フィジーの沿岸集落では,自給自足を目的にした漁業操業が盛んに行われてきた。しかし,人口増加,需要の増加などによって販売を目的にした漁業操業が広がるにつれて,漁獲圧力の高まりによる資源水準の低下が懸念されるようになった。一部の沿岸集落においては,漁獲量の減少や漁獲魚のサイズ小型化などが確認されている。
そこで本稿では,フィジーにおける資源管理制度に対する沿岸住民の認知度を明らかにすることを目的とした。そして,複数の漁村において,資源管理制度の具体的内容と制度への認知度を分析した。
フィジーにはコミュニティを起因とする慣習と,統一的な漁業管理制度が存在するが,調査の結果,村人はいくつかのルールしか認知しておらず,漁業規制に対して十分理解が浸透していない実態が明らかとなった。
実効性ある制度運用のためには,村民への周知・教育体制の検討が必要であるが,政府によるトップダウン的なアプローチではなく,沿岸住民の行動規範に強い影響力を持つ集落の役割と機能に留意することが肝要であることを提起した。
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