ビジネス実務論集
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理論・調査研究
研究ノート
  • 西尾 久美子
    2025 年43 巻 p. 1-11
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
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     本研究は、日本の伝統文化専門職の芸妓が、キャリアの早い段階で新人舞妓の指導育成役を引き受けることに着目し、教える役割を担うこととキャリア形成との関連性について探究することを目的とする。

     京都花街では経験数年から10年程の20代半ばの若手芸妓が、新人舞妓の指導育成役の姉芸妓を引き受けることがよく見受けられる。この新人舞妓の育成のための擬似姉妹関係は、一見さんお断りの取引制度の要となる事業者のお茶屋と芸舞妓志望者を迎え入れ育成する置屋の経営者が主体になり、育成者側の姉芸妓にとってもキャリア形成上プラスになることを考慮して構築されている。そして、姉芸妓になることは、獲得してきた技能の言語化や伝承、仕事の成り立ちの把握と関係者の職務の理解を促している。また、若手芸妓が妹舞妓を教えることを通じて、若手芸妓自身がデビュー時に結んだ先輩芸妓との関係性やキャリア形成の支援を受けたことを再認識し、芸妓という専門職を選択した意義や意味を捉えなおすことにもつながっている。

     若手芸妓の伝統文化技芸の技能は、業界内で熟達したと認められるレベルではなく、新人舞妓を教えることが自らの技能向上のために直接的に役立つわけではない。しかし、「教える・教えられる」という両方の立場の経験は、自分を取り巻くデベロップメンタル・ネットワークを深く理解する機会となっている。また、若手芸妓は教える役割を担うことにより、学びのサイクルを円滑に回して、技能獲得の歩みを主体的に進めていることも示唆された。若手芸妓が教える役割を担うことにより、中堅者への壁を超え生涯にわたる熟達化の歩みを進めることにもつながっていると考えられる。

  • 大須賀 元彦, 富田 宏, 須栗 大
    2025 年43 巻 p. 13-18
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    研究報告書・技術報告書 フリー

     小規模私立大学における教学IR(Institutional Research)組織ではその人材の育成に課題を抱えているケースが多くある。その要因として小規模私立大学の教学IR組織で扱うデータセットおよび分析の特徴、そして人材育成上の課題がこれまでの先行研究において十分に明らかになっていないことが関係している。そこで本研究の目的は小規模私立大学である中京学院大学の教学IR室の事例を通して、それらの特徴を整理することで小規模私立大学の教学IRにおけるデータ活用人材の育成上の課題および、その在り方を検討していくことである。

     検討の結果、データセットと分析の特徴として、データの個数が相対的に少ないため、データの収集が比較的容易であること、質的データよりも量的データを扱う頻度が高いため量的データに対する分析手法を率先して習得する必要があること、それに伴い基本統計量を可視化する作業が多いこと、の3点が明らかとなった。

     また人材育成上の課題として、分析結果の解釈、分析結果の示し方ならびに共有の方法、そして分析結果の送り手側と受け手側における認知的課題に言及した。

     このことから小規模私立大学の教学IRにおけるデータ活用人材の育成の要点として、教学マネジメントに携わるすべてのステークホルダーがデータセットとその特徴を理解する必要があり、知識とスキルの修得に関する優先性を十分に考慮しながら、認知的課題に対する対応力を育成することが教学IR組織において重要であると述べた。

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