日本繁殖生物学会 講演要旨集
第99回日本繁殖生物学会大会
選択された号の論文の175件中1~50を表示しています
優秀発表賞
内分泌
  • 増田 純弥, 山内 啓太郎, 西原 真杉
    セッションID: AW-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    ストレス刺激は種々の経路で脳へと伝達され、視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系を賦活化する。このHPA反応には性差があり、雌では雄よりも強いHPA反応が見られることが知られている。本研究では、HPA反応に対するエストロジェンの影響やその作用部位を検討することで、HPA反応における性差の発現機序を解明することを目的とした。実験にはラットを用い、無処置の雄及び発情前期雌群、卵巣摘出(OVX)群、OVX後エストラジオール(E2)を補充した群(OVX+E2)、精巣摘出(ORX)群、ORX後E2を補充した群(ORX+E2)を用意した。それぞれに1時間の緊縛ストレスを負荷して経時的に採血を行い、血中コルチコステロン(CS)濃度と血糖値を測定した。その結果、雌ではストレス時、雄よりも有意に高いCS濃度と血糖値が見られた。OVXでは雌よりCS濃度の上昇が有意に減弱したが、OVX+E2では雌と同程度のCS分泌が見られた。また、OVX+E2でOVXよりも血糖値が高くなる傾向が見られた。一方、ORXとORX+E2の間には、CS濃度及び血糖値に有意な差は認められなかった。さらに、新生期にアンドロジェンを投与して脳を雄性化した雌性ラットのOVX群と、それにE2を補充した群では、CS濃度及び血糖値に有意な差は見られなかった。次に、OVXの室傍核または扁桃体にE2を投与したところ、扁桃体にE2を投与した群でストレス時のCS分泌に有意な増強が見られた。さらに扁桃体にエストロジェン受容体(ER)α及びβのアゴニストであるPPT及びDPNをそれぞれ投与したところ、DPN投与群でのみCS分泌の有意な増強が見られた。これらの結果より、HPA反応の性差はエストロジェンに依存しており、エストロジェンに対する脳の感受性にも性差があること、またエストロジェンは扁桃体に存在するERβを介してHPA反応を増強することが示唆された。さらに、HPA反応の性差の生理学的意義の少なくとも1つは、雌におけるストレス時の血糖値上昇の増強にあると考えられた。
  • 高瀬 健志, 上野山 賀久, 平田 淳也, 山田 俊児, 松井 久典, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: AW-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    KiSS-1遺伝子から翻訳されるペプチド,メタスチンはGnRH分泌促進作用をもち,メタスチンの受容体であるGPR54を欠損したヒトやマウスでは性成熟が起きないことが明らかとなっている。本研究では,性成熟期のGnRHパルス状分泌高進におけるメタスチンの生理的役割の解明を目的とし,性成熟期におけるメタスチン発現の変化をmRNA,ペプチドレベルで明らかにするとともに,脳内メタスチンの作用阻害により性成熟が遅延するか否かについて検討した。生後21,26,31,36および41日齢の雌ラットの視床下部弓状核-正中隆起(ARC-ME),前腹側脳室周囲核(AVPV)および内側視索前野(mPOA)を採取した。ARC-MEおよびAVPVにおけるKiSS-1 mRNA 発現量を定量的RT-PCRにより検討した結果,21日齢から26日齢にかけて有意に増加し,その後は高く保たれた。ARC-MEおよびAVPVのメタスチン免疫陽性細胞は21日齢ではほとんど認められず,26日齢では少数,また31日齢以降は多数確認された。EIAにより定量化したメタスチン含量はARC-MEでは21日齢から31日齢にかけて,AVPVでは21日齢から26日齢にかけて増加し,その後は高く保たれた。一方,生後25日齢より39日齢まで持続的に抗ラットメタスチンモノクローナル抗体を第3脳室内に投与すると,初回発情を示す日齢および体重が正常マウスIgG投与対照群に比べ有意に遅延した。また,膣開口を示す日齢についても抗メタスチン抗体投与群で有意に遅延した。ARC-MEはGnRHパルス状分泌,AVPVはGnRHサージ状分泌の制御に重要な領域と考えられている。このことと本研究の結果から,性成熟期にARC-MEにおいて増加するメタスチンが,性成熟期のGnRH分泌高進のタイミングを決定している生理的な因子であることが示された。
  • 猿渡 悦子, 識名 信也, 竹内 俊郎, 吉崎 悟朗
    セッションID: AW-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】下等脊椎動物において始原生殖細胞(PGC)の増殖制御機構の分子レベルでの解析は全くなされていない。PGCの増殖は、その周囲を取り囲む生殖隆起体細胞より分泌されるサイトカインによって主に制御されていると考えられる。したがって、生殖隆起体細胞特異的に発現しているサイトカインは、PGCの増殖を制御している可能性が高いと予想した。本研究ではこのようなサイトカインを同定するために、ニジマス生殖隆起特異的に発現する遺伝子を濃縮したcDNAサブトラクションライブラリーを作成した。続いて、cDNAサブトラクションライブラリーより単離したサイトカインに関して、その発現細胞を同定すると共に、PGC・精原細胞に対する機能解析を行なった。【方法】摘出した生殖隆起と生殖隆起を除去した胚体を用いて、生殖隆起特異的に発現する遺伝子を濃縮したcDNAサブトラクションライブラリーを作製した。続いて、2次スクリーニングにより単離したGonadal Soma-Derived Growth factor (GSDF)に関して、その構造解析および、in situ hybridization・免疫組織化学による発現解析を行なった。さらにアンチセンス法を用いた翻訳阻害実験を行ない、初期胚におけるGSDFの機能を解析した。また、組換えGSDFを作製し、in vitro培養下の精原細胞に対する影響を調査した。【結果】構造解析より、GSDFはTGF-β superfamilyに属する新規の遺伝子であることが示唆された。発現解析を行なったところ、GSDFは初期胚から成魚まで、生殖細胞を取り囲む生殖腺体細胞において特異的な発現を示した。GSDF翻訳阻害胚は、PGC数が約50%減少したが、胚体の形成異常やPGCのアポトーシス・移動異常は認められなかった。また、組換えGSDFを用いて精原細胞のin vitro培養を行なった結果、組換えGSDFの濃度依存的に精原細胞の増殖促進効果が認められた。なお、この効果はGSDF特異抗体によって完全に阻害された。以上の結果より、GSDFは雌雄生殖細胞の支持細胞より分泌され、PGCおよび精原細胞の増殖を促進することが明らかとなった。
卵巣
  • 吉田 友教, 青野 展也, 三浦 洋一郎, 佐々田 比呂志, 佐藤 英明, 松山 茂実
    セッションID: AW-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】最近,われわれは,遺伝子修復因子として知られるKu70由来Bax-inhibiting-peptides(BIPs)を開発し,これらのペプチドがアポトーシス阻害効果をもつことを明らかにした。そこで,本研究では卵丘細胞および卵母細胞,さらに胎子期卵巣内卵祖細胞のアポトーシスにおけるBIPsの効果を調べた。【方法】BIPsとして,マウスKu70由来VPTLK,Z-VPTLK,Z-VAD-VPTLKおよびFITC標識したBIPsを用いた。過剰排卵で採取したマウス卵丘細胞・卵母細胞複合体をFITC標識BIPs添加Human Tubal Fluid (HTF)で24時間培養した。培養後,卵丘細胞をヘキスト染色しUV照射下で陽性細胞を観察しアポトーシス率を算出した。また,MII期卵母細胞のフラグメンテーションを観察した。さらに,妊娠15.5日の胎子卵巣を採取し48時間器官培養後,ヘキスト染色により卵祖細胞のアポトーシス率を算出した。【結果】卵丘細胞で,BIPsは濃度50~200 mMで,一方,MII期卵母細胞では濃度400mM以上で細胞膜透過性を示した。BIPsを添加することにより卵丘細胞におけるアポトーシス率は有意に40%低下し,MII期卵母細胞ではフラグメンテーション出現率が有意に30~50%抑制され,両者ともBIPs濃度依存的であった。さらに,胎子期卵巣を器官培養した結果,卵祖細胞のアポトーシス率が有意に抑制された。以上,BIPsが卵丘細胞および成熟卵母細胞,さらに卵祖細胞の細胞死抑制に効果があることが明らかにされ,今後,卵子形成および卵胞発育過程におけるアポトーシスの抑制機構の解明および抑制法の開発が期待される。
精巣・精子
  • 矢野 文香, 鈴木 健介, 吉崎 悟朗
    セッションID: AW-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】近年、精原幹細胞(SSC)を用いた種々の発生工学技法が注目されており、様々な哺乳動物でSSCを濃縮する技術開発が行われている。しかし、現在までに下等脊索動物での報告はなされていない。特に、魚類では各種精巣細胞を同定するマーカーが乏しく、SSCを含むと予想される精原細胞を高純度で精製することすら不可能であった。精原細胞を精製することは、精巣内に含まれる多くの体細胞や発生の進んだ生殖細胞を除去することを意味しており、SSCを濃縮することにつながる。そこで本研究では、生殖細胞が緑色蛍光を発するvasa-GFP遺伝子導入ニジマスをモデルとして用い、フローサイトメーター(FCM)で分画した各細胞集団における各種マーカー遺伝子の発現を解析することで、精原細胞集団の探索を行った。
    【方法】マウスの精原細胞、精母細胞、精細胞において各々発現しているmiliscp 3、およびshippo 1遺伝子のオーソログcDNAをニジマス精巣から単離し、in situ ハイブリダイゼーションにより発現細胞を同定した。次に、vasa-GFP遺伝子導入ニジマスから調整した精巣細胞を、蛍光強度を指標にFCMで細胞を分画化し、各分画における上記遺伝子の発現を定量PCR法により解析した。さらに、蛍光強度で分画化した細胞集団を宿主魚の腹腔内へと移植し、幹細胞能の検定を行った。
    【結果】ニジマスmiliscp 3、shippo 1はそれぞれ精原細胞、精母細胞、精細胞で発現していた。分画化した細胞集団を用いた定量PCRの結果、ニジマスmili遺伝子は強蛍光細胞集団でのみ発現していた。さらに、この細胞集団を宿主に移植した結果、宿主生殖腺に生着し、増殖した。以上の結果から、強蛍光細胞集団は精原細胞集団であり、SSCを含むことが明らかとなった。
卵・受精
  • 齊藤 耕一, 仲澤 誠人, 色川 詠美子, 小野 陽子, 春日 和, 小林 正之, 小嶋 郁夫
    セッションID: AW-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】私達はマウス桑実胚において発現量が増加する新規ホメオティック遺伝子Egam-1Cを発見し,その発現・機能解析を行っている。これまでに,Egam-1Cはマウス妊娠後期の胚体外組織(胎盤,羊膜・卵黄嚢)において発現量が増加することが明らかとなっている。Egam-1Cはホメオティック遺伝子であることから,この時期に転写調節因子として機能することが予想される。妊娠期に発現量が増加する遺伝子として,脳下垂体や胎盤で発現するプロラクチンファミリー遺伝子が知られている。プロラクチンは脳下垂体において発現し,その転写促進にはホメオティック遺伝子Pit-1が転写調節因子として機能する。一方,胎盤において発現するプロラクチンファミリー遺伝子の転写調節因子は現在のところ不明である。本研究では,Egam-1Cがプロラクチンファミリー遺伝子の転写調節因子として機能する可能性を検討するため,Egam-1Cの胎盤・脳下垂体における発現解析,及び樹立細胞株を用いた機能解析を行った。【方法】妊娠期のマウスから脳下垂体を,受胎産物から胎盤を分離し,それぞれ全RNAを抽出し,cDNAを合成した。次に,PCR法及びリアルタイムPCR法によりEgam-1C mRNAの発現パターンを解析した。また,Egam-1Cを発現していないことが既知であるマウス線維芽由来NIH3T3細胞に対し,Egam-1C発現ベクターを遺伝子導入して一過性にEgam-1Cタンパク質を強制発現させ,RT-PCR法によりプロラクチンファミリー遺伝子の発現誘導について解析した。【結果】発現解析の結果,脳下垂体ではEgam-1Cの発現が全く検出されなかったのに対し,胎盤では妊娠後期に発現量が急増した。Egam-1Cの発現パターンは,胎盤で発現するプロラクチンファミリー遺伝子の一員であるProlactin like protein-L (Plp-L)遺伝子の発現パターンとよく一致していた。そこで,NIH3T3細胞においてEgam-1Cタンパク質をを強制発現させたところ,Plp-L mRNAの発現が誘導された。これらのことから,Egam-1Cは妊娠後期の胎盤において,Plp-Lの発現を促進する転写調節因子として機能することが考えられる。
生殖工学
  • 前泊 直樹, 柏崎 直巳, 中井 美智子, 小沢 学, Fahrudin Mokhamad, 野口 純子, 金子 浩之, 菊地 和弘
    セッションID: AW-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】近年、遺伝子改変ブタを効率よく作出する研究が行われており、それらの有用な遺伝情報を後代に伝達する事は重要である。遺伝情報を維持するために、体外胚生産技術が適用されるが、さらに期待される技術の1つとして核置換がある。核置換は卵の受精後の胚発生を支持する能力(胚発生能)が不十分な卵母細胞に含まれる核を、胚発生能を十分に有していると考えられる除核した細胞質へ移植する技術である。本研究では遠心・融合による核置換の確立を目的に、核置換により作出したブタ再構築卵の電気刺激による単為発生処理後の雌性前核形成および胚発生能の評価を行った。【方法】屠場由来の未経産ブタ卵巣より卵丘細胞-卵母細胞複合体を採取し、体外成熟培養を行った(Kikuchi et al., 2002)。44時間後に第一極体を放出した卵を成熟卵とし、実験に供した。パーコール溶液を用い成熟卵の細胞質を小片化し、ヘキスト染色後、蛍光顕微鏡下で核板を含む細胞質小片と含まない細胞質小片とに分類した。核板を含む細胞質小片と含まない細胞質小片を電気融合処理により融合させ、再構築卵を作出した。融合1時間後に電気刺激を加え活性化を誘起し、10時間培養することで再構築卵の雌性前核形成能を、6日間培養することで胚発生能を評価した。なお、透明帯を除去した成熟卵を対照区とし、核置換を行った区を処理区とした。【結果】雌性前核形成率は、対照区では42.0%で、処理区では69.5%であり、両区間に有意な差が認められた(P < 0.05)。胚盤胞への発生率は、対照区では24.6%で、処理区では1.6%であり有意な差が認められた(P < 0.05)。胚盤胞の細胞数は対照区では平均44.4個で、処理区では17.3個であった。【結論】遠心・融合による核置換により作出したブタ再構築卵は、雌性前核形成能および胚発生能を有することが認められた。しかし、胚盤胞への発生率が低いことから、活性化誘起や体外培養などの条件を検討する必要がある。
  • 川原 学, 呉 ケイ, 矢口 行雄, ファーガソン-スミス アン, 河野 友宏
    セッションID: AW-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】ゲノムインプリンティングを受けていない新生子由来の非成長期卵母細胞(ng)と成体由来の卵子(fg)のゲノムを保持する雌核発生胚(ng/fg)は胎盤形成期まで発生可能である。この実験系を利用して,父性インプリント遺伝子として知られる,7番染色体上のH19-Igf2および12番染色体上のGtl2-Dlk1のそれぞれの遺伝子発現がマウス胎盤形成に及ぼす影響を調べることを目的とする。【方法】使用したngの遺伝的な背景は以下3種類である;野生型のngWT,7番染色体上の父性メチル化修飾領域を欠損したKOマウスのngΔch7,12番染色体上の父性メチル化修飾領域を欠損したKOマウスのngΔch12。はじめに,ngΔch12/fg胎子の発生能を調べた。次に,各胎盤における父性インプリント遺伝子の発現量とその局在を調べた。また,胎盤切片HE染色像を観察し,巨細胞,海綿状組織,迷路状組織の形態を比較した。最後に迷路状組織の血洞構造を比較した。【結果および考察】ngΔch12/fgは妊娠19.5日まで生存可能であることを明らかにし,妊娠期間を通じてngΔch12/fg胎盤が採取できることを確かめた。ngΔch7/fg胎盤と比較して,ngΔch12/fg胎盤は重量が軽く,Igf2遺伝子の発現量が低く,肥大化した巨細胞が観察された。しかし,ngΔch7/fg胎盤と異なり,Dlk1遺伝子の発現がみられ,迷路状組織に対する海綿状組織の割合および母体血洞構造の複雑化はともに野生型胎盤に類似していた。【結論】マウス胎盤形成において7番染色体上父性インプリント遺伝子群と12番染色体上父性インプリント遺伝子群は異なる役割を果たすことが明らかになった。
一般口頭発表
内分泌
  • 岩田 衣世, 木下 美香, 佐藤 弘明, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    われわれはケトン体の第4脳室(4V)内投与により,黄体形成ホルモンのパルス状分泌が抑制され,摂食が誘起されることを明らかにした。このことから,ケトン体が負のエネルギーシグナルとして,他のエネルギー基質とともに4Vを裏打ちしている上衣細胞に感知されているのではないかと考えている。実際,in vitro で4V周囲の上衣細胞においてケトン体である3-hydroxybutylateによる細胞内カルシウム濃度([Ca2+ ]i)の上昇がみられるとともに,免疫組織化学的によりケトン体の輸送体であるmonocarboxylate transporter (MCT1) が存在していることも明らかにしている。 糖尿病のラットでは血中のケトン体濃度が上昇し,過度の摂食行動が観察されることから,本研究では,ケトーシスのモデルとしてstreptozotocin(STZ)投与による糖尿病ラットを用いた。ケトン体が後脳上衣細胞により感知され摂食が誘起されていることを確かめるため,ケトン体の輸送担体であるMCT1の阻害剤を第4脳室内に投与した。Wistar-Imamichi系雄ラットの第4脳室に薬物投与用カニューレを留置した後,STZ (i.v. 100 mg/kg)を投与した。STZ投与群では血糖値が300mg/dl以上を示した。第4脳室にMCT1阻害剤であるp-chloromercuri benzese sulphonic acid (pCMBS)またはUPWを投与し,摂食量を測定した。その結果,STZ群においてpCMBS投与により濃度依存的に対照群のレベルまで摂食量が減少した。このことからSTZ投与による糖尿病ラットにおける摂食量の増加には,血中に増加するケトン体が強く関与していることが示された。すなわち,第4脳室周囲の上衣細胞は,糖尿病において血中に増加したケトン体濃度を感知し,摂食を制御していると考えられた。
  • 山田 俊児, 上野山 賀久, 木下 美香, 岩田 衣世, 高瀬 健志, 松井 久典, 足立 幸香, 井上 金治, 前多 敬一郎, 束村 博子
    セッションID: OR1-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    我々は泌乳ラットをモデルとして用い,乳仔からの吸乳刺激によるパルス状黄体形成ホルモン(LH)分泌の著しい抑制によって,泌乳期には卵胞発育および排卵が抑制されることを示した。しかしながら,このLH分泌抑制の神経内分泌機構の詳細は明らかとなっていない。近年,GPR54の内因性リガンドとして同定され,KiSS-1遺伝子から翻訳されるメタスチンが視床下部弓状核(ARC)及び前腹側室周囲核(AVPV)に局在する事,またLH分泌を強力に促進する事が明らかとなった。そこで本研究では,泌乳期のLHパルスの抑制が,脳内におけるメタスチン-GPR54系の抑制に起因するか否かを明らかにすることを目的とし実験を行った。Wistar-Imamichi系雌ラットを用い,分娩後1日目に乳仔を8匹(泌乳群)もしくは0匹(非泌乳群)に調節した。分娩後8日目にARC-正中隆起 (ARC-ME) およびAVPVを採取し,KiSS-1およびGPR54 mRNAの発現量をReal-time RT-PCRにより調べたところ,泌乳ラットのARC-MEにおけるKiSS-1 mRNA発現量は,非泌乳ラットに比べ著しく抑制され,有意に低い値を示した。さらに,非泌乳ラットのARCには多数のメタスチン免疫陽性細胞が認められたが,泌乳ラットでは殆ど認められなかった。一方,AVPVにおけるKiSS-1 mRNA発現及び,メタスチン免疫陽性細胞は両群ともに殆ど認められなかった。これらの結果より,吸乳刺激がARCにおけるKiSS-1 mRNA及びメタスチンの発現を部位特異的に抑制する事が明らかとなった。また,両群のラットの第3脳室にメタスチンを投与したところ,両群ともに血中LH濃度の急激な上昇が見られた事から,泌乳期でもメタスチンに対するLH分泌の反応性は失われていない事が明らかとなった。以上より,泌乳ラットにおけるパルス状LH分泌の抑制は,吸乳刺激によるARCのKiSS-1 mRNA/メタスチン発現の顕著な抑制に起因することが強く示唆された。
  • 大蔵 聡, 岡村 裕昭, 松山 秀一, 束村 博子, 前多 敬一郎
    セッションID: OR1-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    Gタンパク共役型受容体GPR54の内因性リガンドであるメタスチンは,ラットにおいて強力な黄体形成ホルモン(LH)分泌促進作用があることが知られている。本研究では,シバヤギの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌制御機構におけるメタスチンの役割を検討することを目的として,シバヤギ視床下部におけるメタスチンニューロンの分布とその投射領域の免疫組織化学的検索を行うとともに,メタスチンの側脳室内投与がGnRHパルスジェネレーター活動におよぼす影響を電気生理学的に調べた。実験には、卵巣除去(OVX)およびOVX後エストロジェン含有シリコンカプセルを皮下にインプラントした(OVX+E2)成熟シバヤギを用いた。視床下部弓状核-正中隆起部に留置した電極を通じて血中LHパルスと同期する多ニューロン発火活動(MUA)を記録し,GnRHパルスジェネレーター活動の指標とした。側脳室内にメタスチン(0, 0.1, 1, 10 nmol)を投与し,GnRHパルスジェネレーター活動およびLH分泌の変化を調べた。シバヤギ視床下部におけるメタスチン免疫陽性ニューロンの細胞体は視床下部弓状核に密集し,メタスチン陽性神経線維は正中隆起外層のGnRH陽性神経線維の近傍に投射していた。OVXおよびOVX+E2シバヤギにおいてメタスチンの側脳室内投与は用量依存性にLH分泌を促進したが,GnRHパルスジェネレーター活動には影響しなかった。メタスチンにより誘起された一過性のLH放出の間も,固有の脈動リズムを継続する内因性のLHパルスが観察されたことから,脳室内に投与したメタスチンはGnRHパルスジェネレーター活動の亢進を伴わずにLH分泌を促進することが示された。本実験の結果から,視床下部弓状核に存在するメタスチンニューロンは,GnRHパルスジェネレーターそのものではなく,正中隆起部のGnRH神経終末に作用してGnRH放出調節に関与する可能性が示唆された。
  • 吉田 智佳子, 中尾 敏彦, ムハンマド ユスフ, スー タン ロン, ゴータム ゴカルナ, ラナシン ビマルカ
    セッションID: OR1-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】副腎皮質由来の血中Progesterone濃度の有意な増加を引き起こすACTH投与量とその時の血中Cortisol濃度を明らかにするとともに、直腸検査による生殖器触診に対する副腎の反応を明らかにする。【方法】卵巣割去した体重650 ∼ 715 kgのホルスタイン種乳牛4頭を用いた。牛は、畜舎内に繋ぎ飼いとした。7日間隔で、生理食塩液2 ml投与(対照)、直腸検査による生殖器触診、ACTH6IUおよびACTH12IU投与試験を行った。これらの処置の開始時刻は12時とし、その4時間前に頚静脈にカテーテルを装着し、装着後から処置後6時間まで、30分間隔で血液を採取した。血漿中ProgesteroneおよびCortisol濃度をEIAにより測定した。【結果】生理食塩液投与、直腸検査、ACTH 6 IUおよび12 IU投与後30分の血漿中Cortisol濃度の平均(± S.E.)は、それぞれ、2.0 ± 0.6 ng/ml、4.1 ± 3.7 ng/ml、38.3 ± 4.6 ng/ml および 30.6 ± 5.8 ng/ml であり、それぞれに対応するProgesterone濃度は、それぞれ、0.6 ± 0.1 ng/ml、0.4 ± 0.1 ng/ml、0.9 ± 0.1 ng/ml および 0.7 ± 0.2 ng/ml であった。Progesterone濃度、Cortisol濃度ともに、ACTHの投与量、投与後の時間およびその相互作用による影響を受けていた(P < 0.05)。【考察・結論】今回の結果から、6 IUのACTH負荷により、Cortisol濃度は有意に増加し、Progesterone濃度も有意な増加を示すことが明らかにされた。また、直腸検査による生殖器触診は、CortisolおよびProgesterone濃度の有意な増加を起こさないことが示唆された。
  • 林野 淳, 春名 聡子, 黒岩 武信, 田中 知己, 加茂前 秀夫
    セッションID: OR1-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    [目的]近年、腟内徐放剤によるプロジェステロン(P)処置が卵巣疾患の治療に用いられるが、P処置期間の長さの違いにより、卵巣の反応が異なることが指摘されている。本研究では、シバヤギを用いて、異なる期間のP処置が黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌およびP処置後のエストラジオール(E2)により誘起されるサージ状分泌に及ぼす影響を検討した。[材料と方法]卵巣摘出シバヤギを用い、黄体期レベルのE2濃度を再現する目的で実験開始時にE2含有チューブを皮下移植した(Day0)。P7群(n=4)ではDay0~7に、P3群(n=5)ではDay4~7に、黄体期レベルのP濃度となるようにP含有シリコンシートを皮下移植した。P0群(n=4)ではDay0~7にPを含有しないシリコンシートを皮下移植した。すべての群においてDay7にシートを抜去し、LHサージを誘起する目的でシート抜去後13時間から3μg/hの割合でE2を36時間持続投与した。Day7において、LHパルスの変化を調べる目的でシート抜去前6時間から抜去時まで10分間隔で、またLHサージの発現を調べる目的でE2持続投与開始前4時間から投与終了後12時間まで2時間間隔で採血を行った。[結果]Day7におけるLHパルス頻度は、P7群、P3群、およびP0群においてそれぞれ、2.8±1.5回/6h、3.0±0.7回/6h、6.8±1.0回/6hであり、P7群とP3群ではP0群と比較して有意に抑制された(p<0.01)が、P7群とP3群の間には有意な差は認められなかった(p>0.05)。一方、LHサージのピーク時間は、E2持続投与開始後、P7群、P3群、およびP0群においてそれぞれ、25.0±2.6 h、18.0±1.4 h、14.0±2.8 hであり、各群間で有意な差がみられた(p<0.05)。[まとめ]LHパルス頻度は3日間のP処置によってすでに7日間のP処置と同程度に抑制されているのに対し、E2投与開始からLHサージ発現までの時間は、P処置7日間の範囲においては、P処置期間の長さに依存して延長することが示唆された。
  • 志田 怜子, 鈴木 佐衣子, 野中 寿美恵, 米澤 智恵美, 橋爪 力, 粕谷 悦子, 須藤 まどか
    セッションID: OR1-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】最近,ドーパミンのニューロン内でドーパミンの誘導体として生成されるSalsolinol (SAL) がラットのプロラクチン(PRL)を放出させることが報告された。このことは,ドーパミンはPRL分泌の抑制因子であるが,生体内では放出因子にもなり得ることを示唆する。本研究は反芻家畜のPRL分泌に及ぼすSALの影響を,ヤギとウシを用いてin vitro及び in vivoで検討した。【方法】In vitroの実験ではウシの培養下垂体前葉細胞に10-5~10-9Mの SALを2時間作用させ,培養液中に放出されるPRL量を対照区と比較した。In vivoの実験では成熟雌シバヤギに生食(対照)とSAL (5 mg,10 mg/kgBW)を頚静脈内に投与し,投与1時間前から投与2時間後までの間,10分から20分間隔で採血を行った。また視床下部を介した作用を明らかにするため,8ヶ月齢の去勢ホルスタイン牛の第三脳室にカニューレを装着して,SAL(1mg,5mg/頭)と生理食塩水を第三脳室に投与し,投与1時間前から投与3時間後までの間,10分から20分間隔で採血を行った。PRL濃度はRIAとEIAで測定した。【結果】(1)10-5M及び10-6M SALはウシの培養下垂体前葉細胞からPRLを有意に放出させた(P<0.05)。(2)ヤギの頚静脈内にSALを5 mg及び10 mg投与すると,血中PRL濃度は急速に上昇し,投与10分後に最高値を示した(P<0.05)。PRL濃度は,その後徐々に減少し,80分後にほぼ基礎濃度まで減少した。PRLの放出反応は5 mgより10 mgの方が大きかった。(3)ウシの第三脳室内にSALを1mg投与してもPRLの有意な放出は見られなかったが,5mg投与すると血漿中PRL濃度は上昇し,投与20分と40分後に対照区に比べて有意に高い値を示した(P<0.05)。本研究の結果は,Salsolinolは反芻家畜のPRLを放出させることを示している。
  • 野中 寿美恵, 橋爪 力, 古関 次夫, 沖村 昌彦, 大藪 武史, 中林 見
    セッションID: OR1-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】雄ウシの春期発動や性成熟に伴うGH-IGF-I軸や,PRL分泌の変化は明らかでない。本研究はホルスタイン種雄ウシを用いて,8ヶ月齢から18ヶ月齢まで採血を行い、この期のGH,IGF-I,PRLの内分泌変化を調べた。【方法】家畜改良センター新冠牧場飼養のホルスタイン種雄ウシ計7頭を供試した。雄ウシは8ヶ月,10ヶ月,12ヶ月,15ヶ月及び18ヶ月齢時に,それぞれ頸静脈カテーテルより15分間隔で3時間採血を行った。血漿中のGH,IGF-I及びPRL濃度はRIAにより測定し,月齢ごとにそれぞれ平均濃度を求め,各月齢間におけるホルモン濃度差を比較検討した。【結果】(1)GH濃度は,18ヶ月齢の値が8ヶ月齢,12ヶ月齢及び15ヶ月齢の値に比べ有意に高い値を示した(P<0.05)。しかし10ヶ月齢でも同様に高い値を示す傾向が見られ,月齢に伴う明確な変化は明らかでなかった。(2)IGF-I濃度は,8ヶ月から12ヶ月齢の間で月齢が進むにつれ増加した(P<0.05)。12ヶ月齢以降は18ヶ月齢まで12ヶ月齢時の値を維持した。(3)PRL濃度は,8ヶ月齢が最も高く,月齢が進むにつれ減少し(P<0.05),18ヶ月齢の値が最も低い値を示した。本研究の結果は,8ヶ月から18ヶ月齢のホルスタイン種雄ウシでは, とくにIGF-IとPRLが性成熟と関連した生殖生理と関わりの深いことを示唆している。
  • 北郷 潤, 桃沢 幸秀, 若林 嘉浩, 伊藤 敦子, 山岸 公子, 岡村 裕昭, 菊水 健史, 武内 ゆかり, 森 裕司
    セッションID: OR1-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    シバヤギの「雄効果」を引き起こすフェロモンは本来、雄シバヤギの頭部皮膚においてのみ産生されるが、去勢雄(Cast)や卵巣摘出雌(OVX)でもTestosterone(T)やDihydrotestosterone(DHT)を人為的に処置すると産生が認められるようになる。このことから、TやDHTといった雄性ホルモンがフェロモン合成酵素遺伝子の発現を増加させていることが推測される。また、頭部ではDHT処置によりフェロモン合成に伴い皮脂腺発達が生じるものの、臀部においてはフェロモンが合成されながらも皮脂腺は発達しないことが明らかにされており、頭部と臀部皮膚ではステロイド処置によって発現の変化する遺伝子群が異なると予想される。本研究では、雄効果を引き起こすフェロモン合成に関わる遺伝子群を明らかにする目的で、まずCast+Tモデルの頭部皮膚とCast+DHTモデルの臀部皮膚においてサブトラクション法を適用し、発現の増加するRNA断片各480クローンを解析した。両サブトラクションで共通して見られた配列は12種類で、すべて既知の遺伝子であった。続いて、これら共通12遺伝子とそれぞれのサブトラクションで検出された未知配列についてOVX+DHTモデルの頭部・臀部皮膚におけるmRNA発現量をReal-time PCR法にて比較した。その結果、8遺伝子と1未知配列でDHT処置によるmRNAの発現増加が認められた。中でも、発現増加が顕著であったlong-chain fatty acid elongase, family member 5(ELOVL5)、stearoyl-CoA desaturase(SCD)についてin situ hybridization法にて発現部位を検索したところ、両者とも皮脂腺細胞において発現することが明らかとなった。 以上の結果より、本研究で検出された8遺伝子と1未知配列が、フェロモン合成に関与する可能性が示され、ELOVL5は長鎖脂肪酸の伸長を行う酵素、SCDは脂肪酸に二重結合を1つ入れる酵素であることから、フェロモン分子は長鎖不飽和脂肪酸またはその関連物質であることが示唆された。
  • 加藤 隆, 向井 一真, 三嶌 裕志, 太田 昭彦
    セッションID: OR1-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】マストミスは雌にもよく発達した前立腺が存在する稀有な実験動物である。これまでの研究において,雌では血中Testosterone(T)濃度は著しく低いが,雌性前立腺内の5α-dehydrotestosterone(DHT)量は雄の副生殖器と同様に非常に高いことが示された。本研究ではDHTへの変換酵素5α-reductaseの阻害剤であるFinasterideを投与し,前立腺重量,血漿及び前立腺内androgen量の変化を検討,DHTの雌性前立腺への発達,維持に対する役割を追究した。【方法】3-4ヶ月齢の成熟雌雄Jms:CHAM系マストミスを用い,Finasterideを5mg/kg B.W./dayの用量で5日間投与後,または10mg/kg B.W./dayの用量で15日間投与後に剖検を行った。また5日間投与群では血漿及び前立腺内androgen量をLC-MS/MS法により測定した。【結果】Finasteride 5mg/kg B.W./day 5日間の投与では,雄の前立腺は対照群に比べ有意に重量が減少したが,雌の前立腺では有意な減少は認められなかった。さらに,10mg/kg B.W./day 15日間の投与においても雄の精嚢腺,前立腺は有意に重量が減少したが,雌の前立腺では有意な減少は認められなかった。雌の血中androgen濃度は雄に比べ著しく低かった。また雌雄ともFinasteride投与による血中androgen濃度の大きな変化は見られなかった。雄の前立腺DHT量は対照では14.0 ng/gであったが,Finasteride投与によって5.8ng/gと大きく減少した。また,前立腺T量は対照の1.4ng/gからFinasteride投与により13.3ng/gと大きく増加した。一方,雌の前立腺DHT量は対照では17.3 ng/gであったが,Finasteride投与によっても11.3 ng/gまでしか減少せず,DHTは依然雄の対照に匹敵する高い濃度であった。また前立腺T量は対照0.3 ng/gがFinasteride投与によっても2.0 ng/gまでの増加にとどまった。【考察】Finasterideの5α-reductaseの阻害効果には雌雄差が見られ,雌性前立腺におけるandrogen代謝は,雄とは異なり独特のものであることが示唆された。
  • 佐藤 崇信, 諏佐 崇生, 北原 康輔, 中山 美智枝, 佐野 亜希子, 加藤 たか子, 加藤 幸雄
    セッションID: OR1-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    我々は、これまで、FSHβ鎖遺伝子の新規転写因子Prop-1およびLhx2をクローニングし、FSHβ鎖遺伝子の発現調節機構解明の新展開を推進している。今回、さらにFSHβ鎖遺伝子の新規転写因子として、転写因子Prx2をクローニングしたので報告する。Prx2の機能を、ゲルシフトアッセイ、DNase I フットプリンティング、レポーターアッセイにより、結合能と結合部位の同定、転写促進能を解析した。下垂体におけるPrx2の同定は初めてであるため、胎児・生後のブタ下垂体および下垂体腫瘍由来の複数のホルモン産生株化細胞を用いたリアルタイムRT-PCR解析で、Prx2の下垂体での発現を確認した。転写因子Prx2はFSHβ鎖はもちろん、α鎖とLHβ鎖遺伝子上流域にも結合した。結合部位を解析したところ、全ての遺伝子で複数の結合部位が同定され、いずれもATに富む配列で多くはホメオドメイン転写因子の結合するATTA-motifを含んでいた。次にPrx2の転写能について調べたところ、FSHβ鎖、α鎖およびLHβ鎖についてもその転写を促進した。リアルタイムRT-PCR解析では、Prx2は量的な変動はあるものの胎児期および出生後も発現が持続し、株化細胞では、ゴナドトロフ系譜の細胞であるLβT2、LβT4細胞において発現が確認され、他のホルモン産生細胞系譜では発現が認められなかった。 以上のように、本実験は、Paired-related型に属するPrx2を、ゴナドトロピンを構成する全てのサブユニット(α鎖、FSHβ鎖、LHβ鎖)遺伝子の転写因子として初めて発見したことになる。今後、どの様な細胞外シグナルに応答するかなどの解析を展開する。
  • 森山 隆太郎, 井本 慎吾, 車野 慎哉, 福嶋 伸之
    セッションID: OR1-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】G protein-coupled receptor 120 (GPR120) は長鎖脂肪酸をリガンドとするGタンパク質共役型受容体である。これまでに回腸や直腸にGPR120 mRNAが発現すること、腸内分泌細胞でglucagon-like peptide-1分泌に関与することが報告されている。しかし、腸以外での生理的役割は解明されていない。絶食時には血中遊離脂肪酸濃度が上昇することから、我々は絶食時にはGPR120を介した摂食や生殖の制御メカニズムが存在すると仮説提唱した。本研究の目的は、絶食時の性腺機能抑制に関与するGPR120の発現部位を解明することにある。【方法】実験には 8週齢のICR系雄マウスを用いた。正常給餌、24および 48 時間絶食した動物の視床下部、延髄、下垂体、精巣、回腸、直腸より抽出したRNA用いて、リアルタイム PCR法によりGPR120 mRNA発現量の変化を調べた。次に、凍結切片を用いた in situ hybridization法および免疫組織化学法により、GPR120 mRNAとタンパク質の発現細胞を観察した。【結果】GPR120 mRNAは下垂体、精巣、回腸、直腸で高い発現が観察された。24および48時間の絶食により、下垂体と直腸のGPR120 mRNA発現量が、正常給餌群に比べて統計的有意 (p<0.05) に増加した。下垂体組織を用いた in situ hybridization法の結果、下垂体前葉の細胞でGPR120 mRNA発現が観察された。蛍光2重染色の結果、GPR120様免疫陽性細胞は下垂体前葉で観察され、LHβ、FSHβおよびαサブユニットと共存していた。しかし、TSHβとの共存は観察されなかった。以上より、GPR120は下垂体のゴナドトロフと精巣に存在することが示された。また、マウス下垂体のゴナドトロフにおいてGPR120は絶食時のLH合成または分泌抑制に関与することが示唆された。
卵巣
  • 勝俣 悦子, Robeck Todd, 吉岡 基, 田谷 一善
    セッションID: OR1-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】鴨川シーワールドでは、飼育海生哺乳類の個体群の血統管理および希少種の繁殖推進を目的として、それぞれの種の繁殖特性を明らかにし、その研究成果を飼育下での計画的な繁殖に応用している。人工授精の成功には、雌の排卵日の特定と雄からの精子の採集法と保存法が重要な鍵となる。今回は、バンドウイルカにおける超音波画像診断装置による体表からの卵巣モニタリング法を応用して排卵日を特定した場合の人工授精について紹介する。【方法】バンドウイルカ雌3頭(経産2頭、未経産1頭)を用い、2003年と2004年に合計4回実施した。雌の排卵日を調節する目的で、合成黄体ホルモン剤(altenogest)による発情周期の同期化を行った。卵巣のモニタリングは、アロカ社製超音波画像診断装置(SSD-900,電子コンベックス探触子UST-979-3.5)を用いて、無麻酔下で体表から行った。【結果】発情周期の同期化:Altenogest(13mg/day)を27~30日間餌に混入して経口投与した結果、投与中止から3週間後に排卵が認められた。卵巣のモニタリング:Altenogest投与中止17~19日目に観察した結果、全ての個体で卵巣のモニターが可能であり、卵巣には卵胞が確認された。Altenogest投与中止から22~25日目には、卵胞は直径1.9~2.5cmの最大直径に達した。卵胞が最大直径まで発育した後、12~48時間後(Altenogest投与中止後19~25日)に、卵胞が消失した時点を排卵日と判断した。人工授精:3例は、排卵前2~5日から、12時間間隔で2~8回子宮内に新鮮精液および、凍結精液を人工授精した結果、2例が妊娠した。残り1例は、排卵前12時間と排卵後12時間の2回凍結精液を同様に人工授精した結果、3頭が妊娠し、このうちの2例が出産した。【考察】以上の結果から、バンドウイルカでは、超音波画像診断装置により、体表から卵巣を観察し、卵胞発育と排卵のモニタリングが可能であることが判明した。本法を用いることにより、排卵日の特定が可能であり、イルカ類の人工授精の成功率向上に有力な方法であると考えられる。
  • 宮崎 伸男, 植村 健治, 西原 真杉, 太田 昭彦
    セッションID: OR1-13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】mouse whey acidic protein(mWAP)/human growth hormone(hGH)融合遺伝子を導入した二系統(Low-Line,High-Line)のTGラットの雌は不妊である。我々は前回大会においてTG卵巣のNon-TG成熟雌への移植によって,このTGラットの継代が可能であることを報告した。しかしながらマウスで報告されている卵巣移植法に比べ,分娩率及び産仔数は低いものであった。この原因の一つとして,マウスに比べラットは著しく大型でありrecipientの卵巣摘出による侵襲が大きいことが考えられる。そこで本研究では体が小さく卵巣も未発達な幼若ラット(3-4週齡)をrecipientとして用い分娩率及び産仔数の改善を試みた。【方法】Low-Line,High-Lineの二系統のmWAP-hGH遺伝子をヘテロにもつ3-8週齢のTGラットの雌をdonorとし,6-11週齢のNon-TGラットの雌をrecipientとした従来法,3-4週齢のTGラットをdonorとし,同齢のNon-TGラットをrecipientとした幼若法の二法を用いた。卵巣移植は,recipientの卵巣を全て切除し,TG卵巣を卵巣嚢内に移植する全摘出法で行った。術後2週(従来法)から術後4週(幼若法)以降に,Non-TG雄と交配させた。また分娩個体においては離乳後,再度交配を試みた。産仔は,PCRによりTG個体の確認を行った。【結果と考察】従来法での分娩率(分娩個体数/移植個体数)はLow-Line,High-Lineで各々39.1%(9/23),22.2%(2/9),1出産当たりの平均産仔数は各々3.8匹,2.0匹,平均分娩回数(分娩回数/分娩個体数)は各々1.1回(10/9),1回(2/2)であった。一方,幼若法における分娩率はLow-Line,High-Lineで各々85.7%(6/7),69.2%(9/13)で,1出産当たりの平均産仔数は各々6.8匹,4.7匹であり,さらに平均分娩回数は各々2.3回(13/6),1.6回(14/9)であった。何れの指標も幼若法が従来法に比べ改善または改善傾向を示した。またTG出現率(TG産仔/総産仔)は両法による差異は無かった。以上より,幼若ラットをrecipientに用いることで卵巣移植によるTG産仔の獲得の効率に改善が認められ内分泌異常による不妊TGラットの継代における卵巣移植法の有用性が示唆された。
  • 三井 秋徳, 井上 望, 吉澤 緑
    セッションID: OR1-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】卵巣組織の凍結保存および再移植は、放射線および化学療法などの治療によって生じる卵巣機能障害を避ける手段として有用である。我々は、マウス新鮮卵巣の異所移植と胚移植を組み合わせることで胎仔を得ることに成功した(The International Ovarian Conference 2005)。本研究では、マウスの新鮮卵巣組織とガラス化保存した卵巣組織を異所移植し、凍結や移植部位の相違が、性周期や移植組織の生着、卵胞の成長、黄体形成に与える影響について検討した。【方法】3-5ヶ月齢のICR雌マウスの卵巣を麻酔下で摘出し、1mm四方に細切後、即座 (Fresh)に、または凍結融解後(Vitri)に、腎臓漿膜内(KC)もしくは腹部皮下(SC)に自家移植した。移植11-16日後、1週間スメア細胞像標本を作製して性周期を観察した。その後、卵巣移植マウスをICR雄マウスと同居させ、偽妊娠誘起を試み、膣栓の確認から4日目に移植卵巣組織を摘出し組織標本を作製して、前胞状期卵胞、胞状期卵胞、黄体を観察した。【結果】Fresh-KC(11匹)、Fresh-SC(10匹)、Vitri-KC(10匹)、Vitri-SC(10匹)における卵巣移植後の性周期確認率は、90.9%、50.0%、80.0%、70.0%で、偽妊娠誘起率は、各々90.9%、90.0%、90.0%、80.0%であり、いずれにおいても有意差はみられなかった。生存卵巣組織の確認率は、90.9%、100%、70.0%、10.0%であり、Vitri-SCが他の群に比べ有意に低い値を示した(P<0.05)。生存卵巣組織における前胞状期卵胞確認率は70.0%、70.0%、85.7%、0%、胞状期卵胞確認率は60.0%、70.0%、71.4%、0%、黄体形成率は100%、70.0%、85.7%、0%、でありVitri-SC区以外の群間に有意差は認められなかった。【まとめ】ガラス化凍結保存卵巣組織の腎臓漿膜内移植によって、性周期の保持および黄体の形成が可能であった。
  • 栗田 敦史, 岩田 尚孝, 新井 信元, 増田 恵, 桑山 岳人, 門司 恭典
    セッションID: OR1-15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】胞状卵胞数には大きな個体差が有り、これは繁殖能力に大きく関わっている。本実験では、個体の卵胞数の差と相関のある要因を明らかにする目的で行った。【方法】月齢の判明した食肉センター由来ウシ卵巣の外見(重量、体積、3-5mmの胞状卵胞数、黄体および優勢卵胞の有無)と組織標本(二次、早期二次、一次、早期一次、そして原始卵胞数)からデータを採取した。それらのデータを比較し、胞状卵胞数と相関のある項目を検討した。【結果】左、右の卵巣間では、全てのデータ(n=132)間で正の相関が認められた。次に月齢と卵巣状態を検討した(n=124)。卵巣は加齢に伴って重量・体積が増加し、胞状卵胞数と重量間に正の相関が認められたが、胞状卵胞数と月齢間には相関が認められなかった。また、それぞれの発育ステージの卵胞では、月齢との間で原始卵胞数が負の、二次卵胞数が正の相関が認められた。また、黄体および優勢卵胞の有無は全発育ステージの卵胞数と関係がなかった(n=83)。次に月齢を25-28ヶ月齢(n=54)または、40-85ヶ月齢(n=60)の組織標本で検討した。25-28ヶ月齢の全卵巣あたりの予測数は、原始卵胞数および早期一次卵胞数と、胞状卵胞数との間に正の相関が認められ、表面積あたりの予測数では全発育ステージの卵胞数にも相関が認められなかった。一方、40-85ヶ月齢の全卵巣あたりの予測数は全発育ステージの卵胞数と相関が認められたが、表面積あたりの予測数では二次卵胞数との間にのみ相関が認められた。それぞれの月齢の回収卵子の体外発生率を測定したところ発生率の間には有意差は認められなかった。以上のことより、加齢に伴い卵巣重量が重くなり、原始卵胞数が減少する反面、二次卵胞数は増加すること、発育途中の卵胞数と胞状卵胞数との間で相関があることが示唆された。本研究は守谷育英会の助成により行った。
  • 須藤 奈都子, 清水 隆, 川島 千帆, 金子 悦史, 松長 延吉, 手塚 雅文, 宮本 明夫
    セッションID: OR1-16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【背景】IGF-1は顆粒層細胞の増殖やエストラジオール(E2)産生を刺激するなど、ウシ卵巣の卵胞発育において重要な役割を担っている。私たちはこれまで健常な卵胞ではIGF-1発現は認められず、卵胞液中のtotal IGF-1および顆粒層細胞における受容体(IGFR-1)の発現は一定であることを報告してきた。本研究では卵胞液中のfree IGF-1、卵胞におけるIGFR-1およびIGF-binding proteinの蛋白質分解酵素であるPAPP-AのmRNA発現を各発育段階の卵胞で調べること、また顆粒層細胞の体外培養システムを用い各因子の発現におけるFSHおよびE2の影響を調べることで、ウシの卵胞発育におけるIGF-1システムの解析を試みた。【方法】卵胞を卵胞直径および卵胞液中のE2濃度から、小卵胞(平均7.4mm)、低E2卵胞(13.6 mm)、高E2卵胞(13.5 mm)および前排卵卵胞(16.9 mm)に分類し、卵胞液中のfree IGF-1および顆粒層細胞におけるPAPP-A mRNA発現を調べた。また、培養顆粒層細胞を用いてE2(1-100 ng/ml)、FSH(1-10 ng/ml)およびE2(1 ng/ml)+FSH(1-10 ng/ml)の添加処理を行い、IGFR-1およびPAPP-A mRNA発現を調べた。【結果・考察】卵胞液中のfree IGF-1濃度は低E2卵胞に比べ高E2卵胞および前排卵卵胞において有意に高く、顆粒層細胞におけるPAPP-A mRNA発現も同様の傾向を示した。培養顆粒層細胞におけるIGFR-1 mRNA発現はFSHによって刺激されたが、E2およびE2+FSH処理では発現は刺激されなかった。PAPP-A mRNAはE2処理では発現が誘導されなかったが、FSH によって発現が誘導された。またE2+FSH処理ではその発現が更に高くなった。IGFR-1およびPAPP-Aの発現がFSHによって刺激されたことから、IGF-1システムは卵胞発育波への卵胞動員に関与していることが示唆された。
  • 櫻田 陽右, 代田 眞理子, 内田 直宏, 代田 欣二
    セッションID: OR1-17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    これまでに我々はPCB126の経胎盤・経乳汁曝露が幼若雌ラットの卵胞発育を阻害することを報告している。本研究ではPCB126曝露による卵胞発育の阻害と卵巣内ステロイドホルモン合成との関連を検索するため、卵巣の形態計測と共に、血中ホルモン濃度及び卵巣内のステロイド合成に関連する遺伝子の発現量を測定した。【方法】妊娠15日目のSD系雌ラットに、体重当り30及び100µg/kgのPCB126を、また溶媒対照にはコーン油のみを経口投与し、得られた出生仔を10、15、21、24日齢で断頭屠殺して卵巣及び血液を採取した。標的となる卵胞を検索するため、両側卵巣から作製した連続切片を用いて健常且つ卵胞腔を持つ小型胞状卵胞と単一の卵胞腔を持つ大型胞状卵胞を数えた。卵巣内の遺伝子発現はreal-time PCR法により定量し、StAR、P450scc、3β-HSD、17β-HSD、P450c17及びP450aromataseをコードする遺伝子のGAPDHに対する相対発現量を算出した。RIA法によりFSH、total inhibin、estradiol-17β(E2)、 progesterone(P)及びtestosterone(T)の血中ホルモン濃度を測定した【結果と考察】15日齢から100µg/kg投与群の動物では小型胞状卵胞数が減少し、小型の胞状卵胞の段階からすでに標的となっていることが明らかとなった。一方、この日齢における血中FSHは対照群と比較して曝露群では高く卵胞発育の阻害がFSH分泌に対する影響によるものではないことが示唆された。卵巣における遺伝子の発現量は、15日齢では3β-HSD、17β-HSDそしてP450aromataseといったP、T及びE2)の合成に関連する遺伝子の発現量が対照動物に比べ有意な低値を示し、E2の血中濃度も同日齢で有意に低かった。さらに、15、21日齢で血中のP濃度は増加し、逆にT濃度は低下したことから、PCB126がPからTへの代謝に影響を及ぼしていることが示唆された。以上、本研究によりPCB126は卵胞発育の阻害と共に、卵巣内遺伝子発現を抑制することでTとE2)の合成に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 内田 陽, 織田 銑一, 福田 勝洋, 井上 直子
    セッションID: OR1-18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】スンクスは周年繁殖の交尾排卵型動物であるが、その生殖機構に関して、交尾刺激後初めて卵胞腔が発達し排卵に至ることなど、他の哺乳類とは異なる特徴が幾つも報告されている。特に卵巣において卵胞発育が進み成熟前卵胞になると顆粒層が内、外、二層に分化するという特異な性質を有するが、その生理機能や退行機構に関してはほとんど解明されていない。そこで今回我々は交尾刺激前、後のスンクス卵巣における顆粒層細胞の機能的変化を検討した。【方法】KAT系統スンクスならびに雄と2時間同居にて交配させたKAT系統スンクスの卵巣を経時的に採取し、4%PFA固定後常法に従いパラフィン切片を作成し、免疫組織化学的手法を用いP450arom、connexin43(Cx43)の局在を調べた。また増殖細胞および閉鎖卵胞におけるアポトーシス細胞を検出するため抗PCNA抗体および抗ssDNA抗体を用いて免疫組織化学を行った。【結果】二層に分化していない二次卵胞では顆粒層全体でPCNA陽性細胞が認められ、成熟前卵胞では内顆粒層のみで細胞増殖が見られた。一方、閉鎖卵胞は二次卵胞、成熟前卵胞ともに顆粒層細胞でssDNA陽性細胞が検出されたが、成熟前卵胞では特に外顆粒層に局在がみられた。P450aromは二次卵胞以降で発現し、卵胞の成熟や退行によってその局在部位を変化させた。また健常な卵胞では顆粒層細胞でCx43の発現が見られ、退行初期でも局在がみられた。交尾刺激後の成熟卵胞では、Cx43の発現は徐々に減少し排卵直前では認められなかった。これらよりスンクスの内顆粒層と外顆粒層細胞は異なる生理機能を有し、卵胞の成熟および退行に関与していると考えられる。
  • 西本 博美, 手塚 雅文
    セッションID: OR1-19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】現在卵胞細胞培養に用いられている主な培養液のグルコース濃度は卵胞液中グルコース濃度に比べてはるかに高い(e.g. DMEM/F12-HAM: 17.5mM vs. 3-4mM)。しかし,グルコース濃度が培養細胞に与える影響についての報告例は殆どない。そこで本研究では,ウシ顆粒層細胞培養系を用い,グルコース濃度が細胞機能に与える影響を,生存細胞数,アロマターゼ,代表的糖輸送体であるGLUT1,GLUT3および解糖系酵素のヘキソキナーゼのmRNA発現量,ならびに産生乳酸量を測定し解析した。【方法】屠場由来ウシ卵巣より,2-5mmの卵胞の顆粒層細胞を採取した。ウシ胎子血清を10%含むDMEM/F-12 HAMで24時間の馴致培養後,グルコース不含DMEM/F-12 HAMにFSH(1ng/ml)およびアンドロステンジオン(100nM)を添加したものを基礎培地とし,グルコース処置(0,1,5,25mM)を行った。培養は処置後6日間続け,2日毎に細胞採取または培地交換を行い,細胞数ならびに培養液中乳酸濃度を測定した。得られた細胞を用いて定量的RT-PCRを行い,アロマターゼ,GLUT1,3およびヘキソキナーゼのmRNA発現量を定量した。【結果】グルコース1mM区で細胞数は最も多くなり,グルコース濃度の上昇と共に細胞数の減少が見られた。0mMでは細胞数は極めて少なかった。アロマターゼの発現は4日目で最大となり,その後5mM以上の濃度下では有意に減少したが,1mM区では発現量はほぼ維持された。GLUT1,GLUT3およびヘキソキナーゼの発現量はグルコース濃度による影響はほとんど見られなかった。一方,細胞あたりの乳酸分泌量はグルコース濃度の上昇に伴い増加した。以上のことから,培養液中グルコース濃度は細胞の生存性や代謝に影響を与え,さらには顆粒層細胞の成熟にも影響を及ぼすことが分かった。本研究から,ウシ顆粒層細胞培養系における至適グルコース濃度の調整が必要であることが示唆された。
  • 西田 綾子, 間世田 英明, 金井 幸雄, 坂本 夏美, 清水 隆, 原 征彦, 後藤 慶一, 宮崎 均
    セッションID: OR1-20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】卵胞の発育・閉鎖の運命決定では,顆粒膜細胞の生存とアポトーシスが鍵を握る。我々は,酸化ストレスで誘導される培養顆粒膜細胞のアポトーシスを,抗酸化作用で知られる茶カテキン種の一つepigallocatechin-3-gallate(EGCg)が抑制することを見出した。そこで,家畜において高温度環境下で起こる排卵数の減少,あるいは種々のストレスによるヒトの排卵異常等に対するカテキンの有効利用を考え,本研究ではラットを用いて暑熱ストレス依存的な排卵数の減少に対するEGCgの効果を解析することを目的とした。【方法】3週齢の雌Wistarラットを対照区(25℃,相対湿度50%)と暑熱区(35℃,相対湿度60%)にて飼育した。暑熱区にEGCg,EGC皮下投与群及び非投与群の3群を設けた。暑熱暴露はPMSG投与の2日前からhCG投与直後までの4日間行い,飲水量,直腸温度を毎日定時に測定し,5日目に卵管膨大部に内在する排卵卵子を算定した。【結果】暑熱暴露をすることで対象群と比べラット直腸温度は1-2℃上昇し,飲水量も大幅に増加した。対象群の排卵数を100%とすると,暑熱対象群では28%まで低下し,その低下はEGCg投与群において55%まで有意に回復したが,EGCは36%までの回復を示したものの,暑熱対象群とは有意差は認められなかった。また,体内の酸化ストレスの指標として用いたチオバルビツール酸反応物質量は,暑熱暴露したラットで明らかに増加し,暑熱ストレスが酸化ストレスに変換されていることが分かった。これらのことから,EGCgには暑熱ストレス依存的なラット排卵数の減少を抑制する効果があり,その作用機序の一つとして,EGCgによる顆粒膜細胞の酸化ストレスに対する保護作用が考えられる。以上の結果は,高温度環境での家畜の排卵卵子数の減少やストレスによるヒトの排卵異常の予防にEGCgが有効である可能性を示すものである。
  • 松田-峯畑 二子, 前田 晃久, 程 圓, 才 貴史, 権田 寛, 井上 直子, 眞鍋 昇
    セッションID: OR1-21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    哺乳類の卵巣では性周期毎に多くの卵胞が発育・成熟するが,この過程で99%以上が退行し,排卵に至るものは1%に満たない。これまでの研究から,この卵胞退行は顆粒層細胞のアポトーシスによって制御されていることがわかってきた。FOXO3aはアポトーシス誘導性転写因子として知られるが,その欠損マウスが卵胞の発育異常によって不妊となることが最近報告され,卵巣においてFOXO3aが重要な役割を持つことが示唆された。演者らはFOXO3aと卵胞退行との関連を明らかにすることを目的とし,ブタ卵巣におけるFOXO3aの発現と,顆粒層細胞株におけるFOXO3aのアポトーシス誘導能を検討した。ブタ卵巣より卵胞を切り出し,健常卵胞,退行初期卵胞および退行卵胞に分類後,各卵胞から顆粒層細胞を単離・調製し,mRNAとタンパクを抽出した。顆粒層細胞でのFOXO3a mRNAの発現をRT-PCR法で,FOXO3aタンパクの発現をWestern blot法で解析した。またブタ卵巣の組織切片を作成し,FOXO3aの免疫組織化学染色を行った。次いでFOXO3aのアポトーシス誘導作用を検討するため,ヒトとブタ由来の顆粒層細胞株,KGN,JC-410細胞にFOXO3a遺伝子を導入した後,細胞生存率を測定した。RT-PCRの結果,FOXO3a mRNAの発現量はブタ健常卵胞の顆粒層細胞で少なく,退行に伴って増加した。Western blotと免疫組織化学染色の結果,退行初期卵胞の顆粒層細胞でFOXO3aタンパクの強い発現が認められた。またFOXO3a遺伝子を過剰発現させた培養顆粒層細胞では細胞死が誘導され,FOXO3aは顆粒層細胞のアポトーシス誘導因子であることが示された。以上の結果から,FOXO3aは退行に先立ち顆粒層細胞で発現することでアポトーシスを誘導し,卵胞を退行させる重要な因子であることが示唆された。
  • 才 貴史, 松田-峯畑 二子, 前田 晃央, 程 圓, 眞鍋 昇
    セッションID: OR1-22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【背景と目的】ほ乳類の卵巣における卵胞の選択的死滅には顆粒層細胞アポトーシスが支配的に関与するが、その誘起因子やシグナル伝達経路に関しては未解明な点が多い。細胞膜にある細胞死受容体から始まるアポトーシスシグナルには、ミトコンドリアを経由しないtype I型と、経由するType II型がある。両経路において、活性化したcaspase-8活性化は、Type I型ではprocaspase-3を活性化し、TypeII型ではBidを分断する。今回、両経路の分岐点直後にあるBcl-2 familyの一種であるBidとBaxに注目し、顆粒層細胞におけるType II経路の優位性について調べた。【方法と結果】ブタから採取した顆粒層細胞では、卵胞閉鎖開始直後にBidとBax mRNAの発現量が最も高くなった。ヒトの顆粒層細胞と上皮細胞由来の株化細胞(KGNとHeLa細胞)におけるBidとBax mRNAの発現量を調べたところ、両方ともKGN細胞で多く発現していた。そこで、siRNA発現ベクターを用いたRNA干渉法によりKGNとHeLa細胞でBidの発現を抑制し、抗Fas抗体とシクロヘキシミドでアポトーシスを誘導したところ、Bidの発現抑制をしない細胞に比べ、発現抑制したKGN細胞では生存率が高かったが、HeLa細胞では有意差が無かった。【考察】顆粒層細胞が主にType II経路を使用する細胞であることが示唆された。
  • 金 鉉, 山内 啓太郎, 西原 真杉
    セッションID: OR1-23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    c-skiは、Sloan-Ketteringウイルスのもつ癌遺伝子として同定されたv-skiのcellular-protooncogeneである。c-skiの発現はさまざまな細胞でみられ、増殖や分化に伴い発現量が変化することから細胞機能の調節に重要な役割を担うことが推察されている。我々は以前にc-skiの強い発現が卵巣でみられることを報告した(第90回日本繁殖生物学会)が、その翻訳産物であるSkiの局在や機能については全くわかっていない。そこで、本研究では卵巣におけるSkiの機能を解明するにあたり、まずSkiの卵巣における局在を免疫組織学的手法により検討した。実験には正常性周期を回帰する成熟ラットの卵巣を用いた。その結果、顆粒膜細胞、内夾膜細胞、黄体細胞のいずれでも発現が観察された。興味深いことに顆粒膜細胞におけるSkiは卵胞により発現のみられるものとみられないものがあった。そこで、発育卵胞と閉鎖卵胞では顆粒膜細胞におけるSkiの発現が異なっている可能性を考え、隣接切片を用いて顆粒膜細胞におけるSkiの発現と細胞増殖、細胞死との関係についてさらに調べた。細胞増殖の指標にはPCNAの免疫染色を、細胞死の指標にはTUNEL染色を用いた。その結果、TUNEL陽性の細胞がみられる卵胞ではSkiが陽性であること、PCNA陽性の細胞がみられる卵胞ではSkiが陰性であることがわかった。また、同一切片を用いた二重染色により、Ski陽性細胞はTUNEL陽性細胞と一致し、PCNA陽性細胞とは一致しないことも確認された。さらに、eCG投与により、単一世代の卵胞発育とそれに続く卵胞閉鎖を誘起した未成熟下垂体除去ラットの卵巣でも全く同様の結果が得られた。以上の結果から、Skiは卵胞閉鎖に伴う顆粒膜細胞の細胞死に関与する因子である可能性が示された。Skiはこれまで主として細胞の増殖や分化に対し促進的に作用する転写調節因子と位置づけられてきたが、本研究はSkiが細胞死を促進する因子としても機能する可能性を初めて示したものである。
  • 朝日 隆行, 白砂 孔明, 渡辺 翔, 山下 拓道, 松井 基純, 清水 隆, 佐々木 基樹, 宮本 明夫
    セッションID: OR1-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】私達はこれまで,ウシ生体に黄体退行因子 PGF (PG)を投与すると 0.5 – 2 時間で黄体周辺部分の血流域が著しく増加することを発見し,この現象には強力な血管弛緩因子である一酸化窒素 (NO) が関与している可能性を示した。また,この血流増加現象は自発的な黄体退行開始直前にも必ず起こることから,黄体退行開始シグナルであると考えられる。そこで本研究の目的は,PG投与が黄体周辺部の血流増加時に,NOを合成する内皮型NO合成酵素 (eNOS) 発現へ及ぼす影響を検証することである。【方法】本学飼養ホルスタイン種雌ウシ(n=7)を用い,発情周期の Day10 – 12 (発情=Day0) に,実験区 (n=4) には PG を,対照区 (n=3) には生理食塩水を筋肉内注射した。投与後1時間で局所血流の変動を記録後に卵巣を採取し,黄体を固定し,smooth muscle actin (SMA)とeNOSをABC法で免疫組織染色した。SMA染色切片では,血管腔の直径が 10µm 以下の血管を毛細血管とし,それより大きい血管を弛緩・収縮性血管と定義した。eNOS については染色部分を面積として算出した。染色部分の面積計測は,5箇所200µm 四方内で行った。また,real–time PCR 法を用いてeNOS mRNA 発現を定量した。【結果】対照区に比べ PGを投与した実験区で黄体周辺部分のeNOS 染色面積 (P<0.01)及びmRNA (P<0.05) がともに著しく多く発現した。さらに,eNOS とSMAを染色した連続切片を用い局在を検討すると,黄体周辺部の弛緩・収縮性血管及びその周辺に集中して eNOS が存在した。以上より,PGは黄体周辺部でのみ弛緩・収縮性を有する血管の eNOS 発現を刺激し,それにより産生された NO が黄体退行開始シグナルである黄体周辺部の血流増加現象を引き起こしていることが示唆された。
  • 笹原 希笑実, 白砂 孔明, 永井 香也, 渡辺 翔, 宮本 明夫
    セッションID: OR1-25
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】私たちはこれまで,ウシの黄体退行に先立ち黄体周辺部の血流域が急激に増加する現象を見出し,この血流域増加現象が黄体退行カスケードの開始シグナルの1つであると提案してきた。これには黄体退行因子PGF(PGF)により刺激された,血管弛緩因子である一酸化窒素(NO)が関与していると考えられるが,NOの黄体周辺部血管を弛緩させる作用と血流増加との関係,さらに,血流域増加現象の生理的意義については未だ解明されていない。本研究の目的は,黄体内のNO産生を抑制することで,PGFにより誘起した黄体退行への影響を検証することである。【方法】本学畜産フィールド科学センターのホルスタイン経産牛(n=10)を用い,発情周期のDay 14(排卵日=Day1)から実験を開始した。PGF投与時を0hとし,実験区(n=5)にはL-NAME(NO合成酵素阻害剤:50mg/ml/shot)を,対照区(n=5)には生理食塩水を同量,-0.5h,0h,2h,4hの計4回,黄体内に直接投与した。黄体の形態はカラードップラー超音波画像診断装置(Aloka SDD-5500)を用いて排卵が確認されるまで観察し,同時に採血を行った。血中P濃度はEIA法により測定した。【結果】対照区では,黄体周辺部の血流域がPGF投与後0.5hから2hで約180%まで急激に増加した。一方,実験区の血流域はL-NAME投与後30分で25%にまで抑制された。その後次第に85%まで回復したが,基底値を超えることはなく,実験区のような急激な増加は見られなかった。また,対照区の血中P濃度は1hで有意に減少し始めたのに対し,実験区では8hまで減少しなかった。つまり,L-NAMEは黄体周辺部血流域の増加を抑制し,続く機能的退行を遅らせることが明らかとなった。以上の結果から,黄体周辺部の血流域増加現象は,PGFがNO産生を刺激することで誘起され,より迅速な黄体退行を導いていることが示唆された。
  • Tomas J. Acosta, 吉岡 伸, 小見山 純一, 西村 亮, Dariusz J. Skarzynski, 奥田 潔
    セッションID: OR1-26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】ウシにおいて黄体退行時に大量の免疫細胞が黄体内に侵入することが知られており、免疫細胞より産生されるサイトカイン (腫瘍壊死因子; TNF、interferonγ; IFN) が黄体退行機構に関与することが示されている。近年、一酸化窒素 (NO) がウシ黄体細胞のプロジェステロン分泌を抑制するとともにアポトーシスをも誘導することが示されており、ウシ黄体退行機構における NO の重要性が明らかにされつつある。しかし、ウシ黄体における NO 合成とサイトカインの関係は明らかにされていない。本研究では、黄体内で最も高い NO 合成能を有する血管内皮細胞 (LEC) において、2種類の NO 合成酵素 (誘導型:iNOS、血管内皮型:eNOS) mRNA 発現および NO 合成におよぼす TNF と IFN の影響について検討した。【方法】ウシ中期黄体より LEC を単離し、10% 子牛血清を含む培養液でコンフルエントに達するまで培養した。その後、0.1% BSA を含む培養液に交換すると同時に TNF (50 ng/ml) および IFN (50 ng/ml) を単独または組み合わせて添加し、24 時間培養した。培養終了後、1) iNOS ならびに eNOS mRNA 発現量を定量的 RT-PCR により調べるとともに、2) 培養上清中の NO 合成量を Griess 試薬により測定した。また、細胞数の指標として DNA 量を測定した。【結果】ウシ中期黄体より単離された LEC において、TNF は iNOS mRNA 発現量とともにNO 合成を有意に増加させた (P<0.05)。一方、TNFは LEC の eNOS mRNA 発現に影響をおよぼさなかった (P>0.05)。IFN は iNOSおよび eNOS mRNA 発現に影響をおよぼさなかったが、NO 合成を有意に増加させた (P<0.05)。また、TNF および IFN を組み合わせて処理することにより、eNOS mRNA 発現は変化しなかったが、iNOS mRNA 発現量およびNO 合成が有意に増加した (P<0.05)。以上の結果から、LEC において TNF は、iNOS を介して NO 合成を刺激することが明らかになり、免疫細胞の生産するサイトカインが LEC の NO 合成を刺激することにより黄体退行を促進する可能性が示唆された。
  • 森 大典, 榎原 広里, 米澤 智洋, 久留主 志朗, 汾陽 光盛
    セッションID: OR1-27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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     LH誘導性の排卵は、約6時間後から一過的に上昇するcyclooxygenase-2 (COX-2)発現とこの活性によるprostaglandin (PG)合成、並びにprogesterone (P4)分泌増強によって仲介される。卵胞にはもう一つのCOXイソ酵素であるCOX-1も存在するものの、その機能的意義の詳細は不明である。本研究では、COX-1選択的な阻害薬であるSC-560を用いて、排卵数、並びにPGE2含量とP4分泌に及ぼす影響を検討した。実験には25日齢の幼若ラットにeCGを、その48時間後にhCG(共に0.1 IU/g体重)を腹腔内投与し、その24時間後に卵管内の卵子数を数えた。hCG投与と同時刻(hCG0h)にSC-560 (50 nmol) を皮下投与すると、無処置群が平均15.5個/頭の排卵数を示すのに対し、SC-560投与では8.7個と有意に減少した。この投与をhCG投与の6時間後(hCG6h)に遅らせると、より強く抑制された(平均2.7個)。hCG8hにおける卵巣PGE2含量は、hCG0h及び6hのどちらのSC-560投与においても抑制される傾向にあった。興味深いことにhCG8hにおける血中P4濃度はhCG6hの投与後において有意に抑制された。COX-2選択的阻害薬のNS398(500 nmol)をhCG6hに投与した場合には、排卵数は有意に減少したがP4濃度は変化が無かった。以上の本研究成績から、COX-1特異的阻害薬の投与により排卵が抑制され、hCG投与直後からCOX-1活性がPG合成、P4産生、及び排卵において役割を担っていることが示唆された。
  • 徳永 典昭, 鈴木 一哉, 米澤 智洋, 久留主 志朗, 汾陽 光盛
    セッションID: OR1-28
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまで、ラット黄体における細胞質型phospholipase A2α(cPLA2α)の発現と活性が機能的退行過程で増加し、形態的退行過程でも高いレベルで持続すること、及びprostaglandin (PG) F合成に大きく寄与していることを明らかにしてきた。本研究では偽妊娠ラットの分離黄体組織を用いて、サイトカイン、あるいはFas刺激による黄体細胞の細胞死に対する、cPLA2α - PGF系の関与についてTUNEL法により検討した。腫瘍壊死因子α(TNFα, 100 ng/ml)とinterferon γ(IFNγ, 100 ng/ml)の併用添加、あるいはFas刺激性の抗Fas抗体(1 μg/ml)添加により、24時間処理後における黄体のTUNEL陽性反応が有意に促進された。cPLA2α 阻害薬であるAACOCF3(10 μM)の同時添加はいずれの細胞死誘導を抑制したが(鈴木ら、第98回本大会)、今回、より選択性の高いcPLA2α阻害薬であるpyrrophenone(1 μM)を処理した所、同じように細胞死が抑制される傾向が見られた。一方、PGF受容体拮抗薬であるAL8810(10 μM)の添加においても、TNFα/IFNγ併用投与、及び抗Fas抗体によるTUNEL陽性反応が抑制された。さらに、両細胞死誘導刺激の6時間後における黄体ミクロゾームのPLA2活性を測定したところ、溶媒対照群のそれに比べむしろ有意に低下していた。以上のin vitro系を用いた本成績から、黄体退行時に見られる黄体細胞死には、cPLA2α - PGF系が促進的に介在し、また細胞死の進行に伴いPLA2活性が減退していく可能性が示唆された。
  • 柴谷 雅美, Tomas J. Acosta, 奥田 潔
    セッションID: OR1-29
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】我々は estradiol 17β (E) が卵胞だけでなく,ウシ黄体においても産生されることを報告した (Biol Reprod, 2001)。しかし,ウシ黄体おけるE 産生調節機構ならびに ER 発現調節機構は明らかにされていない。ラット及びブタの黄体において prostaglandin F2α (PGF) が E 合成酵素 (aromatase: arom) 及び ER 発現を調節することから,ウシ黄体においても PGF が arom ならびに ER 発現を調節している可能性が考えられる。本研究では,E 産生能ならびに ER 発現の調節機構を解明する目的で,ウシ黄体における発情周期を通じた ER タンパク発現とともに arom 及び ER mRNA 発現に及ぼす PGF の影響について検討した。【方法】1) 発情周期各期のウシ黄体における ERα 及び ERβ タンパク発現量を Western blot 法により調べた。また,ERα と ERβ は拮抗的な作用を示す事が知られているため,ERα/ERβ 比を併せて調べた。2) ウシ中期黄体細胞に,PGF (10-8-10-6 M) を添加し 24 時間培養後,ERα,ERβ 及び arom mRNA 発現を半定量的 RT-PCR (RT-PCR) により検討した。3) 黄体細胞に PGF (10-6 M) を添加し 2-24 時間培養後,ERα,ERβ 及び arom mRNA 発現を RT-PCR により検討した。【結果および考察】1) ERα タンパク発現は退行期に低く,ERβ タンパク発現は後期ならびに退行期に低かった。また,ERα/ERβ 比は退行期において低かった。2) ERα 及び ERβ mRNA 発現は PGF の濃度に依存して減少した。また,いずれの濃度の PGF 処理区においても arom mRNA 発現は減少した。3) PGF は 24 時間の培養において黄体細胞の ERα ならびに arom mRNA 発現を抑制し,6,12 ならびに 24 時間の培養において ERβ mRNA 発現を抑制した。以上の結果から,PGF がウシ黄体における E 産生能及び ER 発現調節因子の一つである可能性が示された。また,初期から後期にかけて ERα/ERβ 比の高いことからウシ黄体において ERα が黄体機能維持に関与している可能性が考えられる。
  • 米澤 智洋, 小林 圭子, 久留主 志朗, 汾陽 光盛
    セッションID: OR1-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【背景】ラットの性周期黄体は、発情休止期2日目の午後に退行する。我々は、この時期の黄体にアネキシン5の発現を伴ったアポトーシス像が観察されること、機能化した黄体を実験的に退行させると、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を介してアネキシン5の合成が促進されることを明らかにした。本研究では,性周期黄体でのGnRH及びGnRH受容体の発現動態を調べるとともに、プロラクチン(PRL)による黄体の機能化刺激が、黄体のGnRHおよびアネキシン5に及ぼす影響について検討した。【方法】10-13週齢のWistar-Imamichi系雌ラットを実験に供した。発情周期を通して黄体からそれぞれ総RNAを抽出し,リアルタイムPCR法でアネキシン5、GnRH、GnRH受容体、Fas,Fasリガンドの転写活性を測定した。次に、PRL 10 IUを発情期から1日2回腹腔内投与し、3日目(発情休止期2日目)の1700時に黄体を採取して、同様の解析を行った。【結果】発情休止期2日目の1700時に黄体のGnRH及びGnRH受容体mRNAが増加した。この時Fas,FasリガンドmRNAも同様に増加した。一方、PRL投与による機能化黄体では、同日同時刻の対照黄体と比べて、GnRH、アネキシン5 mRNAが有意に減少した。Fas、Fasリガンド mRNAもこれに同期して減少した。【考察】性周期において、黄体が退行を開始する発情休止期2日目午後に、黄体ではGnRHとGnRH受容体遺伝子の発現が増加する。このGnRH系の活性化は、PRLによって抑制されたことから、アネキシン5を伴ったGnRHシグナルが性周期黄体の退行を制御している可能性が示された。
  • Peijian He, Masami Hirata, Nobuhiko Yamauchi, Sheiichi Hashimoto, Masa ...
    セッションID: OR1-31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    It has been suggested that the circadian clock operates in the extensive peripheral tissues as well as in the suprachiasmatic nucleus. The present study was performed to examine the operation of circadian clock in the ovary, thereby providing insights into how the circadian clock is possibly involved in the ovarian physiology including follicular development and luteinization. The operation of circadian clock in the rat ovary was investigated employing the immunohistochemistry and RT-PCR methods, the cell culture (normal and Per2-dLuc transgenic) system and real-time monitoring of promoter activity. The Per2 promoter connected with destabilized luciferase (dLuc) was introduced in the transgenic rats. The result showed that PER1 was non-cyclic in the developing follicles over a 24-h time course, while obviously rhythmic in the corpora lutea. Furthermore, gonadotropins significantly stimulated Per1 expression via CREB in granulosa cells, but not in luteal cells. Using Per2-dLuc transgenic cells, the working capabilities of the clock system were compared in granulosa and luteal cells. After dexamethasone synchronization, only one cycle of Per2-dLuc oscillation was observed in granulosa cells within 96 h monitoring, while persistent oscillation was sustained in luteal cells. Additionally, EGF and bFGF, but not IGF-I, reinforced the sustaining capability of the clock system in granulosa cells. It is thus supposed that, during follicular development, gonadotropins may be the potent factors disrupting normal circadian clockwork by constitutive regulation of Per1 via CREB and induced cell differentiation.
性周期・妊娠
  • 前田 佳奈美, 李 東洙, 植田 佳子, 鈴木 宏志
    セッションID: OR1-32
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    着床に関連するといわれる分子の多くは、卵巣ホルモンの影響を受けて発現するが、Rat USAG-1 mouse homologue発現は性周期との関連がみられないことが知られている。このことから、この分子は母体側の卵巣ホルモンの影響よりも胚の影響を受けていることが考えられたため、Rat USAG-1 mouse homologue のマウスでの着床時期における発現と、発現部位の同定を行った。妊娠、偽妊娠ICRの3.5-6.5dpcにおけるRat USAG-1 mouse homologueの子宮組織全体での発現をリアルタイム定量PCRで検出した結果、妊娠マウスでの発現量は着床直後の4.5dpcで最大となり、その後徐々に減少した。偽妊娠マウスでは3.5-6.5dpcにわたり発現が検出されたが、有意な上昇はみられなかった。次に妊娠マウス子宮から凍結切片を作製し、Laser Microdissectionを用いて3種類の組織(上皮・筋肉組織、ストロマ、管腔上皮)を回収し、この分子の発現を検出した結果、3.5-6.5dpcにわたり発現がみられ、発現量は4.5dpcの管腔上皮細胞で最大となった。また3.5dpcに回収した胚盤胞では、この分子の発現は確認できなかった。以上の成績より、この分子の発現部位は管腔上皮細胞が主であることが考えられた。また、偽妊娠子宮での発現は低いことから、胚の存在が発現に影響を与えている可能性が考えられた。また着床直後である4.5dpcの管腔上皮細胞での発現が最大となったことから、胚が子宮に接着し浸潤する際の刺激が子宮内膜に影響し、分子を活性化させた可能性が考えられた。
  • 池田 義則, 吉川 宏, 森田 英利, 田中 和明, 滝沢 達也
    セッションID: OR1-33
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【背景と目的】ラット胎盤において産生されるNOは妊娠15日にピークを示し、このピークは主にiNOSにより調整されている。また、この時期のiNOSの発現はHIF-1αを介して誘導されている可能性が示されたが、さらに他の要因の関与も考えられる。そこで、iNOSを誘導することが知られているTNF-αおよびNOとの相互作用が報告されているVEGFとの関係について検討した。【方法】NO産生がピークを示す妊娠15日と低値を示す妊娠21日のラットを用いてNOS阻害剤L-NAMEを持続注入し、NO抑制モデルを作製し、経時的にNO産生量、HIF-1α、iNOS 、eNOS 、TNF-αおよびVEGFのmRNAとHIF-1αタンパクを解析した。【結果】妊娠15日においてはL-NAME注入によりNO産生を減少させると、NO産生量の減少と同時にHIF-1αタンパクも減少していた。一方、HIF-1αmRNA、iNOSmRNA、eNOSmRNAは経時的に増加したが、TNF-αmRNAの変化は認められなかった。妊娠21日においては、L-NAME注入後NO産生が減少しても、HIF-1αmRNA、iNOSmRNA、eNOSmRNA、HIF-1αタンパクの発現に変化は認められなかったが、TNF-αmRNAは5倍に増加していた。また、NO産生を抑制すると、VEGF mRNAの発現は一時的に減少し、その後、徐々に回復した。【考察】妊娠15日の胎盤におけるiNOSの発現は主にHIF-1αを介して誘導されており、TNF-αの関与は少ないこと、一方、妊娠21日の胎盤においては、HIF-1αを介したiNOSの誘導機構はほぼ消失し、TNF-αを介して誘導されていること、また、妊娠15日においては、VEGFの発現にはNOが必要であることなどが示唆された。
  • 山田 隆幸, 井上 直子, 漆崎 友彦, 福田 勝洋
    セッションID: OR1-34
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】哺乳類では、妊娠を維持するため多様な免疫細胞が子宮内において重要な働きをしている。非自己組織を認識し排除するマクロファージの妊娠子宮内での分布について一致した報告がなく、その役割についても不明な点が多い。本実験は自然免疫に関わるマクロファージおよび好中球について、正常妊娠中のマウス子宮内における分布と増減を明らかにし、また人為的に流産や脱落膜化を誘起させた子宮での動態を比較し、妊娠時における両者を制御する機構を検討した。【方法】ICR雌マウスを同系雄と交配し、妊娠(D)6,9,12,15,18日目および分娩後の子宮を4%PFAにて灌流固定後、浸漬固定し、常法に従いパラフィン切片を作製後、免疫組織化学を行い、マクロファージおよび好中球の分布と細胞数の推移を調べた。また人為的に流産を誘起するためD9に卵巣除去を行い、その12,24,36,48時間後の子宮および偽妊娠4日目にセサミンオイルを投与して2日後の脱落膜反応を誘起させた子宮を同様に観察した。【結果】妊娠子宮内のマクロファージは非妊娠子宮と異なり、分布に明らかな偏りがみられた。特に妊娠前半では、マクロファージは内膜基底層に集積し、脱落膜では分娩前日のD18まで常にごく少数であった。分娩後の内膜では、マクロファージは著しく増加した。人為的に脱落膜化を起こした子宮では、胎子組織を欠くにもかかわらず、正常妊娠のものとほぼ同じ分布様式を示した。また人為的流産後の経時的な観察から、マクロファージが類洞から子宮内へ侵入し、内膜に多数のマクロファージが観察された。一方、好中球は分布数が少なく、マクロファージの様な大きな変化はみられなかった。【考察】妊娠子宮では、分娩直前までマクロファージが脱落膜から排除されているが、胎子の存在によるものではなく、母体側の制御機構によるものであり、分娩および流産後の増加は、マクロファージが傷害を受けた内膜の修復に何らかの関わりをもつことが示唆された。
  • 李 和容, Tomas J. Acosta, 西村 亮, 小見山 純一, 田崎 ゆかり, 作本 亮介, 手塚 雅文, 奥田 潔
    セッションID: OR1-35
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    【目的】Glucocorticoid (GC) の作用は 11β-hydroxysteroid dehydrogenase (11HSD) 1 および 11HSD2 により局所的に調節されることが知られている。我々はウシ子宮内膜において GC receptor α mRNA が発情周期を通じて発現すること、また活性型 GC である cortisol が子宮内膜間質細胞の prostaglandin (PG) 合成を抑制することを示した。本研究では、ウシ子宮内膜における活性型 GC 産生調節機構を解明する目的で、ウシ子宮内膜組織の 11HSD1 活性を発情周期を通じて調べた。また、ウシ子宮内膜において、発情周期を通じた PGF2α 分泌の変化と 11HSD1 mRNA 発現の変化が類似することから、PGF2α が 11HSD1 の機能調節因子である可能性が考えられる。そこで、ウシ子宮内膜間質細胞の 11HSD1 活性におよぼす PGF2α の影響についても併せて検討した。【方法】1) 発情周期各期の培養子宮内膜組織に、11HSD1 の基質である cortisone (30 nM) を添加し、4 時間培養後、培養液中の cortisol 濃度を測定することにより 11HSD1 活性を調べた。2) 卵胞期の培養子宮内膜組織に cortisone (3-300 nM) を添加し、4 時間培養後、cortisol 濃度を測定した。3) 培養した子宮内膜間質細胞に cortisone (30 nM) を単独または PGF2α (1 μM) と組み合わせて添加し、さらに 0.5、1、4、12 および 24 時間培養した。培養終了後、培養上清中の cortisol 濃度を測定するとともに、細胞数の指標としてDNA 量を測定した。【結果】1) ウシ子宮内膜組織の 11HSD1 活性は黄体期中期において最も低く、卵胞期および排卵後において他の周期と比較して有意に高かった。 2) ウシ子宮内膜組織の 11HSD1 活性は cortisone の濃度に依存して上昇した。3) 4 時間以上の培養において、PGF2α は間質細胞の 11HSD1 活性を有意に上昇させた。以上の結果より、ウシ子宮内膜に局所的な cortisol 濃度を調節する機構が発情周期を通じて存在し、PGF2α は間質細胞の 11HSD1 の活性化を介して、ウシ子宮内膜における局所的な cortisol 濃度を調節する可能性が示唆された。
  • Sukanya Jaroenporn, KaiMing Wang, Ryo Ohta, Sayaka Asai, Mariko Shirot ...
    セッションID: OR1-36
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    Hatano high- and low-avoidance rats (HAA and LAA) were selected and bred according to their responses on a shuttlebox task. Previous studies have shown clear strain differences in secretion of gonadotropins (Gns) and steroid hormones during the estrous cycle as well as avoidance behavior. This study was designed to measure circulating inhibin A and B and to correlate Gns, steroid hormones, and ovarian folliculogenesis. Inhibin B was elevated from the day of metestrus and declined gradually through proestrus in both strains. Additionally, inhibin B declined most at 0600 h on the day of estrus. Indeed, LAA showed higher levels of inhibin B than HAA throughout the estrous cycle. Circulating inhibin A, however, was low on the day of metestrus and increased through the afternoon of proestrus in both strains. In addition, LAA showed higher levels of inhibin A than HAA during the late evening of proestrus and early morning of estrus. However, inhibin A and B was inversely correlated with FSH surge in both strains. The presence of small follicles at 1200 h on the day of metestrus and diestrus were greater in LAA, although antral follicles were lower in LAA rats as compared with HAA. These results strongly suggest that inhibin B is secreted from developing small follicles, whereas inhibin A is secreted from mature antral follicles. Thus, the increase in circulating inhibin B and decrease in circulating FSH may be due to acceleration of follicular growth in LAA. In addition, LAA may grow more follicles during the early stage of folliculogenesis, although many may not growth to maturity. Supported in part by a Grant-in-Aid for COE (E-1) and Basic Scientific Research (B-18310044).
  • Hataitip Trisomboon, Suchinda Malaivijitnond, Wichai Cherdshewasar, Ge ...
    セッションID: OR1-37
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
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    Pueraria mirifica (PM) has been interested because of phytoestrogens contained in its roots, showing female hormone like effects. From the study of non-human primate, Macaca fascicularis, after a single feeding of 1,000 mg of PM (PM-1,000), the length of menstrual cycles were prolonged in adult monkeys, but the doses of 10 and 100 mg of PM (PM-10 and PM-100) could not change menstrual cycle lengths. The serum patterns of follicle stimulating hormone (FSH), luteinizing hormone (LH), estradiol (E2), or progesterone (P) in all two entire menstrual cycles did not change in all monkeys after treatment with PM-10, PM-100, or PM-1,000, when compared with those of pre-treatment. In the study of daily treatment of PM-10, PM-100, or PM-1,000, the menstrual cycle lengths were prolonged significantly during PM-10 and PM-100 treatments, and stopped completely throughout the PM-1,000 treatment and post-treatment periods. Serum FSH, LH, E2, and P levels were suppressed during treatment in a dose-dependent manner. During the post-treatment period, changes of menstrual cycle length and suppressed hormonal levels could recover in PM-10 and PM-100 groups, but could not recover in PM-1,000 group. Similarly, serum FSH, LH, and E2 levels were also suppressed in aged menopausal monkeys treated with PM-10, PM-100, and PM-1,000 for 90 days. From these results, it was assumed that phytoestrogens contained in PM acted as estrogen and suppressed the hypothalamus and/or pituitary functions by reducing the secretion of GnRH, FSH, and LH, then suppressed the secretion of sex steroid hormones in both adult and aged monkeys. In conclusion, PM influence reproduction by estrogenic action of phytoestrogens.
臨床・応用技術
  • Muhammad Yusuf, Toshihiko Nakao, Makoto Ogawa
    セッションID: OR1-38
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
    会議録・要旨集 フリー
    [Objective] To investigate the effects of interval between calving and first ovulation on ovarian cycles postpartum and conception rate in high-producing dairy cows. [Methods] Days of first ovulation postpartum and subsequent ovarian cycles until cows diagnosed pregnant were monitored by milk progesterone profiles in a commercial dairy herd with 60 Holstein-Friesian cows with average milk yield per cow per lactation of 10,200kg. Incidence of abnormal ovarian cycles was calculated as percentage of abnormal cycles in total cycles during an observation period in each cow. [Results] Of 53 cows examined, percentages of cows which ovulated 1-14 d, 15-20 d, 21-35 d, 36-60 d, and >60 d postpartum were 28.3%, 26.4%, 30.2%, 13.2 %, and 1.9%, respectively. Incidences of abnormal ovarian cycles during pre-service and service periods in 45 cows with early (1-35d) first ovulation and 8 cows with late (U>/U36d) first ovulation were 33.9% and 36.2%, respectively. Percentages of ovarian cycles with prolonged luteal phase were 22.3% in cows with early first ovulation and 13.8% in those with late first ovulation. First AI conception rate and pregnancy rate within 100 d postpartum in cows with early first ovulation were higher than cows with late first ovulation (26.5% vs 0% and 28.9% vs 0%, P<0.01). [Conclusion] Interval between parturition and first ovulation postpartum did not adversely affect subsequent ovarian cycles. However, cows with early first ovulation tended to have a higher incidence prolonged luteal phase than those with late first ovulation. Delayed first ovulation postpartum adversely affected reproductive performance.
  • 澤 香代子, 黒岩 武信, 魯 文庚, 田中 知己, 加茂前 秀夫
    セッションID: OR1-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】哺乳類において排卵は卵子成熟、卵胞破裂、黄体形成などの一連の現象として捉えられ、それにはプロスタグランジン(PG)が関与していると考えられている。本研究では周排卵期の乳牛にPGの産生を抑制する非ステロイド系抗炎症薬であるフルニキシンメグルミン(FM)を投与し、その後の卵巣の変化について検討した。【方法】発情周期を正常に営んでいるホルスタイン種乳牛2頭を反復供試した。排卵後12-13日にPGF(ジノプロスト) 20 mg、その54時間後に性腺刺激ホルモン放出ホルモン類縁物質(酢酸フェルチレリン;GnRH-A)20 µgをそれぞれ筋肉内注射した。FM 1,250 mg/ 25 mlを3例にはGnRH-A投与後23時間(FM23h群)、2例にはGnRH-A投与後27時間(FM27h群)、3例には排卵確認直後(FMOV群)から、それぞれ12時間毎に合計10回静脈内投与し、卵巣の変化を直腸検査と超音波画像検査を行って調べた。【結果】全群でPGF投与後に黄体の退行と第2次主席卵胞の発育が起こり、GnRH-A投与時に発育卵胞直径は10-14 mmとなった。その後卵胞はFM23h群では全例においてGnRH-A投与後42時間まで排卵せず、その後も大きさを増し、GnRH-A投与後3-5日には直径25 mmを超える嚢腫化構造物となった。FM27h群ではいずれもGnRH-A投与後30時間に、FMOV群では全例において同30-33時間に排卵し、いずれも発育良好な充実した黄体が形成された。FM23h群の嚢腫化構造物はGnRH-A投与後19-23日に退縮し始め、同23-24日に次回排卵が、FM27hおよびFMOV群では排卵後18-20日に黄体は退行し始め、同20-24日に次回排卵が起こった。【まとめ】FMをGnRH-A投与後23時間から投与した場合は排卵が抑制され、嚢腫化構造物となること、同27時間および排卵直後から投与開始した場合には排卵後に発育良好な黄体が形成されることが認められた。
  • 富田 健介, 黒岩 武信, 魯 文庚, 田中 知己, 加茂前 秀夫
    セッションID: OR1-40
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】未経産牛に腟内留置型プロジェステロン徐放剤(PRID)を排卵後2日から12日間処置すると大部分の例で黄体が早期に退行を開始し、抜去後2?3日で発情が発現することを演者らは報告した(JRD,2005)。本研究では経産泌乳牛について排卵後2日からPRIDを12日間処置し、卵巣の変化を調べた。【方法】発情周期を正常に回帰している経産の泌乳牛11頭を供試した。排卵後2日にPRID(プロジェステロン1.55g含有、安息香酸エストラジオール10mgカプセル付)を1~3個腟内に挿入し、排卵後14日に抜去した。挿入したPRIDの個数とその例数は1個3例(1PRID群)、2個3例(2PRID群)、3個5例(3PRID群)とした。処置発情周期を通じて、直腸検査及び超音波画像検査を連日または隔日に行って卵巣の変化を調べると同時に採血を行い、血漿中プロジェステロン(P)濃度を測定した。【結果】黄体は全群において排卵後6日前後に直径25mm前後の大きさに発育した1PRIDと2PRID群の全例及び3PRID群の5例中2例では、排卵後17~21日前後に退行を開始した。しかし3PRID群の残る3例では、排卵後13~14日前後の早期に退行を開始した。黄体の退行に伴って、前者の8例では排卵後5~20日前後から発現した第2または第3次主席卵胞が発育して排卵し、後者の3例では排卵後12~13日前後から発現した第2次主席卵胞が発育して排卵した。処置発情周期の長さは、前者の8例では20~25日、後者の3PRID群の3例では19~21日であった。第1次主席卵胞の最大直径は1PRID群の13~15mmと比べ、2PRID群の9~12mm及び3PRID群の10~13mmは小さい傾向であった。血中P濃度はPRID処置期間中、全群において4~6ng/ml前後で推移した。【まとめ】経産泌乳牛に排卵後2日からPRIDを12日間処置することにより、3個処置では大部分に黄体の早期退行が認められた。しかし、1個及び2個処置では認められなかった。
  • 春名 聡子, 林野 淳, 黒岩 武信, 田中 知己, 加茂前 秀夫
    セッションID: OR1-41
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]雄ヒツジでは短期間の高栄養処置により性腺刺激ホルモン分泌が亢進することが報告されている。そこで,本研究では雌シバヤギを用いて発情周期の黄体期から卵胞期にかけて7日間の高栄養給餌を行い,卵胞発育や排卵,黄体形成および性ホルモン分泌に及ぼす影響について検討した。[材料と方法] 正常な発情周期を営む雌シバヤギの排卵日をDay0とし,Day7からDay13まで,対照群(n=3)には維持要求量を給餌し,処置群(n=3)には維持要求量の2.5倍を最高量とする飽食処置を行った。Day10にプロスタグランジンF(PGF)を筋肉内注射し,PGF投与前24hと投与後24hから10分間隔6時間の頻回採血を行い,黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌の変化を調べた。また,栄養状態および内分泌状態を解析するためDay0(第1回排卵)からPGF投与後に観察された排卵(第2回排卵)に続く排卵(第3回排卵)まで連日採血を行った。さらに卵胞および黄体の変化を超音波画像検査により隔日で調べた。体重は1週毎に測定した。[結果]Day0と比較した体重増加量はDay7およびDay14において対照群よりも処置群で有意に高く,血中グルコース濃度はDay8およびDay9に処置群で有意に高い値を示した。LHパルス頻度はPGF投与前においては両群ともに0?1回/6h,PGF投与後24hにおいては対照群で3?4回/6h,処置群で4?5回/6hであり,両群間に有意な差は認められなかった。第2回排卵時における排卵数は対照群(2.7±1.2)と処置群(2.3±1.2)で有意な差はなく,第3回の排卵数についても対照群(2.7±1.2)と処置群(3.7±2.1)で有意な差は認められなかった。第2回排卵後における黄体直径,血中プロジェステロン濃度についても両群間に有意な差は認められなかった。[まとめ]黄体期から卵胞期における7日間の高栄養処置は,体重およびグルコース濃度を増加させるが,性ホルモン分泌および卵巣活動には影響を及ぼさなかった。
精巣・精子
  • 諏訪 義典, 小野寺 由香, 小滝 蘭, 鈴木 宏志, 植田 佳子
    セッションID: OR2-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/24
    会議録・要旨集 フリー
    わが国の盲導犬は、現在、約950頭が実動しているが、盲導犬希望者は約4800人で、需要と供給のバランスが取れておらず、盲導犬の安定的・効率的な繁殖は、これらを解決するための重要な課題のひとつである。しかし盲導犬の繁殖犬として適性のある犬は絶対数および血統的に不足しており、緊急に対処を要する状況にある。これらの問題に対する解決策のひとつとしては、凍結精子を介した海外からの遺伝子資源の導入が考えられるが、受胎率等でリスクの高い凍結精子による盲導犬の人工繁殖は普及していないのが現状である。そこで本研究では、発情徴候を確認後、継時的に血中プロジェステロン濃度を測定し、2 ng/ml を越えた日をLHサージ日と推定し、推定LHサージ日の4~7日後にそれぞれ、2×108個の凍結・融解精子をWilson (1992)が開発したヒト用膀胱鏡を用いた経子宮頚管授精法(TCI)により子宮内に注入した。その後、推定LHサージ日の6_から_9日後に異なる雄犬由来の新鮮精子、冷蔵精子を用いて経子宮頚管授精法、膣内人工授精、自然交配を行い、推定LHサージ後25~30日目に超音波画像診断装置による妊娠診断を行った。そして出産後1~30日齢の子犬の口腔細胞、毛根、爪から23種類のサテライトマーカーを使用して親子鑑定を実施した。2005年3月~2006年3月までに15頭の雌犬に実施し、14頭の雌犬で受胎が確認され13頭の雌犬が出産した。また6例は凍結精子由来の子犬を出産し、3例は複数頭の雄犬由来の子犬を出産した。以上、本方法は繁殖雌犬が少ない日本の盲導犬施設で、リスクの高い凍結・融解精子を使用しても空胎を防ぐと共に、産子数の増加も期待でき、凍結精子を使用した盲導犬の人工繁殖を積極的に臨床現場で実施可能にする。また複数頭の雄犬由来の子犬を産んだ場合、雄犬の評価が比較検討しやすくなり、育種改良にも有効な手段であることが示された。
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