のヘモグロビン産生誘導活性に付いて、3種類のアクチビンと比較検討した。アクチビンA とABは1ngから100ng/mLまで直線的にFSHの分泌を促進した。 MyostatinもアクチビンA 、ABと同様に強いFSH分泌活性を持っていたが、有効用量域での反応が良くなかった。しかし、全体として、アクチビンBより生物活性は強いことが示唆された。K562細胞は慢性骨髄性白血病患者から得られた未分化芽球でアクチビンの刺激によってヘモグロビン産生が誘導され、インヒビンによって抑制される。培養K562細胞にアクチビンA とABを添加すると約3ng/mLで頂値に達した。Myostatinの頂値は約10ng/mLであったが、さらに添加量を増加するとヘモグロビン産生反応は顕著に低下した。  アクチビンレセプターに対するMyostatinの結合:プレートのコーティングしたアクチビンIIA レセプターとEuアクチビンは良く結合し、添加した100ng/mLのアクチビンによりその結合は90%以上抑制された。アクチビンABもやや弱いながらも、同様な抑制曲線を示したが、アクチビンBの結合能は低くアクチビンA の5%以下であった。インヒビンとMyostatinの結合能はさらに2倍以上低いことが分かった。分子的な特性の不明確なGST-myostatin は全く結合能を持たなかった。
  • 川島 千帆, 永嶋 俊太郎, 清水 隆, 宮本 明夫, 木田 克弥
    セッションID: OR1-34
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】いくつかの動物種において,性ステロイドホルモンによる代謝ホルモンの分泌調節が明らかにされている。これまでの我々の研究においても,成牛の発情周期中に血中の代謝ホルモン,特にインスリン様成長因子‐I(IGF-1)濃度が顕著に変動することが確認された。しかし,この性ステロイドホルモンに対する血中代謝ホルモン濃度の変化が,先天的に備わっている性質なのか,それとも自ら性ステロイド分泌を始める春機発動後に起こる現象なのかは不明である。そこで本試験では,春機発動前の4ヶ月齢の雌子牛に対し安息香酸エストラジオール製剤(EB)を投与し,投与前後の血中代謝ホルモン濃度の動態を調査した。【方法】試験は帯畜大畜産フィールド科学センターで飼養されている4ヶ月齢のホルスタイン種雌牛18頭を用いた。成牛の1/5量のEBを筋肉中に投与し,血液を投与直前と投与24時間後に採取し,血漿中エストラジオール(E2),成長ホルモン(GH),IGF-1およびインスリン濃度をEIA法により測定した。また,各代謝ホルモンの作用を受ける血漿中グルコースおよび遊離脂肪酸濃度も測定した。【結果】供試牛の平均体重は141.8kg,体高は99.8cmであった。血漿中E2濃度はEB投与前の3.5pg/mlから投与後15.8pg/mlと約5倍に増加した(P <0.0001)。血漿中IGF-1(投与前140.2,投与後158.9 ng/ml;P <0.01)およびインスリン(投与前0.7,投与後0.9 ng/ml P <0.05)濃度もともにEB投与により増加した。血漿中GH濃度(投与前11.8,投与後16.7 ng/ml)はEB投与で増加する傾向があった(P=0.08)。血漿中グルコースと遊離脂肪酸濃度はEB投与前後で変化しなかった。以上より,牛においてエストラジオールによる代謝ホルモン分泌調節機能は,先天的に備わっており,代謝ホルモン分泌は栄養状態のみならず生殖機能にも強く影響を受ける可能性が示唆された。
  • 大前 良征, 宮崎 伸男, 西原 真杉, 太田 昭彦
    セッションID: OR1-35
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子を導入した齧歯類TG動物では、雌のみならず雄においても不妊や生殖機能障害を引き起こすことが報告されている。その原因は主に、hGHの齧歯類に対するPRL様作用とされているが、その機序の詳細は明らかではない。そこで、マウス乳清酸性タンパク(mWAP)/hGH遺伝子を導入したhGH発現量の異なるTGラットの2系統(High-Line、Low-Line)の雄を用いて、hGHの視床下部‐下垂体‐精巣軸に対する障害機序を追究した。【方法】24週齢のhGH-TG雄ラットを使用した。GnRHテストは酢酸フェルチレリン(1μg/kgBW)、hCGテストはhCG(10IU/kgBW)を投与し経時的に採血した。また、去勢前後の頸静脈カニュレーションによる連続採血を行い、LH分泌動態の比較検討を行った。【結果】Low-LineにおけるGnRH負荷によるLH分泌能は対照(WT)に比べ、著しく上昇していた。hCG負荷によるテストステロン(T)分泌能はWTに比べて低下していた。また、LHパルス頻度はWTに比べ変化はなかったが、振幅および濃度はWTに比べ著しく高い値を示した。しかしながら、WTで認められた去勢によるLHパルス頻度、振幅、濃度の上昇は認められなかった。したがって、Low-Line においては精巣のLHに対するT分泌の反応性に障害があることが示唆された。一方、High-Lineでは、GnRH負荷によるLH分泌能およびhCGによるT分泌能はWTに比べ、著しく低下していた。またLHパルス頻度、振幅、総平均濃度はWTと比べ低い値を示し、去勢によるLHパルス頻度、振幅、濃度の上昇もほとんど認められずWTのそれらに比べて著しく低い値となった。これらのことから、High-Lineではさらに視床下部のGnRH分泌、下垂体のLH分泌にも障害があることが示された。以上によりhGHは2系統のTGラットにおいて、異なる機序によって視床下部‐下垂体‐精巣軸に障害を与えている可能性が示唆された。
  • 李 春梅, 種田 晋二, 渡辺 元, 鈴木 明, 田谷 一善
    セッションID: OR1-36
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    It has been reported that diesel exhaust particles (DEP) contain high concentration of nanoparticles, which may have more hazardous effects on human health than large particles. The present study was investigated the effects of in utero exposure to nanoparticle-rich diesel exhaust (NR-DE) on the reproductive function of male rat. Pregnant F344 rats were exposed to NR-DE at the nanoparticles (number concentration of 1.83X106 /cm3, weight concentration of 148.86 μg/m3), filtered diesel exhaust (F-DE; number concentration of 2.66 /cm3, weight concentration of 3.10 μg/m3), or clean air as control, from gestation day (GD) 1 to 19 (GD 0 = day of sperm-positive). The effects of the exposures on male offspring were examined 4 weeks after birth. As the results, the relative weights of the seminal vesicle and prostate to the body weight significantly decreased in the NR-DE or F-DE-exposed rats compared with the control group. Serum concentrations of testosterone, progesterone, corticosterone and FSH, together with the levels of steroidogenesis acute regulatory (StAR) and 17β hydroxysteroid dehydrogenase mRNA of the testis significantly increased in the groups exposed to NR-DE or F-DE as compared with the control group. On the other hand, serum concentrations of ir-inhibin significantly increased in the group exposed to NR-DE or F-DE as compared with the control group, while the FSH receptor mRNA expression evidently increased in NR-DE exposure group only. These results suggested prenatal exposure to NR-DE or F-DE could lead to endocrine disruption after birth and suppress the testicular function in male rats. (P07582 and B-18310044)
  • Sukanya Jaroenporn, Ryo Ohta, Gen Watanabe, Kazuyoshi Taya
    セッションID: OR1-37
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    In the present investigation, we examined the influence of both genetic background and sex factors in the rat adrenal function. For these purposes adult female and male rats, from Hatano high (HAA)- and low (LAA)-avoidance strains, were decapitated at 0, 15, 30, 60 and 120 min after immobilization stress. Despite no sex- and strain-related differences in plasma adrenocorticotropic hormone (ACTH) levels in basal condition, there exits a clear sexual and strain differences in stress-induced ACTH concentrations, with values significantly lower in females than in males. The stress-induced corticosterone and progesterone release were also sex dependent but regardless the strain. This finding suggests that male adrenal is less sensitive to ACTH than female. Results of in vitro study showed strain difference in adrenal sensitivity to prolactin (PRL) and/or ACTH, while the sex difference was found only HAA strain. Next, we investigated the role of PRL and steroid hormones in the growth regulation and cortisol release of adrenocortical cells by using the H295R cell line as a model system. Incubation with ACTH and PRL for 24 hours caused a significantly increase cortisol release, while estradiol and progesterone did not increase cortisol release. Long-term (5 days) stimulation of H295R cells with ACTH, PRL, estradiol and progesterone was a trigger to increase cell proliferation. Conversely, testosterone and DHT did not alter H295R cell proliferation and cortisol release. These results indicate that sex and/or gonadal steroid environment can affect the stress-induced gulcocorticoid release from the adrenal cortex.
精巣・精子
  • 荒牧 伸弥, 加藤 たか子, 宗 知紀, 山内 伸彦, 加藤 幸雄, 服部 眞彰
    セッションID: OR2-1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、我々は鳥類生殖細胞研究の分子基盤を構築する目的で、ニワトリ dead end homologue(CDH)遺伝子を単離し、そのmRNAの発現がニワトリ生殖細胞に高い特異性を示すことを報告した(Aramaki et al. 2007; 本学会第100回大会)。本研究ではさらにCDHの機能面に迫るため、これまでの報告をもとに抗CDH抗体を作製してCDHのタンパクレベルでの発現およびその細胞内局在の解析を行った。【方法】単離したCDHのcDNA情報をもとに、そのC端側112アミノ酸残基を組換えタンパク質として作製してウサギに免疫することで抗体を得た。得られた抗体を用いてウエスタンブロットにより抗体の有効性を検討した後、免疫染色によりCDHタンパクの発現および細胞内局在を解析した。【結果】ウエスタンブロットでは雌雄両方の性腺において分子量60kDaの位置にシングルバンドが検出され、抗体の有効性が確認された。始原生殖細胞(PGCs)において免疫染色を行った結果、その核にCDHの局在が観察された。また、性成熟前(2~4週齢)の精巣では、精細管の内腔側に陽性反応を示す細胞の点在が認められた。さらに成体の精巣では、精巣間質細胞の基底膜に沿って存在する精原細胞および精母細胞がCDH陽性を示した一方で、精子細胞や精子はCDH陰性を示した。CDH陽性反応を示した精原細胞と精母細胞においては、それぞれの核にその局在が認められた。【考察】本研究において、CDHタンパクが生殖細胞の核に局在することが明らかになった。これは、dead endと同様に生殖細胞に発現するRNA結合タンパクであるvasaやnanosといった因子が主にその細胞質に局在するのとは異なる所見である。しかしデータベースでCDHのアミノ酸配列を照合したところ、核移行シグナルは確認されなかったことからCDHの核移行はそれ自体によるものでなく、別の移行システムが関わっている可能性が示唆された。
  • 与語 圭一郎, 高原 英成, 高坂 哲也
    セッションID: OR2-2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    PAD (Peptidylarginine deiminase)は、カルシウム依存的にタンパク質中のアルギニン残基をシトルリンに変換する翻訳後酵素であり、これまでに5つのファミリー遺伝子が見つかっている。我々は、昨年の本大会でPAD6がマウス精巣において精子完成過程後期の精子細胞に発現すること、またPAD6自身はファミリー間で保存されているカルシウム結合部位に変異があり、シトルリン化活性を持たないものの、PAD2と結合し活性化因子として機能すること等を報告した。本研究では、PAD6とPAD2の結合ドメインや活性化領域について解析を行ったので報告する。まず、精製したPAD2およびPAD6組換えタンパク質を用い、in vitroにおいてPAD2のシトルリン化活性をPAD6の存在下・非存在下で調べたところ、PAD6の用量依存的にPAD2の活性が上昇することを確認した。なお、PAD6による酵素活性の上昇は、PAD2だけでなく他のPADアイソフォームにおいても認められた。次にPAD6のどの領域がPAD2の活性化を引き起こすのか変異体を用いて調べたところ、免疫グロブリン様ドメインを含むN末端領域および触媒ドメインを含むC末端領域、いずれの領域もPAD2の活性を上昇させることができた。続いて、PAD2とPAD6の結合について、プルダウンアッセイにより解析したところ、PAD6のN末端領域およびC末端領域は、カルシウムの存在下でいずれも全長PAD2と結合した。逆に、PAD2のN末端およびC末端領域だけでは全長PAD6と結合しなかった。PADの結晶構造を解析した報告によれば、カルシウムが結合するとPADの構造が変化するという。この報告と今回得られた知見を考え合わせると、PAD6のN末端やC末端領域が、カルシウムとの結合により構造変化したPAD2と結合することで、PAD2の活性上昇を誘導している可能性が考えられた。
  • 飯渕 るり子, 岩永 敏彦, 下鶴 倫人, 坪田 敏男
    セッションID: OR2-3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ニホンツキノワグマは長日季節繁殖動物であり、精子形成は顕著な季節性を示す。交尾期である初夏には精巣内で活発な精子形成が行われるが、秋から冬にかけて精細胞の分化が停止する。精細胞の分化が再開するのは冬眠後期にあたる2~3月頃である。この精子形成の季節変化に同調して、精巣における性ステロイド産生も季節変動することが知られている。しかし、このような性ステロイド産生および精子形成の季節変化を調節している機構は明らかではない。本研究では、ツキノワグマの精巣におけるステロイド代謝酵素mRNA発現の季節変化について検討した。【方法】交尾期(6月)および非交尾期(11月、1月、2月、3月)に成熟雄ツキノワグマ3頭より採血およびバイオプシーによる精巣組織の採取を行った。精巣組織の凍結切片を作製し、in situ hybridization法により性ステロイドの代謝・合成に関わる5種類の酵素(P450scc, 3βHSD, P450c17, 17βHSD3およびP450arom)のmRNAを検出した。【結果・考察】交尾期の精巣では精子の形成が行われていた。11および1月の精巣では精細胞の分化は見られなかったが、2~3月には分化の再開が確認された。P450scc, 3βHSDおよびP450c17 mRNAは、交尾期の精巣の間質組織に発現が認められた。3βHSDは、非交尾期である11~2月に発現が低下し、精子形成の再開が観察された3月頃に発現が再び上昇した。一方、P450sccおよびP450c17 mRNAは交尾期および非交尾期の全ての月で発現が認められ、季節変化は観察されなかった。17βHSD3 mRNAは精細管内の基底側に発現が見られ、季節変化は認められなかった。以上の結果より、ツキノワグマ精巣におけるアンドロジェン合成の鍵となる酵素は3βHSDであり、その発現の季節変化がアンドロジェン合成の季節変化に関与している可能性が示唆された。また、P450arom mRNAは主に交尾期の精細胞で発現が認められた。
  • 村瀬 哲磨, Ismail El-kon, 向島 幸司, 原山 洋, 高須 正規, 酒井 謙司
    セッションID: OR2-4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
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    【目的】黒毛和種種雄牛において,一般精液性状に異常が認められないにも関わらず人工授精後の受胎成績が低下した例が見られ,本種の繁殖に支障を来している。このため一般検査では発見できない異常を調べる新規検査法の開発を目的として,鞭毛の超活性化運動の誘起能力が指標として使用できるか否かを検討した。【方法】受胎率が正常な個体 3 頭のそれぞれ3射出精液(合計9射出)及び低下した2頭(ウシ A および B)の凍結融解精液(ウシ A の3射出およびウシ B の 2 射出)を使用した。精子を洗浄後,0.1 mM cAMP アナログ(cBiMPS)を添加あるいは無添加(対照)の 0.1% ポリビニルアルコール含有 HEPES-緩衝 BO 液に再浮遊し,38.5°Cにて 0~4 時間培養した。1 時間おきに一部を取り運動性を位相差顕微鏡下で観察した。100~200 倍で円を描いて運動する精子で,400 倍にて尾部の振動が左右非対称性である精子を円運動とした。また,移動をほとんどせずその場で激しく尾部を振動させる精子を鞭打ち運動と判定した。運動する全精子に対する円運動及び鞭打ち運動する精子の割合を超活性化運動(HA)率とした。【結果】正常な個体の 9 射出精液においては,cBiMPS 存在下の培養 1 時間後に HA 率が急激に上昇し(平均 82%),4 時間(平均 88%)まで持続した。培養 1 時間における HA 精子のうちほとんどが円運動精子であり,培養 3 時間まで徐々に鞭打ち運動する精子の割合が増加した。一方,低受胎率を示す個体においては,培養1時間後において,ウシ A の1射出精液の場合(17%)を除き,HA 率は 0% であった。また,ウシ A においては,培養 2 時間後に円運動を含む HA 率が上昇し(38~73%),ウシ B においては,培養 2 時間までに円運動がほとんど見られないにも関わらず,2 あるいは 3 時間後に HA 率が上昇する(11~100%)特異な変化が見られた。対照においてはいずれも HA 率は 0% であった。【考察】cBiMPSにより誘起される凍結融解精子の HA を指標として低受胎率を示す精液サンプルを検出できる可能性が示された。
  • 加藤 翼, 吉川 英里, 佐々木 愛子, 杉田 昭栄, 長尾 慶和
    セッションID: OR2-5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、以前ウシ精子細胞膜からのコレステロール流出が受精能獲得を誘起し、受精を促進することを明らかにした(日本畜産学会2005年)。受精能獲得は、コレステロール流出により始まる先体反応および卵子進入の準備が行われる生理学的変化である。一方で精子運動能の活性化は、受精に必須であり受精能獲得中に誘起されると考えられているが、受精能獲得および先体反応との相互関係については不明である。そこで本研究では、methyl-β-cyclodextrinにより受精能獲得を誘起したウシ精子の先体反応および運動能活性化の相互作用について解析した。【方法】実験1)methyl-β-cyclodextrin(CD)を添加したBrackettとOliphantの限定培地(BO)中(CD区)で精子を培養し、運動能、活性化運動精子の受精能獲得および受精能を検討した。活性化運動精子の受精能獲得は、1個の活性化運動精子をpolyvinylpyrrolidone溶液中でマイクロピペットを用いて捕捉し、chlortetracycline 染色により評価した。また、対照区(BO区)には無添加のBO中で培養した精子を用いた。実験2)CD添加BO(+区)、グルコース(Glu)およびピルビン酸(Py)を除去(-区)もしくは精子培養途中でGluおよびPyを添加(添加区)した各培養液を用いて、実験1と同様の評価項目とミトコンドリア(MT)活性について検討した。【結果】実験1)精子の活性化運動率および受精率は、BO区に比べCD区で高かった(p<0.05)。CD区において、活性化運動精子は受精能獲得を高い割合で保持していた。実験2) (-)区で運動精子が先体反応を誘起しているが、 (+)区および添加区の活性化運動精子は受精能獲得状態を維持していた。MT活性および受精率は(+)区に比べ添加区で低かった。【結論】活性化運動精子は受精能獲得を維持していることから、運動能活性化は先体反応を抑制している可能性がある。また、ミトコンドリアは活性化運動精子の受精能に影響すると考えられる。
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