日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
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優秀発表賞(口頭発表二次審査)
卵巣
  • 野間 紀孝, 川島 一公, Heng-Yu Fan, JoAnne S Richards, 島田 昌之
    セッションID: AW-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    [目的] LH刺激により顆粒膜細胞で発現するEGF like factor (AREG、BTC、EREG)は、EGFR (ErbB1) を介してERK1/2を活性化し、排卵期特異的な遺伝子発現を制御すると考えられている。しかし、マウス顆粒膜細胞あるいは卵子卵丘細胞複合体(COC)において、AREGのみの添加では、ERK1/2活性が持続しないことから、体内ではEGF like factor-EGFR系を増強する仕組みがあると推察される。我々は、ErbB1と同族のErbB3に対するリガンドであるNeuregulin1(NRG1)が、排卵期に発現していることを見いだした。そこで、本研究では、卵巣において全く報告のないNRG1-ErbB3系に着目し、発現機構と生理的機能について検討した。[方法] eCG/hCGを投与した野生型マウス、顆粒膜細胞特異的なERK1/2欠損マウス(ERK KO)から、顆粒膜細胞を回収した。さらにeCG投与した野生型マウスから回収した顆粒膜細胞およびCOCをAREG、NRG1あるいはAREG+NRG1で培養した。[結果] NRG1は、排卵刺激直後から顆粒膜細胞に発現し、その時ErbB2/ErbB3はヘテロダイマーを形成し、リン酸化されていた。このNRG1の発現は、ERK1/2依存的なCEBPbを介して制御されていた。さらに、ERK KOマウスでは、Nrg1発現の上昇が認められなかった。顆粒膜細胞とCOCの培養系において、NRG1単独ではERK1/2に影響は見られなかったが、NRG1とAREGの複合処理によりリン酸化が著しく増強され、卵丘細胞の膨潤に関わる遺伝子の発現量が有意に上昇した。また、NRG1は卵子の自発的な減数分裂再開を抑制し、AREGとNRG1の複合処理は、体内と同調した減数分裂の進行速度を示すこと、この成熟卵子の胚発生能は、それぞれの単独処理区と比較して有意に高いことが示された。[結論] NRG1は、排卵過程の顆粒膜細胞において、ERK1/2依存的なCEBPbの活性化により発現誘導され、ErbB2/ErbB3を介してERK1/2のリン酸化を増強するポジティブフィードバック因子であり、卵子の減数分裂進行を制御し、発生能を向上させることが明確化された。
精巣・精子
  • 岡崎 哲司, 三原 敏敬, JoAnne S Richards, Zhilin Liu, 島田 昌之
    セッションID: AW-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】我々はブタ精液中の細菌数と精子運動性には負の相関関係が存在し、細菌感染の悪影響は細菌増殖抑制作用を示す抗生物質では効果はなく、グラム陰性菌膜成分のLPSを不活化させるPMBにより抑制可能となることを明らかとした。このことから、細菌から放出されるLPSが精子に直接的に影響を与えていると推察されるが、精子の細菌認識について、全く報告がない。そこで、本研究ではLPS及びグラム陽性菌膜成分を認識し、初期免疫応答を司るTLR4及びTLR2の精子での発現と、そのKOマウスを用いて、精子における自然免疫能の役割を解析した。【方法】8週齢の雄マウスの精巣上体から精子を回収し、LPSまたはTLR2リガンドPam3Cysで処理し、精子機能性解析のためのサンプルを経時的に回収した。また、一部の精子は体外受精あるいは人工授精に供試した。【結果】マウス精子においてTLR4とTLR2の発現がmRNA及びタンパク質レベルで認められ、TLR4は先体及び尾部に、TLR2は尾部に局在していた。WTマウスではLPSまたはPam3Cysの添加濃度依存的に運動・生存率は低下し、培養3時間までに先体損傷が観察された。さらに、これらの精子ではNFkBのリン酸化、Caspase-3の活性化が生じ、アポトーシスを誘起していた。一方で、Tlr4-/-マウス精子ではLPS、Tlr2-/-マウス精子ではPam3Cysによる運動性低下、先体反応は全く起こらず、Caspase-3によるアポトーシスも完全に抑制されたが、Tlr4-/-マウス精子にPam3Cys,Tlr2-/-マウス精子にLPS処理するとWTと同様の結果を示した。リガンドを暴露したWTマウス精子を用いた体外受精および人工授精では、受精・卵割率が有意に低下したが、KOマウスでは、それぞれのリガンドに対して受精能低下は起こらなかった。さらに、両遺伝子欠損マウスでは、精子の運動性は長期にわたり維持され高い受精率を示した。以上の結果から、精子は自然免疫能を司るTLR4、TLR2により精液中の細菌感染を認識し、自己の機能性低下やアポトーシスを起こすことで、受精能を低下させていることが初めて明らかとなった。
卵・受精
  • 原 健士朗, 上村 麻実, 恒川 直樹, 九郎丸 正道, 金井 正美, 金井 克晃
    セッションID: AW-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    マウスの始原生殖細胞(PGCs)は、胎齢 7.0日(7.0dpc)頃に胚体外中胚葉で形成され、8.0dpcまでに将来的に腸管を形成する胚性内胚葉組織へと移動する。その後、10.5dpc頃まで胚性内胚葉組織内に局在し、11.5dpcまでに腸間膜を経て生殖巣へ移動する。このように、マウスPGCsは生殖巣へ到達するまで、主として胚性内胚葉組織内を移動する。PGCsの生殖巣への移動過程における胚性内胚葉との密接な位置的関係は昆虫から哺乳類まで幅広い動物種において観察されており、おそらく両者の相互作用がPGCsの移動過程において何らかの役割を担っているものと推察される。しかしながら、PGCsの移動における胚性内胚葉組織の役割は全く知られていない。我々は、Sox17遺伝子が胚性内胚葉に発現しており、その欠損マウス胚では胚性内胚葉の細胞数が減少することを既に報告している。つまり、同マウスはPGCsの移動の足場である胚性内胚葉の形成不全モデルマウスと考えられる。そこで、PGCsの移動における胚性内胚葉の形成不全の影響を調べるため、ALP染色によりSox17欠損マウス胚におけるPGCsの局在を解析した。その結果、2つの異所的PGCsの集団が観察された。1つ目は、胚性内胚葉組織に移入するものの、胚体の発生が進んでもその場所から動かずに腸管の入り口に留まり続けるPGC群であった。2つ目は、1つ目の集団の出現直後に胚体外の羊膜組織内に拡散するPGC群であった。この結果、胚性内胚葉の形成不全はPGCsの異所的な移動を引き起こすことが明らかになった。次に、キメラマウス胚作出により、Sox17欠損マウス胚の胚性内胚葉のみを正常型細胞に置換し、PGCsの移動が回復するか否かを検討した。その結果、キメラマウス胚でPGCsの移動が正常型と同様に認められた。以上の結果は、PGCsの移動は、胚性内胚葉の分化、つまり腸管の形態形成と密接に関係していることを示すものである。
生殖工学
  • 中村 隼明, 臼井 文武, 柏木 まや, 坂田 絢子, 小野 珠乙, 武田 久美子, 韮澤 圭二郎, 鏡味 裕, 田上 貴寛
    セッションID: AW-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】ニワトリでは始原生殖細胞(PGCs)を用いた生殖系列キメラ作出技術が樹立されているが、ドナー由来の後代産出効率が低いという問題がある。これを解決するための手段の一つとして宿主胚の内因性PGCsの除去が挙げられる。本研究では我々が開発した薬剤投与法を用いてブスルファン(Bu)によるPGCsの除去効果を検証した。続いてドナーPGCsを移植し、生殖系列キメラを介したドナー由来の後代産出効率が向上するか検証した。【方法】Buをジメチルホルムアミドに溶解し、PBSで10倍希釈後、同量のゴマ油と乳化した。0、25、50、75、100、125µgのBuが溶解した乳化液50µlを放卵直後の白色レグホーン(WL)胚の卵黄中へ注入した。孵卵6日目に生殖巣を採取し、抗ニワトリVASAホモログ(CVH)抗体を用いて免疫染色後、PGCs数を計測した。ドナーPGCsは52時間孵卵した横班プリマスロック(BPR)胚の血中より単離し、宿主には乳化液により100µgのBuを投与したWL胚を用いた。55時間孵卵した宿主胚の血中へドナーPGCsを200個ずつ移植した。蛍光標識したドナーPGCsを移植した胚から孵卵6日目に生殖巣を採取し、抗CVH抗体を用いた蛍光免疫染色後,、ドナーおよび総PGCs数を計測した。性成熟した個体はBPRと交配し、後代検定をおこなった。【結果】Buを0、25、50、75、100、125µg投与した区におけるPGCs数はそれぞれ対照区の97.6%、64.8%、36.0%,、5.5%、0.6%、0.6%であった。このことから乳化液を用いたBuの投与法により、ニワトリ初期胚の内因性PGCsが濃度依存的に除去されることが示された。初期胚におけるドナーPGCsの割合はBu投与区において98.3±0.5%であり、対照区の6.6±0.6%と比較して有意に高かった(P<0.01)。また、Bu投与区におけるドナー由来の後代産出効率は99.8± 0.2%であり、対照区の5.7±2.1%と比較して有意に高かった(P<0.01)。これらにより内因性PGCs除去胚へドナーPGCsを移植することで、初期胚におけるドナーPGCsの割合ならびにドナー由来の後代産出効率が飛躍的に向上することが示された。
  • 高橋 望, 小林 亮太, 岡本 晶, 山口 瑛人, 河野 友宏
    セッションID: AW-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】精子形成過程でメチル化を受けるIG-DMRに制御されるDlk1-Dio3ドメインからは、多数の父方発現遺伝子および、非コード母方発現遺伝子(Gtl2を含む)が発現し、発生に必須な役割を担うことが知られている。我々は、Gtl2(雌-/雄+)マウスが非コード遺伝子の発現低下により、Gtl2(+/-)マウスが父方発現遺伝子の発現低下により致死となることを確認した。一方、父方発現遺伝子の過剰発現による致死性はIG-DMR(-/+)マウスによって示されている。本研究では、Dlk1-Dio3ドメインにおける、Gtl2と遺伝子発現制御および致死性への関連性を探ることを目的とし、Gtl2(-/-)マウスおよびGtl2(+/-)&IG-DMR(-/+)マウスを作製し、表現型解析および遺伝子発現解析を行った。【方法】雌雄のGtl2(+/-)マウスの交配により、野生型、Gtl2(+/-)、Gtl2(-/+)、Gtl2(-/-)マウスを、また雌のIG-DMR(+/-)マウスと雄のGtl2(+/-)マウスを交配させ、野生型、Gtl2(+/-)、IG-DMR(-/+)、Gtl2(+/-)&IG-DMR(-/+)マウスを作出した。Dlk1-Dio3ドメインの遺伝子発現解析は、定量的リアルタイムPCRおよびノザン解析により行った。【結果および考察】Gtl2(-/+)マウスは生後致死、およびGtl2(+/-)マウスは周産期致死を示したが、Gtl2(-/-)マウスは全て生存した。またGtl2(+/-)&IG-DMR(-/+)マウスは30%が生存し、70%が生後致死となった。各マウスの遺伝子発現解析によって、父方発現遺伝子は周産期の生存に関与し、Gtl2の下流に存在する非コード母方発現遺伝子が生後の生存性に関与する可能性が示された。
  • 李 羽中, 水谷 英二, 小野 哲男, 若山 照彦
    セッションID: AW-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】遺伝子導入(Tg)動物は基礎研究や臨床応用に不可欠であり、前核注入法やウィルス感染法など様々な方法で作られている。しかしこれらの方法には作成効率の低さだけでなく、ウィルスの危険性などの弱点がある。一方我々が10年前に開発したICSI-Tg法は、凍結融解などで精子の細胞膜を破壊する必要があり、その際精子核にもダメージを与えてしまうため出産率そのものが低下してしまう。最近我々は強アルカリ溶液で精子を処理すると、細胞膜は完全に除去されるが精子核へはダメージが無く、出産率の低下を引き起こさないことを発見した(Li et al., 2009, Reproduction)。今回我々は、この方法で処理した精子を用いると、ICSI-Tg法によるTgマウスの成功率が有意に改善出来ることを発見した。 【方法】最適なICSI-Tg作成条件を決めるため、最初にDNA(pCX-EGFP)とアルカリ処理精子の共培養時間(3分-1時間)、次にDNA濃度(0.5-5ng/µL)についてBDF1マウスを用いて検討した。対照区として凍結融解法及びTritonX-100処理法も行った。ICSI後、胚盤胞までの発生率とGFP陽性率を調べ、成績の良かった区については、2細胞期に胚を偽妊娠メスに移植しTg産仔を得ることができるか確認した。生まれたTgマウスについては、導入遺伝子のサイレンシングの有無、コピー数および子孫への伝達を調べた。 【結果】DNA濃度が2ng/µL、アルカリ処理精子との共培養時間が10分間の時、GFP陽性の胚盤胞率が最も高くなった。この条件で胚移植を行った結果、ICSIした卵子対して10.2%の産仔がGFP陽性だった。つまり、ICSIを10個行えば1匹Tgマウスが作れることになる。成績は若干下がるが129/Sv及びC57BL/6でもTgマウスの作成に成功した。調べたすべてのTgマウスにおいて遺伝子のサイレンシングは起こらず、子孫への伝達も確認された。本実験によって、遺伝子導入動物がより簡単に作り出せるようになった。
一般口頭発表
卵・受精
  • 伊佐治 優希, 今井 裕, 山田 雅保
    セッションID: OR1-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】近年、マウス未成熟卵母細胞の体外成熟培養系が確立され、FSHが細胞質成熟を促進する効果を持つことが知られている。また、卵胞液中に高濃度に含まれる成長因子ミッドカイン(MK)は、ウシ卵母細胞の細胞質成熟を促進し、ラット顆粒層細胞での発現がFSHによって調節されることが明らかになっている。しかし、MKやFSHの細胞質成熟促進機構に関しては未だ明らかになっていない。本研究では、MKとFSHがマウス卵母細胞の細胞質成熟に及ぼす影響、およびそれらの作用機構について検討した。【方法】5IU PMSG投与48時間後に3週齢ICR系マウスの卵巣から卵丘細胞に囲まれた卵母細胞(COC)を採取した。また、0.2%ヒアルロニダーゼでCOCから卵丘細胞を除去した卵母細胞(DO)を準備した。COCあるいはDOを500ng/ml MKまたは1IU/ml FSHもしくはその両方を添加あるいは無添加5%FBS加Waymouth培地で体外成熟培養(IVM)を16~17時間行い、体外受精および4日間の胚培養(0.3%BSA加KSOM)後、2細胞期胚および胚盤胞への発生率を求めた。更に、COCをFSH添加あるいは無添加培地中でIVMを行った後、抗MK抗体で処理し、蛍光標識した2次抗体を用いて免疫蛍光染色を行った。【結果】COCでは、MKまたはFSH添加区における2細胞期胚(それぞれ62%, 71%)および胚盤胞(それぞれ31%,39%)への発生率は、無添加区(2細胞期胚42%,胚盤胞14%)よりも有意に高い値を示し、更に両者を添加することで、2細胞期胚(78%)および胚盤胞(49%)への発生率はより高くなった。DOでは、2細胞期胚および胚盤胞への発生率は無添加区(それぞれ25%,3%)に比べ、FSH添加区(それぞれ46%,13%)では有意に上昇するが、MK添加区 (それぞれ25%,6%)では差は見られなかった。また、免疫蛍光染色の結果、IVM培地中のFSHの有無に関わらず、卵丘細胞でのMKの発現に差はなかった。以上より、卵丘細胞においてMKはFSHの調節を受けず、FSHとMKはそれぞれ異なる経路で卵母細胞の細胞質成熟を促進することが示唆された。
  • 塚本 智史, 岸 千絵子, 西川 哲, 南 直治郎, 鬼頭 靖司, 水島 昇
    セッションID: OR1-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】オートファジーはリソソームを分解の場とする細胞質成分の大規模な分解系である。オートファジーの主な生理機能は栄養制御と品質維持に大別できる。オートファジーの活性は通常は低く保たれているが、受精直後には活発にオートファジーが誘導する。この誘導分は着床までのアミノ酸供給のために利用されると考えられる。実際に、この時期のオートファジーを欠損すると着床前致死となる。一方、活発に誘導されるオートファジーとは別に、低いレベルで起こる恒常的なオートファジーは細胞内で不要になった細胞質成分の除去のために必要である。受精前の未受精卵ではオートファジーの活性は低く抑えられており、卵子の品質維持にオートファジーが関与することが想定された。そこで、卵子の品質維持に恒常的なオートファジーが必須かどうかを検討した。 【方法】我々はオートファジーに必須な遺伝子Atg5を卵子特異的に欠損したマウス(卵特異的オートファジー欠損雌マウス)を作製した。このマウスを用いて、週齢ごとの卵巣切片の解析、排卵卵子のカウント、体外受精率と発生率の検討、野生型の雄マウスと一定期間同居させ産仔のカウントを行った。また、週齢ごとに回収した卵子を抗ユビキチン抗体と抗p62抗体で染色してタンパク質凝集体の蓄積の有無を観察した。さらに、電子顕微鏡を用いて超微細構造の観察を行った。 【結果および考察】卵特異的オートファジー欠損雌マウスは卵子形成や排卵は正常であった。そこで、週齢ごとに卵子を回収して体外受精を行ったところ、加齢に伴い受精率が低下することが分かった。次に、抗ユビキチン抗体と抗p62抗体を用いて卵子を二重染色したところ、加齢依存的にユビキチンとp62陽性のタンパク質凝集体が蓄積することが明らかとなった。さらに、電子顕微鏡観察からオートファジー欠損卵子には脂肪滴が多く観察された。以上の結果から、恒常的なオートファジーは細胞内成分を代謝回転させることで不要成分の蓄積を防止しており、この役割が卵子の品質を維持するのに重要であることを示唆している。
  • 木村 直子, 佐藤 康子, 井内 良仁, 佐藤 英世, 戸津川 清, 藤井 順逸
    セッションID: OR1-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】Cu,Zn-superoxide dismutase(SOD1)は、細胞内スーパーオキシドを消去する抗酸化酵素であり、SOD1欠損(KO)雌マウスでは著しい妊孕能の低下が報告されている。我々は、体外受精-発生系でSOD1KO卵由来の受精卵は2細胞期発生停止を引き起こすことを報告した(第100回大会)。今回は、体外成熟させたSOD1KO卵の発生能を調べ、卵の酸化ストレスと卵成熟との関わりについて検討した。【方法】ICR系SOD1KOあるいは野生型(WT)未成熟マウスへPMSGを投与後、卵核胞期卵を得てWaymouth's培地で卵成熟させた。その後HTF培地でWT精子を用いて受精を行い、KSOM培地で発生させた。この過程で成熟率、精子侵入率および卵割率を調べた。また卵割しなかった卵をα-tubulin抗体を用いて蛍光免疫染色し、核相および紡錘体の形態について調べた。一方、体外成熟卵のグルタチオン含量およびATP含量の測定、Mito-tracker Redを用いたミトコンドリア染色を行った。【結果および考察】成熟率はWT卵で92.7%に対し、SOD1KO卵で80%と低い傾向にあった。卵割率はWT卵で60%に対し、SOD1KO卵で4.6%と著しく低かった。一方、精子侵入率はWT卵で79.7%に対し、SOD1KO卵で64.6%と、多くのSOD1KO卵は精子侵入後に発生停止していることが明らかとなった。またSOD1KO卵では第二分裂中期での染色体分散や紡錘体の形態異常が多くみられた。体外成熟卵の平均グルタチオン含量は、WT卵で1.2 pmolに対し、SOD1KO卵で0.5 pmol と有意に低かった。一方、平均ATP含量はWT卵およびSOD1KO卵ともに0.5~0.6 pmolで大きな差はみられず、またミトコンドリア膜電位にも明らかな違いはみられなかった。以上から、SOD1KO卵は体外成熟過程で酸化ストレスによる減数分裂の異常を引き起こし、その結果、卵割率が著しく低下しているものと考えられた。またこれら発生異常にミトコンドリアの機能障害は関与していないものと考えられた。
  • 伊東 知未, 新川 真央, 笹浪 知宏
    セッションID: OR1-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】ニワトリやウズラなどの家禽では、雌性生殖器内に侵入した精子を長期間生存させる為に、卵管の子宮膣移行部と漏斗部に精子貯蔵管(SST)が存在することが知られている。しかし、射出された精子が如何にしてSST内に侵入し、SST内で長期間生存し、そして如何にして再びSSTから放出されるかの仕組みはほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、一旦子宮膣移行部のSST内に侵入した精子の放出を観察した。【方法】産卵を繰り返しているウズラを排卵予定時刻の9時間前に交尾させた。また、ステロイド合成阻害剤であるアミノグルテチミド(AG, 30 mg/150g BW)を排卵予定時刻の9時間前に投与し、すみやかに交尾させた。交尾後9時間まで産卵の状況を観察し、産卵した個体については産卵30分以内に、産卵しなかった個体については交尾後9時間後に屠殺し、雌性生殖器を取り出した。排卵および卵核胞の崩壊(GVBD)の有無を確認するとともに、子宮膣移行部を取り出し、アセトンで固定後、DAPI染色を行った。染色後に蛍光顕微鏡下でSSTを観察し、精子を含むSSTの割合を算出した。【結果】溶媒のみを投与した雌を交尾させ、産卵直後のSSTを観察したところ、GVBDまたは排卵の起こっている個体では精子を含むSSTの割合は2.7%と低値を示した。しかし産卵しても、最大卵胞の無い個体では、30.7%のSSTに精子が観察された。AG投与群では、最大卵胞でGVBDは起こっておらず、排卵が抑制されることがわかった。またAG投与群のSSTには,16.6%の割合で精子が含まれていた。以上の結果から、AGのような阻害剤で排卵を抑制すると、卵管を卵が通過してもSSTからの精子の放出が抑制され、SSTからの精子の放出が卵の通過による物理的な刺激によるものだけではない可能性が示唆された。
  • 木藤 学志, 荒牧 伸弥, 田中 浩嗣, 宗 知紀, 山内 伸彦, 服部 眞彰
    セッションID: OR1-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】ショウジョウバエにおいて生殖細胞の形成に関与していることが考えられているvasaや、マウスの生殖細胞形成の過程である減数分裂に関与しRNA結合ドメインをもつdazlなど、いくつかの動物種において生殖細胞で特異的に発現する因子が発見されている。また、ニワトリも生殖細胞の形成に関与すると考えられるCVHCDHといった遺伝子を持つことが明らかとなった。比較発生学的観点から、生殖細胞に特異的に発現する遺伝子の機能には興味が持たれるが、マウスやラットなど他の動物種に比べると鳥類では生殖に関連する知見は極めて少ない。そこで本研究では、DAZLとCVHの抗体を用いて、DAZLの細胞内局在を細胞局在が認められているCVHと比較検討した。【方法】ニワトリ胚性腺のcDNAプールからCVHおよびdazlのcDNAを単離し、その情報をもとにしてCVHはその全長から、dazlはC端側の170アミノ酸残基からそれぞれ大腸菌を用いて作製した組換えタンパク質を抗原として、CVHはラットに、DAZLはウサギに免疫した。それぞれ麻酔下で全採血を行い、血清を分離した後、DAZL抗体はさらにアフィニティーカラムで精製した。精製抗体を用いて蛍光免疫組織化学を行った。【結果】CVHとDAZLの抗体を用いて胚日齢7日、15日、ならびに1ヶ月齢の精巣および卵巣をサンプルとした二重免疫染色を行った結果、胚日齢15日までの性腺では、両性腺ともにCVHとDAZLの発現が同一細胞の細胞質で確認されたが、すべての生殖細胞がすでに減数分裂期に入っている1ヶ月齢の卵巣ではDAZLの発現が完全に消失していた。一方、1ヶ月齢の卵巣では、CVHが発現している卵母細胞と発現のない細胞が観察された。1ヶ月齢の精巣ではDAZLが発現している細胞と発現のない細胞の両方が見られたが、雄性生殖細胞ではいずれもCVHの発現が認められた。以上、第一次減数分裂期を境にして、DAZLとCVHの分布に相違があることから、DAZLとCVHの機能には時期特異性が考えられる。
  • 星野 由美, 佐藤 優介, 坂井 知津香, 佐藤 英明
    セッションID: OR1-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】mTOR (mammalian target of rapamycin) は、細胞の分裂や成長、生存における調節因子として役割を果たしていることが知られている。これまでに我々は、マウスの卵成熟過程においてmTORとその関連タンパク質が発現することを報告した。本研究では、マウス卵成熟においてmTORが果たす役割とその作用メカニズムについて解析した。【方法】ICRマウスからGV期の卵丘細胞-卵子複合体(COC)を採取した。卵成熟を同期化するため、COCは300μM dbcAMPを添加したWaymouth’s MB 752/1で18時間培養した。体外成熟はFSH およびhypoxanthineを含むWaymouth’s MB 752/1を成熟培地として、培養8,18時間にそれぞれGVBD、MII期への進行を判定した。mTOR阻害には、rapamycinまたはPI-103を用いた。mTORおよびその関連因子の発現は、免疫蛍光染色法およびウエスタンブロット法により解析した。【結果】 mTORはGV期卵子の細胞質と卵丘細胞で発現していた。dbcAMP添加培地にmTOR阻害剤を加え、COCを18時間培養したところ、核相はGV期で停止していたが、卵丘細胞の膨化が観察された。その後、成熟培地に移して培養を継続したところ、阻害剤添加区において培養8時間で第一極体を放出した卵子が観察され、核相の進行が早まる結果となった。mTOR阻害剤を添加したFSH無添加培地でCOCを18時間培養したところ、卵丘細胞の膨化が観察され、コントロールと比べて高いMII期率を示した。【考察】本研究では、mTORを阻害することにより卵丘細胞が膨化し、卵成熟が進行することを示した。卵丘膨化は、FSHなどのゴナドトロピン刺激を受けて、ヒアルロン酸が蓄積することによりもたらされるが、本研究の結果から、ヒアルロン酸合成・蓄積の上流ではmTORが機能し、卵丘細胞の膨化と卵成熟の開始を制御していることが明らかになった。
  • 佐藤 優介, 星野 由美, 坂井 知津香, 佐藤 英明
    セッションID: OR1-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】我々はこれまでに、Akt/protein kinase Bがマウスの卵成熟過程で特異的に発現し、減数分裂の完了に関与していることを報告した。AktはGV期からMII期にかけて一定レベルで発現し、局在のみが変化するタンパク質であるが、減数分裂再開における役割は明らかでない。本研究では、GV期からMI期への進行におけるAktの役割について解析した。【方法】3週齢のICR雌マウスにPMSGを腹腔内投与し、48時間後に卵巣より卵丘細胞-卵子複合体を採取した。体外培養は、FSHおよびhypoxanthineを含むWaymouth’s MB培地にAkt活性阻害剤であるAkt inhibitor X(Calbiochem)を0、2.5、5および10µM添加して行った。減数分裂再開時のAkt活性と阻害剤の影響は、培養0~7時間で観察した。活性阻害による影響は、核相の進行とその後の体外受精・体外発生(IVFC)で評価した。Aktの発現は免疫蛍光染色法とウエスタンブロット法により解析した。さらに、Aktと微小管との関係を調べるため、免疫沈降法により解析した。【結果】Akt活性はGVBDの出現に伴って低下した。Akt阻害剤添加区では、濃度依存的にGVBDおよびMI期への進行が早まったが、培養18時間後の成熟率に差は見られなかった。MII期に到達した卵子をIVFCに供したところ、阻害剤添加区において受精後の発生率が低かった。さらにAktは紡錘体上に局在し、MI期においてはα-tubulinと結合していた。【考察】本研究の結果、Aktは紡錘体の形成・維持に関与する可能性が示された。さらに、活性阻害により核相の進行が早まったことから、AktはGV期からGVBD、さらにMI期への核相の移行期間を引き伸ばし、核成熟の進行を調整する役割を持つことが示された。核相の進行に要する時間は、受精後の胚発生に重要であり、Aktは核と細胞質の成熟に積極的に関与している可能性がある。
  • 李 智博, 大串 素雅子, 斎藤 通紀, 平野 達也
    セッションID: OR1-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】哺乳類の体細胞分裂では、コンデンシンIとコンデンシンIIと呼ばれる蛋白質複合体が染色体の形成に主要な役割を担うことが知られている。配偶子形成を目的とする減数分裂では、その第一分裂で一対の相同染色体が二価染色体を形成し、分裂後期に分離する。コンデンシンIとIIが減数分裂期においても染色体形成に関与するかどうかを知るための手がかりとして、我々は、前回大会において、それらのマウス卵母細胞における動態を報告した。本研究では、さらにそれらの役割を明らかにするため、卵母細胞への抗体の顕微注入による機能撹乱実験を試みた。【方法】3週齢の雌マウスにPMSGを投与して、45時間後に採取した卵核胞期の卵母細胞を実験に供した。卵母細胞に異なるコンデンシンサブユニットに対する抗体を顕微注入後、体外で成熟培養を行なった。顕微注入した抗体の局在を固定後に二次抗体を用いて検出するとともに、卵母細胞の染色体を共焦点顕微鏡で観察した。【結果】control IgGを顕微注入した卵母細胞では、16時間の成熟培養後には、ほとんどのものが第二減数分裂中期へと成熟した。これに対し、コンデンシンIとIIの共通サブユニット(mSMC2)に対する抗体を顕微注入した卵母細胞では、正常な第二減数分裂中期への進行が阻害された。これらの卵母細胞では、抗体量に依存して、mSMC2の過剰な染色体への凝集が観察されるようになり、キネトコアの配向や染色体の形成・分離に異常が見られた。一方、コンデンシンI (mCAP-H)やコンデンシンII (mCAP-D3)の抗体を顕微注入した場合には、前者ではコンデンシンIがセントロメア周辺部へ過剰に凝集し、後者ではコンデンシンIIの染色体への局在が阻害された。また、両者に共通して染色体の形状(凝縮度)に異常が見られた。以上の結果から、2つのコンデンシン複合体は、哺乳類減数分裂においても、正常な染色体の構築に必要であることが示唆された。今後は、コンデンシンIとIIの減数分裂における役割をさらに明確にするため、siRNA等を利用した発現抑制実験を行なう予定である。
  • 高橋 昌志, 山中 賢一, アハメド バルボウラ, 阪谷 美樹, 永井 卓
    セッションID: OR1-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    [目的]初期胚を含む細胞内の還元環境維持グルタチオン(GSH)は重要な役割を持つことが知られている。非必須アミノ酸であるシステイン(Cys)はGSH合成、代謝に必須であり、かつ合成反応の律速を果たすが、その供給源としてのシスチン(CyssCy)の外部からの取り込みが重要な因子であることが知られている。我々は、牛胚では各ステージでCyssCy取り込み能が低く、チオール添加による還元作用により胚内に取り込まれGSH合成に使われることを既に報告している。CyssCyの細胞内取り込みにはNa非依存性・酸性アミノ酸輸送系xC-に属するxCTと4F2hcの二両体が主要な輸送体であり、特にxCTがCyssCy取り込みに関わることが報告されているが、牛生殖細胞や初期胚での発現動態は不明である。本研究では牛生殖細胞における両サブユニットの検出を行った。[方法]個体耳より採取、培養した牛線維芽細胞、と場より採取した卵丘細胞、成熟卵子、day1 、day2、 day4、day6およびday8胚からRNAを抽出し、RT-PCRによってxCTと4F2hc遺伝子の発現動態を検出した。併せて、xCTの抗体を用いてタンパク質の蛍光検出を試みた。[結果及び考察]線維芽細胞および卵丘細胞を用いた検出では、xCTと4F2hc遺伝子の両者が検出された、また、細胞表明におけるxCTタンパク質の局在も併せて検出された。初期胚では、各ステージで4F2hc遺伝子の一定な発現が検出されたが、xCT遺伝子についてはday2からday4の時期の周辺で発現の低下が見られた。各ステージの胚におけるxCTタンパク質の局在については明確な変動は確認されなかった。以上の結果より、牛体細胞ならびに初期胚におけるxCTと4F2hc遺伝子の発現が初めて確認された。また、初期胚においては、発生ステージに伴う4F2hc とxCT遺伝子発現のパターンに違いが見られたが、胚で既に観察されているシスチン低利用性と関連については明確ではなかった。このため、xC-アミノ酸輸送系の遺伝子発現とタンパク質機能との相違も示唆された。
  • 大谷 光弘, 今井 裕, 山田 雅保
    セッションID: OR1-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】マウス胚の体外培養において胚盤胞のhatching率がアミノ酸を培地に添加することによって、あるいは胚の培養密度を高くすることによって上昇することが知られている。これまでに我々は、脱イオン化した血清アルブミンを培地に添加することで胚盤胞のhatchingと胞胚腔の拡張と維持が促進される事を見出した。そこで本研究では脱イオン化処理ヒト血清アルブミン(d-HSA)を用い、それが胚盤胞のhatchingと胞胚腔の維持にどのような効果を持つのか詳細に検討した。【方法】ddY系雌マウスからhCG投与後20時間に採取した前核期卵をKSOMで2細胞期まで発生させた。その後、2細胞期胚をアミノ酸(AA)、0.3%d-HSAあるいは0.3%CNBr処理d-HSAを添加したEDTA不含KSOM、または無添加培地(control)に移し、group(10 embryos/50μl)あるいはsingle(1 embryo/50μl)の条件で培養した。その培養開始後3日から5日の間にhatchingを起こす胚の割合と胞胚腔を拡張した状態で維持する胚の割合を求めた。【結果】controlではほとんどhatchingしなかった(group: 3.3%, single: 0%)のに対し、AAとd-HSAではhatching率が有意に上昇した。しかし、AAではgroupで70.0%がhatchingしたにもかかわらずsingleでは42.9%と有意にhatching率が低下した。このことからhatchingには胚由来の因子が関与していることが示唆される。一方、d-HSAではgroup(62.5%)とsingle(71.4%)でhatching率に差は見られなかった。さらに、培養開始後5日目における拡張胚盤胞の割合はd-HSA処理ではgroupとsingleともに100%であったが、controlとAAではgroupとsingleともに胞胚腔は萎縮し、その割合は有意に低下した(control-group:66.7%、single:51.7%、AA-group:50%、single:31.4%)。さらに、d-HSAをCNBrによって限定分解してもそのhatching促進効果と拡張した胞胚腔の維持効果は全く失われることは無かった。以上の結果から、HSAは胚盤胞の形態と機能に対して促進効果を有することが明らかとなり、さらにその効果はその特定のペプチド領域により発揮されることが強く示唆される。
  • バルボウラ アハメド, 山中 賢一, 阪谷 美樹, 高橋 昌志
    セッションID: OR1-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    Recently, the amount of cathepsins transcripts in cumulus cells is known to be correlated inversely with the developmental competence of bovine oocytes. Moreover, the Inhibition of cathepsin B during in vitro maturation (IVM) of bovine COCs was found to be associated with high developmental rate. In the present study, we investigated the impact of cathepsin B inhibitor (E-64) addition to in vitro culture (IVC) medium on development and quality of bovine preimplantation embryos. After IVM of cumulus oocyte complexes (COCs), followed by in vitro fertilization, zygotes were cultured with or without E-64 for 7 days. Cleavage and blastocyst rates were evaluated on days 2 and 7, respectively. Embryonic quality was evaluated by both total cell number and TUNEL of day 7 blastocysts. Addition of E-64 during IVC significantly increased both the blastocyst rate and the total cell number. TUNEL staining revealed that inhibition of cathepsin B significantly decreased the number of apoptotic nuclei in day 7 blastocysts. These results indicate that inhibition of cathepsin B during IVC greatly improves the developmental competence of preimplantation embryos and increases the number of high quality embryos.
  • 溝部 大和, 吉田 光敏, 三好 和睦
    セッションID: OR1-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】一般的に、哺乳動物初期胚の体外培養に用いられる培地の浸透圧は、卵管液のそれと比較して低い値に調整されている。卵管液中では、いくつかのアミノ酸が初期胚を高浸透圧から保護していると考えられている。そこで本実験では、ブタ卵管液に高濃度(4.1mM)で含まれているグリシンが、通常の浸透圧あるいは卵管液と同等の浸透圧を持つ培地中におけるブタ卵子の単為発生に及ぼす影響について調べた。【方法】超音波照射により活性化したブタ体外成熟卵子を種々の条件下で培養し、2日後に卵割状況および7日後に胚盤胞形成状況を観察した。実験1:卵子をmPZM-3(0.1mMのグリシンを含む;浸透圧:273mOsm)あるいはNaCl濃度を108mMから138mMに増加したmPZM-3(mPZM-3+NaCl;浸透圧:326mOsm)に移して培養した。いずれの培地においても、4mMのグリシンを添加する区および添加しない区を設けた。実験2:卵子を0、1、2、4、6あるいは8mMのグリシンを添加したmPZM-3+NaClに移して培養した。【結果】実験1:卵割率は、グリシン添加の有無に関わらず、mPZM-3+NaCl区(77.5~82.2%)においてmPZM-3区(49.0~51.8%)よりも有意に高くなった(P<0.01)。胚盤胞形成率は、グリシンを添加したmPZM-3+NaCl区(23.3%)において他の区(12.3~15.9%)よりも有意に高くなった(P<0.01)。実験2:卵割率(72.7~78.1%)はグリシン濃度の影響を受けなかった。胚盤胞形成率は、4mMの区(34.8%)において他の区(13.5~20.1%)よりも有意に高くなった(P<0.01)。【考察】卵管液に含まれている濃度のグリシンは、ブタ卵子のmPZM-3中における単為発生には影響を及ぼさないが、mPZM-3+NaCl中における単為発生を改善することが示された。
  • 千本 正一郎, 吉岡 耕治, 淵本 大一郎, 岩元 正樹, 鈴木 俊一, 大西 彰
    セッションID: OR1-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】第2減数分裂中期のブタ卵母細胞を人為的に活性化すると発生を開始する。この雌核単為発生胚には、活性化後に第2極体を放出して染色体数が1nとなる胚と、放出せずに2nとなる胚がある。これらに加えて、極体の放出を抑制した第1減数分裂中期のブタ卵母細胞(4n)は発生能を有することを、我々は第101回本大会において報告した。本研究では、これら倍数性の異なる1n、2n、4nの雌核単為発生胚の初期発生能を比較した。【方法】ブタ卵巣から吸引・採取した卵母細胞を修正NCSU37中で成熟させた。成熟培養35時間後、卵母細胞を5μg/mL cytochalasin B (CB)添加NCSU37で6~7時間培養した後、CB無添加NCSU37に移して成熟51時間後まで培養した。成熟培養後、極体を持たない卵母細胞のみを選別し、電気刺激により活性化処理した(CB処理卵)。同時に、NCSU37中でCB処理せず成熟させた卵母細胞のうち、第1極体を放出した卵母細胞のみを選別して活性化処理した(CB無処理卵)。活性化後、CB処理卵をCB添加PZM5に移して5時間培養後、極体のない胚(0PB胚)のみを6日間 PZM5で培養した。また、CB無処理卵を任意に2群に分け、一方をCB添加PZM5で、他方をCB無添加PZM5に移して5時間培養後、CB処理区は極体が1つのもの(1PB胚)を、CB無処理区は極体が2つのもの(2PB胚)をそれぞれ選別、培養した。これら0、1、2PB胚の発生速度および胚盤胞形成率を観察した。また、活性化3日後に卵割した0、1、2PB胚をそれぞれレシピエントブタに移植し、胎仔形成能を調べた。【結果】活性化4日後、0PB胚では胚盤胞期胚が見られたのに対し、1 PB胚および2PB胚では5日後以降になって観察され始めた。活性化6日後の胚盤胞期胚の総細胞数は2PB胚>1PB胚>0PB胚の順に多くなる傾向であった。活性化21日後、2PB、1PB、0PB胚いずれも子宮内に胎仔が観察された。
  • 申 承旭, 野老 美紀子, 西川 慧, 李 香欣, 畑中 勇輝, 天野 朋子, 三谷 匡, 加藤 博己, 安齋 政幸, 岸上 哲士, 佐伯 ...
    セッションID: OR1-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】受精後母性-胚性移行時期に伴う母性タンパク質の崩壊は核のリプログラミングや胚の全能性獲得の様に、胚発生において最も重要な時期だと考えられる。しかし、この時期における生理学的分子メカニズムはまだ明らかになっていないが、一つのカギとしてユビキチン-プロテアソーム系が関与していると考えられる。現在まで我々は、DD2-2がプロテアソームの形成に関与しているPOMP(proteasome maturation protein)と相互作用していることと、DD2-2やPOMPをノックダウンした場合、胚発生が1細胞期や2細胞期で遅延・停止することを明らかにしている。これらのことからDD2-2がプロテアソームの形成に関与する可能性が示唆された。本実験では、DD2-2やPOMPをノックダウンした胚におけるユビキチンとCyclin B1の変化を検討した。【材料及び方法】pβact/antisense-DD2-2/IRES/EGFP/SV40pCAG/antisense-POMP/IRES/Luc+-N3をそれぞれ受精後7時間に雄性前核にマイクロインジェックションを行った。それと同時間にコントロールとしてプロテアソーム阻害剤(MG132)処理を行った。処理14時間後、胚をサンプリングし、ユビキチン抗体を用いてウェスタンブロットを行った。さらに、DD2-2やPOMPをノックダウンした胚とMG132処理した胚を細胞周期依存的にサンプリングを行い、Cyclin B1抗体を用いてCyclin B1がどの様に変化するのかを検討した。【結果及び考察】DD2-2やPOMPをノックダウンした胚はMG132を処理した胚と同様に無処理区に比べユビキチン化されたタンパク質が多く残っていることが明らかになった。さらに、Cyclin B1はDD2-2やPOMPをノックダウンした胚とMG132処理をした胚が同様に分裂期前期(受精後17時間)以後に分解されずに蓄積されていることが明らかになった。ノックダウンした胚においてプロテアソームが形成されなくなり、ユビキチン化されたタンパク質が分解されずに蓄積されたと考えられる。以上のことから、マウス初期胚におけるDD2-2はプロテアソームの形成に関与する可能性が高くなった。
  • 上原 一彦, 太田 博巳
    セッションID: OR1-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】コイ科の淡水魚イタセンパラ(Acheilognathus longipinnis)の胚は、秋の受精から約7ヶ月間の発生期間があり、その間に生息地の水温は大きく変化する。一般に魚類を含む変温動物の場合、奇形や生残率の低下を起こさないように胚発生は一定温度下で管理される。しかし、イタセンパラの受精卵は一定の飼育温度では決して浮上期まで生存することはない。これは本種が自然環境下で大きな温度変化を受けているためと考えられる。そこで、受精卵が各発生ステージに到達するのに必要な温度を調べ、環境温度と胚発生の進行との関係について検討した。
    【方法】5~30℃の一定温度下で受精から孵化、発眼、浮上までの各発生ステージへの到達率を調べた。次に、ステージごとに次のステージに到達するために必要な温度条件を調べた。これらの結果をもとにそれぞれのステージの胚に必要な温度変化を与え、発生を観察した。
    【結果】5℃から30℃まで5℃刻みの温度で人工授精を行い、そのままの温度で胚を発育させたところ、いかなる温度で管理した胚も浮上期まで生存しなかった。そこで、胚がそれぞれの発生ステージに達した後、種々の一定温度下で飼育して生残率を調べたところ、受精・ふ化:15~25℃、ふ化と発眼の間:5℃、発眼:10~15℃,浮上:20~30℃で最も高い値を示した。これら各ステージの要求温度は、生息池の環境温度の変化に対応していた。次に上記の要求温度を胚発生の進行に合わせて段階的に与えると、70%の胚が浮上期まで発育した。このように、本種の胚発生を正常に進めるためには、ふ化後発眼に至る過程で大きく温度を変化させ、5℃程度の低温を一定期間継続させることが必須条件であることが明らかとなった。これらの結果から、本種は胚発生期間においてさえも環境温度に適応進化し、発生を規定する遺伝子の発現が温度によって調整されている可能性が考えられた。また、胚発生時期に低温要求性を有する野生動物種では、今後の温暖化によって絶滅に陥るリスクが高い可能性が示唆された。
臨床・応用技術
  • 松浦 宏治, 山下 佳佑, 黒田 ユカ, 舟橋 弘晃
    セッションID: OR1-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】精子の受精能を評価するためには、「運動率」および「直進運動性」を顕微鏡下で計測する方法が一般的である。しかし、ブタ精子はガラスやプラスチックに吸着し、著しく運動性が損なわれるために、運動軌跡の正確な記録が出来ず、受精率に関与する直進運動性の評価が難しかった。顕微鏡下で軌跡を正確に記録するためには、精子が吸着せずかつ透明な材料を使用する必要がある。今回、シリコンエラストマープレパラートを使用した場合、直進運動性が著しく損なわれること無く運動軌跡を測定・記録が可能となった。 【方法】ブタ精液のTL-HEPES-PVAによる5倍希釈液のプレパラートを作製した。作製直後の運動率は約90%であった。今回、ガラス製とシリコンエラストマー(Polydimethylsiloxiane:PDMS)製の二種類のプレパラートを比較した。精子の運動軌跡記録・解析は、10倍のBMレンズ(ニコン)を装着した顕微鏡像をSperm Motility Analysis System(SMAS)(加賀電子)を使用してプレパラート作製直後と15分後に行った。 【結果】ガラスの場合15分後にはほとんどの精子が吸着したが、PDMSの場合は一部のみの吸着が見られた。直進運動速度分布については、作製直後は34.3(μm/sec)、ガラス15分後は7.9(μm/sec)、PDMS15分後は33.3(μm/sec)であった。作製直後とPDMS15分後のデータ間に有意差は得られなかった(P>0.05)。平均頭部振幅は、作製直後5.4(μm)、ガラス15分後2.1(μm)、PDMS15分後3.7(μm)であった。精子頭部の吸着により直進運動性が著しく損なわれることが定量的に確認された。また、PDMSにマイクロ構造体を転写できるため、マイクロルーラーを転写したPDMSプレパラートを用いれば、運動軌跡解析システムが無くても直進運動速度を定量的に評価できる。
生殖工学
  • 櫻井 敏博, 唄 花子, 金野 俊洋, 麻生 久, 山口 高弘, 今川 和彦
    セッションID: OR1-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究は、トロホブラスト細胞特異的に発現するホメオボックス転写因子CDX2の役割を解明し、妊娠成立機構の新たな手がかりを見出すことを目的とする。CDX2は卵割期から胚全体に発現し始め、胚盤胞形成期にはトロホブラスト特異的に発現する。我々は、反芻動物のトロホブラスト細胞においてCDX2がインターフェロン・タウ(IFNT)遺伝子の転写に関与することを見出している。CDX2は、トロホブラスト細胞のみならず、胃や腸などの消化管にも発現しているが、IFNTは着床前のトロホブラスト細胞でのみ時限的かつ限局的に発現する。【方法】そこで、CDX2を発現するウシ・トロホブラスト細胞株CT-1およびウシ腸管上皮細胞株BIEを用いて、IFNT発現への作用機序を含めたCDX2の役割の相違について検討した。また、CDX2を発現していない耳由来線維芽細胞EFへのCDX2強制発現系を用いても同様に検討した。【結果と考察】EFへのCDX2強制発現系において、CDX2がIFNT遺伝子上流域のCDX2結合コンセンサス配列に結合し、コアクチベーターであるCBPをリクルートすることにより、IFNT遺伝子座のクロマチン構造を弛緩させることを見出した。しかしながら、EFへのCDX2強制発現だけでは、IFNTの発現は見られなかった。また、CT-1、BIE両細胞に対し、抗CDX2抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChlP)スクリーニングを行い、CDX2の標的遺伝子を同定した。その結果、solute carrier familyなどCT-1、BIEに共通したCDX2の標的遺伝子が確認できた。しかしながら、ChlPスクリーニングからは、IFNTのプロモーター領域は含まれていなかったため、現在、ChIPスクリーニングを再検討している。これらの知見は、CDX2は、その標的遺伝子のクロマチン構造を弛緩させることにより、標的遺伝子の発現を制御していること、さらに、CDX2以外のトロホブラスト細胞に特異的に発現する転写因子がIFNTの発現に関与している可能性を示唆した。
  • 柳田 絢加, 崔 泰生, 今川 和彦
    セッションID: OR1-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】トロホブラストは胚盤胞の外側に位置し、胚の発生・着床・胎盤形成に重要な働きをする細胞である。しかしその分化や機能等、未だ分かっていない事が多い。多能性分化能を持つTS(trophoblast stem)細胞がトロホブラストから樹立され、非常に有効な実験ツールとして期待されるが、樹立されている動物種が限られている上、受精卵が必要であるという倫理的問題が残っている。そこで本研究は、受精卵を使わず、また多様な動物での発生・胎盤研究を行う事を目指し、体細胞より樹立されたマウスiPS細胞からTS様細胞へ分化させる事を目的とした。 【方法】実験にはマウスの尾由来の細胞にNanog Oct3/4Sox2を導入し樹立されたiPS細胞を用いた。桑実胚から胚盤胞へ発生が進む際、トロホブラストへの分化に重要な働きをする転写因子Cdx2をiPS細胞に強制発現した。その後、培養条件をLIF添加から、TS細胞培養条件下(70%コンディションメディウム(CM)にFGF4とHeparinを添加)に変えて培養を行った。分化誘導して得られ細胞をiPS細胞・TS細胞を指標とし、形態、TS細胞特異的遺伝子のmRNA、TROMA1Cタンパクの発現有無を評価した。なお、コントロールにマウスES (embryonic stem)細胞を用いて同様の実験を行った。 【結果】iPS細胞にCdx2を強制発現し、70%CM(FGF4・Heparin添加)で培養すると、細胞の形態変化が観察できた。また、PCRにてTS細胞特異的な遺伝子Eomes、PL-1、Hand1等のmRNAの発現を確認した。さらに蛍光免疫染色にて、Cdx2を強制発現したiPS細胞でTROMA1Cの発現が観察された。以上の事から、iPS細胞がTS様細胞に分化した可能性がある。また、iPS細胞へのCdx2強制発現、FGF4・Heparinの刺激はTS様細胞への分化に重要な働きをしている事を示唆した。
  • 築山 智之, 浅野 良太, 南 直治郎, 山田 雅保, 今井 裕
    セッションID: OR1-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、iPS細胞の樹立が報告されたことで、再生医療への道が大きく開かれた上、創薬や病態解明への応用に向けた研究が精力的に進められている。この技術を発生工学に応用する場合、マウスES細胞様のジャームライントランスミッションするiPS細胞を樹立する必要があるが、マウス以外の種においては未だ樹立されていない。本研究においては、ブタの細胞をモデルとして用い、iPS細胞を樹立し、培養条件を最適化するための系の作出を試みた。【方法】ブタの胎仔もしくは成体組織由来の線維芽細胞に、Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの4遺伝子をレトロウイルスで導入し、SNLフィーダー細胞上に継代した後、血清を含まないヒトES細胞培地もしくはマウスES細胞培地で培養を行い、出現したES細胞様のコロニーをピックアップした。この際、ピックアップの前後にMek/Erk阻害剤、GSK3阻害剤、Alk5阻害剤を様々な組み合わせで培地中に添加して細胞状態の変化を検証した。樹立されたiPS細胞株は、RT-PCR法、ウェスタンブロッティングおよび免疫蛍光染色により未分化マーカーの発現を調べ、バイサルファイトシークエンス法によりDNAメチル化状態を調べた。また、胚様体形成およびテラトーマ形成により多能性の有無を検証した。【結果および考察】4遺伝子の導入後、特定の培養条件下で細胞培養することにより、ES細胞様の形態を示すブタiPS細胞を樹立できることが明らかとなった。これらの細胞株は、形態のみならず、分子的な要素も、ES細胞様に変化していることが示唆された。しかし、血清や増殖因子・化学的阻害剤を含まない条件ではこのような細胞は得ることができず、4遺伝子の導入のみでは多能性幹細胞の樹立には至らないことも明らかとなった。これらより、本実験で用いた系は、今までES細胞が得ることができなかった様々な動物種の多能性幹細胞株樹立に向け、その培養条件を検討するための実験系として有用であると考えられる。
  • 藤原 摩耶子, 金 聖民, 南 直治郎, 山田 雅保, 今井 裕
    セッションID: OR1-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Gonocyteは幼若期の精巣中に存在する生殖細胞であり、精原幹細胞と同様に多能性幹細胞としての性質をもつ。本実験では、幼若期から性成熟後までの精巣内の生殖幹細胞について、その特異的マーカーによって発現動態を観察するとともに、Gonocyteの体外培養の可能性について検討した。 【方法】生後1週齢、性成熟期、性成熟後のウシ精巣組織の一部を固定し、生殖細胞マーカーであるDBA、UCHL1、DDX4、また、幹細胞マーカーであるNANOG、POU5F1について免疫染色を行った。一方、体外培養のために、1~2週齢の精巣からGonocyteを単離した。その後、10%FBSを含むDMEM/F12培地で培養し、培養4日から7日目に継代を行うとともに、生殖細胞マーカーと幹細胞マーカーの発現を検討した。 【結果と考察】Gonocyteは生後1週齢から3か月齢まで精細管内中央に位置し、大きな核をもっていた。生殖細胞マーカーで免疫染色した結果、DBA、UCHL1、DDX4に陽性、幹細胞マーカーであるNANOGにも陽性であった。5か月齢以降になると、これらの発現を保持したまま基底部へ移動し、精細管内の細胞数は増加した。性成熟後には、基底膜上の幹細胞は幼若期と同様のマーカーを継続的に発現するが、分化細胞ではDBAとUCHL1の発現は低下した。 1~2週齢の精巣由来のGonocyteを体外培養したところ、3日目には不定形の細胞塊を形成し、DBA、UCHL1、DDX4に陽性、NANOGやPOU5F1にも陽性であることが確認された。これらの細胞を継代すると、上記と同じマーカーに陽性を示すコロニーが現れた。これらのコロニーは少なくとも継代6回目まで観察され、BrdU染色によって細胞増殖を確認し、POU5F1遺伝子の発現も維持されていた。 以上のことから、幼若期ウシ精巣中のGonocyteはDBAやUCHL1と同様にDDX4にも陽性であり、成長因子を添加することなく、少なくとも継代6回目までは幹細胞の性質を維持したまま培養が可能であった。また、免疫染色の結果から、5か月齢以降の精巣では、精細管基底部に定着した生殖細胞はGonocyteと同様の生殖細胞マーカーを維持していることが観察された。
  • 福永 直人, 竹原 俊幸, 寺村 岳士, 中野 美穂, 岸上 哲士, 松本 和也, 佐伯 和弘, 細井 美彦, 入谷 明
    セッションID: OR1-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】胚性幹細胞(embryonic stem cells; ES細胞)は、各系譜の細胞へと分化可能な分化多能性を有しており、体外における生殖細胞系の細胞への分化誘導も報告されている。生殖細胞への分化誘導は、生殖細胞形成機構の解明にとって重要であり、生殖医療の更なる発展に貢献することが期待される。現在までに、ES細胞を用いた生殖細胞への様々な分化誘導実験が行なわれているが、生殖細胞の誘導に必須な因子やメカニズムについては未知の点が多く、また、再現性や効率に優れた方法は確立されていない。本実験では、カニクイザルES (cynomolgus ES;cyES)細胞を用い、マウスPGCの生存・維持に有効なLeukemia inhibitory factor(LIF)が生殖細胞分化に及ぼす影響について検討した。 【方法】Franklinらが開発した平面培養系を元にcyES細胞を分化、培養し、LIF添加の影響をReal-timePCR、ALP染色、免疫染色を用いて観察した。 【結果】LIF添加区では、生殖細胞関連遺伝子であるVasaの発現が有意に上昇し、ALP陽性の細胞塊が形成された。また、免疫染色により、未分化細胞・生殖細胞マーカーであるOct4の発現に加え、霊長類初期PGCマーカーであるSSEA-1の発現が確認された。 【考察】LIFを使用した分化誘導系を用いることでPGC様の細胞が誘導可能であり、生体内と類似した遺伝子発現パターンを有することが示唆された。本研究で用いた培養系は知見の少ない霊長類生殖細胞形成のメカニズムに関与する因子の探索に、有効なモデルとなると考えられる。
  • 伊藤 俊介, 竹原 俊幸, 岸上 哲士, 佐伯 和弘, 松本 和也, 細井 美彦, 入谷 明
    セッションID: OR1-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    ESCsの大きな特徴である多能性・自己複製機構に対する分子生物学的研究は主にmESCsやhESCsを用いて行われてきた。多能性を規定する転写因子の発現による未分化維持は外的環境と適切な細胞内反応をもたらすシグナルが必要であり、その経路は種によって大きく異なる。このためESCsの未分化能、多分化能を規程するシグナル経路の特定は、細胞の多能性や未分化性、またESCs自身の特性の理解に繋がると予想される。しかしながら、現在までに未分化シグナルの研究はESCsが獲得されている極少数の動物種でしか行われていない。 実験動物としてのウサギは、体が大きくげっ歯類に比べて移植や観察に適しているだけでなく、生理学的特性からヒトに近しい。ウサギESCs(rbESCs)の樹立はいくつかの研究グループから報告されているが、すべての報告で結果が異なっており、その未分化維持機構についても不明なままであった。そこで我々は、今回rbESCs樹立を試み、加えて他種ESCsで未分化維持を助長するとされる因子に対するこれら細胞株の応答性を検討し、rbESCsにおける未分化維持シグナルの探索を行った。 我々はまずrbESCsの樹立を試み、50代以上に渡る継代培養が可能な細胞株を得た。この細胞株は各種未分化マーカーを発現し、継代培養後も正常な核型を有していた。さらに分化誘導環境に置くことで様々な細胞への分化が確認された。この細胞株に対する各種因子の影響を検討し、FGFおよびActivin AがrbESCsの未分化維持に関与することを明らかにした。
  • 川村 紘子, 川合 智子, 田口 善智, 安齋 政幸, 加藤 博己, 細井 美彦, 三谷 匡, 入谷 明
    セッションID: OR1-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】Side population(SP) 細胞は、幹細胞がHoechst33342を強力に排出する性質を利用した幹細胞識別法として注目されている。この責任分子であるABCトランスポーターファミリーに属するBcrp1では、Exon1に3つのisoform(isoform A、B、C)が存在し、造血幹細胞の分化過程において選択的な発現がある(Zong,Y et al., 2006)。そして我々はこれまでに、ES細胞ではisoform Aの発現が最も高いことを示してきた。そこで本研究では、Bcrp1過剰発現マウスES細胞を樹立し、ES細胞の分化過程に与える影響について検討した。【方法】野生型ES細胞およびBcrp1過剰発現ES細胞を13日間分化誘導し、未分化マーカー(Oct4, Nanog, Sox2 )、分化マーカー(Musashi1, Nestin, NF-M, HNF3β)およびBcrp1 mRNA isoformの発現状態をRT-PCRにより比較した。さらに未分化マーカーおよびisoformの発現量変化をqRT-PCRにより解析した。【結果・考察】野生型ES細胞において未分化マーカーの減衰が見られる時期においても、Bcrp1過剰発現ES細胞では未分化マーカーの発現が安定して認められた。またqRT-PCRの結果、Bcrp1過剰発現ES細胞では、isoform Aに関しても野生型ES細胞と異なる発現様式を示した。さらにBcrp1過剰発現ES細胞にで、複数の分化マーカーについて発現がやや遅れる傾向にあった。以上の結果から、Bcrp1はES細胞の未分化状態の維持に関与すること、さらにisoform Aの発現制御のメカニズムが未分化維持機構と何らかの関係を示す可能性が示唆された。
  • 大越 勝広, 立溝 篤宏, 松田 純一, 井上 玄志, 古澤 軌, 高橋 清也, 徳永 智之
    セッションID: OR1-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】演者らは、体細胞核移植技術を応用して遺伝子組換えシバヤギの作出に成功した(第98回繁殖生物学会)。今回、その遺伝子組換え雄シバヤギを交配して得られた後代雌ヤギ乳汁中に、目的物質であるヒトセレノプロテインPの分泌が確認されたので報告する。【方法】ヒトセレノプロテインP発現遺伝子断片(β-Cas-SelP/PGKpuro:ウシβカゼインプロモーターとヒトセレノプロテインP遺伝子を連結)を導入したシバヤギ雄胎子由来線維芽細胞を核移植して作出された雄ヤギ2頭を、延べ6頭の非組換え雌ヤギと交配させ、雄5頭、雌3頭の計8頭の産子を得た。このうち、雄4頭、雌2頭で導入遺伝子が確認された。導入遺伝子の確認された後代雌ヤギのうち春機発動が認められた1頭を、雄シバヤギと交配し分娩に至った。分娩日から2カ月目まで、乳汁と血清を定期的に採取した。なお、同時期に分娩した非組換え雌ヤギからも同様の期間、乳汁と血清を採取した。乳汁および血清中のヒトセレノプロテインP定量は、ELISA法により測定した。【結果】組換え後代雌では、分娩日から乳汁中にヒトセレノプロテインPの分泌が確認された(6.5ng/ml)。分泌濃度は、分娩後2日目に最大となり(15.2ng/ml)、その後は徐々に減少し、1週目で(2.7ng/ml)となった。以後、同様の濃度で推移し、2カ月目(6ng/ml)までの分泌が確認された。一方、血清中ではヒトセレノプロテインPは検出されなかった。
  • 梅山 一大, 渡邊 將人, 松成 ひとみ, 黒目 麻由子, 小川 武甲, 中野 和明, 藤原 主, 三木 敬三郎, 長嶋 比呂志
    セッションID: OR1-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は本学会第100回大会において、若年発症成人型糖尿病の原因遺伝子である変異型ヒト肝細胞核因子1α (HNF-1α)遺伝子を導入したトランスジェニッククローン(Tg-C)ブタが糖尿病の症状を発症することを報じた。本研究では、得られた Tg-Cブタの病態(表現形)の特徴を詳細に調べることを目的とした。また、異なるドナー細胞を用いて新たにTg-Cブタを作出し、産仔の表現形の再現性を確認した。【方法】ICSI-mediated法によって変異HNF-1α遺伝子を導入された、2匹のブタ胎仔繊維芽細胞の内、既報のTg-Cブタ(line-1)作出に用いたものと異なる細胞について、サザンブロッティングによる導入遺伝子コピー数ならびにFISHによる導入位置の解析を行い、さらにそれらを用いてTg-Cブタ(line-2)を作出した。Tg-Cブタline-1および2について、24項目の血漿生化学値の測定、インスリン投与への反応試験、病理組織像解析などを行い、対照の通常個体と比較した。【結果】試験対象とした4頭のline-1 Tg-Cブタ全頭が、生後18日以後、200mg/dL以上の随時血糖値を示した。血中1,5-anhydroglucitolが対照群に比べて低いことから、この高血糖状態は恒常的であったと診断された。インスリン(0.1u/kg)投与により、血糖値は一時的に低下(415から193 mg/dLへ)した。病理組織標本では、膵ランゲルハンス島の形成不全や腎糸球体の硬化・肥大が観察された。line-2ドナー細胞を用いて再構築されたクローン胚333個を3頭のレシピエントに移植した結果、1頭が妊娠し、4頭の産仔が得られた。35日以上生存した産仔1頭は、14日齢以降200mg/dL以上の高血糖状態を定常的に示した。【考察】作出したTg-Cブタの糖尿病モデル動物としての可能性が示された。遺伝子導入位置、コピー数ともに異なる2系統のドナー細胞から、同様の糖尿病態を発症する個体が得られた事から、この表現形が導入遺伝子による既存遺伝子の破壊ではなく、導入された変異HNF-1αの翻訳物質に由来すると考えられた。本研究はBRAINならびにJST/ERATO中内幹細胞制御プロジェクトの助成を受けた。
  • 松成 ひとみ, 渡邊 將人, 梅山 一大, 中野 和明, 藤原 主, 小川 武甲, 池田 有希, 春山 エリカ, 塩田 明, 長嶋 比呂志
    セッションID: OR1-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は本学会100回大会において、赤色蛍光蛋白humanized Kusabira-Orange (huKO)を全身性に発現するトランスジェニック(tg)ブタの作出を報告した。そのブタでは、肝臓での蛍光発現が、自家蛍光に妨げられることなく、極めて明瞭であることが分かった。そこで本研究では、huKOを肝臓特異的に発現するtgブタの作出を目的とした。【方法】BACクローン由来のブタアルブミン遺伝子プロモーター全長領域にhuKO遺伝子cDNAを連結したコンストラクト (約170kb)を、ICSI-mediated genet transfer法によって、ブタ体外成熟卵に注入した。超音波処理を施した凍結融解精子 (2-5 x 104個/µl)と導入遺伝子コンストラクト(0.5ng/µl)を5分間室温下で共培養後、MII期卵に顕微授精した。顕微授精は、電気的活性化刺激(DC150V/mm、 100µsec, 1回)を卵に付与し、20分以内に行った。受精卵をPZM-5培地で1-2日間培養後に発情同期化したレシピエント雌に移植し、founder産仔を作出した。tg個体(雌)を育成し、性成熟後にwild type雄と交配し、産仔を得た。tg個体をPCRにより同定し、生後78日齢にて剖検して、各臓器・組織(心臓、肺、胃、腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、皮膚)の蛍光発現を観察した。また、導入遺伝子の組織特異的発現をRT-PCRにより解析した。【結果】合計523個の顕微授精卵を4頭の雌に移植した結果、19頭の産仔が得られ、その内1頭(雌)がtg個体であった。この個体とwild type雄との交配によって、産仔全8頭中に4頭のtg個体(1頭死産)が得られた。生存仔3頭では、肝臓に明瞭な赤色蛍光発現が認められたが、他の臓器・組織では、蛍光発現は全く見られなかった。RT-PCR解析では、肝臓組織のhuKO遺伝子発現に対し、他組織では0.5-2.0%以下のレベルであった。【結論】アルブミンプロモーター全長領域を利用した導入遺伝子発現制御によって、肝臓特異的にhuKO遺伝子を発現するブタの作出が可能であることが示された。
  • 中井 美智子, 伊藤 潤哉, 佐藤 賢一, 野口 純子, 金子 浩之, 柏崎 直巳, 菊地 和弘
    セッションID: OR1-27
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    受精では、精子の卵活性化誘起因子(PLCζ)により、卵は活性化現象を起こす。しかし、ブタ卵細胞質内精子注入(ICSI)の場合、注入精子による十分な活性化は誘起されず、効率的に受精・胚発生を進行させるためには人為的活性化処理が必要である。本研究では、受精率向上のためICSI時に行われてきた精子の処理が、精子卵活性化誘起能に及ぼす影響を調べた。【方法】凍結-融解(FT)ブタ射出精子に、1) 超音波、2) 0.1% Triton-X-100への暴露、3) 耐凍剤を使用せずFTの3回反復処理を各々施した。対照区として無処理のFT精子を用いた。実験1では、ICSI 10時間後の前核形成率を調べた。実験2では、各処理精子のPLCζ量をWestern blotting (WB)法にて比較した。実験3では、精子希釈液中のPLCζの存在をWB法により確認した。実験4では、精子尾部の卵活性化誘起能を確認するため、尾部(Tail)、頭部(Head)、頭部と尾部 (Head+Tail)、ピペットのみ(Sham)を卵細胞質内へ注入し、10時間後の卵活性化状態を観察した。さらに、WB法により尾部のPLCζの検出を行った。【結果】実験1:対照区の前核形成率は、処理区より有意に高かった。実験2:各処理区精子のPLCζ量は、対照区に比べ有意に少なかった。実験3:処理区希釈液中のPLCζは、対照区よりも多く検出された。実験4:Head+Tail区の前核形成率は他区よりも有意に高く、他区間では有意差はなかった。しかし、Tail区およびHead区の前核形成には至らない活性化卵(anaphase-II, telophase-II, metaphase-III)の率は、Sham区に比べ有意に高かった。また、尾部においてもPLCζが検出された。【結論】以上の結果から、精子処理により、精子内のPLCζ量が減少し、卵活性化誘起能低下が引き起こされることが示唆された。また、精子尾部が卵活性化誘起に関与している可能性が示唆された。
  • 森 真菜実, 越後貫 成美, 井上 貴美子, 持田 慶司, 太田 昭彦, 小倉 淳郎
    セッションID: OR1-28
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    マウスの顕微授精技術は、受精・配偶子形成関連遺伝子の機能解明,老齢・幼若個体からの子孫作出、不動あるいは未成熟精子(精細胞)の利用などに極めて有用である。マウス顕微授精の効率は、用いる系統や精子の成熟度など多くの因子に影響されることが経験的に知られているが、科学的な統計分析はほとんど行われていない。我々はこれまでに、各マウス系統、精子成熟度(精巣上体精子、伸長精子細胞,円形精子細胞)、およびこれらの凍結の有無の3因子が顕微授精に与える影響についてデータを蓄積してきた(一部学会既報)。今回、これらのデータを統計学的に解析したので報告する。【材料及び方法】マウスは、ICR,DBA/2、C57BL/6、C3H/He、129+ter/Svの5系統を用い、卵子と精子(細胞)は同系統の組合せとした。また、円形精子細胞を用いた顕微授精では、あらかじめストロンチウムで活性化した卵子を用いた。すべて2細胞期で胚移植を行った。3因子のそれぞれの組合せについて3回以上の実験を行い、注入後の卵子の生存率、分割率、胚移植後の着床率、産子率についてarcsine transformation後に分散分析を行った。【結果】卵子生存率は、系統と細胞の種類に影響され、C3H/He 卵子および円形精子細胞が最も生存率が高かった。分割率は、細胞の種類に影響され、精子が最も成績が良かった。胚移植後の着床率と産子率も細胞の種類に影響され、伸長精子細胞が最も成績が良かった。実験を通した効率(産子数/注入卵子数)は,系統により精子あるいは伸長精子細胞が高く、一方すべての系統で円形精子細胞が低くなっていた。【考察】マウス顕微授精の効率は、注入から産子作出までの各段階において、3つの因子のいずれかが複雑に関与していることが明らかになった。近年、様々な遺伝的背景を持つ新たな実験用マウス系統が作り出されており、本実験の顕微授精の結果は、これらの系統の効率的な計画立案、実験遂行に役立つことが期待される。
  • 越後貫 成美, 井上 貴美子, 小倉 淳郎
    セッションID: OR1-29
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】マウス雄性生殖細胞の卵子活性化能は、伸長精子細胞から精子に成熟するにしたがって獲得されることが知られている。よって、まだ卵子活性化能を獲得していない円形精子細胞を受精に用いる場合は、卵子への人為的活性化処理が必須である。しかしながら今回、凍結保存した円形精子細胞を用いた顕微授精において卵子への人為的活性化処理なしで産仔が得られたので報告する。【方法】円形精子細胞は、精巣丸ごとあるいは7.5%グリセロール+7.5% FCS添加GL-PBSへの精細胞懸濁液として凍結保存を行った。精巣あるいは精細胞の融解後、細胞をGL-PBSあるいはNIM (K+-rich、Ca2+-free)に回収した。顕微授精は通常のICSIと同様に、円形精子細胞の卵子への注入により行った。一部の卵子については、顕微注入直後に共焦点レーザー顕微鏡を用いてFluo4-AMによる卵細胞質内Ca2+濃度測定を行った。【結果および考察】精巣凍結+NIM回収群を除き、いずれの実験群も高い卵子活性化率と産仔が得られた(ICR: 2-cell率75%、産仔率28% (23/ 81);C57BL/6: 同46%、11% (6/53))。一方、新鮮精子細胞を用いた場合は2-cell率は低く(12-24%)、胚移植後にも産仔は得られなかった。以上のことから、注入のみで活性化が起こる理由として、凍結融解操作による傷害によって外液中のCa2+が円形精子細胞に取り込まれている可能性が考えられた。しかし顕微注入後の卵細胞質内Ca2+濃度測定では、単一の上昇のみならず、オシレーションが観察される例もあり、その他の原因の可能性についても検討を行っている。
  • 井上 貴美子, 越後貫 成美, 幸田 尚, 佐渡 敬, 石野 史敏, 小倉 淳郎
    セッションID: OR1-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】体細胞核移植(SCNT)胚の低発生効率の一因はドナー核の不完全な初期化による遺伝子発現の異常にあると考えられる。本研究においては、クローン胎仔および胎盤の発生異常の原因を探り、SCNT効率改善の糸口をつかむことを目的に、単一SCNT胚盤胞の遺伝子発現を網羅的に解析した。【方法】核ドナー細胞として(1)B6D2F1卵丘細胞、(2)B6D2F1未成熟セルトリ細胞(3)(B6x129)F1未成熟セルトリ細胞を用いた。SCNT胚は注入法により作製し、KSOM培地で96時間培養した。対照区として両交雑系の体外受精(IVF)胚を作製し、同条件で培養を行った。単一の胚盤胞期胚からTRIzol処理によりtotal RNAを抽出し、T7 RNA増幅法によりmRNAを増幅後、Cy3ラベル化してWhole Mouse Genomeオリゴマイクアレイ(Agilent)にハイブリダイゼーションした。【結果】IVF胚との差次的遺伝子として3種類のSCNT胚に共通する224個の遺伝子が抽出された。内176個はIVF胚に比べて発現亢進、48個は抑制されていた。抑制遺伝子の多くはX染色体上に位置しており(22/48遺伝子)、X染色体と遺伝子発現抑制との明白な関連性が示唆された。これまでに、雌SCNT胚では活性X染色体(Xa)上Xist遺伝子が発現していることが知られているが(Baoら、2005)、今回、雄SCNT胚のXa上Xistも発現していることがわかった。そこで、Xist ノックアウト未成熟セルトリNT胚を作成し、発現解析を行ったところ、9/22のX染色体遺伝子がIVF胚と同レベルまで回復した。しかし胎盤異常(過形成)は改善しなかった。残りの13遺伝子は、X染色体上の特定の領域に遺伝子群として存在していた。今後は、これらの領域とクローン胎盤異常との関連を検討していく予定である。
  • 寺下 愉加里, 杉村 智史, 工藤 祐輔, 天野 良太, 平舘 裕希, 佐藤 英明
    セッションID: OR1-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年ミニブタは、体細胞核移植(SCNT)技術によるヒトに移植可能な臓器生産ミニブタの作出や、SCNT胚由来多能性幹細胞を用いた自家移植モデル系の構築が期待されている。しかしクローン作出効率は極めて低く、SCNT胚由来多能性幹細胞の樹立も報告されていない。この原因として胚盤胞期での低い品質が指摘されている。本研究では、ミニブタSCNT胚での集合法の有効性を評価した。【方法】ブタ未成熟卵母細胞を体外成熟培養し、体外受精(IVF)、単為発生(PA)、ミニブタ胎子線維芽細胞を用いたSCNTに供した。体外発生培養(IVC)培地にはPZM-3を用いた。1)IVFとSCNT胚において胚盤胞形成率を算出し、さらに二重染色法により内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)、免疫染色によりOct3/4陽性細胞を検出した。2)集合法に必須な透明帯除去がPA胚の発生に及ぼす影響を解析した。3)FBS添加が透明帯除去PA胚の発生に及ぼす影響を解析した。4)SCNT集合胚の発生能、胚盤胞期での品質を評価した。5)割球数を半減させたIVF胚盤胞期胚のOct3/4陽性細胞率を解析した。【結果】1)SCNT胚における胚盤胞形成率、ICMおよびTE細胞数、Oct3/4陽性細胞率は、IVF胚と比較し有意に低かった(P<0.05)。2)透明帯除去により胚盤胞形成率は有意に低下した(P<0.05)。3)一方、FBSを添加した場合、透明帯除去による悪影響は認められなかった。4)3個の胚を集合させたSCNT胚では総細胞数、2個の胚を集合させたSCNT胚ではICM細胞数、ICM細胞率及びOct3/4陽性細胞率が対照区と比較し有意に増加した(P<0.05)。5)IVF胚で総細胞数を減少させてもOct3/4陽性細胞率は変化しなかった。以上より、SCNT胚の集合は、Oct3/4陽性細胞率が増加した高品質胚盤胞の作製に有効であること、またOct3/4陽性細胞率の改善は増加した細胞数の直接的結果ではないことが明らかとなった。
  • 矢持 隆之, 竹原 俊幸, 伊藤 俊介, 中野 美穂, 岸上 哲士, 細井 美彦
    セッションID: OR1-32
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】 異種間核移植は絶滅危惧動物など配偶子を得ることが困難な動物種の繁殖技術のひとつとして期待されている。さらに、再生医療の研究材料の一つとして、異種間核移植胚由来胚性幹細胞の樹立が試みられている。 本研究では、カニクイザルの線維芽細胞とウサギ卵子を用いた異種間核移植を行い、その胚発生における特徴の解析及び胚性幹細胞の樹立を試みた。 【方法】 過剰排卵処理を施した成熟メスウサギより排卵卵子を回収し、除核後、カニクイザル耳介由来線維芽細胞核をドナーとして注入し、サル―ウサギ異種間核移植胚を作製した。得られたサル―ウサギ異種間核移植胚の初期胚発生における特徴として、ウサギ胚・カニクイザル胚それぞれの胚培養液を用いた発生の比較、胚の発生速度、胚盤胞期胚の細胞数、ミトコンドリアの状態などの特徴を解析した。さらに、得られた胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離・培養し胚性幹細胞の樹立を試みた。 【結果】 培養液の検討の結果、カニクイザルの胚培養であるmCMRL-1066+20%FBSを用いた場合でのみ胚盤胞期胚までの発生を確認することができた。一方、胚の発生速度や細胞数は、ウサギ核移植胚と類似していた。ミトコンドリアの状態は、核移植直後から胚盤胞期胚までカニクイザル・ウサギそれぞれのミトコンドリアが検出された。胚性幹細胞の樹立を試みた結果、細胞株の樹立には至らなかったものの、外見上は幹細胞様の初期コロニーが得られた。しかし、そのコロニーは継代後に増殖せず消失してしまった。 【考察】 胚盤胞期胚までの発生が観察された事から、ウサギ卵子がカニクイザル体細胞核をリプログラミングし初期胚発生をサポート出来る事が示された。さらに内部細胞塊から初期コロニーを得ることができた事から、胚性幹細胞を作出できる可能性が示された。しかし、継代後に細胞増殖が見られなかった事から、その培養条件などの改良が必要と考えられた。
  • 辻本 賀子, 岸上 哲士, 竹原 俊幸, 天野 朋子, 安齋 政幸, 加藤 博巳, 三谷 匡, 松本 和也, 佐伯 和弘, 入谷 明, 細井 ...
    セッションID: OR1-33
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    人工的な活性化方法は、体細胞核移植(SCNT)や円形精子細胞を用いた産子の作出(ROSI)に不可欠な技術である。現在までに、様々な卵子活性化剤が用いられてきたが、特にマウスのSCNTにおいては、Sr2+を用いた卵子活性化法が広く利用されている。この活性化方法では、培養液中にCa2+が含まれると活性化の効率が低下することから、従来はCa2+不含培養液中で行われていた。一方、我々は、カルシウムキレート剤EGTAを添加することでCa2+含有培養液においても効率よく活性化を行えること、またこの活性化方法を用いてSCNTによりクローン産仔を得られることをBDF1系統マウス卵子を用いて明らかにした。 本研究では、ICR系統マウス卵子を用いて、様々な培養液(mKSOM、M16、mCZB、TYH、Whitten)における同活性化方法の効率を調べるために活性化率の比較を行った。その結果すべての培養液において、Ca2+含有培養液にEGTAを添加したものの方が、従来の活性化方法よりも効率よく活性化を誘導することができた。また、EGTAの添加自体が活性化の効率を向上させたかどうか調べるため、Ca2+不含培養液中にEGTAを添加した場合において検討を行ったところ、Ca2+含有培養液にEGTAを添加したものより活性化率は低率ではあるが、従来の方法よりも卵子の変性率低下などの傾向が確認できた。 さらに、EGTAに代わり別のカルシウム選択的キレート剤であるBAPTAを用いて卵子活性化の効率を調べた。BAPTAは、EGTAと同等のCa2+への親和性を有している。EGTAで最も活性化率の高かったM16培養液でBAPTAの濃度を検討した結果、2-4mM添加が有効であることがわかった。しかしながらその活性化率やBDF1系統マウス卵子での発生率は、EGTAよりも低率であった。 これらの結果より、Sr2+による卵子の活性化にはカルシウム選択的キレート剤が有効であるが、効率的な活性化にはキレート剤の選択や濃度の検討が重要であることが示唆された。
  • 森田 真裕, 安齋 政幸, 西山 有依, 加藤 博己, 岸上 哲士, 細井 美彦, 三谷 匡, 入谷 明
    セッションID: OR1-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    【目的】体細胞核移植胚(SCNT)胚では、着床初期の段階で多くの胚が退行する。SCNT胚では、内部細胞塊特異的に発現する転写因子 Oct4の局在に異常が見られることが報告されている(Kishigami et al., 2006)。また栄養外胚葉(TE)特異的に発現する転写因子Fgfr2欠損胚では、胚盤胞期までは発生するが着床できずに死滅する。さらに我々は、Fgfr2の発現量がIVF胚と比較して、SCNT胚で有意に減少していることを見出した。これらのことからSCNT胚における発生初期の分化制御の異常がその後の急激な発生能の低下をもたらす要因になっていることが考えられた。そこで本研究では、FGF4がTEおよび栄養膜幹細胞の増殖・維持に不可欠であることに着目し、培養液中にFGF4を添加することによるクローン胚の発生に与える効果について検討した。【方法】ホスト胚にはB6D2F1マウス由来の卵子、ドナー細胞にはB6C3F1マウス由来の卵丘細胞を用いた。胚移植用レシピエントマウスには偽妊娠ICR雌マウスを用いた。また核移植は常法(Wakayama et al., 1998)に従い行った。細胞注入後54時間の4-8細胞期SCNT胚をFGF4存在下で培養し、桑実期、胚盤胞期への発生について検討した。さらに胚盤胞期胚の胚移植後の着床および産仔を検への発生能について検討した。【結果・考察】SCNT胚において、FGF4,25ng/mL、6時間添加区およびFGF4,50ng/mL、6時間添加区は、FGF4非添加区に比べ桑実期および胚盤胞期への発生率が有意に向上した(P<0.05)。以上の結果からFGF4はSCNT胚の初期発生、特に桑実期胚への発生に効果があることが示された。FGF4添加によるSCNT胚の着床および産仔への発生についてはトリコスタチンA(TSA)との併用も合わせて検討中である。
  • 福田  篤, 曹 峰, 森田 慎之介, 山田 かおり, 越後貫 成美, 井上 貴美子, 小倉 淳郎, 外丸 祐介, 河野 友宏
    セッションID: OR1-35
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】体細胞クローン動物に頻発する異常はゲノムリプログラミングが適切に行われないことに起因すると考えられている。現在までに、マウスクローン胚盤胞における未分化マーカー遺伝子等をはじめとした一部の遺伝子の発現異常が報告されているが、ドナー細胞種とクローン胚の遺伝子発現との関連については、十分に明らかにされていない。そこで、本研究ではセルトリ細胞、卵丘細胞及びES細胞を用いて作出したクローン胚における網羅的遺伝子発現解析を基に、ネットワーク及びパスウェイ解析を行い各クローン胚における特性を比較し、ドナー細胞特異的なリプログラミングを明らかにしようとした。 【方法】マイクロアレイ解析にはB6CBF1由来の野生型 (WT)、セルトリクロー (SRc)、ESクローン (ESc)、B6D2F1由来の卵丘クローン (CUc) 胚盤胞をサンプルとして用いた。サンプルからtotal RNAを回収後、ビオチンラベル化されたcRNAを合成し、GeneChip Mouse genome 430 2.0 array (Affymetrix) にハイブリダイゼーションさせた。得られたデータはGeneSpring v7.3 (Agilent)で解析し、各クローン胚特異的に発現異常を示した遺伝子群をIngenuity Pathway Analysis (Ingenuity) のCanonical Pathway解析に供した。 【結果及び考察】各クローン胚で特異的に差次的発現を示した遺伝子群において、既知のパスウェイとの関連を調べるとSRcではG2/M DNA損傷チェックポイント制御、CUcではPtenシグナル、EScではアポトーシスシグナルなどとの関連性が明らかとなった。これらの結果から、各クローン胚における遺伝子発現は用いたドナー細胞種に依存して特有であるということが分かった。さらに、CUc で異常を示したPtenシグナル、SRcで異常を示したVegfシグナルの崩壊は発生停止につながることが知られており、それぞれにおける異常の一因であることが示唆された。パスウェイ解析は遺伝子間の相互作用を把握できるため、リプログラミング機構の分子メカニズム解明に有効であると考えられる。
  • 河野 友宏, 塚平 俊貴, 川原 学
    セッションID: OR1-36
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
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    [目的] 寿命に性差が認められることは良く知られており、ヒトでは女性が男性に比べ長命である。しかしながら、長命性において性差が生じる理由は良く理解されていない。哺乳類では、雌ゲノムのみを持つ単為発生胚は致死であることから、その寿命を正常個体と比較することは出来ない。しかし、我々が作出した二母性マウスは父性ゲノムを持たないことから、寿命と父母ゲノムの関係を探る上で良いモデルとなり得る。そこで、雌ゲノムのみから誕生した二母性マウスの寿命を調べた。[方法] 2005年10月から2006年3月の間に生まれた二母性マウス13個体を使用し、寿命を調べた。なお、二母性マウスは既報(Nature protocols, 2008)に従い作出した。対照区には同時期に誕生した受精卵由来の雌マウス13匹を用いた。実験に用いたマウスの系統は共にB6D2F1xC57BL/6である。すべての被検マウスは、単飼ケージで飲水および餌とも自由摂取としSPF環境で飼育した。 [結果] 二母性マウスの平均寿命は841.5日で、対照群の655.5日と比べ185.9日間も長く、Kaplan-Meier analysisにより(p<0.01)有意差を認めた。すべてのマウスは同一の飼養管理条件下で飼育されたにも係わらず、二母性マウスは対照より約30%長く生きたことになる。二母性マウスは父方発現インプリント遺伝子Rasgrf1の発現を欠くことから小型で、出生後20ヵ月における二母性マウス体重をコントロールと比較すると有意に軽かった(29.4g vs 44.9g)。また、血液の生化学的検査から、好酸球が有意に増加していた。これらの結果から、母性ゲノムが長命性に何らかの役割を果たす可能性が示唆される。
  • 尾畑 やよい, 河野 友宏
    セッションID: OR1-37
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>哺乳類の配偶子形成過程では卵子および精子特異的なDNAのメチル化(ゲノムインプリンティング; GI)が生じ、GIを欠如すると正常な個体発生が妨げられることから、GIを維持することは哺乳類の胚発生に必須の機構といえる。しかし、その機構の詳細については不明な点が多く残されている。本研究では、卵母細胞のDNAメチル化が胚発生過程でどのように変化するのか解析することで、GIの維持および消失機構を考察することにした。
    <方法>実験には、BDF1(C57Bl/6×DBA/2)雌マウスおよびJF1雄マウスを供試した。10日齢の雌マウスより種々の成長期卵母細胞を採取し、連続核移植法により(Kono et al., 1996)、成長期卵母細胞からM II卵子を再構築した。体外受精後、M16培地にて胚盤胞期まで培養した後、偽妊娠雌マウスの子宮に移植した。9.5日目胚からDNAを抽出し、Sodium Bisulfite-Sequencing法によりIgf2r、Lit1およびPeg1/Mest遺伝子のアリル特異的DNAメチル化解析を行った。
    <結果および考察>GV期卵および55-60 μmの卵母細胞において、Igf2r遺伝子は平均でそれぞれ100%および84%のCpGサイトがメチル化されており、90%以上のCpGサイトがメチル化されている卵子(DNA鎖)は全体の100%および29%となった。一方、GV期卵より作出された胎仔では、全ての個体でIgf2rのGIが維持されていたが、成長期卵母細胞ゲノムから作出された胎仔では、Igf2rのGIを消失しているもの(メチル化CpGサイトが10%未満)、GIを維持しているもの(メチル化CpGサイトが90%以上)、低メチル化と高メチル化の母方アリルが混在するものがそれぞれ同率で現れた。以上の結果から、卵母細胞におけるGIの部分的欠如が胚発生過程でのGI消失を招くものと示唆された。他の遺伝子の解析結果と種々の成長ステージより作出された胎仔の解析結果を併せて報告する。
  • 小林 亮太, 高橋 望, 岡本 晶, 山口 瑛人, 河野 友宏
    セッションID: OR1-38
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】父方発現インプリント遺伝子Rtl1は、胎盤機能を介して個体発生に関与する遺伝子と考えられており、マウス12番染色体末端部において複数のインプリント遺伝子と共にクラスターを形成している。Rtl1は、antisense鎖である母方発現インプリント遺伝子asRtl1に含まれるmiRNAにより抑制されることが報告されている。しかし、現在までにasRtl1の正確な転写産物の報告はなされていない。そこで本研究は、Rtl1が発現低下するGtl2父方欠損マウス、およびRtl1が発現上昇するGtl2母方欠損マウスを用いて、asRtl1の転写産物の特定を目指し研究をおこなった。 【方法】B6D2F1とGtl2ヘテロ欠損マウスの自然交配により作出された胎齢18.5日目のGtl2父方欠損マウス、およびGtl2母方欠損マウス、および同腹子の野生型マウスを使用した。脳、舌、心臓、肺、肝臓、腎臓、胎盤からRNAを抽出、Rtl1の配列情報に基づいて4種のDIGラベルRNAプローブを作製し、ノーザンハイブリダイゼーション法により転写産物の発現を解析した。 【結果および考察】asRtl1由来と思われる新しい転写産物を複数検出した。主に脳、舌、および胎盤での比較的高い発現が認められた。Gtl2欠損マウスにおけるasRtl1発現は、Gtl2父方欠損マウスで発現低下し、一方Gtl2母方欠損マウスで発現上昇した。この発現パターンは同クラスター内の母方発現遺伝子と発現パターンが一致していた。そこでasRtl1の新しく確認された転写産物とRtl1転写産物の発現量を比較した。その結果asRtl1転写産物の発現はRtl1発現と胎盤以外の組織で逆のパターンとなった。以上の結果から、asRtl1に由来するmiRNAを含む転写産物 が、Rtl1の遺伝子発現を調節している可能性が示唆された。
臨床・応用技術
  • 永江 美沙子
    セッションID: OR2-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】月1回の定期健診時に、乾乳期から泌乳初期にかけての乳牛の栄養状態をモニタリングし、栄養状態と、周産期病の発生、卵巣機能の回復、およびその後の繁殖成績との関係を明らかにすること。【方法】山口県の6戸の農場で飼育されているホルスタイン種乳牛のうち、2008年2月から2009年3月までに分娩した111頭を供試した。月1回の検診時に、分娩予定前30日以内から分娩後90日までの牛について、栄養状態のチェック(体重、BCS、毛艶、糞スコア、ルーメンサイズ、左ケン部の陥凹等)を行った。また分娩前30日以内と分娩後30日以内の牛では血液採取を行い、NEFA、T-Cho、γ-GTPの3項目、また分娩後に関してはBHBAを加えた4項目の測定を行った。分娩後2週目から1週間の間隔で乳汁を採取し、脱脂乳中プロジェステロン濃度を測定して卵巣機能回復の判定を行った。【結果】乾乳期にBCSが4.0以上で過肥状態の牛、もしくは左ケン部の陥凹が明瞭で乾物摂取量が不足していると推定される牛を異常群(26頭)、これらの異常が認められない牛を正常群(84頭)とした。異常群は正常群に比べ、周産期病発生率が高く(57.7%vs29.8%、p <0.05)、分娩後30日以内の血漿中NEFA(p<0.01)、γ-GTP(p <0.01)、BHBA (p <0.1)が高かった。また異常群では正常群よりも、卵巣機能回復異常の発生率も高く(62.5.%vs34.0%、p <0.1)、150日以内妊娠率は低く(29.4%vs58.1%、p <0.1)、空胎日数は長かった(150日vs140日、p <0.05)。以上のように、今回の試験では乾乳期の栄養状態の異常が23%で認められ、これらが分娩後の栄養状態や繁殖成績に悪影響を及ぼしていることが示唆された。
  • 坂口 実
    セッションID: OR2-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高泌乳牛の繁殖性低下は世界的な問題となっており、繁殖生理も含めた実態の解明と、それに基づく繁殖性の維持・改善が求められている。分娩後に受胎可能となるためには卵巣と子宮機能の回復が必要であり、卵巣機能は初回排卵に続く初回発情を経て復帰し、適期授精と子宮修復の完了を条件に受胎が成立する。このことから、卵巣機能回復の重要な因子として、初回排卵時期をとらえ、早期排卵を早期受胎、すなわち繁殖性の指標とした報告が多くなされている。そこで、分娩後早期の排卵頻度とその後の受胎性との関係を調べた。【方法】北海道農研で2001年5月から2008年10月までに分娩したホルスタイン種の365乳期(183頭)について、分娩9-11日後(D10)と25-27日後(D26)に超音波診断装置により長径10mm以上の卵胞(F10)の有無および黄体の有無をそれぞれ調べ、D26で黄体のある場合(CL+)を分娩後約3週以内の早期排卵とし、それ以外(CL-)と区分した。45日以降から授精を開始し、授精後35-40日に超音波診断装置で心拍動により妊娠を確認した。【結果】D10では黄体を確認した1頭(0.3%)を除き、0、1、または2個以上のF10を確認できたのは、それぞれ48頭(13.2%)、207頭(56.7%)、109頭(29.9%)であった。また、0、1、または2個の黄体をD26で確認したのは、それぞれ162頭(44.4%)、173頭(47.4.%)、30頭(8.2%)であった。D10でのF10が0個でD26にCL+となった牛は16頭(33%)であったが、F10が1個以上あった牛では130頭(59%)と多かった(P<0.001)。平均初回授精日はCL+で86日、CL-で89日と両者間に差はなく、初回授精受胎率、180日妊娠率、最終妊娠率もCL+でそれぞれ60%、69%、73%、CL-で59%、69%、77%と同等となった。また、受胎に要した授精回数はCL+で1.63回、CL-で1.70回となった。結果として180日までの妊娠牛および全妊娠牛の平均空胎日数は、CL+でそれぞれ101および108日、CL-では100および113日となり、差はなかった。今回調べた牛群については、分娩後早期の初回排卵の有無の、受胎性への影響は認められなかった。
  • R.M.S.B.K. Ranasinghe, Toshihiko Nakao, Kyoji Yamada
    セッションID: OR2-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    The objectives of the present study were to investigate the incidence of silent ovulation, to determine the factors affecting silent ovulation and to investigate its effects on reproduction of Holstein cows. Progesterone concentrations (P4) in whole milk were measured by direct ELISA. Ovulation was considered to have occurred when a decline of P4 to <1 ng/ml was followed by an increase of P4 to >5 ng/ml in two consecutive samples. An increase of walking activity of more than 80% above the mean activity recorded for the previous two days was considered as estrus. Silent ovulation was defined when an ovulation defined by milk P4 did not coincide with the increased pedometer measurements. Of 159 cows, 3.1%, 29.6%, 46.5%, 20.8% ovulated once, twice, thrice and four times within 90 d postpartum, respectively. The incidence of silent ovulation at first ovulation was 61.6%, followed by 24.7%, 19.6%, 9.1% at second, third and fourth ovulations, respectively. The incidences of silent ovulation at first and second ovulation postpartum were significantly affected by season (OR = 2.3 & 0.3 respectively). Cows with silent ovulation before AI within 90 d postpartum showed significantly longer intervals to first AI (69±13 vs. 57±7 d, P = 0.01) and to conception (126±65 vs. 96±40 d, P<0.05) compared to the cows that exhibited normal estrus. In conclusion, the incidences of silent ovulation at first and second ovulation postpartum were 61.6% and 24.7%, respectively and were affected by season. Silent ovulation during breeding period extended the intervals from calving to first AI and to conception.
  • 野口 倫子, 吉岡 耕治, 鈴木 千恵, 新井 佐知子, 伊東 正吾, 和田 恭則
    セッションID: OR2-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】豚では、黄体開花期にエストロジェンを頻回投与すると偽妊娠を誘起できる。この偽妊娠豚は、プロスタグランジンF(PG)投与により発情を誘起できる。本研究では、持続性卵胞ホルモン製剤であるestradiol dipropionate(ED)の単回投与による偽妊娠誘起技術を応用した豚の新規発情同期化法について検討した。【材料と方法】まず、豚の偽妊娠誘起に有効なEDの投与量(0=溶媒、10、20、30 mg)と投与日(排卵後5、8、11、13日目)を検討した(各区3~5例)。ED処置後24日目まで、血中プロジェステロン濃度が1 ng/ml以上で推移した豚を偽妊娠とした。次に、ED投与後24~28日目の偽妊娠豚(未経産10例、経産5例)にPG 15 mgを24時間間隔で2回処置し、その後の発情発現及び内分泌動態を検討した。経産豚5例は、経直腸超音波画像診断法により卵巣動態を観察した。対照区の未経産豚5例は黄体開花期にPGを2回処置した。偽妊娠誘起した未経産豚のうち6例は、PG処置後に人工授精を施し、無処置未経産豚4例の繁殖性と比較した。【結果と考察】ED単回投与による偽妊娠誘起率は、10 mg区の25%に対し、20及び30 mg区では80%及び75%であった。20及び30 mg区の血中エストラジオール値は、ED処置後少なくとも10日目まで溶媒区より有意に高かった。ED 20 mgを排卵後5~13日目に単回投与した場合、偽妊娠誘起率は5及び13日区では50%及び33%であったが、8及び11日区では80%及び100%であった。以上から、ED単回投与により豚に偽妊娠を誘起することが可能であり、ED 20 mgを排卵後8~11日目の豚に単回投与すると、高率に偽妊娠豚を作出できることが判明した。PG処置した偽妊娠豚の93%で発情が発現した。初回PG処置から発情及びLHサージ発現までは平均5.7及び6.2日で、対照区の10.9及び11.1日に比べて有意に短かった。経産豚では、初回PG処置後8.2日目に排卵し、排卵数は15.4個であった。新規発情同期化処置を施した豚の繁殖成績は、無処置豚と同等であった。以上の結果より、新たに確立された偽妊娠技術を応用した発情同期化法は有用であると判断された。
  • ZABULI Jahid, TANAKA Tomomi, LU Wengeng, HARUNA Satoko, KAMOMAE Hideo
    セッションID: OR2-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    We have reported in goats that continuous high-energy diet treatment for 7 days does not stimulate ovarian function despite of the promotion of LH and FSH secretion, and that efficacy of this treatment is shown only for several days after the start of treatment. Based on these studies, the aim of this study was to determine the effects of intermittent high-energy diet treatments on reproductive and metabolic functions in goats. Cycling goats that were kept with maintenance diets, were divided into the treatment (TG; n=6) and the control (CG; n=6) groups. After the detection of ovulation (1st OV, Day 0) by ultrasonography (USG), the high-energy level of diet (250% of maintenance) was fed to the TG from Day 12 to Day 15 (4 days) and from Day 18 to Day 21 (4 days). USG was performed daily or every other day, blood samples were collected daily from Day -2 to the ovulation after the dietary treatment (2nd OV) for analysis of LH, FSH, P4, E2, glucose and insulin. Mean plasma concentrations of glucose and insulin were significantly (P<0.05) higher in the TG than those in the CG on almost days during the treatment periods in response to the intermittent treatments. For ovarian performance, ovulation rate of the 2nd OV (4.5±1.0) in the TG was significantly higher than that of 1st OV (3.0±0.6) of the TG and of both 1st (2.5±0.5) and 2nd (2.7±0.5) OV of the CG. No significant differences were detected in the concentrations of LH, FSH, P4, and E2 between TG and CG. The present study demonstrated that intermittent nutritional stimulus increased the ovulation rate in association with increasing the plasma concentrations of glucose and insulin in goats.
内分泌
  • ドワンザイ リエンラクオン, 米澤 智洋, 久留主 志朗, 長谷川 喜久, 汾陽 光盛
    セッションID: OR2-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    Mast cells are multifunctional tissue dwelling cells and most characterized by their proinflammatory function. We have already reported that mammary mast cells are causally involved in mammary involution by producing GnRH after lactation. These findings suggest a new physiological role for mast cells by their production of GnRH in non-inflammatory processes. However, it is not known whether GnRH, the master hormone of reproduction, is a common product among various types of mast cells. So, in the present study, we examined the expression of GnRH in mast cells of different tissues and the involvement of metastin in the regulation of the expression. Peritoneal mast cells (PMC) were prepared from rats. GnRH expression of PMC was confirmed by immunohistochemistry and PCR. The immunoreaction of GnRH was commonly observed in mast cells of lung, thymus and skin. GnRH mRNA expression was augmented in PMC by GnRH agonist (Des-Gly10 [Pro9]-GnRH ethylamide). The expression of a biomarker of GnRH action, annexin A5, was also stimulated. Interestingly, decapeptide from C terminus of human metastin (45-54) stimulated the expression of GnRH mRNA. Metastin distributes all types of mast cells examined as well as GnRH. These results first demonstrate that GnRH is a common product of connective tissue and mucosal mast cells. Self-regulatory mechanism by metastin and GnRH is suggested for mast cell function in tissues.
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