養殖経営不調の原因は,価格形成の不調にある。グローバル化が進む現代的市場への対応という視点から養殖経営のあり方を検討することが必要だろう。本報告ではブリ類養殖を事例とし,上記のような視点から再編問題に接近した。成功例と考えられる上層養殖経営体に対し実態調査を行い,経営体制の内容を明らかにした。
養殖生産体系の本質は,漁業生産体系の不安定性の克服つまり供給の大量化,安定化と計画化である。高級魚だったはずの養殖対象魚は発展とともに希少性や高価格性を急速に喪失してきたが,組織型小売業における大衆商品として巨大市場を獲得することに成功した。こうした養殖業の基本的性格から考えると,生産規模拡大と市場拡大を持続的に行う必要があり,海外市場の開拓が不可避であろう。
実態調査からも海外市場アクセスを軸とした再編が進んでいることが明らかである。地域外インテグレーターとの関係性を強めてグループ化するケース,漁協が地域の養殖業者を結集するケース,企業が新規参入し養殖業再編を一気に進めようとするケースなどが見られるが,いずれも海外市場アクセス確保がその鍵となっている。
養殖業再編の大きな潮流は,海外市場へのアクセス確保を軸として進んでいる。地域社会に基盤を置きつつ,国内市場だけではなく海外市場へのアクセスを確保することでグローバル経済を十分に利用できるような,バランスのよい養殖経営が求められている。
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