日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
選択された号の論文の167件中1~50を表示しています
優秀発表賞
  • 松脇 貴志, 山内 啓太郎, 西原 真杉
    セッションID: 1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】
    従来、ストレス時に副腎皮質から多量に分泌されるグルココルチコイド(GC)は、生殖機能に対して抑制的に働くと考えられてきた。しかし、我々はこれまで、腫瘍壊死因子-αによる黄体形成ホルモン(LH)のパルス状・サージ状分泌の抑制が、GCにより逆に緩和されることを見出した。本研究では、感染・飢餓・拘束の3種類のストレス刺激を用いて、GCの生殖機能維持作用のストレス特異性を検討し、さらにその作用機序を明らかにすることを目的とした。
    【方法】
    実験には副腎摘出(ADX)あるいは非ADXの雌ラットを用い、頸静脈に採血用カニューレを留置した。採血はLHパルス観察では5分毎3時間、サージ観察では発情前期の12時から20時まで1時間毎に行い、LH濃度を測定した。感染・飢餓ストレス条件として、採血開始1時間後にそれぞれリポ多糖(0.5 μg/kg)、2-デオキシグルコース(100 mg/kg)を静脈投与した。拘束ストレスとしては、1時間の四肢の緊縛を行った。ADXラットの一部には、ストレス負荷と同時にコルチコステロン(CS 25 mg/kg)を皮下投与する群を用意した。パルスの観察では、さらにインドメタシン(IND 10mg/kg)静脈投与群を用意した。
    【結果】
    全ストレスに共通して、ストレス時に血中CS濃度が上昇する非ADXラットよりもCSの上昇が起こらないADXラットの方が、LHパルス・サージいずれも顕著に抑制され、この抑制はCSの投与により緩和もしくは完全に阻害された。これらの結果から、ストレス条件下でのLH分泌の維持に、内因性のGC濃度上昇が不可欠であることが示された。さらに、INDの投与は、全てのストレス条件下でCSと同様なLHパルス維持作用を示した。このことから、プロスタグランジン(PG)が今回用いた全てのストレス刺激の仲介物質として生殖機能を抑制する働きを持つこと、また、本実験で見られたCSのLHパルス維持効果はPGの生成阻害によるものであることを示唆している。
  • 西村 亮, 作本 亮介, Acosta Tomas, 奥田 潔
    セッションID: 2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】黄体退行時に黄体内の血流量が減少することはよく知られており,黄体退行時の黄体内は急激に低酸素環境に移行すると考えられる。本研究では,ウシの黄体退行機構における低酸素環境の役割を明確にする目的で,無処理および黄体維持因子として知られる LH 添加区を設け,ウシ黄体細胞のプロジェステロン (P4) 分泌機構およびアポトーシス誘導機構におよぼす低酸素環境の影響について検討した。
    【方法】1) ウシ中期黄体細胞を通常 (20% O2) または低酸素 (3% O2) の気相条件下において 1,2,4,8,12 および 24 時間培養し,培養上清中の P4 濃度およびプレグネノロン濃度 (P450scc 活性) を EIA により測定し,P4 合成調節因子 (StAR,P450scc,3β-HSD) の mRNA 発現を realtime RT-PCR により検討した。2) 1) と同様の気相条件下において 4,8,12 および 24 時間培養した黄体細胞において,細胞死率 (LDH assay),caspase-3 mRNA 発現 (半定量的 RT-PCR),caspase-3 活性,核の凝集および DNA の断片化 (TUNEL-PI 染色) について検討した。
    【結果】1) LH は黄体細胞の P4 分泌を全ての培養時間において刺激し,4 時間の培養において StAR mRNA 発現を増加させた。8 時間以上の培養において,低酸素条件下での P4 分泌量および P450scc 活性は,LH の有無に関わらず通常気相下のものと比較して有意に低下した。12 時間 (LH 添加区のみ) および 24 時間の培養において,低酸素条件下では P450scc mRNA 発現が有意に低下した。2) 低酸素条件下において 24 時間培養することにより,黄体細胞の細胞死率,caspase-3 活性および mRNA 発現は,通常の気相で培養されたものと比較して有意に増加し,DNA の断片化および核の凝集が認められた。以上より,低酸素環境はウシ黄体細胞の P4 分泌の減少 (黄体の機能的退行) およびアポトーシス (黄体の構造的退行) を誘導することが明らかとなり,血流の減少に起因する酸素量の低下が黄体退行を促進する一要因であることが示唆された。
  • 前田 晃央, 松田-峰畑 二子, 程 圓, 眞鍋 昇
    セッションID: 3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】哺乳類の卵巣においては卵胞の99%以上が発育・成熟過程において選択的に退行し、排卵される卵胞は1%にも満たない。この選択的卵胞退行(卵胞閉鎖)の誘起には顆粒層細胞のアポトーシスが支配的に関与している。しかしこれを制御している分子機構には未解明な点が多く残されている。本研究はマクロファージ等が産生し様々な臓器の恒常性を維持することに深く関与しているinterleukin 6(IL-6)が顆粒層細胞におけるアポトーシスの制御に関与しているか否かを調べた.【方法】食肉処理場で未経産ブタの卵巣を採取し、健常期、閉鎖初期および閉鎖後期の卵胞を切り出し、卵胞液を回収して顆粒層細胞を単離した。顆粒層細胞におけるIL-6およびIL-6の膜結合型受容体サブユニットgp130 mRNAの発現の推移を定量的real time RT-PCR法にて、卵胞液中におけるIL-6の可溶型受容体サブユニットIL-6 soluble receptor(IL-6sR)の発現の推移をELISA法にて調べた。併せて、卵巣組織におけるIL-6 mRNAの局在をin situ hybridization法で調べた。またIL-6を添加して顆粒層細胞を培養した後タンパクを抽出してアポトーシス抑制因子(cellular FLICE-like inhibitory protein-long form:FLIPL)の発現をウェスタンブロット法にて調べた。【結果】顆粒層細胞におけるIL-6およびgp130 mRNAの発現は卵胞の閉鎖に伴って低下した。卵胞液中のIL-6sRの発現も閉鎖後期には有意に低下した。またIL-6添加によりFLIPLタンパクの発現が上昇した。以上から、健常期卵胞の顆粒層細胞ではIL-6のシグナル伝達によりFLIPLの産生が亢進され、顆粒層細胞のアポトーシスを阻害しているが、閉鎖卵胞ではIL-6のシグナル伝達が低下し、アポトーシス誘導による卵胞閉鎖が生じると考えられた。
  • 山本 洋嗣, 吉崎 悟朗, 竹内 俊郎, 征矢野 清, Reynaldo Patino
    セッションID: 4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】魚類卵成熟過程における卵母細胞-濾胞細胞(O-F)間のギャップ結合(GJ)の機能を明らかにすることを最終目的に、アユ卵巣内におけるGJタンパク質(コネクシン:Cx)の発現解析を行った。さらに、卵母細胞がゴナドトロピン(GtH)の刺激により卵成熟誘起物質(17,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン:DHP)に対する感受性を獲得する卵成熟の第1段階、およびDHPの刺激により卵核胞の崩壊(GVBD)を誘起する卵成熟の第2段階におけるGJの必要性を検討した。【方法】アユ卵巣で発現しているCx cDNAをクローニングし、ノーザン法およびin situハイブリダイゼーション法で卵巣発達過程におけるCx mRNAの発現量変動とその分布を同定した。O-F間GJの確認は、ルシファーイエロー(LY)の細胞間移動を指標とするdye-transfer法を用いた。さらに、GJ阻害剤であるcarbenoxolone(CBX)が卵成熟の第1段階および第2段階に与える影響を、in vitro培養系を用いて解析した。【結果】アユ卵巣から32.1、34.9、44.1および44.2kDaのタンパク質をコードする4種のCxを得た。Cx44.1とCx44.2は卵母細胞内にのみ存在し、卵成熟過程を通じて発現量は一定であった。一方、Cx32.1とCx34.9は卵母細胞および濾胞細胞に存在したが、Cx34.9の発現のみが卵成熟の第1段階で急激に増加していた。dye-transfer法の結果、無処理区では100%の卵濾胞でLYの拡散が確認されたが、CBX処理によりそれが顕著に阻害された。さらに、CBXはGtHが誘起する卵成熟の第1段階、すなわち卵母細胞のDHPに対する感受性の獲得を有意に阻害した。一方、CBX処理はDHPが誘起するGVBD(卵成熟の第2段階)には全く影響を与えなかった。以上の結果より、O-F間のGJは卵成熟の第1段階に必須であることが示唆された。また、このGJはCx34.9により形成されるものと考えられた。
  • 塚本 智史, 相沢 明, 中西 章, 伊原 良, 今井 裕, 南 直治郎
    セッションID: 5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】胚性ゲノムの活性化とは、受精後最初に遺伝子発現が起こる現象であり、受精卵のその後の発生を維持するために必要不可欠な生命現象である。しかしながら、現在のところその分子メカニズムは明らかになっていない。我々はマウス卵母細胞および受精卵で特異的に発現する新規遺伝子Oog1を同定し、その分子生物学的・細胞生物学的性質を明らかにした。この遺伝子は雌の生殖細胞が形成される胎児期の15.5日ごろに卵母細胞特異的に発現を開始し、受精後2細胞期後半まで存在する。またOog1タンパク質は、胚性ゲノムの活性化時期である1細胞期後期から2細胞期初期に一過的に核移行することが明らかになっている。本研究では、Oog1と相互作用するタンパク質についてその機能解析を行った。
    【方法】【結果】Yeast Two-Hybrid実験の結果から、Oog1がRalGDS、Rasa4、および未知のタンパク質であるP09と相互作用することが認められたことから、ほ乳動物細胞にOog1とRalGDS、Rasa4、P09タンパク質のそれぞれを共発現させ免疫沈降法によって、Oog1との相互作用が特異的に起こることを確認した。また、RT-PCR法によって、卵母細胞と初期胚におけるRalGDS、Rasa4、P09の転写産物の発現パターンを調べた結果、これら遺伝子はOog1の発現パターンとほぼ一致し、卵母細胞由来の因子であることが明らかとなった。卵母細胞と初期胚におけるRalGDSタンパク質の局在を調べた結果、RalGDSタンパク質はOog1と同時期である1細胞期後期から2細胞期後期にかけて核に局在することが示された。また、GST pull-down assay法にてOog1とimportinβの相互作用を調べた結果、Oog1はGTP依存的にimportinβと相互作用することが明らかになった。これらのことから、Oog1が胚性ゲノムの活性化時期にRan様のGTPaseとして、物質の核移行に関与している可能性が示された。
  • 星野 由美, 松本 浩道, 佐々田 比呂志, 佐藤 英明
    セッションID: 6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】我々はこれまでに、マウスの卵成熟においてphosphatidylinocitol-3-OH-kinase (PI3K) がGVBDおよびMII期の進行に関与することを報告してきた (Hoshino et al., 2004)。PI3Kの下流では、Aktが細胞周期の進行や糖代謝などに機能していることが知られている。しかし卵成熟における機能は明らかでない。そこで本研究では、マウス卵成熟におけるAktの機能について解析した。【方法】体外培養は、FSH および hypoxanthineを含むWaymouthユs MB 752/1培地にAkt阻害剤であるSH-6 を添加し18時間行った。免疫染色は、2%パラフォルムアルデヒドで固定し、AktおよびLamin Bの一次抗体、Alexa Fluor 488標識した二次抗体で処理後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。初期胚は、排卵卵子をHTF培地で体外受精、KSOM培地で体外培養し、Aktの解析に供した。【結果】SH-6添加区で卵丘細胞の膨化に影響は見られず、GVBDも対照区と差は無かったが、MI期への進行が阻害された。免疫染色でこれらの核相と微小管を解析した結果、SH-6添加区では紡錘体の形成と染色体の整列に異常が起きていた。一方、MI期卵母細胞の培地にSH-6 を添加した結果、MII期への進行に影響はなかった。また、SH-6添加区の培養18時間後に分散した染色質を含む前核様の構造が観察された。そこで核膜を構成するlamin Bを免疫染色により検討したところ、前核様構造の核膜部分にlamin Bが局在していた。活性型AktはGVからMII期まで卵成熟過程で存在しており、MIおよびMII期において活性型Aktは紡錘体に局在していた。活性型Aktは第2極体と共に放出され、前核期から胚盤胞期までAktの発現は見られなかった。本研究の結果、Akは卵成熟過程において紡錘体の形成維持と染色体の整列に関与し、proMIからMI期の進行を制御していることが明らかとなった。また、Aktは減数分裂過程における核膜形成抑制機能を有している可能性が示唆された。Aktは受精後に速やかに消失し、前核期から胚盤胞期までの着床前発生過程で発現しないことから、初期胚発生過程では機能せず、減数分裂特異的である。
  • 川瀬 洋介, 羽仁 俊夫, 鎌田 宣夫, 寺社下 浩一, 鈴木 宏志
    セッションID: 7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】哺乳動物精子の凍結乾燥法が注目されているが,数十年あるいは数百年といった長期保存の可能性の保証は重要な課題である。そこで,医薬品の安定性を速度論的に考察する「Arrhenius plot」を用いた加速試験を凍結乾燥精子に応用し,長期保存の可能性を検討した。さらには,保存温度を比較的高い温度で長期間保存可能な凍結乾燥条件を見出すために,一次乾燥期の真空度と凍結乾燥精子の保存性について検討した。【方法】精子は成熟B6C3F1マウスの精巣上体尾部精子,凍結乾燥用保存液はEGTA Tris-HCl緩衝液,凍結乾燥はプログラム凍結乾燥機(BETA2-16; CHRiST)を用いた。実験1:一次乾燥期の真空度は現在汎用されている0.04mbarとし,加速試験には凍結乾燥精子を30,40,50℃で0,1,3,7日間保存後ICSIに供試し,長期間保存後の発生率の予測を行った。実験2:一次乾燥期の真空度を0.04mbar,0.37mbar,または1.03mbarとして凍結乾燥した精子を凍結乾燥直後,または4℃・6ヶ月間保存後にICSIに供試し,胚盤胞までの発生を観察した。【結果】実験1:4℃で凍結乾燥精子を保存する場合,10年以上保存すると胚盤胞は得られないと予測されたが,-80℃で保存する場合,胚盤胞までの発生率は100年たっても0.01%の低下が予測されるのみであった。実験2:胚盤胞への発生率は,凍結乾燥直後の精子を用いた場合には0.04mbarで59%,0.37mbarで71%,1.03mbarで34%であり,4℃にて6ヶ月間保存した精子では0.04mbarから0.37mbarにすることで13%から50%に有意に向上させた。現在汎用されている凍結乾燥条件により凍結乾燥した精子の長期保存には-80℃以下に保つ必要性が明らかとなった。さらに,現在汎用されている一次乾燥期の真空度よりも適した真空度の存在が初めて示され,一次乾燥期の真空度が極めて重要な条件の一つであることが示唆された。
  • 奥津 智之, 吉崎 悟朗, 竹内 俊郎
    セッションID: 8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】本研究室では魚類における異種間生殖細胞移植技術を開発し,ニジマス配偶子を生産するヤマメを作出した。この技術を応用することで,資源の枯渇が懸念されているクロマグロの配偶子を,飼育が容易な小型魚に生産させることも可能になると考えられる。しかし,本技術で作出されたヤマメ宿主は,ドナー由来のニジマス精子だけでなく,宿主自身のヤマメ精子も生産するため,F1世代で得られるニジマス個体の出現頻度が低い,という問題がある。そこで,本研究では不妊の3倍体を宿主に利用し,ドナー由来配偶子のみを生産する異種宿主の作出を試みた。【方法】ドナーには生殖細胞が特異的に緑色蛍光タンパク質 (GFP) で標識されたvasa-GFP遺伝子導入アルビノニジマスの雄成魚を,宿主には3倍体のヤマメ孵化稚魚を用いた。宿主の腹腔内に,トリプシン処理により解離したドナー精巣細胞懸濁液を顕微注入した。2年後,成熟した3倍体ヤマメ雄宿主より得た精液を野生型ニジマス卵に媒精し,F1世代を作出した。得られたF1世代中にドナー由来ニジマス個体が出現したか否かを検証するため,F1より抽出したゲノムDNAをRAPD解析に供した。また,F1世代中に異数体が出現したか否かを検証するため,F1個体より採取した血液細胞の核DNAをPropidium Iodideで染色し,フローサイトメーターを用いてDNA量の測定を行った。【結果】29尾中10尾の宿主が成熟した。得られた全てのF1個体は,通常のニジマス稚魚の外部形態を示しており,その孵化日は,ニジマスと同一であった。また,これらのF1個体はGFP陽性の生殖細胞を保持していた。さらに,RAPD解析の結果,全F1個体がニジマスと同一のDNAフィンガープリントを示した。DNA量解析の結果,F1世代中に異数体は認められなかった。以上の結果から,3倍体の不妊宿主に生殖細胞移植を施すことで,ニジマス精子のみを生産するヤマメ,つまりドナー由来配偶子のみを生産する異種宿主を作出可能であることが示された。
  • 白砂 孔明, 山本 大, 諸田 慶子, 宮本 明夫
    セッションID: 9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】私達はこれまで,ウシ黄体退行に先立ち必ず黄体周辺部の血流域が急激に増加し,これには子宮由来または外因性PGF(PGF)に刺激された強力な血管弛緩因子・一酸化窒素(NO)が関与している可能性を示した。黄体周辺部の血流域増加は血管弛緩による退行開始シグナルであり,黄体局所でPGFに対する血管弛緩反応が異なると考えた。本研究の目的は,収縮性血管を持つ黄体周辺部,毛細血管が密集する黄体内部,卵巣動脈部細胞培養モデルを作り,PGFが局所でNO合成酵素(eNOS)mRNA発現に与える影響を調べることである。【方法】6日間培養し黄体化させた顆粒層細胞(黄体),ウシ大動脈由来血管内皮細胞(内皮)と血管平滑筋細胞(平滑筋)を混合培養したものを黄体周辺部とした。また,黄体と内皮,内皮と平滑筋をそれぞれ黄体内部,卵巣動脈部とした。各区とも2-3日間混合培養し,PGF(10-4M)添加を0 hとし,0.5,1 hでサンプルを回収しreal-time PCR法を用いてeNOS mRNA発現を定量した。また,NOがプロジェステロン(P)分泌に及ぼす効果を調べるため,各区でNO供与剤(SNAP; 10-4M)を添加し,0.5,1hで回収した培養液中のP濃度を測定した。【結果】eNOS mRNA発現は内皮に限られ,PGFは内皮単独区と卵巣動脈部でのeNOS mRNA発現に影響しなかった。黄体周辺部ではPGF添加0.5hでeNOS mRNA発現を刺激したが,黄体内部ではPGF添加1hで刺激した。黄体周辺部・内部においてSNAPは添加0.5hからP分泌を有意に抑制し,対照区に対するP分泌抑制効果は黄体周辺部より黄体内部で高かった。以上から,PGFは内皮細胞に黄体細胞が隣接して初めてeNOS mRNA発現を刺激し,平滑筋が加わることでより迅速な反応になることが示された。PGFで刺激されたNOは,黄体周辺部の血流域を増加し,黄体細胞からのP分泌を急激に抑制することで,黄体退行開始に重要であることが示唆された。
  • 青島 拓也, 石神 昭人, 高原 英成, 高坂 哲也
    セッションID: 10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】蛋白質アルギニン脱イミノ酵素(PAD)は,蛋白質中のアルギニン残基を脱イミノ化し,シトルリン残基に変換する蛋白質修飾酵素である。これまでにヒトやマウスでPAD1,2,3,4と呼ばれる4種類のアイソフォームが同定され,最近新たに卵巣でPAD6が発見されている。しかし我々はPAD6が卵巣のみならず精巣での発現も示唆する知見を得た(GENE, 2004)。本研究では,マウス精巣におけるPAD6 の発現調節機構とその生理機能の解明を目指し,精子形成過程におけるPAD6の特異的発現と本酵素の標的として脱イミノ化反応を受けたシトルリン化蛋白質の存在について検討した。【材料・方法】実験1)精巣におけるPAD6遺伝子の特異的発現を調べるため,ICR系成熟雄マウス各種組織よりRNAを抽出し,RT-PCRを行った。次に,精巣でのPAD6と他のアイソフォームの発現状況を半定量RT-PCRで調べた。さらに,精巣PAD6遺伝子の組換え型酵素作製のため,全塩基長をカバーするcDNAクローニングを行った。実験2)精巣発育に伴う本遺伝子の発現動態を半定量RT-PCRで解析した。実験3)PAD6を特異的に認識するペプチド抗体を作製し,免疫染色を施しPAD6の局在を同定した。実験4)本酵素が精巣内で作用している確証を得るため,脱イミノ化反応の生成物であるシトルリン化蛋白質を認識する特異抗体を用いて免疫染色を行った。【結果】実験1)PAD6遺伝子は,精巣でのみ特異的かつ顕著に発現していた。加えて,精巣PAD6の全長cDNAは,卵巣PAD6と比較してアミノ酸レベルで1残基置換と1残基欠損を起こしていた。実験2)精巣発育過程で本遺伝子の発現は,春機発動から開始され,性成熟に伴って急激に上昇した。実験3)本酵素は精子完成期の精子細胞で特異的に発現していた。実験4)本酵素の標的として脱イミノ化反応を受けたシトルリン化蛋白質は,PAD6が局在する精子細胞で見出すことができた。以上,マウス精巣においてPAD6が精子細胞で特異的に発現し,精子形成過程の蛋白質に作用して脱イミノ化反応を引き起こしていることが示唆された。
  • Barana Chaminda Jayawardana, Takashi Shimizu, Hiromi Nishimoto, Etsush ...
    セッションID: 11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    [Introduction] The aim of the present study is to clarify the involvement of receptor systems for GDF-9 and BMPs in follicular selection by examining the effect of follicle-stimulating hormone (FSH) and estradiol (E2) in the regulation of BMPRII, ALK-3, ALK-5 and ALK-6 mRNA expressions in bovine granulosa cells (GC). [Methods] To observe mRNA expression, follicles were obtained from heifers and GC were classified into two groups, pre-selected (PRF: an average of 7mm follicles and low E2) and post-selected (POF: an average of 10mm follicles and high E2). For in vitro study GC were obtained from bovine follicles of 4 to 7mm diameter and cultured in DMEM/F-12 medium with 10% fetal calf serum for 24 hours. The medium was then substituted with serum free DMEM/F-12 supplemented with different doses of E2 (1, 10,100 ng/ml) or combinations of 1ng/ml of E2 with different FSH doses (1, 5, 10 ng/ml). Total RNA was extracted from GC and mRNA expressions of BMPRII, ALK-3, ALK-5 and ALK-6 were determined by the quantitative PCR method using LightCycler. [Results and Discussion] BMPRII and ALK-5 expressions were significantly higher in the POF than in the PRF, whereas ALK-3 expression was significantly lower in the POF than in the PRF. There was no difference in ALK-6 expression between PRF and POF. A treatment with E2 alone increased BMPRII mRNA expression at the concentration of 1ng/ml and ALK-5 mRNA expression at 10ng/ml. BMPRII and ALK-5 mRNA levels were up-regulated at the combination of E2 (1ng/ml) and FSH (5ng/ml). The results of this study provide the first evidence that expression of BMPRII and ALK-5 genes are regulated by E2 and FSH.
一般口頭発表
初期胚発生
  • BINH Nguyen-Thanh, Nguyen Van Thuan, 三宅 正史
    セッションID: 12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    [Objectives] The present study was designed to evaluate whether oocyte maturation period affected intracellular glutathione (GSH) concentration and to examine effects of maturation period on fertilization and early developmental ability of oocytes after ICSI. [Materials and methods] The sperm-rich fraction was collected from proven-fertile boars by the gloved hand method. As the successful fertilization rate was low after ICSI in the pig, spermatozoa were preserved at 24°C for 18 h before ICSI. Oocytes were injected with sperm heads that were isolated from spermatozoa by piezo treatment. GSH concentration of oocytes was measured after maturation-culture for 0, 12, 24, 36, 38, 40, 42, 44, 46, 48, and 50 h. For the evaluation of fertilization, sperm-head-alone was injected into oocytes after maturation for 36, 40, 44 and 48h. Some oocytes were fixed 18 h after ICSI. The others were cultured for 168 h and were observed at every 24-h interval under an inverted microscope. [Results] GSH concentration was generally low in the oocytes that were maturation-cultured shorter than 36 h (4.1 to 5.5 pM), and then it increased gradually until 44 h (13.2 pM). The concentration decreased rapidly longer than 44 h. Oocytes that were maturation-cultured for 44 h showed the highest rate of development to the blastocyst stage (35%), and the rate was significantly higher than those of the others. These results suggest that the proportion of fertilization after ICSI depends on GSH-concentration of oocytes, leading to the higher blastocyst formation after ICSI. Key words: ICSI, Fertilization, Oocyte, Blastocyst, GSH.
  • 平尾 雄二, 志水 学, 伊賀 浩輔, 竹之内 直樹
    セッションID: 13
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】ウシ発育途上卵母細胞のin vitroにおける生存,発育および胚発生能力の獲得に及ぼす酸素濃度の影響を明らかにする。【方法】直径0.5-0.7mmの初期胞状卵胞から卵母細胞・顆粒膜細胞の複合体を採取し,5%あるいは20%酸素の条件で培養した。培養液には,5%牛胎児血清,4 mMヒポキサンチンおよび4% PVPを添加した修正TCM-199を用い,96ウェル組織培養プレートの各ウェルに200 μlを入れて,複合体を個別に培養した。培養開始日をDay 0としてDay 14まで培養し,裸化や退行が認められない卵母細胞を生存と判定した。その後,卵母細胞に成熟を誘起し,体外受精を行って胚発生率を比較した。【結果】Day 1における卵母細胞の直径±標準偏差は96.4±2.7 μm(n=210)であった。基本的な形態としては,両区とも日数の経過とともに卵母細胞を中心とする顆粒膜細胞の増殖が見られ,卵母細胞は盛り上がった細胞群の内部に位置するようになった。Day 14における比較では,生存率は5%酸素区が高い値を示したものの(97% vs. 76%),卵母細胞の直径は108.0±5.0 μmと,20%酸素区の 114.4±6.1 μmよりも有意に小さかった。5%酸素区および20%酸素区で育った卵母細胞から胚盤胞期への発生率は,それぞれ2%(n=101)および9%(n=80)であった。Day 14の時点で獲得されていたサイズの違いが,その後の発生率に影響した可能性が高いと考えられる。Day 1から1日おきに直径の比較を行った結果,すでにDay 5で有意差が認められ,Day 9以降その差は著しく増大した。以上のことから,低酸素環境は卵母細胞と顆粒膜細胞の生存のために好ましいが,それらの発育,利用までを目的に加えると,必ずしも良い効果ばかりではないことが示された。
初期胚遺伝子発現
  • 野老 美紀子, 山本 由美, 天野 朋子, 松本 和也, 佐伯 和弘, 細井 美彦, 入谷 明
    セッションID: 14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】これまでの研究により、マウス初期胚では受精後13時間から転写が初めて開始されるが(胚性遺伝子の活性化)、それ以前の時期には翻訳機構は存在するものの何らかの転写制御機構が存在することが明らかになっている。本実験では、マウス初期胚における胚性遺伝子の活性化時期における転写開始の分子機構を明らかにするため、胚性遺伝子発現の活性化とヒストンのアセチル化、及びRNAポリメラーゼII(Pol II)の関連性について検討した。【方法】本実験では、Western blot解析によるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC1、2)の発現解析及びHDACs活性の測定から、体外受精胚における全体的なヒストンアセチル化状態を経時的に調べた。また、顕微注入した発現ベクターのヌクレオソーム構造におけるヒストンのアセチル化状態を、クロマチン免疫沈降法により胚性遺伝子発現の開始前後で比較検討した。次に胚性遺伝子発現時期におけるPol IIの局在を調べるために、Pol IIを認識する抗体を用いた免疫蛍光染色を行った。【結果】初期胚におけるHDACsの発現及び活性は、受精直後から徐々にクロマチンの構造変換が開始されうることが示唆され、またヒストンのアセチル化状態も受精後13時間前後で差が観察された。これにより、受精直後から徐々にクロマチンの構造変換が開始されうることが示唆され、またヒストンのアセチル化状態も受精後13時間前後で変化することが観察された。また、未受精から受精後まもない胚ではみられなかったPol IIの局在が、胚性遺伝子発現の活性化時期では前核に局在がみられ、さらに雄性前核と雌性前核でその局在が異なる時期が存在することが明らかになった。このことから、胚性遺伝子発現の活性化は、DNAおよびヒストン修飾の変化やクロマチンの構造変化によってもたらされることが示唆された。【謝辞】本研究の一部は科学技術振興機構、和歌山県地域結集型共同研究事業費で実施した。
  • 天野 朋子, 松下 聡紀, 掛川 玲子, 高原 千明, 松本 和也
    セッションID: 15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    目的:哺乳動物の周期性現象の中枢は視交叉上核(SCN)であり、その周期性は時計遺伝子によって制御されている。また最近では、時計遺伝子は末梢の細胞でも発現し、SCNからの情報を細胞の生理に反映させることが示されている。本実験では、生殖に重要な末梢の細胞である卵子や胚における、時計遺伝子の発現と機能を解析することを目的として、マウスMII期卵と、1細胞期胚から胚盤胞期までの体外受精胚において、哺乳動物の時計コアループを構成する遺伝子であるclock, bmal1, per2, cry1の発現を定量解析し、胚発生過程におけるタンパクの細胞内局在についても検討を加えた。方法: ICR雌マウスに過排卵処理を行いhCG処理後7時間目にMII期卵を回収した。体外受精は常法に従って行い、媒精6~96時間まで、経時的に1細胞期から胚盤胞期の胚を採取した。採取した胚のmRNAを鋳型にRTを行い、リアルタイムPCR法によって時計遺伝子の定量解析を行った。発生過程における時計遺伝子タンパク質の局在は、免疫染色法によって解析した。結果:解析した全ての供試胚で、clock, bmal1, cry1のmRNAの存在が確認されたが、per2の発現は観察されなかった。MII期卵に含まれるclock, bmal1, cry1のmRNAの平均コピー数は、9430±3740, 16247±3416, 6745±2051 (n=3-5)となり、2細胞期にMII期卵の約10%に減少した。しかし2細胞期から胚盤胞期までの間に顕著な増減は見られなかった。この結果から、clock, bmal1, cry1は初期胚において非周期性の発現パターンを示し、卵子形成期に卵子細胞質内に蓄積された母性因子として機能することが示唆された。また免疫染色の結果から、CLOCKタンパク質は、胚性遺伝子の活性化が始まる時期である、2細胞期胚で核に局在していることが明らかになった。
  • 松岡 俊樹, 園 洋平, 松本 和也, 天野 朋子, 安斎 政幸, 三谷 匡, 加藤 博己, 細井 美彦, 佐伯 和弘, 入谷 明
    セッションID: 16
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】我々は、Differential Display 法によりZGA時期に特異的に発現の変化がみられた数十個の遺伝子群を単離し、逐次初期胚における機能解析を行っている。これらの候補遺伝子の1つであるrhophilin-2遺伝子は低分子量G蛋白シグナル伝達に関与しており、Rhoの標的分子であることがわかっている。当研究室では、マウス初期胚におけるrhophilin-2遺伝子の詳細な機能を明らかにすることを目的に研究をすすめており、すでに、GABA受容体関連タンパク質(GABARAP)がRhophilin-2タンパク質と相互作用することを明らかにしている。更に、初期胚においてGABARAP遺伝子は細胞数が増加するに伴って発現量も増加傾向を示すが、rhophilin-2遺伝子は受精後24時間以降の発現量が低下することをつきとめている。今回、これらの知見に加え、マウス初期胚におけるRhophlin-2タンパク質とGABARAPタンパク質の機能を検討するために、蛍光免疫染色法を用いて局在を調べた。【方法】1、 2および4細胞期に達したマウスIVF胚を採取、固定し、蛍光免疫染色に用いた。1次抗体にはRhophilin-2(abcam)もしくはGABARAP(SANTA CRUZ)の抗体を使用し、2次抗体にはAlexa Fluor 488(Molecular PROBES)を使用した。核の染色にはDAPIを用い、蛍光顕微鏡で観察した。【結果】蛍光免疫染色法により、マウス初期胚におけるRhophilin-2タンパク質とGABARAPタンパク質は、第一卵割と第二卵割時の細胞分裂時においてよく似た挙動が観察された。低分子量タンパクRhoの標的因子の中には細胞質分裂への関与が報告されていることから、Rhophilin-2タンパク質はマウス初期胚でも極めて初期の1細胞期、2細胞期における細胞分裂において、GABARAPタンパク質と相互作用し機能している可能性が示唆された。
  • 米田 明弘, 早川 晃司, 若山 照彦, 渡辺 智正
    セッションID: 17
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    [目的]多くの系統のマウス初期胚は体外培養した際、高率で胚盤胞にまで発生するが、AKRマウス初期胚は体外培養するとほぼ完全に2細胞期で発生停止を起こし、この現象は2-cell blockとして知られている。第96回日本繁殖生物学会大会において、近交系のAKRとC57BLマウスを用いた交配実験の結果、2-cell blockには細胞質因子が影響しており、それには2つの遺伝子座の関与が示唆されることを報告した。そこで本研究では、AKRとC57BL胚間で前核置換を行い2-cell blockへの細胞質因子の関与を確認するとともに、連鎖解析を利用して2-cell blockを引き起こす原因遺伝子座を同定することを目的とした。[方法]AKRおよびC57BL前核期胚は、自然交配により交尾の確認された雌マウスの卵管より採取した。AKRとC57BL前核期胚を用いて前核置換を行い、得られた再構築胚をWhitten培地にて37˚C、5% CO2 in airで120時間体外培養し、胚盤胞への発生率を観察した。さらに、AKRとC57BL間の交配により得られたF1マウスをAKRへ戻し交配し、得られた戻し交配個体群を用いて連鎖解析を行った。[結果]AKRとC57BL前核期胚を用いた前核置換実験の結果、前核がAKRかC57BL由来かにかかわらず、AKRの細胞質をもつ再構築胚は2-cell blockを起こし、C57BLの細胞質をもつ再構築胚は正常に発生することが確認された。このことから、2-cell blockには細胞質因子が関与していることが考えられた。戻し交配個体を用いて連鎖解析を行った結果、原因遺伝子座の一つは第4染色体の54番地から63番地付近に位置していることが示唆された。第4染色体のこの付近に胚発生や細胞周期に関連する候補遺伝子が存在するかを現在検索中である。
  • 文岩 陽子, 今井 裕, 山田 雅保
    セッションID: 18
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】転写因子NF-κBは、マウス着床前胚において発現しており、1細胞期から16細胞期にかけて核質内に点状の局在が見られることから、この時期に必要な遺伝子発現の調節機能を担っている可能性が考えられる。NF-κB核内移行阻害ペプチドであるSN-50を、前核形成前の胚に処理したところ、核内局在や胚盤胞への発生に影響を及ぼすものの、その効果は安定して観察されるものではなかった。この原因として、前核期は母方由来のmRNAやタンパク質が急速に分解される時期であり、SN-50も処理胚中で分解された可能性が考えられる。本研究では、SN-50(20μM)を2細胞期後期から処理し、発生した胚の形態的変化について検討した。【方法】ICR系マウス(7~8週齢)からhCG注射後18時間に受精卵を採取した。前核期から胚盤胞期までの胚におけるNF-κBの核内での局在パターンを検討するため、RelA抗体による免疫蛍光染色を行った。さらに、hCG注射後53時間の2細胞期胚を、SN-50(20μM)あるいはそのミュータントペプチドSN-50M(20μM)を添加した培地で培養し、処理胚の発生と形態的変化を観察した。【結果】NF-κBの核質内の点状局在のパターンは、前核形成後3時間から確認でき、前核期中期と2細胞期後期で特に強く観察できる。また4細胞期でも観察できるが、その後8細胞期、16細胞期と局在は弱まり、コンパクション以降観察できなくなった。さらに、SN-50処理の影響について検討した結果、桑実期に細胞質の一部に変性が生じ、胚盤胞期においては細胞質変性と共に胚盤胞腔形成に異常をきたした。しかし、未処理区、 SN-50M処理区では、このような細胞質変性は観察されなかった。また、核内局在の観察できなくなる桑実胚期からSN-50で処理しても胚盤胞の形態に異常は観察されなかった。このような形態異常は安定して観察されることから、これら異常は、SN-50が、4細胞期以降におけるNF-κBの核内移行を阻害することによって生じたと考えられる。
  • 田中 咲子, 池 海英, 三好 和睦, 吉田 光敏
    セッションID: 19
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】ブタの体細胞,組織あるいは臓器をヒトに移植すると,ブタα-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ(pPGT-3)遺伝子によって形成されているα-ガラクトースエピトープ抗原に対して超急性拒絶反応が起こる。しかし,卵子や初期胚における同遺伝子発現については未解明である。本研究はブタ卵の成熟・受精・発生過程におけるpPGT-3遺伝子発現について検討した。【方法】ブタ卵子は食肉センター由来卵巣から吸引採取した。体外成熟(IVM); 卵子は成熟培地で42時間培養し,IVM卵子を作成した。体外受精(IVF);IVM卵子は受精培地へ移動,射出精子を媒精し,IVF卵を作成した。単為発生(PA);第2成熟分裂中期(MII)卵子は電気的活性化とサイトカラシン処理を併用して,PA卵を作成した。核移植(NT);除核卵子にドナー細胞(クラウン系ミニブタ皮膚由来)を融合,活性化処理を施し,NT卵を作成した。総RNA抽出;卵または胚からの総RNA抽出は次の時期に個別に行った:卵核胞,MII,前核,2-8細胞,初期胚盤胞,拡張胚盤胞,透明帯脱出途中胚盤胞,および透明帯脱出胚盤胞。また,ドナー細胞の総RNAも抽出した。RT-PCR;総RNAよりRT反応後,pPGT-3遺伝子プライマー対によりPCRを行い,泳動後,標的バンド検出状況を調べた。【結果】pPGT-3遺伝子発現はIVM過程,IVF・PA過程では前核期卵から初期胚盤胞まで全く観察できなかった。しかし,拡張胚盤胞期以降に発現が見られ,発現率は脱出胚盤胞期で有意に増加した(P<0.05)。一方,NT過程ではドナー細胞で高率(100%)に見られた遺伝子発現はNT後,前核期では完全に消失,その後,拡張胚盤胞期で再び観察された。以上の結果より,ブタ卵の成熟・受精・発生過程において,pPGT-3遺伝子は拡張胚盤胞期以降から発現が始まり,特に脱出胚盤胞期において高い発現割合を示すことおよびブタ体細胞の同遺伝子活性はNT処理により一端,消失することが明らかになった。
卵成熟
  • 橋本 周, 大住 哉子, 辻 陽子, 原馬 尚子, 宮田 悠子, 福田 愛作, 森本 義晴
    セッションID: 20
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    [目的]卵巣組織には様々な発育ステージの卵胞が存在しているが、その多くは消失し、第二減数分裂中(MII)期まで進行できる能力(成熟能)を持つにいたる卵子はごく少数である。卵胞から取り出したウシ卵母細胞を4% Polyvinylpyrrolidone (PVP)添加培養液を用いることにより、成熟能を獲得し、産子に発育することが報告された。その際、ドーム様構造の形成が成功の目安となることも報告された。そこで、本研究では卵胞から取り出したブタ卵子顆粒膜細胞複合体(OGCs)を用い、PVP添加濃度(0-8%)ならびに培養ディッシュのコーティングの有無(Falcon 1007 vs 3002)がOGCsのドーム様構造の形成に及ぼす影響を調べた。また、ドーム様構造を形成したOGCsから得られた卵子の成熟能を調べた。 [方法]屠体未成熟雌ブタ卵巣から、直径500-700 μm、<500 μm (前胞状期卵胞)の卵胞を単離し、OGCsを取り出した。TCM 199に1 μg/ml E2, 50 μg/ml アスコルビン酸, 10 μg/ml insulin, 6.7 ng/ml sodium selenite, 5.5 μg/ml transferrin ならびに3 mg/ml BSA添加したものをOGCsの培養液として、TCM 199に E2, FSH, hCG, FBSを添加した培養液を成熟培養に使用した。OGCsの体外培養は14日間、体外成熟培養は44時間、38.5℃, 5% CO2飽和湿度下で行った。[結果] 2% PVPで培養したOGCsのドーム様構造形成率(27%)は他のPVP濃度区に比べ優位に高かった(0-9%, P<0.05)。また、コーティングディッシュで培養したOGCsのドーム様構造の形成率(83%)はそうでない場合に比べ有意に高かった(47%, P<0.05)。ドーム様構造を形成したOGCsから得られた卵子は全てGV期であった(n = 14)。これらの卵子を成熟培養を行ったところ、67%の卵子がMII期に達した(n = 18)。一方、体外培養を行わずに、成熟培養を行った場合、MII期に達した卵子は2.2% (n = 45)であった。本実験の結果から、直径500 μm以下の卵胞から取りだした卵子でも体外培養により成熟能を獲得することが示唆された。
  • 横尾 正樹, 佐々木 隆広, 珠玖 仁, 末永 智一, 青柳 重夫, 星 宏良, 阿部 宏之
    セッションID: 21
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】電気化学的計測技術は,局所的な生物反応を高感度で検出する有効な手段である。これまで我々は,酸素の還元電流を検出できる走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いて単一のウシ卵子および胚の呼吸活性を測定することに成功し,ウシ卵成熟および胚発生過程における呼吸活性変化を報告した。本研究では,これまでに報告の見られないブタ卵成熟過程での細胞呼吸活性の変化を明らかにするために,体外成熟培養におけるブタ卵丘細胞-卵子複合体(COC)および卵子の呼吸活性の変化について調べた。【方法】食肉処理場由来ブタ卵巣から採取したCOCを卵丘細胞の付着程度で4つのランク(Aランク-Dランク)に分類し,各ランクのCOCおよび卵子の呼吸活性を測定した。また,AランクのCOCは修正TCM199もしくはNCSU23で成熟培養し,培養後の卵子の呼吸活性変化を測定した。呼吸活性はSECMをさらに改良化した「受精卵呼吸測定装置:HV-403」(機能性ペプチド研)を用いて測定した。【結果】各ランクのCOCおよび卵子の呼吸活性(F×10-14 mol s-1)は,A(COC; 3.01±0.16,卵子; 0.44±0.03),B(COC; 1.99±0.11,卵子; 0.41±0.04),C(COC; 1.10±0.09,卵子; 0.27±0.03),D(COC; 0.16±0.02,卵子; 0.15±0.02)であった。また,体外成熟培養後,第一極体を放出した成熟卵は,第一極体を放出していない未成熟卵と比較して,呼吸活性が有意に高いことが明らかとなった。さらに,修正TCM199で培養した場合,成熟卵の呼吸活性は培養前と比較して有意な変化は認められなかったのに対して,NCSU23で培養した場合では成熟培養に伴って卵子の呼吸活性が上昇する傾向が観察された。以上の結果から,採取直後のCOCおよび卵子の呼吸活性は形態的に良好なCOCほど高いことが明らかとなった。また,体外成熟培養の培養条件によって培養後の卵子の呼吸活性変化に違いが生じることが示された。
  • 萩野 輝, 宮野 隆
    セッションID: 22
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ブタ卵母細胞では卵核胞崩壊(GVBD)後にMAPKが活性化される。タンパク質合成阻害剤であるcycloheximideを用いた実験から,MAPKの活性化には成熟過程で新たに合成されるタンパク質が必要であることが示唆されている。哺乳類の体細胞ではリボソームタンパク質S6のリン酸化がタンパク質合成に関与していると考えられている。本研究では,ブタ卵母細胞の成熟過程におけるリボソームタンパク質S6のリン酸化と,MAPKおよびその下流に位置するRSKの活性化との関連性を検討した。【方法】ブタ卵巣の直径4-6 mmの卵胞から顆粒膜細胞-卵母細胞複合体を取り出し,hMGを含む成熟培養液中で14時間培養し,その後cycloheximide,MEKの阻害剤であるU0126あるいはp70S6Kの阻害剤であるrapamycinを添加した培養液中で14時間培養した。培養後,卵母細胞のGVBD率を調べるとともにリボソームタンパク質S6のリン酸化,MAPKおよびRSKの活性化をウエスタンブロッティングによって調べた。【結果】培養28時間後,対照区の卵母細胞はGVBDを起こして,第一減数分裂中期に達しており,リボソームタンパク質S6はリン酸化され,MAPKおよびRSKはいずれも活性型へと変化した。cycloheximideで処理した卵母細胞では,GVBD,MAPK,RSKの活性化は阻害されたが,リボソームタンパク質S6のリン酸化は起こった。U0126で処理した卵母細胞でも,MAPKおよびRSKの活性化が阻害され,リボソームタンパク質S6のリン酸化が起こったが,卵母細胞は第一減数分裂中期に達していた。一方,rapamycinで処理した卵母細胞では,リボソームタンパク質S6のリン酸化が阻害され,また,MAPKおよびRSKの活性化も阻害された。以上のことからリボソームタンパク質S6のリン酸化は,MAPK経路の活性化に関与している可能性が考えられた。
  • 山田 多恵, 今井 裕, 山田 雅保
    セッションID: 23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アセチルLカルニチン(ACLC)は、ミトコンドリア内への長鎖脂肪酸の取り込みを促進し、細胞内のエネルギーの代謝を活性化する働きを持つ。本研究ではウシ卵子卵丘細胞複合体(CEO)の体外成熟培養(IVM)におけるACLC処理が、卵母細胞の成熟およびミトコンドリアの局在に与える影響について検討した。【方法】屠場由来のウシ卵子から採取したCEOをACLC(0,10,25mM)を添加した成熟培地(アミノ酸,E2,hCGおよびBSA添加mSOF)で24時間培養し、常法により体外受精を行なった。卵丘細胞を除去後、アミノ酸およびFCS添加SOF培地にて体外培養をおこない、受精後48時間後に卵割率を、6~8日目に胚盤胞への発生率を求めた。また、IVM開始後0時間と24時間の卵母細胞にMitoRedによる染色をおこないミトコンドリアの局在を観察した。【結果】ACLC添加培地でCEOのIVMを行なった結果、25mM添加区において受精率に無処理対照区との差はみられなかったが、受精後の5~8細胞期、および胚盤胞期への発生が有意に促進されたことから、ACLCの細胞質成熟促進効果が示唆された。またIVM前の卵母細胞におけるミトコンドリアの局在を観察した結果、卵細胞質周囲(peripheral)に分布していたが、IVM後にはperipheralタイプに加えて若干細胞質内部にも局在する(semiperipheral)タイプや卵細胞質全体に分布する(diffused)タイプの割合が高くなった。またACLC処理によりdiffusedタイプの割合が無処理対照区と比べ高くなった。以上のことからACLCはIVM期間中に卵細胞質内の微小管ネットワークを発達させミトコンドリアの卵細胞質全体への移動を促進すると考えられ、またミトコンドリアの卵細胞質内分布が、受精後の胚発生に重要な役割を果たしていることが示唆された。
減数分裂
  • 遠藤 墾, 内藤 邦彦, 東條 英昭
    セッションID: 24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒストンのアセチル化修飾はエピジェネティック情報として働き、遺伝子発現の制御に関与している。近年、哺乳類卵母細胞において卵核胞期(GV)卵では多くヒストンがアセチル化されており、卵核胞崩壊(GVBD)後、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の働きにより、体細胞分裂に見られない脱アセチル化がクロマチン全体で起こることが明らかとなった。卵成熟過程ではGVBDと同時にMPFやMAPKが活性化し、種々のタンパク質をリン酸化して活性を制御することが知られている。そこで今回、GVBD後のヒストン脱アセチル化にMPFやMAPKの活性が関与しているかをブタ卵母細胞を用いて調べた。【方法】屠場由来のブタ卵巣からGV卵を採取し、直後にGVを顕微操作により人為的に破壊して(artificial GV destruction:AGVD)、6時間体外培養した。一部の成熟培地には、タンパク質合成阻害剤(cycloheximide:CHX, 50µM)、又はMPF活性阻害剤(roscobitin:ROS, 35µM)を添加した。その後MPFとMAPK活性を既報により測定し、ヒストンアセチル化状態(H3K9,H4K12)とHDAC1の局在を免疫染色法によって確認した。【結果】採取直後のGV卵およびAGVDせずに6時間培養した卵はヒストンアセチル化されていた。一方AGVD卵では6時間後にMPF/MAPKの活性化はみられなかったが脱アセチル化が起こっていた。また、AGVD卵をCHX添加培地、ROS添加培地で6時間培養してもヒストン脱アセチル化が起こった。HDAC1はブタ卵成熟過程を通してクロマチン近辺にみられ、ヒストン脱アセチル化が起こる第一減数分裂中期やAGVD直後の卵ではクロマチンへの強い局在が見られた。以上より、減数分裂特異的なヒストン脱アセチル化はMPF/MAPK活性に制御されないこと、タンパク質合成が不必要なこと、HDAC1はAGVD直後にクロマチンに強く局在することが明らかとなった。
  • 水野 里志, 松本 和也, 佐伯 和弘, 細井 美彦, 福田 愛作, 森本 義晴, 入谷 明
    セッションID: 25
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】GSE(gonad-specific expression gene)遺伝子は、ZGA期(Zygotic Gene Activation)に発現が変化する遺伝子群の探索を目的に行った蛍光ディファレンシャルディスプレイ法による解析から単離された、精巣および卵巣で特異的に発現する新規遺伝子である。さらに、これまでの研究からgseは生殖細胞の減数分裂以降に何らかの役割を果たしていることが示唆されている(Zhang et al.,2002)。本実験では、gseの生殖腺における細胞内局在を明らかにすることを目的に、抗GSEペプチド抗体を用い生殖腺におけるGSEの免疫組織化学的解析を行った。【方法】ICR系成熟雄マウスの精巣および過排卵処理したICR系成熟雌マウスの卵巣から組織切片を作製した。この切片を脱パラフィン処理後、4%パラホルムアルデヒドで固定、1%過酸化水素水で内在性アルカリホスファターゼを失活させた後にblockingを行った。続いて一次抗体及び二次抗体で処理後、発色反応により、各組織におけるGSEの発現細胞を観察した。【結果と考察】精巣においてGSEは、第一精母細胞から伸長精子細胞までの精細胞に発現が確認された。さらに、精子形成周期I-IIIの円形精子細胞に、発現が確認された他の精細胞と比べて、強いシグナルが確認された。卵巣においてGSEは原始卵胞からグラーフ卵胞までの卵胞内の卵母細胞およびグラーフ卵胞内の卵丘細胞に発現が確認された。シグナルの強さは、原始卵胞および一次卵胞より二次卵胞、胞状卵胞およびグラーフ卵胞内の卵母細胞で強いシグナルが確認された。これらのことより、精巣においてGSEは第一減数分裂前期から第二減数分裂が終了するまでの精細胞で発現していることが示された。一方、卵巣では、GSEは第一減数分裂前期の卵母細胞に発現していることが示された。以上の結果から、gseは減数分裂への関与する遺伝子であることが示唆された。
核移植・クローン
  • 渡辺 伸也, 高橋 清也, 赤木 悟史
    セッションID: 26
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】平成10年7月以来,わが国では多数の体細胞クローン牛の出産に成功している。生産された体細胞クローン牛については,一連の飼養・繁殖試験を通じ,雌雄のクローン牛の成長や繁殖についての健全性が認められている。ただし,クローン牛には未解明な点が多く,各種データの蓄積がさらに必要である。本研究では,体細胞クローン牛に関する生理学的データの蓄積を通じた「畜産物の安心・安全」への貢献を目指し,体細胞クローン牛およびその後代牛を対象とした一般臨床検査を全国一斉に実施した。【方法】体細胞クローン牛あるいはその後代牛(試験牛)を飼養している機関(道立畜試,宮城畜試,茨城畜セ,山梨酪試,静岡畜試,富山農技セ,石川畜総セ,岐阜畜研,愛知農総試,兵庫農総セ,島根畜技セ,長崎畜試,熊本畜研,大分畜試,鹿児島畜試,鹿児島肉改研,沖縄畜試,家畜改良事業団,小岩井農牧(株),(株)ミック)の協力により,試験牛および試験牛と同数の対照牛(同性・類似月齢の同居牛)における体重,呼吸数,脈拍数,直腸温等,一般臨床検査を平成17年4月11 - 22日に行った。【結果】今回の調査において,クローン牛63頭,後代牛25頭,対照牛81頭,その他2頭の合計171頭分(黒毛和種,ホルスタイン種,褐毛和種、F1)のデータを収集した。その結果、クローン牛およびその後代牛で得られた測定値の分布範囲は対照牛と同様であった。例えば,黒毛和種雌における呼吸数(回/分)は,クローン牛(33頭):16 - 39,後代牛(12頭):12 - 66,対照牛(42頭):12 - 60であった。脈拍数(回/分)は,クローン牛:54 - 124,後代牛:56 - 114,対照牛:44 - 160であった。また,直腸温(℃)は,クローン牛:37.0 - 39.2,後代牛:37.3 - 39.4,対照牛:36.5 - 39.8であった。なお,神経質な牛においては,呼吸数や脈拍数の著しく上昇する場合が認められた。以上の結果は,全国で飼養されているクローン牛およびその後代牛の健全性を示唆していると考えている。
  • 黒目 麻由子, 石川 孝之, 富井 亮, 比留間 克己, 上野 智, 斎藤 仁, 坂本 裕二, 新海 久夫, 矢澤 肇, 近藤 亮, 田中 ...
    セッションID: 27
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】遺伝的背景の斉一なクローンミニブタの医学・薬学領域研究への応用に期待がもたれる。本研究は、家畜ブタの体細胞核移植技術をミニブタに適用するための条件設立並びに、クローンミニブタの効率的生産法の確立を目的とした。【方法】屠場由来卵巣より採取した卵を体外成熟しレシピエント卵子を作製した。ミニブタ胎仔(NIBS系 雄雌)由来の初代培養繊維芽細胞を核ドナー細胞に用いた。核移植には電気融合法を用い、移植後1~1.5時間に電気的活性化刺激を加えた。胚移植のレシピエントには妊娠雌を用いた。妊娠25~40日令の個体に0.3mg合成PGF2αと250 IU eCGを投与し発情同期化を行った。[実験1]単為発生卵を発情同期化条件の異なるレシピエントに移植し、受胎の有無を調べた。hCG投与後2日目(day1) および3日目(day2)のレシピエントブタに活性化後1日目および2日目の胚を移植し、22日後に胎仔を確認した。[実験2]核移植胚の体外発生能および移植後のクローン産仔への発達を調べた。【結果】[実験1]1日目胚/day1レシピエント、2日目胚/day1レシピエント、2日目胚/day2レシピエントといういずれの条件においても受胎が成立した。移植胚の胎仔への発達率は15~27%(6/40~15/56)であった。[実験2]核移植胚の胚盤胞への発達率は、雌雄の核ドナー細胞それぞれについて13.6% (9/66)および14.3% (14/98)であった。また、合計11頭のレシピエントに、それぞれ60~110個の核移植胚を移植した結果、8頭(73%)が妊娠し、合計14頭(1.4% 14/1021)のクローン産仔が得られた。本研究で確立した方法により高効率にクローンミニブタの作出が可能なことが示された。
  • 朴 志秀, 南 直治郎, 今井 裕
    セッションID: 28
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    [Objective] The aim of this study was to identify the differentially expressed genes between cloned embryos and IVF using fluorescein differential display method.[Methods] Bovine cumulus-oocytes complexes were aspirated from follicles of slaughterhouse ovaries and cultured in TCM-199 supplemented with 10% fetal calf serum for 18 h for somatic cell nuclear transfer (NT) or 24 h for in vitro fertilization (IVF) at 39˚C. Oocytes were enucleated by squeezing out the cytoplasm under laying the first polar body using a glass needle. Donor skin cells of adult cow were transferred to enucleated oocytes which was subsequenhtly fused and activated. The embryos were then cultured for 120 h (morula stage) or 168 h (blastocyst stage) in modified SOF medium under 5 % CO2, 5 % O2 and 90 % N2 at 39˚C. Total RNA obtained from NT and IVF embryos were analyzed by differential display RT-PCR[Results] We obtained several differences in gene expression patterns between NT and IVF embryos at the morula and blastocyst stage. A total of 52 cDNA fragments were isolated and analyzed. Semi-quantitative analysis revealed that some genes (NADH dehydrogenase subunit 1, SR rich protein, KIAA0107, ribosomal protein L19) were highly expressed in IVF embryos compared with NT embryos, while other gene (CASK) were highly expressed in NT embryos compared with IVF embryos. These results indicate that the differentially expressed genes observed in NT embryos may be candidates of marker genes for the production of normal NT offspring and DDRT-PCR procedure is quite useful for identification of several genes that are differentially expressed between NT and IVF embryos.
  • 笠松 礼, 佐伯 和弘, 岩本 太作, 亀山 信二, 玉里 友宏, 立溝 篤宏, 三谷 匡, 細井 美彦, 松本 和也, 谷口 俊仁, 出田 ...
    セッションID: 29
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】最近,分裂直後の初期G1期の体細胞をドナーとしたウシ再構築胚は,高率に個体へ発生することが示されている(Urakawa et al., 2004)。しかし,ドナー細胞の細胞周期とその後の発生との関係については未だよく検討されていない。我々は,ルシフェラーゼ遺伝子(luc+)導入細胞によるウシ再構築胚でのLuc+発現を調べたところ,融合後60時間(60hpf)の4-8細胞期胚で,全割球で発現がみられた胚が高率に胚盤胞へ発生することを明らかにした(特願2004-365451)。本実験では,初期G1期のluc+導入細胞による再構築胚でのLuc+発現と初期発生との関係を調べた。【方法】子ウシ繊維芽細胞にβ-act/luc+IRES/EGFPをtransfectし,遺伝子導入細胞を得た。これらの細胞からshake-off法によりM期細胞を獲得し,培養後に分裂直後の細胞を得て初期G1期細胞とした。一方,対照区であるG0期細胞は7日間の飢餓培養により得た。これら細胞による再構築胚のうち60hpfの4-8細胞期胚の透明帯を除去し,胚の各割球のLuc+発現をフォトンカウンターにより観察した。胚は,全割球で発現が見られた胚,一部の割球で発現が見られた胚,および発現が見られなかった胚をそれぞれpositive,mosaicおよびnegativeに分類し,胚盤胞への発生を検討した。【結果】初期G1期およびG0期ドナー再構築胚は60hpfでそれぞれ75%および55%が4-8細胞期胚まで発生した(P<0.05)。これら胚のうち,G1期ドナー再構築胚のLuc+発現状態はpositive,mosaicおよびnegativeでそれぞれ49,35および16%であり,発生率はそれぞれ30,11および0%であった。一方G0期ドナー再構築胚ではpositive,mosaicおよびnegativeでそれぞれ32,56および12%で,発生率は15,4および0%であった。いずれもLuc+発現のみられなかった胚は胚盤胞へ発生しなかった。初期G1期ドナー再構築胚はpositive胚が多く高率に胚盤胞まで発生したが,G0期ドナー再構築胚はmosaic胚が多く発生率も低かった。これら研究の一部はJST,和歌山県地域結集型共同研究事業の助成により行われた。
  • 澤井 健, 高橋 昌志, 陰山 聡一, 森安 悟, 平山 博樹, 南橋 昭, 尾上 貞雄
    セッションID: 30
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】マウスやウシ, ブタなどの体細胞核移植胚においては様々な遺伝子の発現異常が報告されており, 核移植産子の作出率を低下させる原因となっていることが考えられる。遺伝子発現を調節する機構の一つとしてDNAのメチル化による転写制御が知られており, 今回我々はウシ体細胞核移植胚のSatellite I領域のメチル化状態を様々な方法により作出された胚と比較するとともに, 体細胞核移植胚の産子作出率と胚盤胞期胚のDNAメチル化状態の関係について検討した。【方法】胎子(NT-FE), 新生子牛(NT-CA)由来線維芽細胞および桑実期胚の割球細胞(NT-EM)を用いた核移植, 体内受精体内発生 (Vivo), 体外受精(IVF)および単為発生(PA)により得られた胚盤胞期胚を1胚づつ採取し, DNAを抽出した。得られたDNAはBisulfite処理後, Satellite I領域をPCR法により増幅した。制限酵素(Aci I)処理したPCR産物を電気泳動し, 得られた消化産物のバンドを画像解析することによりメチル化DNAの割合を測定した。また, NT-CA胚の割球細胞をドナー細胞に用いて核移植した胚のメチル化DNAの割合を測定した。さらに, 核移植産子の作出率が異なる複数のドナー細胞を用いて作出したNT-CA胚におけるメチル化DNAの割合についても測定を行った。【結果】NT-FEおよびNT-CA胚のメチル化DNAの割合はNT-EM, Vivo, IVFおよびPA胚と比較して有意に高い値を示した。NT-EM胚のメチル化DNAの割合はVivo, IVFおよびPAと比較して差は認められなかった。NT-FEおよびNT-CA胚のメチル化DNAの割合はそれぞれのドナー細胞よりも有意に減少していたが, NT-CA割球細胞由来の核移植胚はドナー細胞に用いたNT-CA胚と同程度のメチル化状態にあった。また, 産子の作出率が異なるドナー細胞を用いたNT-CA胚のメチル化DNAの割合に有意な差は認められなかった。
  • 海野 佑一, 川澄 みゆり, 松本 和也, 安斎 政幸, 天野 朋子, 三谷 匡, 加藤 博己, 佐伯 和弘, 細井 美彦, 入谷 明
    セッションID: 31
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】体細胞核移植胚では、DNAの脱メチル化が適切でないことが明らかになっている(Kangら、2001)。一方、核移植胚における遺伝子発現に関する研究から、未分化な細胞で特異的に発現するOct-4遺伝子は正常胚と比較して、核移植胚では、その発現時期や発現細胞が違うことが示された(Boianiら、2001)。本実験では、体細胞核移植胚(NT胚)におけるOct-4遺伝子の発現と転写調節領域のメチル化の関係を明らかにすることを目的として、マウス尾部細胞、ES細胞、IVF桑実期胚、IVF胚盤胞期胚、NT桑実期胚、及びNT胚盤胞期胚のゲノムDNAのOct-4遺伝子の転写調節領域のCpGメチル化状態をbisulfite-sequencing法によって比較検討した。【方法】既法により抽出したゲノムDNAにbisulfite処理を施し、PCRにより目的配列のDNAを増幅後、DNA配列を決定し、目的配列中のメチル化CpGを調べた。なお、標的配列はOct-4遺伝子の時期組織特異的な発現に関与すると考えられている、遠位エンハンサー(DE)、近位エンハンサー(PE)、及びプロモーター領域におけるCpG配列として、一部はOct-4遺伝子の転写調節領域(-2891~-1)における34カ所のCpG配列についても、そのDNAメチル化状態を解析した。【結果】マウス尾部細胞由来ゲノムDNAのOct-4遺伝子転写調節領域におけるCpG配列のメチル化は、ES細胞と比較して、高度にメチル化していた(88.9%(2209/2484) vs 9.2%(123/1334))。IVF胚においては、桑実期から胚盤胞期へ発生する過程で、PEのCpGが高メチル化することが明らかになった (0.9%(1/104) vs 55%(79/143))。一方、NT胚のPEでは桑実期と胚盤胞期の双方の時期でやや高いメチル化状態であることが認められた(21.1%(16/76) vs 10.5%(16/152))。本実験から、NT胚におけるOct-4遺伝子のPEのメチル化状態はIVF胚とは異なり、このことよりOct-4遺伝子の発現が異常となる可能性が示された。
卵子形成
  • 香川 則子, 桑山 正成, 中田 久美子, 眞鍋 昇, 久米 新一, 加藤 修
    セッションID: 32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    [目的] 優秀な遺伝形質が証明された家畜由来産子の大量生産や、野生の絶滅危惧種の保全を目的として、前胞状卵胞内卵母細胞の発育培養や凍結保存が検討されている。これまでマウス、ラットおよびブタの胎児、新生児からの産子作出例はあるが、性成熟した個体由来からの報告はない。本研究では、ガラス化保存された成体マウス卵巣組織の前胞状卵胞内卵母細胞の個体発生能を検討した。[方法]10週齢BDF1マウス卵巣を前胞状卵胞のみを含む小組織片へ細断し、Cryotopによる超急速冷却ガラス化保存法(桑山, 2000)を一部修正して用い、凍結保存を行った。卵巣組織片を融解後、免疫不全(SCID)マウス腎漿膜下に移植した。対照区として非凍結卵巣組織を同様に移植、比較した。移植10日後に腎を摘出し、発達した胞状卵胞を回収した。卵巣組織の一部はパラフィン切片を作製し、組織学的評価により卵胞発育状況を調査した。さらに、胞状卵胞より回収されたフルサイズのGV卵子を既報のIVM-ICSI-IVC系に供し、得られた2細胞期胚をレシピエントに移植して正常な産子への発育能を検討した。また、本法によって得られた産子を性成熟後、それぞれ交配させ、繁殖能を検討した。[結果]ガラス化保存/融解後の卵巣内卵母細胞の生存率は100%であった。組織学的解析により、移植10日後には卵胞基底膜周囲に血管網が密に形成され、顆粒層細胞の増殖が顕著な胞状卵胞への発育が示された。回収されたGV卵子の体外成熟率はガラス化区43%vs.非ガラス化区73%、受精率はそれぞれ84% vs.80%であった。胚移植後、ガラス化区10頭(16.7%)vs. 非ガラス化区14頭(28.6%)の正常産子が得られ、全産子が性成熟、交配後に妊娠、出産した。これらの結果から、成体マウスの前胞状卵胞内卵母細胞は、ガラス化保存により高率に凍結保存することが可能で、さらに、融解後、体内/体外培養法と組合せることにより、正常な個体へと発生することが明らかとなった。
  • 樋浦 仁, 尾畑 やよい, 白井 求, 河野 友宏
    セッションID: 33
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】ゲノムインプリンティングにより父母両ゲノム間に決定的な機能的差異が生じるため,哺乳類の正常な個体発生には父親および母親由来ゲノムが必須である。ゲノムインプリンティングはDNAメチル化などの後天的な修飾により生殖細胞系列において刷り込まれ,その大多数が卵子形成過程で行われていることが示唆されている。そこで本研究では卵子形成過程におけるゲノムインプリンティング獲得機構の解明を目的として,卵子のDNAメチル化獲得とマウス日齢および卵子サイズとの関連を明らかにした。【方法】実験にはB6D2F1マウスを供試した。5日齢,10日齢,15日齢,20日齢および8週齢マウス卵巣から成長期卵母細胞を採取し,透明帯除去後,卵子直径を計測し,5μm毎に40~75μmの7グループに分類した。卵子からDNA抽出後,卵子特異的にメチル化されるインプリント遺伝子Igf2rLit1SnrpnZac1Peg1/MestImpactMeg1/Grb10および精子特異的にメチル化されるインプリント遺伝子H19を対象としてBisulfite Sequencing法によりDNAメチル化を解析した。【結果】成長期卵母細胞におけるDNAメチル化はマウス日齢を問わず,Snrpn遺伝子は40μmから,Igf2rLit1およびZac1遺伝子は45μmから,Impact遺伝子は50μmから,Peg1/Mest およびMeg1/Grb10遺伝子は55μmからそれぞれ確認された。7遺伝子いずれも65μmまでにはメチル化は完了していた。またSnrpn遺伝子において母方由来アレルは40μmから,父方由来アレルは55μmからメチル化が開始され,母方由来アレル優先的なメチル化が確認された。以上より,マウス卵子形成過程におけるゲノムインプリンティング獲得は一過性ではなく遺伝子個々に、また卵母細胞サイズ依存的な制御を受けることが明らかになった。
  • 高城 明日香, 岩田 尚孝, 伊藤 麻里, 葛西 真弓, 門司 恭典
    セッションID: 34
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】卵胞腔形成前のブタ卵胞を卵胞液を添加した培地中で培養し,ブタ発育途上卵母細胞の発育に及ぼす卵胞液の効果を検討した。【方法】食肉センターで入手した未成熟雌ブタの卵巣からコラゲナーゼ処理によって直径60-70 µmの卵母細胞を含む0.2-0.4 mmの卵胞腔形成前卵胞を採取した。卵胞をコラーゲンゲルに包埋し,38.5˚C,5%CO2‐95%空気の気相下で14日間培養した。基礎培地としてはβ-mercaptoethanol,抗生物質,2 mAU/ml FSHを添加したαMEMを用いた。実験1:ウシ胎児血清(FCS)および直径2-7 mmの卵胞から採取したブタ卵胞液(pFF)をそれぞれ基礎培地に5%の濃度で添加した。実験2:直径4-7 mmの卵胞から採取したブタ卵胞液(LpFF),直径2-3 mmの卵胞から採取したブタ卵胞液(SpFF)をそれぞれ基礎培地に5%の濃度で添加した。実験3:LpFF添加培地において培養期間を延長した。実験4:LpFF およびSpFFを熱処理(56˚C,30分間)し,それぞれ基礎培地に5%の濃度で添加した。【結果】実験1:pFF添加培地では卵胞の形態が維持され,卵胞は発達した。実験2:培養前直径約300 µmであった卵胞はLpFF添加培地において発達した(培養終了時:662.9±20.5 µm)。また,LpFF添加培地では57%の卵胞が卵胞腔を形成し,卵母細胞の直径も有意に増加した (培養終了時:94.4±1.8 µm)。しかし,SpFF添加培地中では卵胞の形態は崩壊した。実験3:培養期間を26日まで延長したが,卵胞および卵母細胞の直径の増加はみられなかった。実験4:熱処理LpFF添加培地中では,卵胞および卵母細胞は非熱処理LpFFと同様に発達した。熱処理SpFF添加培地中では非熱処理SpFFとは異なり,卵胞および卵母細胞の直径が増加した。以上の結果より,LpFFは卵胞腔形成前の卵胞の胞状卵胞への発達を促進すること,また内部の卵母細胞を発育させることが明らかになった。
  • 川瀬 裕己, 今井 裕, 山田 雅保
    セッションID: 35
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    [目的] ブタGV期卵母細胞は、Ca-EDTAを1mM添加した培地で48時間体外成熟培養することにより、成熟過程の途上(Ca-EDTA処理約30時間)から前核様核(PN)を形成し、さらにCa-EDTA処理卵母細胞の約10%が胚盤胞へと単為発生する。このときMPF活性は低く維持され、MAPK活性は徐々に上昇したがPN形成直前に急激に低下した。また、M1期、M2期の卵母細胞もCa-EDTA処理約30時間でPNを形成し、胚盤胞へと発生することがわかっている。本研究ではM1期、M2期卵母細胞のCa-EDTA処理に伴うMPF、MAPK活性の経時的変化およびCa-EDTAによる卵母細胞の活性化機構について検討した。[方法] 屠場由来の卵巣から吸引採卵により回収した卵母細胞を30時間、48時間培養したものをM1期、M2期卵母細胞とした。それらをCa-EDTA添加あるいは無添加培地に移して培養し、6時間毎にMPF活性とMAPK活性を測定した。次に、Ca-EDTAによる活性化経路を調べるためM2期卵母細胞を、PKC阻害剤であるCalphostin C、PLC阻害剤であるU73122、MAPK阻害剤であるPD98059をそれぞれ添加したCa-EDTA培地に移し30時間培養した後に固定・染色しPN形成の有無について調べた。[結果]Ca-EDTA無処理対照区では、M1期およびM2期卵母細胞におけるMPF活性、MAPK活性はいずれの卵母細胞においてもM2期後徐々に低下した。Ca-EDTA処理区ではM1期、M2期卵母細胞ともに、MPF活性はCa-EDTA処理後18時間の間は高く維持されるが、その後急激に低下し、MAPK活性についても処理後24時間は高く維持されるが、PN形成直前に急激に低下した。活性化経路については、いずれの阻害剤を添加してもPN形成は抑制されなかった。これらは全てCa2+依存的な活性化経路であるため、今後はCa2+非依存的な活性化経路について検討する。
体外成熟・受精・発生
  • 清田 弥寿成, 奥田 泰士, 滝澤 明子, 紫野 正雄, 猪股 智夫, 柏崎 直巳
    セッションID: 36
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】ラット凍結精子による IVF系の確立を目的に、5°Cから予備凍結までの冷却法を検討した。また、得られた最適な冷却法で凍結した精子によるIVF卵の産子への発生能を調べた。【方法】Wistar系の精巣上体尾部を室温下で0.7% Equex Stem、8.0% lactose、23.0% 卵黄を含む凍結液中で細切し、これをストローに封入して室温から 5°Cへ冷却 (0.5°C /min)した。〔予備凍結試験〕5°Cから予備凍結までの冷却法が融解後の精液性状に与える影響を調べた。5°C冷却ストローを液体窒素液面上 2 cm (-180°C: 2 cm区)、4 cm (-150°C: 4 cm区)、6 cm (-120°C: 6 cm区)の条件下で15分間予備凍結し、液体窒素に投入した。凍結精子は37.5°C温水中に15分間浸漬して融解し、運動性と原形質膜正常性を評価した。〔IVF試験〕予備凍結試験で作製した凍結精子と新鮮精子 (新鮮区) を用い、精子濃度0.5 x 106 cell/ml でIVFを行った。媒精10時間後に、卵を固定し、受精状況を調べた。新鮮区と4 cm区の一部の卵は、顕微鏡で観察し、両前核形成が認められた卵を卵管に移植した。【結果】〔予備凍結の検討〕運動精子率は、融解 2時間後で、4 cm区 (20%) は、2 cm区(11%)に対し有意に (p < 0.05) 高かった。〔IVF試験〕両前核形成率では 4 cm 区 (59%)、新鮮区 (62%) が、2 cm区 (23%)、 6 cm区(20%)に対し有意に(p < 0.05)高かった。4 cm 区精子によるIVFで作出した110個の両前核形成卵の移植により、産子60匹が得られた。ラット精子凍結過程における冷却法を検討することにより、融解精子の受精能が改善され、IVFにより凍結精子由来の産子作出に成功した。
  • 比留間 克己, 斎藤 仁, 田中 千陽, 前田 奈穂子, 黒目 麻由子, 富井 亮, 上野 智, 長嶋 比呂志
    セッションID: 37
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】我々は,第104回日本畜産学会において,ガラス化保存したIVM由来ブタ体外生産胚(単為発生胚)から胎仔が得られる事を報告した。本研究では,ガラス化保存したブタIVM・IVF胚からの正常産仔の作出を目的とした。
    【方法】屠場由来卵巣より採取した卵丘卵子複合体をNCSU23培地にて体外成熟させMII期卵を作製した。IVFには,PGM-tac培地(Yoshioka et al. BOR 2003)および凍結精巣上体精子を使用した。精子濃度を5×106/mlに調整したPGM-tacドロップ(100μl)に、15-20個の成熟卵を投入し,20hr媒精した。媒精2日後の4-8細胞期胚に細胞質内脂肪顆粒除去処置(Delipation)を施し,NCSU23培地にてさらに15hr培養した後,ガラス化保存に供した。ガラス化保存には15%Ethylene Glycol,15%DMSO,0.5Mショ糖を凍害保護剤とする最少容量冷却(MVC)法を用いた。実験1では,ガラス化胚の融解後の胚盤胞への発達率を非ガラス化対照胚と比較した。実験2では,ガラス化胚をレシピエント雌の卵管に移植し,胎仔および産仔への発達能を調べた。
    【結果】実験1:ガラス化保存したIVM・IVF胚の融解後の胚盤胞形成率及び細胞数(13/38,31.0%;52.0±7.2)は,非ガラス化胚の値(15/43,34.9%;71.3±10.8)と同等であった。実験2:ガラス化胚合計189個を2頭のレシピエント雌に移植した結果,2頭が妊娠した。47個の胚を移植した1頭を剖検した結果,8匹(17.0%)の胎仔(22日齢)が得られた。他の1頭は,妊娠継続中である。以上の結果より,DelipationとMVC法の併用によりガラス化保存されたブタIVM・IVF胚の移植によって,産仔が得られる可能性が示された。本研究は,生研センター基礎研究推進事業の補助を受けた。
配偶子保存
  • 石嶋 隆子, 古林 与志安, 李 東洙, 柳本 佳子, 松井 基純, 諏訪 義典, 宮原 和郎, 鈴木 宏志
    セッションID: 38
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
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    【目的】我が国の盲導犬実働数は現在約900頭であるが,盲導犬希望者は約4800人,潜在的希望者も加えると約7800人と推定されており,視覚障害者への盲導犬供給が十分になされていない。このような盲導犬不足の原因のひとつとして,盲導犬は雌雄ともに避妊・去勢手術を受けた後に訓練を開始するため,例え,その盲導犬が優秀であっても,次世代を残すことができないことにあると考えられる。そこで我々は,盲導犬から,次世代を得る方法のひとつとして,イヌ卵巣凍結保存法の開発を試みた。【方法】イヌ卵巣組織を1.5mm角に細切し,室温下の1M DMSOの中に60秒程度浸漬し,5µlの1M DMSOが入っているクライオチューブに組織を移し,氷上で5分間冷却した。次いで,あらかじめ氷上で冷却しておいたDAP213(2M DMSO/1Mアセトアミド/3Mプロピレングリコール)を95µl添加し,氷上で5分間平衡させた後,チューブを液体窒素に浸漬した。融解操作は次のように実施した。液体窒素からチューブを取り出し,キャップを除きチューブ内の液体窒素を捨ててから,室温で60秒放置し,37°Cに保温しておいた0.25Mスクロースを900µl添加して緩やかにピペッティングし融解した。融解後の組織は,PBIで5回洗浄し,HE染色によって組織学的に検査した。また,凍結融解卵巣を,NOD-SCIDマウスの卵巣嚢内に異種移植をし,4週間後,取り出した卵巣をHE染色およびPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)免疫染色によって組織学的に検査した。【結果】凍結融解後のHE染色による組織像は,すべてのイヌ卵巣組織において組織学的に正常な形態を示していた(n=30)。また,NOD-SCIDマウスへの異種移植の結果,イヌ卵巣の生着が18匹中17匹(94%)に認められた。また,PCNA免疫染色の結果,顆粒膜細胞にPCNA陽性が認められたことから,凍結融解後のイヌ卵巣が生存しており,その機能を発揮する可能性があることが示唆された。今後,同種移植を試みる予定である。
  • 中川 奨麻, 米田 明弘, 渡辺 智正
    セッションID: 39
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ブタ未成熟卵子をガラス化保存すると、その後の体外成熟率や胚発生率が著しく減少することが報告されている。これらの原因として、細胞内の超微細構造の変化が考えられる。事実、ガラス化保存した未成熟卵子では細胞骨格の崩壊やミトコンドリアの膨化などが起こることが知られている。そこで本研究では、膨化の阻害剤(CsA)および膨化と関連があると考えられているcaspaseの阻害剤(ZVADfmk)が、ガラス化保存したブタ未成熟卵子の加温後の形態および体外成熟率に及ぼす影響について調査した。【方法】ブタ卵子は屠場由来卵巣より吸引採取し、卵丘細胞が3層以上付着し細胞質が均一なものを実験に用いた。ガラス化保存は、CsA(1µM)あるいはZVADfmk(20µM)添加および無添加のガラス化溶液を用いて行った。さらに、加温後、同濃度のCsAまたはZVADfmk添加および無添加区の成熟培養液で44時間IVMを行い、卵子の形態および核成熟率を調査した。【結果】ブタ未成熟卵子をガラス化保存すると、形態的に異常と判断された変性卵子割合が増加する(2.1% vs 87.7%:P<0.01)とともに、体外成熟率が新鮮卵子と比べ有意に低下(89.5% vs 10.3%:P<0.01)した。CsAを成熟培養液だけに添加した場合、変性卵子割合が有意に低下(87.7% vs 63.9%:P<0.01)するとともに、体外成熟率も有意に増加した(10.3% vs 26.8%:P<0.01)。しかし、ZVADfmkをガラス化溶液および成熟培養液に添加しても効果は認められなかった。CsAを成熟培養液に添加することにより、その後の成績が向上することから、ブタ未成熟卵子はガラス化保存されるとミトコンドリアに異常が発生し、加温後の卵子の形態および体外成熟率に悪影響を及ぼすことが示唆された。また、CsAの添加はブタ未成熟卵子のガラス化保存に有効であると考えられた。
  • 原 隆夫, Valdez Delgado Jr., 宮本 明, 葛西 孫三郎, 枝重 圭祐
    セッションID: 40
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】魚類卵子の凍結保存の成功例は報告されていない。卵子の体積が非常に大きいため,水や耐凍剤の透過が不十分であるためであろうと考えられる。我々は第96回大会で,メダカ(Oryzias latipes)卵子に水/耐凍剤チャンネルであるアクアポリン3(AQP3)を発現させることによって,水や耐凍剤に対する透過性が向上することを報告した。本研究では,AQP3を発現させた未成熟卵子の低温生物学的特性を調べ,さらに凍結保存を試みた。【方法】未成熟卵子にAQP3 cRNAを注入し,6時間培養してAQP3を発現させた。耐凍剤透過性は,卵子を25˚Cの耐凍剤液(8%エチレングリコール(EG),10%グリセロール(Gly),10%プロピレングリコール(PG)あるいは9.5%DMSO添加90%TCM199)に60分間浸し,その相対的体積変化から調べた。耐凍剤毒性は,卵子を25˚Cの10%あるいは30%PGに一定時間浸した後に培養し,成熟率,体外受精後の受精率および孵化率から調べた。凍結保存は,卵子を10%PG添加90%TCM199で前処理後,30%PGを含むフィコール70添加90%TCM199で処理して液体窒素に投入する2段階法で行ない,融解後の形態を観察した。【結果】AQP3 cRNA注入卵子の耐凍剤透過性は,いずれの耐凍剤でも無処理卵子と比べて増加したが,PG透過性が最も高かった。10%PGおよび30%PGのいずれに浸した場合でも,AQP3 cRNA注入卵子は無処理卵子に比べて成熟率,受精率,孵化率ともに有意に低下し,毒性の影響をより強く受けた。これはおそらく,AQP3発現によりPG透過性が向上したためであろう。無処理卵子を凍結保存すると,液体窒素での冷却時にすでに卵子内に氷晶形成が観察された。一方,AQP3 cRNA注入卵子では冷却時には氷晶形成が観察されなかったが,融解過程で観察された。融解後,いずれの卵子も死滅した。さらなる膜透過性の向上が必要であると考えられる。
  • 太田 悟史, 田中 光信, 葛西 孫三郎, 枝重 圭祐
    セッションID: 41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】細胞が凍結保存後に生存するためには,細胞内外へ水や耐凍剤がすみやかに透過する必要がある。マウス胚では桑実期以降に水や耐凍剤に対する透過性が著しく上昇するが,それには水チャンネルであるaquaporin(AQP)3の発現が関与していることが示唆されている。そこで本研究では,マウス桑実胚のAQP3の発現を人為的に抑制することにより,AQP3が胚の水や耐凍剤に対する透過性にどの程度関与しているか調べた。【方法】ICR系マウスの1細胞期胚に1 ng/nlのAQP3 double strand RNA(ds RNA)を約20 pl注入し,72時間培養して桑実胚まで発生させた。そして,等張のPB1液(0.29 Osm/kg)で平衡化後,25˚CのSucrose添加PB1液(0.80 Osm/kg)に5分間浸し,その体積変化から水透過係数(LP)を算出した。同様に,10% glycerol(Gly),8% ethylene glycol(EG),1.5 M acetamide(AA),9.5% DMSOあるいは10% propylene glycol(PG)を添加したPB1液(1.85~1.92 Osm/kg)に25˚C で10分間浸し,その体積変化から耐凍剤透過係数(PS)を算出した。【結果】AQP3 ds RNAを注入した胚のLPは無処理の桑実胚と比べて著しく低下し,水チャンネルを発現していないと考えられる未受精卵と同程度であった。AQP3 ds RNAを注入した胚のPGlyおよびPEGも有意に低下した。一方,PPG,PDMSOおよびPAAは低下しなかった。以上の結果より,マウスの桑実胚における水や耐凍剤の透過性の上昇において,AQP3は水,GlyおよびEGの透過に関与していると考えられた。
体外成熟・受精・発生
  • 関 信輔, 神谷 俊光, 葛西 孫三郎, 枝重 圭祐
    セッションID: 42
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 ゼブラフィッシュは、発生学や遺伝学のモデル実験動物として注目されている。卵子の成熟機構の研究には、体外成熟法の確立が望まれる。しかしながら、効率が良く、再現性の高い卵子の体外成熟法は開発されていない。そこで、本研究では、ゼブラフィッシュ卵子の体外成熟培養法の改良を試みた。【方法】 成熟した雌ゼブラフィッシュの卵巣からStage III (GV期)の卵子を回収し、4-pregnene-17α, 20β-diol-3-one(1 µg/ml)を含む種々の濃度(50%∼100%)のL-15 Leibovitz medium(LM液、162∼316 mOsm/kg)で、種々の時間(240∼300分間)26˚Cで培養し、卵子が透明化したものをStage V(MII期)にまで成熟したとみなして、新鮮な精子で授精した。そして、卵子をE3培養液に移し、2時間後に受精率を、72時間後に孵化率を調べた。一部の実験では、さらに0.5 mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を添加したLM液中で卵子を成熟させた。【結果】 270分間成熟培養させた卵子を授精すると、50%および60%LM液で成熟させた卵子の受精率は低く(6%)、孵化した卵子はなかった。しかし、90%LM液で成熟させた卵子では34%の卵子が受精し、17%の卵子が孵化した。従って、90%LM液がゼブラフィッシュ卵子の成熟培養に最も適していると考えられた。成熟培養時間では、260分間90%LM液で培養した卵子の孵化率が最も高かったが、受精率は54%で、孵化率は32%にとどまった。そこで、受精率を向上させることが知られているBSAを添加した90% LM液で卵子を260分間成熟させると、受精率は上昇し(60%)、孵化率も改善された(60%)。本研究により、ゼブラフィッシュ卵子の効率的な体外成熟培養法を開発することができた。
  • 若山 清香, 岸上 哲士, Ngyuan Van Thuan, 大田 浩, 引地 貴亮, 水谷 英二, Bui Hong Thuy, 三宅 ...
    セッションID: 43
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】体細胞クローン動物の成功率が低い原因は、ドナー核が十分に初期化されていないためだと思われていが、初期化因子については何も分かっていない。初期化因子は卵子細胞質の中にあるのだろうか、あるとすればその効果は因子の量および濃度に影響を受けるのだろうか。もし初期化因子が量依存的であれば、その量を増やすことでクローン技術の成功率を高めることができる。そこで本研究では、細胞質増加卵子の作出を試み、作出した卵子の正常性を明らかにするために受精能や発生能について検討した。【方法】本研究では細胞質を増加するために、電気融合法およびマイクロマニヒ゜ュレーターで2つの卵子を極細針で貫通させ融合させる突き刺し法により,卵子を融合させた。融合率および融合刺激による単為発生の有無を調べたのち、単為発生を誘起し胚盤胞へ発生させた。また、これらの方法により最大でいくつまで卵子の融合が可能であるか検討した。次に一方の卵子だけを除核して2つの卵子を融合させることで、1つの紡錘体をもつ細胞質倍加卵子を作成し、続いて精巣上体尾部から採取した精子を顕微受精させ、移植後産仔までの発生能を検討した。【結果】2つの卵子を融合させるためには、電気融合でも突き刺し法でも可能なことが分かった。しかし突き刺し法に比べ電気融合法ではその融合条件次第で単為発生するものが認められた。しかし、3つ以上の卵子を融合させるためには電気融合法が適しており、最高で7つの卵子の融合が可能であった。これらの融合卵子を単為発生させた結果、融合卵子数にかかわらず胚盤胞への発生率は80%以上だった。次に一方の卵子の紡錘体を除去して作成した細胞質2倍化卵子に顕微受精したところ、正常に受精し80%が胚盤胞へ発生した。代理母マウスに移植したところいずれの融合方法からも産子が得られ、透明帯を除去して培養したコントロール胚と同じ成績だった。これらの結果から、細胞質増加卵子の作出が可能なこと、細胞質を増加させても通常の受精能や発生能には影響しないことが明らかとなった。
  • 吉岡 耕治, 鈴木 千恵
    セッションID: 44
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は,これまでに豚胚の体外培養用培地(PZM)を基礎とした体外成熟用培地POM及び体外受精用培地PGMを開発し,単一基礎培地による豚胚の体外生産系を構築した。今回は,体外成熟用培地に豚卵胞液(pFF)を含まない限定培地を用いたDefined systemによる体外生産について検討した。【方法】POMあるいは修正NCSU37培地にpFFあるいはポリビニルアルコール(PVA)を添加した培地(POM+PVA,POM+pFF,NCSU37+PVA,NCSU37+pFF)を用いて豚未成熟卵子の体外成熟を行った。実験1:経時的にホールマウント標本を作製して,核相を調べた。実験2:48時間体外成熟した卵子を,電気刺激及びシクロヘキシミドにより活性化処置した。活性化処置後の前核形成を調べるとともに,PZM-5で培養して,発生成績を検討した。実験3: 44時間体外成熟した卵子を,凍結射出精液を用いてPGMtac5で体外受精した。体外受精後の受精率を調べるとともに,PZM-5で培養して,発生成績を検討した。【結果】実験1:NCSU37+PVA で成熟培養を行った場合,卵核胞崩壊および第2減数分裂中期へ達する時間は,他と比べ遅延した。しかしPOM+PVAでは,POM+pFFおよびNCSU37+pFFと同様の成熟率を示した。実験2:活性化処置により2前核を形成した卵子の割合に体外成熟培地による差は認められなかった。しかし,活性化後2日目の卵割率および5日目の胚盤胞への発生率は,NCSU37+PVA で成熟培養を行った場合,他と比べ有意に低下した。実験3:NCSU37+PVAでは体外受精後の精子侵入率及び雄性前核形成率は,他に比べ有意に低下した。また,2極体及び1対の雌雄前核を持つ正常受精率は,POM+PVAで体外成熟した場合,他に比べ有意に高い値を示した。さらに,POM+PVAで体外成熟した場合,胚盤胞の細胞数は,pFFを添加した場合に比べ少ないものの,同等の胚盤胞への発生率が得られた。これらのことから,病原体が混入している可能性のある生体由来の卵胞液を添加せず,既知成分のみで構成された培地により豚胚盤胞が体外で生産できることが判明した。
  • 糸井 史陽, 村山 嘉延, 尾股 定夫, 吉田 光敏
    セッションID: 45
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまで我々は,マイクロバイオセンサによる家畜卵外被の硬さ測定をリアルタイムで実行するシステムの確立に成功し,ウシ・ブタ卵の体外成熟・受精・発生過程における卵透明帯の硬度変化を明らかにした。しかし,同センサ感度はピエゾ圧電素子のロットやガラス針形状に依存し,測定感度の調整に最も時間と労力を要する。また,胚盤胞期以降の胚では,細胞が透明帯内腔を埋めつくし囲卵腔がなくなるため本来の透明帯硬度が得られない可能性がある。そこで,本研究では卵硬度測定操作の中で測定感度調整の簡易化について検討し,次いで胚盤胞期以降の胚の透明帯硬度の測定条件について検討した。【方法】円筒型ピエゾ圧電素子の先端に微細ガラス針を接続したマイクロバイオセンサに測定対象を一定速度で進入させ,周波数変化量を記録,既知のゼラチン濃度(4-8%)測定により求めた検量線からゼラチン濃度に換算した。実験1:新規に導入した自動周波数調整ボックスを介して測定感度を設定したセンサと従来方式により手動で感度を設定したセンサを用いて,食肉センター由来ウシ卵の体外成熟(卵核胞期・第二成熟分裂中期)・受精(雌雄前核期)・発生過程(2細胞期から胚盤胞期)における透明帯の硬度を測定比較した。実験2:体外受精7-8日後の胚盤胞期以降の胚を修正PBS中で胚自体の硬度を測定し,次いでスクロースで処理した後,囲卵腔の確認できた胚の透明帯の硬度を測定し胚自体の硬度と比較した。【結果】実験1:新規に導入した自動周波数調整ボックスにより最適なセンサ測定感度の設定が容易となり,測定準備に要する時間が大幅に短縮された。一方,ウシ卵透明帯の硬度は成熟過程で有意に減少,受精過程で有意に増加し,その後の発生過程で有意に減少したが(P<0.01),同測定結果にセンサ調整法で違いはなかった。実験2:スクロース処理した胚盤胞および拡張期胚盤胞の透明帯の硬度は3.24%および3.05%であり,無処理(4.51%および4.84%)と比べて有意に減少した(P<0.05)。
生殖工学
  • 山田 宗弘, 尾畑 やよい, 河野 友宏
    セッションID: 46
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】哺乳類の卵巣には,数千から数十万もの卵母細胞が含まれているが,大部分は生殖に寄与することなく退行していく。これらの潜在的な遺伝子資源の高度利用が可能になれば,希少動物の維持など様々な分野への応用が期待できる。我々は、高度利用の一方法として卵巣内の非成長期卵母細胞(ng)への遺伝子導入に着目している。なぜなら、遺伝子導入により、卵子の成熟やゲノミックインプリンティングなどを飛躍的に促進できる可能性があり、現存する体外培養系や核移植などの高度利用技術より大きなメリットを生じるためである。そこで、マウスngへの外来遺伝子の導入法について検討を行った。【方法】実験にはBDF1新生仔マウスの卵巣より得たngおよび株化細胞NIH3T3を供試した。遺伝子導入法としてエレクトロポレーション(NucleofectorTM;amaxa),リポフェクション(FuGENE6;Roche),HVJ エンベロープ(GenomONE-NEO;石原産業株式会社)を用い、GFPをレポーター遺伝子として持つプラスミドベクター(pCX-EGFP;阪大より分与)の導入を試みた。遺伝子導入処理後、ngの培養は10%FBS添加α-MEMにて、NIH3T3の培養は10%FBS添加DMEMにて,ともに37℃,5%CO2,95%空気の気層条件下で行った。EGFPの検出は、遺伝子導入処理24時間後から96時間後まで行った。【結果】ngへの遺伝子導入効率はエレクトロポレーション法,リポフェクション法およびHVJ法で、それぞれ1.93%,0.18%および0.14%であった。また、NIH3T3への遺伝子導入効率はそれぞれ78.4%,50.7%および7.70%であった。以上の結果から体細胞に比べ,生殖細胞への遺伝子導入は困難であるが、エレクトロポレーションを用いることにより,約2%のngに外来遺伝子の導入が可能であることがわかった。また、ngにはエレクトロポレーションのような物理的な導入方法が適していることが示唆された。
  • 鳩谷 晋吾, 近藤 靖, 奥野 剛, 小林 欣滋, 鳥居 隆三, 熊谷 大二郎, 杉浦 喜久弥, 喜田 加世子, 川手 憲俊, 玉田 尋通, ...
    セッションID: 47
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】イヌES細胞は,細胞を分化させて治療に応用する再生獣医療を可能にし,さらに遺伝子改変イヌの作製やクローン技術へ応用できる。しかしながら,イヌES細胞株樹立の試みは未だになされていない。そこで本研究では,イヌES様細胞の分離・継代方法の検討,特性解析およびin vitroの分化能を調べた。【方法】(1)雌イヌより各段階の受精卵を回収後,内部細胞塊を分離し,マウスLIF添加培地を用いてマウス胎子線維芽細胞と共培養し,ES様細胞の初代コロニーが形成される割合を調べた。(2)ES様細胞の初代コロニーをコラゲナーゼ処理(12個),あるいは物理的に分離する群(17個)の2つに分け,継代方法について比較した。(3)未分化マーカーであるALP活性,Oct-4,SSEA-1,SSEA-4の発現を調べ,さらに,浮遊培養することによって,胚様体形成能を検討した。(4)胚様体を接着培養させることによって,in vitroにおける分化能を調べた。【結果】(1)15頭のイヌより80個の受精卵が回収でき,ES様細胞の初代コロニー形成率は,それぞれ桑実胚0%(0/13),胚盤胞期胚25.6%(10/39),脱出胚盤胞期胚67.9%(19/28)であり,脱出胚盤胞期胚ではその割合は有意に増加していた(P<0.05)。また,得られた細胞は、他動物種のES細胞と類似した形態を示した。(2)コラゲナーゼ処理群では,3代目にはすべてのコロニーが分化・死滅したが,物理的継代群では,2つのcell-lineが8代目まで未分化な状態を維持できた。(3)ALP活性,Oct-4,SSEA-1は陽性であり,SSEA-4は陰性であった。また,浮遊培養により胚様体が形成され,さらに培養を続けるとcystic胚様体に発達した。(4)胚様体の接着培養により,神経細胞様,上皮細胞様,色素産生細胞様,線維芽細胞様,および拍動する心筋様の細胞群が観察された。以上の結果より,イヌES様細胞を効果的に分離・培養することに成功した。さらに,その特性は他の動物種ES細胞と類似しており,in vitroで様々な細胞へ分化できることがわかった。
  • 植村 健治, 斎藤 祐司, 伊藤 光, 宮崎 伸男, 西原 真杉, 太田 昭彦
    セッションID: 48
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】mouse whey acidic protein(mWAP)/human growth hormone(hGH)融合遺伝子を導入した2系統(High-Line、Low-Line)のTGラットの雌は不妊である。マウスでは不妊雌卵巣の正常雌への移植による継代法が開発されているが、不妊TGラットでの卵巣移植による継代の報告はない。本研究では、卵巣移植を行い、TG卵巣の妊孕性を検討するとともに、継代法としての有用性について追求した。
    【方法】3-8週齢のmWAP-hGH遺伝子をヘテロにもつTGラットの雌をdonorとし、6-11週齢のNon-TGラットの雌をrecipientとした。卵巣移植は、recipientの卵巣を全て切除し、TG卵巣を卵巣嚢内に移植する方法(全摘出法)をLow-lineで行い、recipientの卵巣の基部を一部残しその上にTG卵巣を移植する方法(部分摘出法)をLow-line、High-lineで行った。卵巣移植個体は術後2週間以降に、Non-TG雄と交配させた。得られた産仔は、離乳後PCRおよびsouthernhybridizationによりTG個体の確認を行った。
    【結果】Low-Lineにおける全摘出法による分娩率(分娩個体/移植個体)は、33.3%(6/18)、平均産仔数は2.7匹、TG出現率(TG産仔/総産仔)は、50.0%(8/16)であった。部分摘出法ではLow-line、High-lineで各々の分娩率は75%(3/4)、80%(4/5)平均産仔数は、8.7匹、11.6匹、TG出現率は、8.0%(2/25)、30.4%(7/23)であった。部分摘出法による分娩率、産仔数の上昇とTG出現率の減少は、残されたrecipient卵巣より排卵される卵の寄与によるものと推定される。以上の結果から、両系統のTG卵巣においても正常発生能を有する卵が排卵されることが明らかとなり、さらに、不妊TGラットの系統維持における卵巣移植法の有用性が示唆された。
  • 上野 智, 黒目 麻由子, 富井 亮, 比留間 克己, 斎藤 仁, 長嶋 比呂志
    セッションID: 49
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】透明帯に大きな損傷を受けた初期胚をレシピエント雌の卵管に移植した場合、卵管収縮や免疫反応に起因する胚の損耗が起こることが想定される。本実験では、核移植や顕微授精などの操作に伴う透明帯損傷が移植後の胚発生及び生存性に及ぼす影響を調べることを目的とした。【方法】屠場由来ブタ卵巣より採取した卵丘卵子複合体をNCSU23中で体外成熟させ作製したMII期卵を実験に供した。MII期卵の透明帯に外径8~10µmの顕微授精ピペットによる穿孔あるいは外径35~40µmの除核ピペットによる切開を設けた。対照には透明帯損傷のない卵を用いた。これらの卵に電気刺激を与えて、単為発生を誘起し、性周期を同調したレシピエントブタの卵管内に移植した。5~7日後に1%FBS添加PBS(+)を用いて子宮灌流し、移植胚を回収した。回収胚の発生率(桑実胚~胚盤胞⁄回収胚)及び生存率(生存胚⁄回収胚)を調べた。【結果】透明帯穿孔胚221個、透明帯切開胚129個及び対照胚57個を、それぞれ4頭、2頭及び2頭のレシピエントに移植した。その結果、各区の胚回収率は同等(59.0~81.8%)であった。しかし、透明帯損傷胚区では胚発生率及び生存率が、対照区に比して不安定な傾向が認められた。すなわち、胚発生率及び生存率が穿孔胚では57.1(28⁄49)~95.7(22⁄23)%、8.2(4⁄49)~78.3(18⁄30)%、切開胚では47.6(30⁄63)~92.3(36⁄39)%、23.8(15⁄63)~92.3(36⁄39)%であったのに対し、対照胚では92.6(25⁄27)~96.7(29⁄30)%、77.8(21⁄27)~96.7(29⁄30)%であった。以上の結果、透明帯に損傷のあるブタ初期胚を卵管内に移植した場合の胚発生率及び生存率は、損傷のない胚を移植した場合に比べ不安定であることが明らかになった。核移植や顕微授精などの操作に伴う透明帯損傷が、胚の発生及び生存性に影響を及ぼす可能性があることが示された。本研究は生研センター基礎研究推進事業の補助を受けた。
  • 菅 和寛, 青柳 和重, 千代 豊, 星 宏良
    セッションID: 50
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,いくつかの遺伝病や経済形質の遺伝子診断が可能となり,胚の段階での複数項目の遺伝子診断も報告されている。しかし,それらは少数のバイオプシー細胞をサンプルとして,改良を加えたPCR法により実施した例が大半である。本研究では,ひとつの胚に対して高精度な多項目の遺伝子診断を可能とする十分なDNA量を得るため,バイオプシー栄養膜細胞を効率的に増殖させる培養方法の開発を試みた。本発表では,栄養膜細胞培養に適したバイオプシー法及び培地の検討について報告する。【方法】バイオプシー法は従来法(栄養膜細胞の一部を金属刃で切断),またはヘルニア法(透明帯に入れたスリットから形成したヘルニア状の栄養膜細胞を金属刃で切断), 培地はHPM199,またはESM-2(いずれも機能性ペプチド研究所)とし,試験区分はバイオプシー法と培地の組み合わせで4区を設定した。常法で作出したウシ体外受精卵を用い,バイオプシーした栄養膜細胞断片を10%FBSを添加した培地に浮遊させて培養した。培養1,7,14日後に生存率および推定細胞数を調査した。【結果】培養1,7,14日後の生存率はヘルニア法+ESM-2がそれぞれ100.0,91.2,85.3%で,従来法+HPM199(2.5,0.0,0.0%),従来法+ESM-2(11.4,6.8,4.5%),ヘルニア法+HPM199(55.6,16.7,5.6%)に比べ有意に高かった(p<0.01)。また,培養7日後の平均推定細胞数は,従来法+ESM-2が2095個,ヘルニア法+HPM199が629個,ヘルニア法+ESM-2が1682個であり,HPM199 に比べESM-2の方が細胞増殖が活発であった。以上の結果から,ヘルニア法でバイオプシーし,ESM-2培地で培養することにより効率的に栄養膜細胞が増殖することが明らかになった。現在,増殖させた細胞を用いて複数項目の遺伝子診断を実施した生体胚の移植試験を行っている。
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