産業部門のうち鉄鋼業の脱炭素化施策の持続可能性評価を目的として,2030年の2つの粗鋼生産シナリオに対し,持続可能性指標(総物質需要量,エコロジカルフットプリント,CO2排出量,ケミカルフットプリント)を用いて直接および間接的な環境負荷を推計した.その結果,高炉転炉法の技術進歩が進んだケース(シナリオ1),電炉法へのシェアシフトを進めたケース(シナリオ2)ともに,いずれの指標も低減できることがわかった. また, シナリオ2では電炉法の比率が2019年の23.5%から35.6%に増加することで,製鉄に伴う電力消費が増加する.再生可能エネルギー比率が2019年の18.5%から2030年に37.0%に上昇する前提では,化石燃料による火力発電が縮小し,各指標値が減少した.電炉法のシェア拡大に伴う電力消費量の増加に対して,再生可能エネルギー比率を高めることで,各指標値を低減することが可能になることが明らかになった.